楔形文字解読講座〜アッカド語(バビロニア語)を中心に〜

楔形文字が読めたらステキだと思いませんか?

壁画に書いてある古代文字を解読できたらうれしいでしょう。

そんな特技を身につければ、博物館のスターになれること間違いなし。

一緒にお勉強していきましょう。

 

1. 楔形(くさびがた)文字を知っていますか?

2. 楔形文字の成り立ち

3. 文字と言語

4. 名前を書いてみよう

5. 粘土板を作ってみよう

6. アッカド語(バビロニア語)とは

7. 楔形文字を読むための4つのステップ

8. 発音と音節

9. ルートを探そう

番外編 サインリストを開いてみよう

 

 

1. 楔形(くさびがた)文字を知っていますか?

楔形文字はこんな文字です。いわゆる古代文字の一種ですね。

 手書きなんできったなくてすみません。

古代文字と聞くとつい、エジプトの象形文字だー、ヒエログリフだー、ロゼッタストーンだーなんて言う人が多いんですが、この文字はエジプトの文字とは全く別のものです。象形文字でもありません。

一説によると楔形文字はエジプトのヒエログリフよりも古いらしいんですが、その辺ははっきりとしたことはわからないそうです。

 

楔形文字は、今から5000年以上前にメソポタミアから広まり、その後およそ3000年もの間にわたって古代中近東全域で使われ続けました。

パッと見は三角と棒のかたまりですが、これでちゃんと文字になってるんですよ。

見た目がくさびに似ていることから「楔形文字」との名がついたんですが、「楔形」という名前だけ覚えてれば、由来はそんなに気にしなくて良いと思います。

だってまずあたしは「くさび」が何なのか知らないし、これを見て「あら、この文字くさびに似てるわぁ!」なんて言ってる人を実際には見たこと無いもん(笑)

くさびってのはV字型の何かの道具らしいんですけど、まぁ、とりあえずこの文字は三角と棒のかたまりってことですよ。

くどいようですけど、象形文字ではありません。

 「そうは言うけど、これだって昔は象形文字だったんじゃないの?」

「どうして三角と棒のかたまりなの?」

ということの説明を次の章でします。  

2. 楔形文字の成り立ち

そう、昔はメソポタミアでも象形文字を使っていました。と言ってもエジプトのヒエログリフとは全く別物で(くどい)象形文字 = 絵文字 と思ってもらえればわかりやすいかと。例えば、「牛」という単語をあらわすのに牛の頭を描いたり、「食べ物」をあらわすのにお茶 碗の絵を描いたりと、そういうことです。楔形文字が使われ始めたのは今から約5000年前、と書きましたが、こういった絵文字や数字だけなら更に1000年近くさかのぼり ます。

たいてい、楔形文字は粘土の塊の表面にアシの筆で書かれます。この筆は先を削って角を作ってあり、その角を埋め込む様にして筆を押し当てるので、書かれた文字も三角になるんです。粘土と割り箸で実際に自分でやってみるとわかりやすいですよ。

チグリス河とユーフラテス河。2つの大河にはさまれたメソポタミア地方では、昔から粘土は豊富にとれました。初めのうちは絵文字がその粘土に描かれていたんですが、粘土の表面に植物の茎で細かい絵を描くのはなかなか難しいですからね、次第に縦、横、斜めの線の組み合わせだけで言葉を表せるよう、形式化、簡略化されていったのです。↓こんな風に。

漢字も似たようなもんですよねー。「山」とか「月」とか。あれだってはじめは山とか三日 月とか絵だったものが描きやすい様に段々と形を変えて、今使われているような字になった んですよね。それと同じことですよ。↓こんなやつね。

また記録する内容が複雑になっていくにつれて、絵と数字だけでは表現しきれなくなったことも事実です。例えば、ある粘土板に牛の顔と5という数字が記されていたとしましょう。それが「牛5頭」を表しているのはすぐにわかっても、その牛がどうなったのか、売り買いされたのか、はたまた逃げ出したのか、これだけではわかりませんね。

ですから、より正確な記録を残す為には「牛5頭」という単語だけではなく、「牛5頭を買い取った」という文章を記録する必要が出てきます。そこでメソポタミアの文字は、単なる絵文字から難解な言語を書き表すことのできる音節文字へと大きく発展していったわけですよ。

もうひとつ、くさび形文字が発展していく過程で大きく変わったことがあります。それは、文字の向き。上の図を見てもらえばわかると思いますが、初めは完全に絵だったものがくさび形(三角と棒のかたまり)になり、最後にはよりいっそうシンプルに、そしてなぜか時計回りに90度回転していますね。

これは文章を書く方向自体が変わった為なんですよ。昔は、国語の教科書みたいに縦書きで右から左へ書いてたらしいです。それがある時期からは、英語の教科書みたいに左から右へ横書きで書くようになったんです。それと同時に粘土板の形も横長から縦長に変わっていきました。

どうして向きが変わったのか、正確な理由はわかりません。でもね、例えば国語のノートに濃い鉛筆で作文を書いてるのを想像してみて下さい。特に右利きの方、既に書いた部分と鉛筆を持つ手がこすれあってノートも手も黒くなっちゃった、なんてことあるでしょう? 一説によると、文字の向き文章を書く方向が変わったのは粘土板でも似たようなことがあったからじゃないかって言われてるんです。文字を書きながら筆を持つ手で前に書いた文字をうっかり押しつぶしちゃった、なんてことが頻繁に起こってとっても不便だった。だから左から右に書くようにしたんじゃないかって、ね。

でも学者さん達がいろいろ実験してみたら、いくらやわらか粘土と言えど、一旦刻み込んだ文字を読めなくなるほどきれいに消すのは一苦労だったんですって。だから、手がちょっとこすれたくらいで字が消えちゃったりすることはない、つまりは、文字の向きが変わったのはそんな理由じゃない、という反対意見が出て結局これは謎のままです。

3. 文字と言語

ところで、文字と言語の違いって何?音節文字っていったいどんな文字?ということが気になりますね。

「文字」と「言語」は違います。例えて言うなら、「アルファベット」と「英語」は違うという事です。アルファベットが、英語以外にもドイツ語やスペイン語で使われているように、楔形文字もいろいろな言語で使われているんです。例えばシュメール語、アッカド語、ヒッタイト語、フルリ語、ウラルトゥ語、エラム語、エブラ語、ウガリット語、古代ペルシャ語など。

てなわけですから、「楔形文字を読む」とは言っても文字を読むだけではなく、書かれている言語の文法まで知ってる必要があります。いゃはゃ、何ともめんどくさいですねぇー(笑)

このサイトでは、主にアッカド語を紹介していこうと思います。アッカド語は、古代メソポタミアの国際共通語で、バビロニアやアッシリアだけでなくヒッタイトやエジプトまで、外交文書はほとんどがこのアッカド語で書かれています。

有名どころでは、ハンムラビ法典(「目には目を」ってヤツですね)やアッシリアの壁画の碑文なんかもアッカド語で書かれているので、コレが読めるようになればかなり楽しいんじゃないかと。というわけで、この先はアッカド語を中心にお話を進めていきましょう。

4. 名前を書いてみよう

 楔形文字で自分の名前を書いてみましょう。

がんばってかな一覧表を作ってみました。

 

例:試しに「カンリニン」って書いてみました。

さて、小難しい解説をいくつか加えます。

①基本的に楔形文字は音節文字です。音節文字については文法に入ってから詳しくお話しするとして、ここでは詳しい解説は避けておきましょうね。

②ここで紹介する楔形文字にはオ段がありません。ですので、モモコさんやトモロヲさんなど名前にオ段の文字が含まれる方は近い文字で代用してください。「ムムク」とかね。

③オ段の他にも無い文字がたくさんありますねー。これもまた別の文字で代用してください。とは言っても、上の表には書いてない文字があるんで(「しゅ」とか)「私の名前どう書くの?」なんて質問ありましたら、受け付けますョ。

ちなみに、楔形文字(ここで習うのは主にアッカド語)にはどんな発音があるのかそれもまたあとでお話することにしましょう。

 

④かな表を見ると、同じ文字が何度も出てくるところがありますね。例えば「き」と「け」、「り」と「れ」など。これは、ひとつの文字にたくさんの読みがあるということなんです。例によって漢字に例えると、同じ「気」という漢字でも「気持ち」と「気配」では「き」「け」と読みも変わりますね。それと同じことが、楔形文字にも起こるんです。どの読み方をすれば良いのかは、前後の文字や文章の流れなどから臨機応変に対応します。

それとは逆に、たくさんの文字が同じ読み方をすることもあり、そのためにそれぞれの文字の読みには番号がついてるんですが、これは実際に原文を読まないことには説明をきいてもわかりにくいでしょう。というわけで、ここでは聞き流しちゃって下さい。

⑤上の例「カンリニン」を見てください。一番最初の文字は、かな表には載っていませんね。この文字は限定詞といって、後に続く単語が何を表すのかを示す記号です。

カンリニン(あたし)は女性なので、例には女性名を示す記号がついています。人名を示す記号は、男性用、女性用の2種類あります。名前を書く時に、名前の直前にこれらの記号を入れると、それっぽく見えてかっこいいです。

5. 粘土板を作ってみよう

さてさて、名前を書けるようになったことですし今度は粘土板の上に文字を書いてみましょう。 

用意する物はたったの2つだけです。

粘土と割り箸。さぁ、準備が出来たら早速はじめましょう。

① 粘土の形を整える

ちょっとコネコネして柔らかくしてから図のような平べったい長方形にします。

扱いやすいサイズは、大きすぎず小さすぎず掌にすっぽり収まるくらいがちょうど良いでしょう。

利き手に割り箸、反対の手に粘土板を持ちます。

 

 ② 縦の線を書く

割り箸の先は四角になってますよね。

そのうちのひとつの角を粘土に埋め込むようにして割り箸を押し当てます。 

 

③ 横の線を書く

縦の線と同じ要領で今度は割り箸を横にして押し当てます。

こんな跡が出来たら成功です。

④ 斜めの線を書く

これも要領は同じなんですが縦横に比べると、斜めはちょっと難しめです。

上手く出来ないときは、粘土板を斜めに傾けて普通に縦横の線を書く、という手もありですね。

⑤ 文字を書く

縦、横、斜めの線が書ける様になったらその3種を組み合わせて文字を書きましょう。

上のかな表を参考にして、どの線が縦、どれが横線、どこが斜めかよーく見ながら書いてみてください。

慣れてくると、こんなのが作れます。

上手に出来たら、友達にプレゼントしましょう。

こんな色の粘土板も作ってみました。

この粘土板、友達に贈ろうと思ってわざわざ手紙風の文面にして作ったのに宛名の書き方を間違えちゃいました。

作り直してから贈ります。

 いかがでしたでしょうか。前回と今回を通して、楔形文字がどんな物か大体わかりましたね。

6. アッカド語(バビロニア語)とは

ここから先は本格的に「読む」段階に入っていきます。次回からは古期バビロニア語(アッカド語)の文法の解説を始めるわけですが、その前にアッカド語について少しお話しましょう。

アッカド語は紀元前およそ2300年頃に栄えたアッカド帝国の言葉で、アラビア語やヘブライ語と同じセム語族に分類されます。

アッカド帝国が拡大すると共にアッカド語も各地に広まり、帝国が滅びた後もおよそ2000年もの間、国際共通語として古代オリエント全域で使われていました。

主にバビロニアやアッシリアで母国語として話されていた為、バビロニア語、アッシリア語と呼ばれたりもしますが、その総称としてアッカド語と呼ぶのが一般的です。

日本語に様々な方言や訛りがあったり、時代によって古語と現代語、歴史的仮名遣いや現代仮名遣いがあったりする様に、アッカド語も時代や場所によって多少違ってきます。主な方言をまとめると↓こんな感じです。

紀元前 北部 南部
 2600-2000年 古期アッカド語
 2000-1500年 古期アッシリア語 古期バビロニア語
 1500-1000年 中期アッシリア語 中期バビロニア語
 1000-600年 新期アッシリア語 新期バビロニア語
 600-100年 後期バビロニア語

 

 ひと言にアッカド語といっても、いろんな方言があるんですね。この他にもヒッタイトやウガリットなど、アッカド語を母国語としない国で書かれたちょっと変わったアッカド語なんかもあります。

そのいろいろある中で、まずは古期バビロニア語から始めます。というのも、古期バビロニア語の文法はとても規則的で覚えやすいからなんです。

7. 楔形文字を読むための4つのステップ

さてさて、ついにここまで来ちゃいました。ここからは早速アッカド語を「読む」段階に入るわけなんですが、読むためにはまず文法をやらなきゃならなりません。

ここを乗り越えたときの、ハンムラビ法典が読めた時の感動は想像以上に大きいです。ラピュタ文字を読みながら「読める、読めるぞほほぉー!」って言ってたムスカの気持ちが良くわかります。

楔形文字を読むための4つのステップということですが、楔形文字から現代語に訳すまでには四つの段階を踏みます。その四つの段階は以下の通り。

 

① 楔形文字を見る

 

まずは楔形文字ですよね。

これがないとなにも始まりません。

②トランスリタレーション(字訳)する

 

a-na SAL.LUGAL

 

①の楔形文字を一文字ずつアルファベットに書きなおしたものです。

第4回のかな表を見ると、4文字中3文字はわかりますね。

1文字目は“a”2文字目は“na”3文字目は“SAL”4文字目は“LUGAL”を表し、それをアルファベットではこういう具合に書き表すんです。

 

この作業、専門用語では「トランスリタレーション」や「字訳」なんて呼ばれてると思うんですが、ここではそんな難しい話はしなくてもいいですよね。

最初の二文字が小文字なのに対して、後の二文字は大文字で書いてあります。これは小文字で表されている文字と大文字で表されている文字ではその役割が違うからなんですよ。

“a”と“na”は音節文字。「ア」「ナ」という発音を表す、言わば、ひらがな的役割です。それに対して“SAL”と“LUGAL”は表意文字。発音ではなく特定の意味を持つ文字で、漢字と似た役割を果たしています。

例えば「あ」というひらがなは「ア」という発音を表す以外、文字そのものには特別な意味はありませんよね。それに対して「家」という漢字は、文字そのものに「家」という意味があり、前後に付く文字によって「イエ」「ウチ」「カ」など読みに変化が出てきますが、「実家」「家柄」「本家」など、読み方はいろいろと変わっても「家」というそもそもの意味自体にさほどの変化はありません。

そういった漢字の様な役割を果たす文字のことをロゴグラムと呼び、この第二段階では大文字のアルファベットで書き表されます。ここでは“SAL”は「女」を、“LUGAL”は「王」を意味し、二つを合わせて「女王」という意味になります。

③ トランスクリプション(ノーマライゼーション)する

第二段階で、小文字はひらがな、大文字は漢字の役割だといいました。じゃぁ第三段階ではふりがなを振ってわかりやすくしちゃいましょう。そしてロゴグラムに読み仮名をふると同時に、一文字ずつ別々に書かれていた文字をつなげて単語を作る作業をします。簡単に言うと、文字を話し言葉に直す作業です。

専門用語では「トランスクリプション」「ノーマライゼーション」と言います。日本語ではなんて言うのか、後で調べておきますね。でもまぁ、難しい話はなるべく避けて通りましょう。

まず一つ目の単語は、“a-na”とハイフンで繋がれていた二文字を組み合わせて“ana”という前置詞に“SAL.LUGAL”は組み合わせて“sharratim”という名詞になります。

④ 現代語訳する

 『女王へ』

最終段階はもちろん現代語訳です。

“ana”は「~へ、~に」などの意、“sharratim”は「女王」の意。二つの単語を組み合わせて「女王へ」こういう初歩的な訳って、中学の頃の英語の授業を思い出しますね。

 

意味を知る為には辞書を引く (第四段階)
辞書を引くには単語の読みがわからないといけない (第三段階)
単語の読みを知る為にはふりがなを振る (第二段階)
その前に楔形文字をアルファベットに直さなきゃ (第一段階)

こんなかんじでしょうね。

というわけですので、面倒くさいようですけどこの4つのステップをきちんと踏むことは楔形文字を読む上ではとても重要です。

特に文法は、文法を知ってると知らないとでは文字の読める度合いが大幅に変わってきますから、文法がちょっとわかるだけで、あの三角と棒のかたまりの変な文字が急にちゃんとした文章に見えてくるんだから、不思議です。

8. 発音と音節

アッカド語は死語(もはや使われていない言語)です。ですから、文字の読みや単語の発音は、同じセム語族の言語(アラビア語、ヘブライ語など)を基に復元されたものだということをまず最初に覚えておいてください。

 

*母音*

アッカド語にはア、イ、ウ、エと四種類の母音があります。母音にはそれぞれ短音と長音があって、文字通りそれぞれ短い音(ア、イ、ウ、エ)と長い音(アー、イー、ウー、エー)のことを言います。

「この母音は長いよ」というのを表す記号をアクセントと言います。上の表を見てわかるように、アクセントには真っ直ぐのもの(-)と三角のもの(^)があり、^は-よりもさらに長い音をあらわします。-はマクロン、^は曲折アクセントなどと呼ばれるようですが、ここはわかりやすく真っ直ぐのやつ(-)と三角のやつ(^)でいいですかね?

*子音*

アッカド語の子音は以下の通りです。

アルファベットを知っていればほとんどわかると思うのですが、ちょっと見覚えのないようなものには説明を加えておきましょう。

ちなみに、この中にはフォントの関係で表記できない文字もいくつか含まれてますので、これからここで使っていく代用としての表記の載せておきます。

 

 

 子音  名前  発音  表記 
 アレフ  声門閉鎖音って言うらしいんですが
 ここでは無視することにします
 ヘット  ドイツ語やスコットランド語の“ch”
 アラビア語やペルシャ語の“kh”の発音です
 たんを吐くような、喉の奥から吐き出すようなハ行 
h
 ツァーディー   ローマ字でいう“ts”の発音
 つまりツァ、ツィ、ツ、ツェ、ツォです
ts
 シン  ローマ字でいう“sh”の発音
 シャ、シ、シュ、シェ、ショです
sh
 テット  普通のtよりもちょっと強めのtです tt

 

‘,w,y は『弱子音』と呼ばれていて、これらが含まれる語には要注意なのですが、難しい話は先延ばしにしときましょうね。

*音節*

全ての単語は音節に区切ることが出来ます。アッカド語の音節は以下の二通り。

① 子音 + 母音 (ka、si、nuなど)
② 子音 + 母音 + 子音 (qer、mut、sagなど)

(例) kalbu(犬) → kal ② + bu ①
damqam(美しい) → dam ② + qam ②

では、次の語ではどうなるでしょうか。

eqlum (畑)

音節は①も②も子音から始まることになっています。でもこの単語の頭文字は母音ですね。これは頭文字”e”の前に「見えない子音」が隠れてるからなんですよ。そうです。あの要注意因子、弱子音です。

たいていの場合、弱子音は「見えない子音」として隠れています。ですから、「あれ、おかしいなー。音節①にも②にも当てはまらないなー」と思ったら、そこに弱子音を補ってあげてください。上の例の場合は”e”の前にアレフが入ります。

‘eqlum → ‘eq ② + lum ②

じゃぁ、これはどうですか。。

ekallum (宮殿)

もうわかりますね。同じようにアレフを補うんですよ。

‘ekallum → ‘e ① + kal ② + lum ②

 

*まとめ*

・母音は四つ、アクセントは長さによって二種類
・子音は三つの弱子音を含めて二十個
・音節は①子+母、②子+母+子の二種類
・①にも②にも当てはまらない時は弱子音が隠れている 

番外編 サインリストを開いてみよう

くさび形文字の勉強をするのに「サインリスト」というものがとっても役に立ちます。サインリストとはその名の通りサイン(文字)のリストで、まぁ例によって漢字に置き換えるなら漢和辞典ってとこですかね。一文字ずつの読みと意味が細かく記されてます。また、第2回でお話した様にくさび形文字は元は象形文字(絵文字)でしたから、絵文字から最もシンプルな形になるまでの時代ごとの文字のバリエーションも載ってます。

これがね、見てると楽しいんですよ。なんつーか、古代メソポタミア人の表現力って…って思わず苦笑しちゃうような。ま、百聞は一見に如かずって言いますから、とにかく見てやってください。図は左から順に象形文字、最も新しい(シンプルな)楔形文字、読み、です。

 

5000年前の鳥はきっとこんなんだったんでしょうね。

ロバ 

 もう、どっちが顔なんだかわかんないです。

キツネ

キツネを表しています。

調べてみたら「犯罪者」って意味もあるみたいです。

どこの国でも、キツネは悪者扱いなんですね。

現代でぶたの絵と言えば、あのブタっ鼻は必須ですがこの時代は鼻よりも頭の毛の方が重要だったとみえます。

コレはヒドイ。

ビール

にんじんみたいですが、土器(壺)の中で発酵させて作るもの、という印でしょう。

ナツメヤシ

シンプルですね。

食べる

 お茶碗でかき込んでる感じですね。

怒り、怒る

頭から何か出ちゃってます。あるいは毛が逆立っちゃってるんですかね。