滝廉太郎の合唱組曲『四季』は「春」「納涼」「月」「冬」からなる組歌で,滝廉太郎数え22歳のときの作曲で,邦人が作曲したはじめての合唱曲である.これは滝驚異の年のはじまりで,この曲を初めとし,『荒城の月』,『箱根八里』なと,次々と名曲を発表する.
この組曲に刺激を受け,山田耕筰は『月』の編曲版『秋の月』を作り,三善晃は合唱組曲: 童声・混声合唱と2台のピアノのための『日本の四季~瀧廉太郎の作品による』(1998) を作曲した.
なお譜面は大分県教育庁文化課編『大分県先哲叢書 滝廉太郎 資料集』(大分県教育委員会,1994)(非買品)から借用した.記して感謝する.
緒言
近来音楽は、著しき進歩発達をなし、歌曲の作世に顕はれたるもの少し
とせず。然れども、是等多くは通常音楽の普及伝播を旨とせる学校唱
歌にして、之より程度の高きものは極めて少し、其稍高尚なるものに至
りては、皆西洋の歌曲を採り、之が歌詞に代ふるに我歌詞を以てし、単に
字句の数を割当るに止まるが故に、多くは原曲の妙味を害(そこな)ふに至る。
中には頗(すこぶ)る其原曲の声調に合へるものなきにしもあらずと雖も、素よ
り変則の仕方なれば、これを以て完美したりと称し難き事は何人も承
知する所なり。余や敢て其欠を補ふの任に当るに足らずと雖も、常に
此事を遺憾とするが故に、これ迄研究せし結果、即我歌詞に基きて作曲
したるものゝ内、二三を公にし、以て此道に資する所あらんとす。幸に
先輩識者の是正を賜はるあらば、余の幸栄之に過ぎざるなり。明治三十三年八月 瀧 廉太郎
目次
① 花 (武島 又次郎 作歌)
② 納涼 (東 久米子 作歌)
③ 月 (瀧 廉太郎 作歌)
④ 雪 (中村秋香 作歌)
① 花 (武島 又次郎 作歌)
一 春のうらゝの隅田川 のぼりくだりの船人が
櫂のしづくも花と散る ながめを何にたとふべき
二 見ずやあけぼの露浴びて われにもの言ふ桜木を
見ずや夕ぐれ手をのべて われさしまねく青柳を
三 錦おりなす長堤に くるればのぼるおぼろ月
げに一刻も千金の ながめを何にたとふべき
歌唱は
滝廉太郎の♪花♪
http://www.youtube.com/watch?v=tAVMvFIVqeY
英訳版は
Near the River in the Spring ~Hana~ Greg Irwin 「花 」グレッグ・アーウィン
http://www.youtube.com/watch?v=SGsXJ047dCM
② 納涼 (東 久米子 作歌)
一 ひるまのあつさの なごり見せて
ほのほぞもえたつ ゆふべの雲に
くれなゐそめなす 入日(いるひ)のかげ
波間に落つるや 沖もくれぬ
やけたるまさご路 いつかひえて
しほかぜ涼しく 渡る磯を
二 ものすそかゝげて ひとり行けば
よせ来るしらなみ 足をおそふ
すゞみに来しかひ ありそ海の
波にも戯れ 月にうたひ
更け行く夜さへ わすれはてゝ
遊ぶもたのしや 夏のうみべ
音源は
瀧廉太郎『納涼』 Rentaro TAKI “Noryo” (Summer Evening Beach) from “Shiki” (The Four Seasons)
http://www.youtube.com/watch?v=qqh9KstmAFY
③ 月 (瀧 廉太郎 作歌)
ひかりはいつも かはらぬものを
ことさらあきの 月のかげは
などか人に ものを思はする
などかひとに ものを思はする
あゝなくむしも おなじこゝろか
あゝなく虫も おなじこゝろか
こゑのかなしき
歌唱は:
<混声四部合唱「四季」から「月」>~ 中村邦子(S)中村浩子(Ms)中村健(T)平野忠彦(Br)三浦洋一(p)
http://emuzu-2.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_670e.html
山田耕筰編曲版は
小川明子/瀧廉太郎/秋の月 Akiko OGAWA sings Rentaro TAKI, “Aki no Tsuki”
http://www.youtube.com/watch?v=BnpQQ63Lmoc
④ 雪(中村秋香 作歌)
一夜のほどに 野も山も
宮も藁屋も おしなべて
白金もてこそ 包まれにけれ
白珠もてこそ 飾られにけれ
まばゆき光や 麗しき景色や
あはれ神の仕業(しわざ)ぞ 神の仕業ぞ
あやしき
歌唱は
小川明子/瀧廉太郎/雪 Akiko OGAWA sings Rentaro TAKI, “Yuki”
http://www.youtube.com/watch?v=Os7tLqcQRag