伊達政宗(1567~1636)の辞世の句―現代語訳とその解説

辞世の句

曇りなき心の月をさき立てて 浮世の闇を照らしてぞ行く

現代語訳

何も見えない真っ暗闇の中で、月の光を頼りに道を進むように、戦国の先の見えない時代の趨勢を自分が信じた道を頼りにただひたすら歩いてきた一生であったなあ。

解説

言わずと知れた独眼流政宗。「伊達者」の語源になったその華やかさにあふれた彼の生涯には同時に常に影が付きまとう。幼少の頃からの「独眼流」であることへのコンプレックス、敵の騙まし討ちに遭い、目の前で惨殺された父親、弟を可愛がるあまりに自分を毒殺しようとさえした母親、自らの手によって殺さなければならなかった弟、そして天下と世界貿易の野望の挫折。

生まれる時期が遅すぎた。彼が世に出て、急速に力を伸ばし、奥州で覇をとなえた頃には既に秀吉による天下統一事業の最終段階に達していた。そして江戸幕府の鎖国政策によって世界貿易の夢も絶たれた彼はその後、仙台藩初代藩主としてその礎を築く。

しかし一方で彼がもう少し早く生まれていれば織田、武田、上杉といった戦国の渦に巻き込まれ、後の今も領民や人々に慕われる仙台藩の名君としての顔が見られたかどうかはわからない。彼は戦国の世もすっかり遠くなった1636年、その波乱の生涯を閉じる。享年70歳。ときに3代将軍家光の治世であった。