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五輪書異本集 水之巻

この水之巻では、異本二十三本を提示する。すなわち、筑前系諸本として、吉田家本・中山文庫本・伊丹家甲乙本、加えて越後系の、近藤家甲本及び乙本・石井家本・伊藤家本・神田家本・猿子家本・赤見家丙本・澤渡家本を掲載する。また、肥後系諸本としては、楠家本・細川家本・丸岡家本・富永家本・常武堂本・田村家本・山岡鉄舟本、円明流系統では、狩野文庫本・多田家本・稼堂文庫本を掲載し、その他に大瀧家本を収録する。

 


1 水之巻 序
2 兵法心持の事
3 兵法身なりの事
4 兵法の眼付と云事
5 太刀の持様の事
6 足つかひの事
7 五方の搆の事
8 太刀の道と云事
9 五つの表、第一の搆 中段
10 五つの表、第二の搆 上段
11 五つの表、第三の搆 下段
12 五つの表、第四の搆 左脇
13 五つの表、第五の搆 右脇
14 有搆無搆の教の事
15 一拍子の打の事
16 二のこしの拍子の事
17 無念無相の打と云事
18 流水の打と云事
19 縁のあたりと云事 20 石火のあたりと云事
21 紅葉の打と云事
22 太刀にかはる身と云事
23 打とあたると云事
24 秋猴〔しゅうこう〕の身と云事
25 漆膠〔しっこう〕の身と云事
26 たけくらべと云事
27 ねばりをかくると云事
28 身のあたりと云事
29 三つのうけの事
30 面〔おもて〕をさすと云事
31 心〔むね〕をさすと云事
32 喝咄〔かつとつ〕と云事
33 はりうけと云事
34 多敵の位の事
35 打あひの利の事
36 一つの打と云事
37 直通〔じきづう〕の位と云事
38 水之巻 後書

 

  1 水之巻 序

 【吉田家本】

兵法二天一流の心、水を本として、利方の法をおこなふに依て、水之巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何もこまやかに、心のまゝにハ書分がたし。たとへ言葉ハつゞかざると云とも、利ハおのずから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\一字/\にて思案すべし。おほかたにおもひてハ、道の違事多かるべし。兵法の利におゐてハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と萬人との合戦の利に心得、大きに見立所、肝要也。此道にかぎつて、すこしなりとも道を違、道のまよひ有てハ、悪道におつるもの也。此書付斗をミて、兵法の道に及事にハ非ず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付を見ると思ハず、習とおもはず、にせものにせずして、則、我こゝろより見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【近藤家甲本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法をおこなふに依て、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何れもこまやかに、心のまゝにハ書分がたし。たとへ言葉はつゞかざるといふとも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大かたに思ひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利におゐてハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見立所、肝要也。此道にかぎつて、すこしなりとも道を違、道の迷ひ有てハ、悪道におつるもの也。此書付斗を見て、兵法の道に及事にハあらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付を見ると思ハず、習とおもハず、にせものにせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【近藤家乙本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法をおこなふに依て、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何れもこまやかに、心のまゝにハ書分がたし。たとへ言葉はつゞかざるといふとも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大かたにおもひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利におゐてハ、一人と壱人との勝負の様に書付たる所なりとも、萬人と万人との合戦の利に心得、大きに見立所、肝要也。此道にかぎつて、すこしなりとも道を違、道の迷ひ有てハ、悪道におつるもの也。此書付斗を見て、兵法の道に及事にはあらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付を見ると思ハず、習ふとおもハず、にせものにせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【中山文庫本】

    水之巻 兵法二天一流の心、水を本として利方の法をおこなふに依て、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すものなり。此道、何もこまやかに、心の侭にハ書分がたし。たとへ言葉ハつゞかざると云とも、利ハをのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。おほかたに於てハ、道の違事多かるべし。兵法の利に於てハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所也とも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見立所、肝要也。此道にかぎつて、少なりとも道を違、道のまよひ有てハ、悪道におつるもの也。此書付斗をみて、兵法の道に及事には非ず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付をミると思ず、習と思はず、にせものにせずして、則、わが心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【赤見家丙本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法ををこなふに依て、水之巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何もこまやかに心のまゝには書分がたし。たとへ言葉はつゞかざるといふとも、利はおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大かたにおもひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利に於ては、一人と一人との勝負の様に書附たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見立所、肝要也。此道にかぎつて、すこしなりとも道を違、道の迷ひ有ては、悪道におつるもの也。此書附斗を見て、兵法の道に及事に【脱字】あらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書附を見ると思ハず、習ふと思ハず、にせ物にせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【石井家本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法をおこなふに依て、水之巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何れもこまやかに、心のまゝには書分がたし。たとへ言葉はつゞかざるといふとも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大かたに思ひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利に於てハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大に見立所、肝要也。此道にかぎりて、すこしなりとも道を違、道の迷ひありてハ、悪道におつるもの也。此書付斗を見て、兵法の道に及事にハあらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付を見ると思ハず、習ふとおもハず、にせものにせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【伊丹家甲本】

  (書巻欠損により欠落)

 【澤渡家本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法をおこのふに依て、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何もこまやかに心のまゝには書分がたし。たとへ言葉ハつゞかざるといふとも、利はをのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大かたにおもひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利に於てはハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見立所、肝要也。此道にかぎつて、少しなりとも道を違ひ、道の迷ひ有てハ、悪道におつるもの也。此書付斗を見て、兵法の道に及事に【脱字】あらず。此書付に書付たるを、我身に取て、書付を見ると思ハず、習と思ハず、にせ物にせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身【脱字】成て、能々工夫すべし。

 【伊藤家本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法をおこなふに依て、水之巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何れもこまやかに心のまゝにハ書分がたし。たとへ言葉はつゞかざるといふとも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大かたに思ひてハ、道【脱字】違ふ事多かるべし。兵法の利におゐてハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見立所、肝要也。此道にかぎつて、すこしなりとも道を違、道の迷ひ有てハ、悪道におつるもの也。此書付斗を見て、兵法の道に及事にハあらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付を見ると思ハず、習ふとおもハず、にせものにせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【伊丹家乙本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法をおこなふに依て、水之巻として、一流の太刀筋、此書に書顕ものなり。此道、何れもこまやかにこゝろのまゝにハ書わけがたし。たとへことばハつゞかざるといふとも、利はおのづからきこゆべし。此書にかき付たる所、一こと/\、一字/\に【脱字】思案すべし。おふかたにおもひてハ、道の違事おふかるべし。兵法の利におひてハ、一人と一人との勝負の様ニかきつけたるところなりとも、萬人と萬人との合戦の利に心得、大きにミたつる所、肝要なり。この道にかぎつて、少なりとも道を違、道の迷ありては、悪道に落るものなり。此書付ばかりをミて、兵法の道に及事に【脱字】あらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付をミるとおもわず、習とおもわず、にせものにせずして、則、我こゝろよりミ出たる利にして、常に其身になりて、能々工夫すべし。

 【神田家本】

兵法二天一流の心、水を本として利方(の法)をおこなふに依て、水之巻として、一流の太刀筋、此書(に書)顕すもの也。此道、何れもこまやかに心のまゝには書分がたし。たとへ言葉はつゞかざるといふとも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大かたに思ひては、道の違ふ事多かるべし。兵法の利に於てハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大に見立所、肝要也。此道にかぎりて、すこしなりとも道を違ひ、道の迷ひありてハ、悪道におつるもの也。此書付斗を見て、兵法の道に及事にハあらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付を見ると思ハず、習ふとおもハず、にせものにせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、(能々)工夫すべし。

 【猿子家本】

兵法二天一流の心、水を本として利方の法を行ふに依て、水之巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、何れもこまやかに。心のまゝには書分がたし。假令言葉はつゞかざるといふとも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書記たる所、一こと/\、一字/\にて思案すべし。大方に思ひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利に於てハ、一人と一人との勝負の様に書付たる處なり共、万人と万人との合戦の利に心得、大に見立所、肝要也。此道にかぎりて、少しなりとも道を違、道の迷ひありてハ、悪道に落るもの也。此書付斗りを見て、兵法の道に及事にはあらず。此書【脱字】かき記たるを、我身に取て、書【脱字】を見ると思ハず、習ふと思ハず、贋せものにせずして、則、我心より見【脱字】たる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【楠家本】

兵法二天一流の心、水を本として、利方の法をおこなふによつて、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、いづれもこまやかに、心のまゝにハ書わけがたし。縦、ことばゝつゞかさるといふとも、利ハをのづからきこゆべし。此書にかきつけたる處、一こと/\一字/\にて思案すべし。大かたにおもひてハ、道のちがふ事おゝかるべし。兵法の利におゐて【脱字】、一人と一人との勝負のやうに書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見たつる所、肝要也。此道にかぎつて、少なりとも道を見ちがへ、道のまよひありてハ、悪道へおつるもの也。此書付ばかりをミて、兵法の道にハ及ことに【脱字】あらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付をミるとおもわず、ならふとおもはず、にせ物にせずして、則、わが心より見出したる利にして、常に其身になつて、よく/\工夫すべし。

 【細川家本】

兵法二天一流の心、水を本として、利方の法をおこなふによつて、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、いづれもこまやかに、心の儘にハかきわけがたし。縦、ことばゝつゞかざるといふとも、利はおのづからきこゆべし。此書にかきつけたる所、一こと/\一字々にて思案すべし。大形におもひてハ、道のちがふ事多かるべし。兵法の利におゐて【脱字】、一人と一人との勝負のやうに書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見たつる所、肝要也。此道にかぎつて、少なり共道を見ちがへ、道のまよひありては、悪道へ落るもの也。此書付ばかりを見て、兵法の道には及事に【脱字】あらず。此書にかき付たるを、我身にとつて、書付を見るとおもハず、ならふとおもハず、にせ物にせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身になつて、能々工夫すべし。

 【丸岡家本】

二天一流兵法書水之巻 兵法二天一流の心、水を本として、利方の法を行ふによりて、水の巻として、一流の太刀すぢ、此書に書著者也。此道、何もこまやかに、心のまゝには書分がたし。假令、詞は不續といふとも、理は自聞ゆべし。此書に書付たる所、一事/\一字/\にて思案すべし。大かたにおもひては、道の違ふ事多かるべし。兵法の理において【脱字】、一人と/\の勝負のやうに書付たる所なりとも、万人と/\との合戦の理に心得、大キに見立る所、肝要也。此道に限りて、少なりとも道を見ちがへ、道の迷ひありては、悪道へおつるもの也。此書付ばかりを見て、兵法の道には及ぶ事に【脱字】あらず。此書に書付たるを、我身に取て、書付を見ると思ハず、習ふと思ハず、似せ物にせずして、則、我心より見出したる理ニして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【富永家本】

    水 兵法二天一流の心、水を本として、利方の法を行に依【脱字】、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書あらわす物也。此道、何も細かに、【脱字*****】書分がたし。縦、言葉ハつゞかさるといふとも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書付たる処、一ツ/\一字/\にて思案すべし。大かたに思ひてハ、道の受ふ事多かるべし。兵法の利におゐて【脱字】、一人と一人との勝負のやうに書付たる處なりとも、萬人と萬人との合戦の利に心得、大きに見立る處、肝要なり。此道にかぎつて、少成共道を見違へ、道のまよひ有てハ、悪道へ落るものなり。此書付斗を見て兵法の道に及ぶ事ニハ非ず。此書に書付たるを、我身ニとつて、書付を見るとおもハず、習ふとおもハず、にせ物にせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身ニ成て、能々工夫すべし。

 【常武堂本】

   兵法五輪書水之巻 兵法二天一流の心、水を本として、利方の法をおこなふによつて、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。此道、いづれもこまやかに、心の侭にハかきわけがたし。縦、言葉ハつゞかざるといふとも、利ハおのづからきこゆべし。此書にかきつけたる所、一こと/\一字/\にて思案すべし。大形におもひてハ、道のちがふ事多かるべし。兵法の利に於て【脱字】、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見たつる所、肝要也。此道に限て、少なりとも道を見ちがへ、道のまよひありてハ、悪道へ落るもの也。此書付ばかりを見て、兵法の道には及事に【脱字】あらず。此書にかき付たるを、我身に取て、書付を見るとおもはず、ならふとおもハず、にせ物にせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【田村家本】

 二天一流    水之巻 兵法二天一流ノ心、水ヲ本トシテ、利方ノ法ヲ行フニ依テ、水ノ巻トシテ、一流ノ太刀筋ヲ此書ニカキアラハスモノ也。此道、何モコマヤカニ、心ノ侭ニハ書分ガタシ。縦、コトバヽツヾカズ共、利ハ自ラキコユベシ。此書ニカキ付ル処、一事 々々一字々々ニテ思案スベシ。大カタニヲモヒテハ、道ノタゴウ事多カルベシ。兵法ノ利ニ於【脱字】、一人ト一人トノ勝負ノヤウニ書付タル処也共、万人ト々々ノ合戦ノ利ニ心得、大キニ見立ル処肝要也。此道ニ限テ、少ナリ共道ヲ見違エ、道ノ迷有テハ、悪道エ堕ルモノ也。此書付バカリニテ、兵法ノ道ニハ及【脱字】ニ【脱字】非ズ。此書ニカキ付タルヲ、我身ニ取テ、書付ヲ見ト思ハズ、習フト思ズ、ミセモノニセズシテ、則、吾心ヨリ見出タル利ニシテ、常ニ其身ニナツテ、能々工夫スベシ。

 【狩野文庫本】

    水 兵法二天一流の心、水を本として、利方の法を行ふによツて、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕者也。此道、何も細やかニ、心を儘ニ【脱字】書分がたし。縦、言葉は不継共、利はおのづから聞ゆべし。此書に書付たるところ、一こと/\一字/\にて思案すべし。大形に思ひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利ニおゐて【脱字】、壱人と一人との勝負の樣に書付たる所成共、万人と万人との合戦の利ニ心得、大に見【脱字】る所肝要也。此道にかぎツて、少成共道を見違、道のまよひ有てハ、悪道ニ落るもの也。此書付斗を見て、兵法の道ニハ及【脱字】に【脱字】あらず。此書付に書付たるを、我身ニ取て、書付を見ると不思、習ふと思ハず、似せ物ニせずして、則、我心より見出たる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【多田家本】

二天一流圓明巻之二   水之巻 一 兵法二天一流の心を、水を本として、利方の道を行ふに依て、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕す者也。此道、何も細やかに、心の侭にハ書分がたし。縦、言葉ハつゞかず【脱字】共、利は自ら聞ゆべし。此書に書付たる所、一事【脱字】一字/\にて思案すべし。大形に思ひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利にをひて【脱字】、一人と壱人との勝負の様に書付たる所なりとも、萬人と万人との合戦の利に心得、大きに見立る所、肝要也。此道に限て、少成共道を見違、道の迷ひありてハ、悪道へ落るもの也。此書付斗【脱字】見て、兵法の道に及事に【脱字】あらず。此書付に書附たるを、我身に取て、書附を見ると思ハず、習ふと思はず、似せ物にせずして、則、我こゝろより見出たる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。

 【山岡鉄舟本】

兵法二天一流之心、水ヲ本トシテ、利方ノ法ヲ行ヒ依テ、水ノ巻トシテ、一流ノ太刀筋、此書ニ書顕ス者也。此道、何モコマヤカニ、心ノ侭ニ【脱字】書分ケ難シ。縦ヒ、辞ハ續カズト云共、利ハ自ラ聞ユベシ。此書ニ書分タル所、一事々々一字々々ニシテ思案スベシ。大方ニ思フテハ、道ノ違事多カルベシ。兵法ノ利ニ於テ【脱字】、一人々々ノ勝負ノ様ニ書付タル所ナリ共、萬人ト万人トノ合戦ノ利ニ心得、大ニ見立ル処肝要也。此道ニ限テ、少シ成共道ヲ見違、道ノ迷有テハ、悪道ヘ落ル者也。此書付計リヲ見テ、兵法ノ道ニハ及ブ事ニ非ズ。此書ニ書付タルヲ、我身ニ取テ、書付ヲ見ルト思ハズ、習ト思ハズ、似セ物ニセズシテ、則、我心ヨリ【脱字】出タル利ニシテ、常ニ其身ニ成テ、能々工夫スベシ。

 【稼堂文庫本】

    水之巻 一 兵法二天一流の心、水を本として、利方の法を行ふに依て、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕す物也。此道、何れも細かに、心のまゝには書分がたし。假令、言葉は續かざると云共、利は自ら聞ゆべし。此書に書付たる所、【脱字**】一字/\にて思案すべし。大形に思ひては、道の違ふ事多かるべし。兵法の利におひて【脱字】、一人と一人との勝負の様に書付たる所なり共、万人と万人との合戦の利に心得、大きに見立る所、肝要也。此【脱字】に限て、少成共道を見違へ、道の迷有にては、悪道にをつる者也。此書付斗りを見て、兵法の道には及事に【脱字】非ず。此書に書付たるを、我【脱字】に取て、書付を見ると思ハず、習と思はず、にせ物にせずして、則、我心より見出したる利にして、つねに其身に成て、能々工夫すべし。  

 【大瀧家本】

兵法二天一流の心、水を本として、利方の法を行ふに依而、水の巻として、一流の太刀筋を、此書に書顕すもの也。此道、何れも細に、心の侭に【脱字】書わけ難し。縦、言葉はつゞかずとも、理はおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一事/\一字/\にて思案すべし。大形におもひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の理に於ては、壱人と壱人との勝負の様に書付たる所なれとも、万人と万人との今合戦の利に心得、大に見立る所、肝要也。此道に依て、少しなりとも道を見違ひ、道の迷ひありてハ、悪き道へおつるもの也。此書【脱字】ばかりを見て、兵法の道に及ぶ事にハあらず。此書に書付たるを、我身にとりて、書付を見るとおもはず、習ふとおもはず、にせものにせずして、則、我心より見出したる利にして、常に我身になりて、能々工夫あるべきなり。    PageTop    Back   Next 

  2 兵法心持の事

 【吉田家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道におゐて、心の持様ハ、常の心に替事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、こゝろを廣く直にして、きつくひつぱらず、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なるときも、こゝろハしづかならず、何と早き時も、心ハ少もはやからず。心ハ躰につれず、躰ハ心につれず、心に用心して、身には用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず。上の心はよはくとも、底のこゝろを強く、心を人に見分けられざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を残らず知り、大身なるものハ、心にちいさき事を能知りて、大身も小身も、心を直にして、我身のひいきをせざる様に、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵をおくべき也。智恵も心も、ひたとミがく事専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、もの毎の善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵におゐて、とりわきちがふ事、有もの也。戦の場、万事せわしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【近藤家甲本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様は、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、【脱字**************】、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎ【脱字】やうに、能々吟味すべし。静なるときも、心ハしづかならず、何とはやき時も、心は少しもはやからず。心は躰につれず、躰は心につれず。心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心はよハくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を殘らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、ものごとの善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人に少もだまされざるやうにして、後に、兵法の智恵となるこゝろ也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事有物也。戦の場、万事せハしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【近藤家乙本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様は、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なるときも、こゝろハしづかならず、何とはやき時も、心は少しもはやからず。心は躰につれず、躰は心につれず。心に用心して、身には用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心はよハくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を殘らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、ものごとの善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後、兵法の智恵となるこゝろ也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事有物也。戦の場、萬事せわしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【中山文庫本】

一 兵法、心持の事。兵法の道におゐて、心の持様ハ、常の心に替事勿れ。常にも兵法の時にも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬ様に、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なる時も、心ハしづかならず、何と早き時も、心ハ少もはやからず。心ハ躰につれず、躰ハ心につれず、心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心ハよわくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、小身なるものハ、心に大なる事を残らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能知て、大身も小身も心を直にして、我身のひいきをせざる様に、心を持事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとみがく事専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪を知、万の藝能、其道々をわたり、世間の人に少しもだまされざる様にして、後、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事有もの也。戦の場、万事せわしき時なりとも、兵法の道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【赤見家丙本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様ハ、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なるときも、心ハしづかならず、何とはやき時も、心ハ少もはやからず。心ハ躰につれず、躰は心につれず。心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心はよハくとも、底のこゝろを強く、心を人に見分られざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を残らずしり、大身なるものは、心にちいさき事を能しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後、兵法の智恵となるこゝろ也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事有物也。戦の場、萬事せハしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【石井家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様は、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なるときも、こゝろハしづかならず、何とはやき時も、心は少しもはやからず。心は躰につれず、躰は心につれず。心に用心して、身には用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心はよハくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を殘らずしり、大身なるものは、心にちいさき事を能しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、ものごとの善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後(に)兵法の智恵となるこゝろ也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事有物也。戦の場、万事せハしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【伊丹家甲本】

   (前条に続いて一部欠落) に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なる時も、心はしづかならず、何と早き時も、心ハ少もはやからず。心は躰につれず、躰ハ心につれず、心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心はよわくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、小身なるものハ、心に大なる事を残らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能知て、大身も小身も心を直にして、我身のひいきをせざる様に、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵をおべきなり。智恵も心も、ひたとみがく事専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、ものごとの善悪を知、万の藝能、其道々をわたり、世間の人に少もだまされざる様にして、後、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵におゐて、とりわきちがふ事有もの也。戦の場、万事せわしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【澤渡家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様ハ、常の心に替る事なかれ。常にも兵法の時にも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬよふに、心【脱字】まん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なるときも、心はしづかならず、何とはやき時も、心ハ少もはやからず。心は躰につれず、躰は心につれず。心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心ハよハくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、小身なるものハ、心に大きなる事を殘らず知り、大身なるものハ、心にちいさき事【脱字】能々しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいきをせざる様に、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間【脱字】人にすこしもだまされざる様にして、後、兵法の智恵となるこゝろ也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事有物也。戦の場、萬事せハしき時なりとも、兵法の道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【伊藤家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様は、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なるときも、こゝろハしづかならず、何とはやき時も、心は少もはやからず。心は躰につれず、躰は心につれず。心に用心して、身には用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心ハよハくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を残らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、ものごとの善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後に、兵法の智恵となるこゝろ也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事有物也。戦の場、万事せハしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【伊丹家乙本】

一 兵法、心持の事。兵法の道において、心の持様ハ、常の心にかわることなかれ。常にも兵法の時にも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬ様ニ、こゝろをまん中において、こゝろを静にゆるがせて、そのゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬ様ニに、能々吟味すべし。静なるときも、こゝろハしづかならず、何と早きときも、こゝろハ少もはやからず。心は體につれず、體は心につれず、心に用心をして、身にハ用心をせず。心のたらぬことなくして、心も少もあまらせず、上の心はよわくとも、底の心を強く、心を人にミわけられざる様ニして、小身なるものハ、心に大なることを残らず知り、大身なるものハ、こゝろにちいさき事を能知て、大身も小身も心を直にして、我身のひいきをせず様ニ心を持事肝要也。心の内にごらず、廣くして、廣き所ニ智恵をおくべきなり。智恵も心も、ひたとみがくこと専なり。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪を知、萬の藝能、其道/\をわたり、世間の人に少しもだまされざる様にして、後、兵法之智恵と成心也。兵法の智恵におひて、とりわき違事有ものなり。戦の場、萬事せわしきとき也とも、兵法の道理をきわめ、うごきなきこゝろ、よく/\吟味すべし。

 【神田家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様は、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、(心を廣く直にして、きつくひつぱらず)、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なるときも、心はしづかならず、何とはやき時も、心は少しもはやからず。心は躰につれず、躰は心につれず。心に用心して、身には用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心はよハくとも、底の心を強く、心を人に見分られざる様にして、少身なるものは、心に大なる事を殘らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、ものごとの善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後(に)、兵法の智恵となるこゝろ也。兵法【脱字】智恵に於て、とりわきちがふ事有物也。戦の場、万事せハしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【猿子家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道に於て、心の持様ハ、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつはらず、少しもたるまず、心のかたよらぬ様に、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬ様に、能々吟味すべし。静なる時も、こゝろハしづかならず、何とはやき時も、心ハ少もはやからず。心は躰につれず、躰ハ心につれず。心に用心して、身にハ用心【脱字】せず。心のたらぬ事無して、心を少もあまらせず、上の心は弱くとも、底の心【脱字】強く、心を人に見分られざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を残らずしり、大身なるものハ、心に小さき事を能しりて、大身も少身も心を直にして、我身のひいき【脱字】せざる様に、心を持事肝要也。心の内にごらず、廣くして、廣き所に智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとミがく事、専也。智恵をとぎ、天下の利非を弁まへ、惣而ものごとの善悪を知り、万の藝能、其道々を渡り、世間の人に少もだまされざる様にして、後に、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵に於て、取わき違ふ事有もの也。戦の場、万事せわしき時なり共、兵法の道理を極め、動きなき心、能々吟味すべし。

 【楠家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道におゐて、心の持やうハ、つねの心にかはる事なかれ。つねにも兵法の時にも、少もかはらずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中におきて、心を静かにゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうニ、よく/\吟味すべし。静かなる時も、心ハ静かならず、何とはやき時も、心ハ少もはやからず。心ハ躰につれず、躰ハ心につれず、心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず。うへの心ハよハくとも、そこの心をつよく、心を人に見わけられざるやうにして、小身なるものハ、心に大きなる事を残らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能しりて、大身も小身も、心を直にして、わが身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心のうちにごらず、廣くして、ひろき所へ智恵を置べきなり。智恵も心も、ひたとみがくこと専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪をしり、よろづの藝能、其道/\をわたり、せけんの人にすこしもだまされざるやうにして、後、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵におゐて、とりわきちがふ事、あるもの也。戦の場、萬事せはしき時なりとも、兵法の道理をきわめ、うごきなき心、よく/\吟味すべし。

 【細川家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道におゐて、心の持やうハ、常の心に替る事なかれ。常にも兵法の時にも、少もかハらずして、心を広く直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中におきて、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。静なる時も、心は静かならず、何とはやき時も、心は少もはやからず。心は躰につれず、躰は心につれず、心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず。うへの心ハよハくとも、そこの心をつよく、心を人に見わけられざるやうにして、少身なるものは、心に大きなる事を残らずしり、大身なるものハ、心にちいさき事を能しりて、大身も小身も、心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心をもつ事肝要也。心の内にごらず、廣くして、ひろき所へ智恵を置べき也。智恵も心も、ひたとみがく事専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪をしり、よろづの藝能、其道/\をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵におゐて、とりわきちがふ事、有もの也。戦の場、万事せハしき時なりとも、兵法の道理をきわめ、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【丸岡家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道におゐて、心の持やうハ、常の心に替事なかれ。常にも兵法の時にも、少も替らずして、心を廣く直ニして、きつく引ハらず、少もたるまず、心のかたよらぬやうに、心を眞中におきて、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまざるやうに、能々吟味すべし。静なる時も、心は静ならず、何と早き時も、心は少もはやからず。心ハ躰ニつれず、躰は心につれず、心に用心して、身には用心をせず、心のたらぬ事なくして、心を少も餘らせず、上の心はよハくとも、底の心を強ク、心を人に見分られざるやうにして、小身なる者は、心に大なる事を不残しり、大身なる者は、心に小キ事を能知て、大身も小身も、心を直にして、我身のひいきをせざるやうに、心を持こと肝要也。心の中にごらず、廣くして、廣き處へ智恵をおくべき也。智恵も心も、ひたと磨ク事専なり。智恵をとぎ、天下の理非を辨へ、物ごとの善悪を知、萬の藝能、其道々を渡り、世間の人に少もだまされざるやうにして、後、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵におゐて、取分ちがふ事、有ものなり。戦の場、萬事せハしき時なりとも、兵法の道理を極め、動きなき心、能々吟味すべし。

 【富永家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道ニおゐて、心の持様ハ、常の心に易事なかれ。常ニも兵法の時にも、少も不替して、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬ様に、心を【脱字】中におきて、心をしづかにゆるませて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能/\吟味すべし。静かなる時も、心ハしづかならず、何と早きときも、心ハ少もはやからず。心ハ体につれず、体ハ心につれず、心に用心して、身にハ用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせズ。上の心はよわくとも、底の心を強く、心を人に見【脱字】られぬやうにして、小身成者ハ、心に大き【脱字】事を残らず知、大身成者ハ、【脱字】ちいさき事を能知て、大身も小身も、心を直ニして、我身のひゐきをせざるやうに、心を持事肝要なり。心のうちにごらず、廣くして、廣き所へ知恵を可置也。知恵も心も、ひたとみがく事専也。知恵をとぎ、天下の理非をわきまへ、物毎の善悪をしり、萬の藝能、其道【脱字】を渡り、世間の人に少もだまされざるやうにして、後、兵法の知恵と成心なり。兵法の知恵に於て、取わき違事、有物也。戦【脱字】場、萬事せわしき時成とも、兵法の道理を極め、動きなき心、能/\吟味すべし。

 【常武堂本】

一 兵法、心持の事。兵法の道において、心の持様ハ、常の心に替る事なかれ。常にも兵法の時にも、少しも替らずして、心を広く直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬ様に、心をまん中におきて、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬ様に、能々吟味すべし。静なる時も、心ハ静かならず、何とはやき時も、心ハ少もはやからず。心は躰につれず、躰ハ心につれず、心に用心して、身にハ用心【脱字】せず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず。うへの心ハよはくとも、そこの心をつよく、心を人に見わけられざる様にして、少身なるものハ、心に大きなる事を残らずしり、大身なるものハ、心に少き事を能しりて、大身も小身も、心を直にして、我身のひいきをせざる様に、心をもつ事肝要也。心の内にごらず廣くして、ひろき所へ智恵をおくべき也。智恵も心も、ひたとみがく事専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪をしり、よろづの藝能、其道/\をわたり、世間の人にすこしもだまされざる様にして、後、兵法の智恵となる心也。兵法の智恵に於て、とりわきちがふ事、あるもの也。戦の場、万事せはしき時なりとも、兵法の道理をきわめ、うごきなき心、能々吟味すべし。

 【田村家本】

 兵法、心持之事 兵法ノ道ニ於テ、心ノ持ヨウハ、常ノ心ニ替ル事ナシ。常ニモ兵法ノ時ニモ、少モ替ラズシテ、心ヲ廣ク直ニシテ、キツク引ハラズ、少モタルマズ、【脱字】片ヨラヌヨウニ、心ヲマンナカニ於テ、心ヲ静ニユルガセテ、其ユルギノセツナモ、ユルギヤマザルヨウニ、能々吟味スベシ。静ナル時モ、心ハ閑ナラズ、何ト早時モ、心ハ少モ早カラズ、心ハ躰ニツレズ、躰ハ心ニツレズ、コ丶ロニ用心シテ、身ニハ要心【脱字】セズ、心ノタラヌ事ナクシテ、心ヲ少モアマラセズ、ウエノ心ハヨハク共、底ノ心ヲ強、心ヲ人ニ見分ラレザルヤウニシテ、少身ナル者ハ、心ニ大キナル事ヲ残ラズ知リ、大身ナル者ハ、心ニチヒサキ事ヲ能知テ、大身モ少身モ、心ヲ直ニシテ、我身ノヒイキヲセザル故〔ヨウ〕ニ心ヲ持コト肝要也。心ノウチ濁ラズ、廣シテ、廣キ處ニ智恵ヲ置ベキ也。智恵モ心モ、ヒタトミガク事専也。チヱヲトギ、天下ノ利非ヲワキマヘ、物毎ニ善悪ヲシリ、万ノ藝能、其道々々ヲ渡リ、世間ノ人ニ少モダマサ【脱字】ルヨウニシテ、後、兵法ノ智恵トナル心ナリ。兵ホウノチヱニヲヒテ、トリワキチゴウ事有モノ也。戦ノ場、万事セハシキ時ナリ共、兵法ノ道利ヲ極メ、動ナキ心、ヨクヨク吟味スベシ。

 【狩野文庫本】

一 兵法の心持の事。兵法の道におゐて、心の持様ハ、常の心ニ替事なかれ。常ニも兵法の時ニも、少もかわらずして、心を廣く直ニして、きつくひつハらず、少もたるまず、心のかたよらぬやうに、心を真中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎの節ニも、ゆるぎやまぬ樣ニ、能々吟味すべし。静なる時も、心ハ静ならず、何とはやき時も、心ハ少もはやからず、心は躰につれず、躰は心につれず、【脱字】用心して、身ニハ用心せず、心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心ハよわくとも、底の心は強く、心を人に見分られざる様ニして、小身成ものハ、心ニ大なる事を不残知、大身成ものハ、心に少事を克知て、心を、大身も小身も(語順)直にして、我身のひいきをせざる樣ニ心を持事肝要也。心の内にごらず、廣して、廣所え智恵を可置也。智恵も心も、ひたと見かく事専也。智恵をとぎ、天下の理非を弁、物毎の善悪ヲ知、萬の藝能、其道/\を渡、世間の人ニ少もだまされざる樣ニして、後、兵法の智恵と成心なり。兵法の智恵におゐて、取分ケ違ふ事有者なり。戦【脱字】場、万事せわしき時成とも、兵法の道理を究、うごきなき心、克【脱字】吟味すべし。

 【多田家本】

一 兵法の心持の事。兵法の道にをひて、心の持やうハ、常の心に替る事なかれ。常にも兵法の時にも、少も替らずして、こゝろを廣くすなをにして、きつくひつぱらず、少もたるまずして、心のかたよらぬやうに、心を真中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、よく/\吟味すべし。静成時も、心ハ静ならず、何と早き時も、心は少も早からず。心ハ躰につれず、躰は心につれず。心ハ用心して、身には用心【脱字】せず。心のたらぬ事なくして、心を少しも餘らせず、上の心ハ弱く共、底の心は強く、心を人に見分けられざるやうにして、小身成者ハ、心に大き成事を殘らずしり、大身【脱字】者ハ、心にちいさき事を能知て、大身【脱字】小身も心を直にして、我身の贔屓をせざる様に、心を持事肝要也。心の内にごらず、廣くして、廣き所に智恵を置【脱字】。智恵をも心をも、ひたとみがく事専也。智恵をとぎ、天下の理非を弁へ、物毎の善悪をしり、萬の藝能、其道々を渡り、世間の人に少もだまされざるやうにして、後、兵法の智恵と成心なり。兵法の智恵にをひて、取分違ふ事ある事共也。戦の場、萬事せわしき時成共、兵法の道理を極め、動きなき心、能々吟味有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 兵法心持之事。兵法ノ道ニ於テ、心ノ持様ハ、常ノ心ニ替ル事ナカレ。常ニモ兵法ノ時ニモ、少シモ替ズシテ、心ヲ廣【脱字】直ニシテ、【脱字】引張ズ、少モタルマズ、心ノ片ヨラヌ様ニ、心ヲ真中ニ置テ、【脱字】静ニユルガセテ、其ユルギノ節モ、ユルギ止ヌ様ニ、能々吟味スベシ。静ナル時モ、心ハ静ナラズ、何ト早キ時モ、心ハ少シモ早カラズ、心ハ躰ニツレズ、躰ハ心ニ連ズ、心ニ用心シテ、身ニハ用心【脱字】セズ、心ノ足ヌ事無クシテ、心ヲ少モ余ラセズ、ウヘノ心ハ弱ク共、底ノ心ヲ強ク、心ヲ人ニ見分ラレザル様ニシテ、少シモ自成ル者(少身成ル者)ハ、心ニ大ナル事ヲ殘ラズシリ、大身成者ハ、心ニチヒサキ事ヲ能知テ、大身モ少身モ、心ヲ直ニシテ、我身ノヒラキヲセザル様ニ、心ヲ持事肝要也。心ノ内濁ラズ廣クシテ、廣キ所ヘ智恵ヲオクベキ也。智恵モ心モ、必多度磨事専也。智惠ヲトギ、天下ノ利非ヲ辨ヘ、物毎ノ善悪ヲ知リ、萬【脱字】藝能、其道【脱字】ニ渡リ、世間ノ人ニ少シモダマサレザル様ニシテ、後、兵法ノ智恵トナル心也。兵法之智恵ニ於テ、トリワキ違事アル者也。戦ノ場、万事世話シキ寸成共、兵法ノ道理ヲ窮メ、動ナキノ心、能々吟味スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 兵法、心持【脱字】事。兵法の道に於て、心の持様は、常の心に替ることなかれ。常にも兵法の時【脱字】も、少しも替らずして、心を広くすぐにして、強くひつぱらず、少しもたるまず、心の片寄せぬ様に、心を真中に於て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬ様に、能々吟味すべし。静成るに所も、心【脱字】静に成らず、何と早き時も、心は少も早からず。心は躰につれず、躰は心につれず、心に用意して、身に【脱字】用意【脱字】せず。心のたらぬ事なくして、心を少も余らせず。上の心は弱共、底の心を強く、心を人に見分られぬ様にして、小身成る者は、心に大氣成る事を残らず知り、大身成る者ハ、心にちいさき事を好々知て、大身も小身も、心を直ぐにして、我身のひいきをせざる様にして、心を持事肝要也。心の内、少も濁らず、廣くして、廣き所へ智恵を置べし。智恵も心も、ひたと磨事専也。智恵をとぎ、天下の理非を弁へ、物毎の善悪を知り、萬の藝能、其道々を渡り、世間の人に少もだまされぬ様にして、後、兵法の智恵と成る心也。兵法の智恵に於ても、取わき違事有物也。戦【脱字】場、萬事せわしき時成りとも、兵法の道理を極め、動き無き心、能々吟味すべし。  

 【大瀧家本】

一 兵法、心持の事。兵法の道におゐて、心の持やうは、常の心に替事なかれ。常にも兵法の時にも、少も替らず【脱字】、心を廣く直ぐにして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心の偏らぬ様に、心を真中に置て、心【脱字】静にゆるがせて、其ゆるぎの節なと、ゆるぎ止ぬやうに、能々吟味あるべし。静なる時も、心は静ならず、何とはやき時も、心ハ少もはやからず。心ハ躰につれず、【脱字*****】、心に用心して、身にハ用心をせず。心の足らぬ事なくして、心を少もあまらせず。上の心は弱くとも、底の心ハ強く、心を人に見分けられざる様にして、小身なるものハ、心に大なる事を殘らず知り、大身なるものハ、心に小なる事を能知て、大身も小身も、心を直にして、我身の贔屓をせざる様に、心を持事肝要なり。心の内にごらず、廣くして、廣き處へ智惠を置べきなり。智惠も心も、ひたと磨く事専也。智惠を磨ぎ、天下の利非を弁ひ、物事の善悪を知り、萬の藝能、其道々を渡り、世間の人に少もだまされざる様にして、後、兵法の智惠となる心なり。兵法【脱字】智惠におゐて、取分ケ違ふ事あるもの也。戦の塲、万事せわしき時なり共、兵法の道理【脱字**】、動きなき心、能々吟味すべし。    PageTop    Back   Next 

  3 兵法身なりの事

 【吉田家本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしはをよせず、眉あひにしはをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめる様にして、うらやかにミゆる顔、鼻すぢ直にして、少おとがひに出すこゝろ也。首ハ、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より惣身ハひとしく覚え、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足先まで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはり、くさびをしむるといひて、脇ざしのさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様に、くさびをしむる、と云おしへ有。惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【近藤家甲本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしハをよせず、眉あひにしハをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめるやうにして、うらやかにミゆる顔。鼻すぢ直にして、少おとがいに出すこゝろ也。首は、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より捴身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さきまで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざるやうに、くさびをしむるといふおしへ有。捴而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【近藤家乙本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしわをよせず、眉あひにしハをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめるやうにして、うらやかにミゆる顔。鼻すぢ直にして、少おとがいに出すこゝろ也。首は、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より捴身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さきまで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる樣に、くさびをしむるといふおしへ有。捴而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【中山文庫本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしわをよせず、眉あひにしわをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少しすくめる様にして、うらやかにミゆる顔。鼻筋直にして、少おとがひに出す心也。首ハ、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より惣身ハひとしく覚え、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、膝より足先まで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはり、くさびをしむると云て、脇ざしのさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様に、くさびをしむる、と云おしへ有。惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【赤見家丙本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしハをよせず、眉あひにしハをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめるやうにして、うらやかにミゆる顔。鼻すぢ直にして、少おとがいに出すこゝろ也。首ハ、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より捴身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さきまで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇差のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様に、くさびをしむるといふおしへ有。捴而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【石井家本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしハをよせず、眉あひにしハをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめるやうにして、うらやかにミゆる顔。鼻すぢ直にして、少おとがいに出すこゝろ也。首は、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より捴身はひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さきまで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざるやうに、くさびをしむるといふおしへ有。捴而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【伊丹家甲本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしわをよせず、眉あひにしわをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめる様にして、うらやかにミゆる顔。鼻筋直にして、少おとがひに出す心也。首ハ、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より惣身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、膝より足先まで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはり、くさびをしむると云て、脇ざしのさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様に、くさびをしむるといふおしえ有。惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【澤渡家本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひづまず、目をミださず、額にしハをよせず、眉あひにしハ【脱字】よせて、目の玉のうごかざるよふにして、またゝきをせぬやふに思ひて、目を少すくめるやふにして、うらやかにみゆる顔。鼻筋直にして、少おとがひに出すこゝろ也。首ハ、うしろのすじを直に、うなじに力を入て、肩より惣身ハひとしく覚へ、両のかたをさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さきまで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様に、くさびをしむるといふおしへ有。惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【伊藤家本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、かたむ【脱字】ず、ひずまず、目をミださず、額にしハをよせず、眉あひにしハをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめるやうにして、うらやかにミゆる顔。鼻すぢ直にして、少おとがいに出すこゝろ也。首は、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より捴身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さきまで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざるやうに、くさびをしむるといふおしへ有。捴而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【伊丹家乙本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、傾かず、ひずまず、目をミ出さず、ひたひにしはをよせず、眉あひにしはをよせて、目の玉の動かざる様ニして、またゝきをせず様ニおもひて、目を少しすくめる様ニして、うらやかに見ゆる顔。鼻すぢ直にして、少しおとがひに出す心也。首は、うしろのすじを直に、うなじにちからを入て、肩より惣身ハひとしく覚え、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、膝より足先迄力を入て、腰のかゞまざる様ニ、腹をはり、くさびをしむるといゝて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様ニ、くさびをしむるといふ教有。惣而、兵法の身におひて、常の身を兵法の身とし、兵法の身をつねの身とする事、かんよふなり。能々吟味すべし。

 【神田家本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしハをよせず、眉あひにしハをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめるやうにして、うらやかにミゆる顔。鼻すぢ直にして、少おとがいに出すこゝろ也。首は、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より捴身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さきまで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざるやうに、くさびをしむるといふおしへ有。捴而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【猿子家本】

一 兵法、身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしハをよせず、眉あいにしハ【脱字】よせず、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬ様に思ひて、目を少すくめる様にして、うらやかにミゆる顔。鼻筋直にして、少おとがいに出す心也。首ハ、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より捴身【脱字】ひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、ひざより足さき迄力を入て、腰のかゞまざる様に、腹をはりて、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせ【脱字】、帯のくつろがざる様に、くさびをしむるといふ教へ有。捴而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【楠家本】

一 兵法の身なりの事。身のかゝる、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、ひたいにしはをよせず、まゆあいにしわをよせず、めの玉のうごかざるやうにして、またゝきをせぬやうに思ひて、目をすこしすくめるやうにして、うらやかにミゆるかほ、鼻すじ直にして、少おとがいを出す心也。くびハ、うしろのすじを直に、うなじに力をいれて、肩より惣身はひとしくおぼえ、兩のかたをさげ、背すじをろくに、尻を出さず、ひざより足先まで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはり、くさびをしむるといひて、脇指のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざるやうに、くさびをしむる、といふおしへあり。惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【細川家本】

一 兵法の身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、ひたいにしわをよせず、まゆあいにしわをよせて、目の玉【脱字】うごかざるやうにして、またゝきをせぬやうにおもひて、目をすこしすくめるやうにして、うらやかに見ゆるかを、鼻すじ直にして、少おとがいを出す心なり。くびハ、うしろのすじを直に、うなじに力をいれて、肩より惣身はひとしく覚へ、兩のかたをさげ、脊すじをろくに、尻を出さず、ひざより足先まで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をハり、くさびをしむるといひて、脇差のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざるやうに、くさびをしむる、と云おしへあり。惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身をつねの身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【丸岡家本】

一 兵法の身なりの事。身のかゝり、顔はうつむかず、あをのかず、不傾、ひずまず、目を見出さず、額に皺をよせず、眉の間にしわをよせて、目の玉【脱字】不動やうにして、またゝきをせぬやうに思て、目を少すくめるやうにして、うらやかに見ゆる顔、鼻すぢ直ニして、少おとがいを出す心なり。頸ハ、後の筋を直ニ、うなじニ力を入て、肩より摠身はひとしく覚へ、兩【脱字】肩を下ゲ、脊筋をろくに、尻を出さず、膝より足先迄力を入て、腰の不屈やうに、腹を張、轄(くさび)をしむると云て、脇差の鞘に腹をもたせて、帯のくつろがざるやうに、くさびをしむる、と云おしゑあり。摠而、兵法の身において、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とすること、肝要なり。能々吟味すべし。

 【富永家本】

一 兵法の身なりの事。身の懸り、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目を見出さず、ひたいにしわをよせず、眉合にしわを寄て、目の玉のうごかざるやうに【脱字】、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少しすくめるやうにして、うらやかに見ゆる顔、鼻筋直にして、少しおとがひを出す心なり。首ハ、後の筋を直に、うなじに力を入て、肩より惣身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背すじをろくに、尻を不出、膝より足先迄力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはり、くさびをしむると云て、脇差のさやに腹を為持て、帯のくつろがざるやうに、くさび【脱字】しむる、と云教へ有。惣て、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身【脱字**】とする事、肝要也。能/\吟味すべし。

 【常武堂本】

一 兵法の身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、ひたいにしわをよせず、まゆあひにしわをよせて、目の玉【脱字】うごかざるやうにして、またゝきをせぬ様【脱字】おもひて、目をすこしすくめる様にして、うらやかに見ゆる顔、鼻筋直にして、少おとがいを出す心也。くびハ、うしろの筋を直に、うなじに力をいれて、肩より惣身ハひとしくおぼえ、両のかたをさげ、脊すじをろくに、尻を出さず、ひざより足先まで力を入て、腰のかゞまざる様に、腹をはり、くさびをしむるといひて、脇差のさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様に、くさびをしむる、と云おしへ有。惣て、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【田村家本】

 兵法、身ナリノ事 身ノカヽリ、皃(かお)ハウツムカズ、アヲノカズ、カタムカズ、ヒズマズ、目ヲ見出サズ、ヒタイニシワヲヨセズ、マヒ間ニシワヲヨセテ、目ノ玉【脱字】動ザルヤウニシテ、マタヽキ【脱字】セヌヨウニ思テ、目ヲ少シスクメルヤフニシテ、ウラヤカニミ【脱字】顔、鼻スジ直ニシテ、少シヲトガイヲ出スコ丶ロ也。首ハ、後【脱字】スジヲ直ニ、ウナジニ力ヲ入テ、肩ヨリ惣身ハヒトシク覚、兩【脱字】肩ヲサゲ、脊筋ヲロクニ、尻ヲ出サズ、ヒザヨリ足先ニ力ヲ入テ、腰ノカヾマヌヨウニ腹ヲ張、クサビヲシムルト云テ、【脱字******】帯ノクツロガザルヨウニ、轄ヲシムル、ト云ヲシエアリ。惣テ、兵法ノ身ニヲヒテ、常ノ身ヲ兵法ノ身トシ、兵法ノ身ヲツネノ身トスル事、肝要也。能々吟味カベシ。

 【狩野文庫本】

一 兵法の身なりの事。身の懸り、顔はうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目ヲ見出さず、額にしハをよせず、眉間にしわを寄せて、目の玉の動かざる樣ニして、またゝきをせぬ樣におもい、目を少すくめる樣に【脱字******】直ニして、少しおとがひを出す心也。首ハ、うしろの筋を直ニ、うなじに力を入て、肩より惣身は等しくおぼへ、兩の肩をさげ、脊筋をろくに、尻を出さず、膝より足先迄力を入て、腰のかゞまざるやうに腹をはり、くさびをしむるといふて、脇差の鞘に腹を持せて、帯のゆるからざるやうに、クリ形をしむる、と云教有。惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【多田家本】

一 兵法、身なりの事。身の懸り、顔はうつむかず、額にしわをよせず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目を見ださず(語順)、眉間にしわをよせて、目の玉【脱字】動かざる様にして、またゝきをせぬやうに思ひて、目を少すくめるやうにして、面つき、うきやかにみゆるやうにして顔、鼻筋直にして、少おとがひを出す心也。首ハ、後の筋を直にして、うなじに力を入て、肩より惣身はひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、膝より足先迄力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはり、くさびを〆と【脱字】て、脇指の鞘に腹をもたせて、帯のくつろぐ事なき様に、くさびをしむると云て【脱字】。惣て、兵法の身にをひて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 兵法ノ身成【脱字】事。身ノ掛リ、顔ハウツブカズ、仰カズ、傾カズ、ヒヅマズ、目ヲ見出ズ、額ニシハヲヨセズ、眉【脱字】ニシハヲ寄テ、目ノ玉ヲ動カサヌ様ニシテ、マタヽキヲセヌ様ニ思テ、目ヲ少シスクメタル様ニシテ、ウラヤカニ見【脱字】ル顔ハ、鼻筋直ニシテ、少シ頤ヲ出ス心也。首ハ、後ノ筋ヲ直ニ、ウナジニ力ヲ入テ、肩ヨリ惣身ハヒトシク覚ヘ、両ノ肩ヲサゲ、脊筋ヲロクニ、尻ヲ出サズ、膝ヨリ足先迄力ヲ入テ、腰ノカヾマザル様【脱字】腹ヲ張、クサビヲシムルト云テ、脇指ノ鞘ニ腹ヲ持セテ、帯ノクツロガザル様ニ、クサビヲシムル、ト云教有ベシ。惣ジテ、兵法ノ身ニ於テ、常ノ身ヲ兵法ノ身トシ、兵法ノ身ヲ常ノ身トスル事、肝要也。能々吟味スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 兵法の身なりの事。身の懸りは、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひづまず、目を見出さず、ひたゐにしわをよせず、まゆ間にしわを寄て、目の玉をうごかざる様にして、目たゝきをせぬ様に思ひて、目を【脱字】すくぬ(め)る様にして、うらやかに見【脱字】る顔、鼻筋直にして、少しおとがひを出す心也。首は、後の筋を直に、うなじに力を入て、肩より惣身ハひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋を直くに、尻を出さず、ひざより足先迄力を入れて、腰【脱字】かゞまざる様に、腹をはり、くさびをしめ(む)ると云て、脇差の鞘に腹を持せて、帯のくつろがざる様に、くさびをしめ(む)る、と云教有。惣而、兵法の身に於て、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。  

 【大瀧家本】

一 兵法の身なりの事。身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目を見出さず、ひたゐにしわを寄せず、眉あひにしわをよせて、目の玉【脱字】動かざる様にして、またゝきをせぬ様に思ひて、目を少しすくめる様にして、浮やかに見ゆる顔、鼻筋を直にして、少しおとがひを出す心なり。首ハ、後の筋を直に、うなじに力を入て、肩より惣身ハひとしく覚ひ、両の肩を下ゲ、脊筋をろくに、尻を出さず、膝より足先まで力を入て、腰のかゞまざるやうに、はらをはりて、くさびをしめるといふて、脇差の鞘を以て、帯のくつろがざる様に、くさびをしむる、と云教あり。惣じて、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身にして、兵法の身を常の身とする事、肝要なり。能々吟味すべし。    PageTop    Back   Next 

  4 兵法の眼付と云事

 【吉田家本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目也。観見二の事、観の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にも、おなじ事也。目の玉うごかずして、両脇をミる事、肝要なり。かやうの事、いそがしきとき、俄にハわきまへがたし。此書付を覚、常住此目付になりて、何事にも目付のかわらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【近藤家甲本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目なり。觀見二の事、觀の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごかずして、兩脇を見る事、肝要也。かやうの事、いそがしきとき、俄にはわきまへがたし。此書附を覚、常住此目付になりて、何事にも目付のかハらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【近藤家乙本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目なり。觀見二の事、觀の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごかずして、兩脇を見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書附を覚、常住此目付になりて、何事にも目附のかハらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【中山文庫本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目也。観見二の事、観の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠くミる事、兵法の専也。敵【脱字】太刀を知り、聊敵の太刀をミずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にも同じ事也。目の玉うごかずして、両脇をミる事、肝要なり。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書付を覚へ、常住此目付になりて、何事にも目付のかわらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【赤見家丙本】

一 兵法の目附と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目なり。觀見二の事、觀の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目附、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごかずして、両脇を見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書附を覚へ、常住此目附になりて、何事にも目附のかハらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【石井家本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目なり。觀見二の事、觀の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごか(さ)ずして、両脇を見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書付を覚、常住此目付になりて、何事にも目付のかハらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【伊丹家甲本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目也。観見二の事、観の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠くミる事、兵法の専也。敵の太刀を知、聊敵の太刀をミずと云事、兵法の大事なり。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごかずして、両脇をミる事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書付を覚、常住此目付になりて、何事にも目付のかはらざる様、能々吟味有べきもの也。

 【澤渡家本】

一 兵法の目附といふ事。目の附様ハ、大きに廣く付る目なり。觀見二の事、觀の目強ク、見の目弱く、遠き所を近く見、近所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀をしり、聊敵の太刀を見ずといふ事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごかずして、両脇を見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまいがたし。此書附を覚へ、常住此目附になりて、何事にも目附のかハらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【伊藤家本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目なり。觀見二の事、觀の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごかずして、両脇を見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書附を覚、常住此目付になりて、何事にも目付のかハらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【伊丹家乙本】

一 兵法の目附といふ事。目の付様ハ、大に廣く付る目なり。觀見二の事、観の目つよく、見の目よわく、遠き所をちかく見、ちかきところを遠くミる事、兵法の専なり。敵の太刀を知り、聊敵の太刀をミずといふこと、兵法の大事なり。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじことなり。目の玉動かさずして、両脇をミること、肝要なり。か様のこと、いそがしきとき、俄にハわきまへがたし。此書付をおぼゑ、常住此目付になりて、なにごとにも目付のかわらざる所、能々吟味有べき者也。

 【神田家本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目なり。觀見二の事、觀の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にもおなじ事也。目の玉うごかずして、両脇を見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にはわきまへがたし。此書付を覚、常住此目附になりて、何事にも目付のかハらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【猿子家本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大に廣く付る目也。觀見二の事、觀の目強く、見の目弱く、遠き所を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にも同じ事也。目の玉動かずして、両脇を見る事、肝要也。か様の事、いそがしき時、俄にハ弁へがたし。此書付を覚、常住此目付になりて、何事にも目付のかわらざる所、能々吟味有べきもの也。

 【楠家本】

一 兵法の目付と云事。めの付やうハ、大きに廣く付る目也。観見二ツの事、観の目つよく、見の目よはく、遠き所を近く見、ちかき所を遠くミる事、兵法の専也。敵の太刀をしり、聊敵の太刀をミずと云事、兵法の大事也。工夫あるべし。此目付、ちいさき兵法にも、大きなる兵法にも、同じ事也。目の玉うごかずして、兩わきを見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書付をおぼえ、常住此目付になりて、何事にも目付のかはらざる所、能々吟味有べきものなり。

 【細川家本】

一 兵法の目付と云事。目の付やうは、大キに廣く付る目也。観見二ツの事、観の目つよく、見の目よハく、遠キ所を近ク見、ちかき所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀をしり、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大キなる兵法にも、同じ事也。目の玉うごかずして、兩わきを見る事、肝要也。かやうの事、いそがしき時、俄にはわきまへがたし。此書付を覚へ、常住此目付になりて、何事にも目付のかわらざる所、能々吟味あるべきもの也。

 【丸岡家本】

一 兵法の目付と云事。目の付やうは、大キニ廣クつくる目なり。観見二ツの事、観の目強く、見の目よハく、遠き所を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を不見と云事、兵法の大事なり。工夫あるべし。此目付、小キ兵法にも、大キなる兵法にも、同事也。目の玉不動して、両脇を見ること、肝要也。か樣の事、いそがしき時、俄には弁へがたし。此書付を覚へ、常住此目付になりて、何事にも目付の替らざる處、能々吟味有べき者也。

 【富永家本】

一 兵法の目付と云事。目の付様ハ、大きに廣く付る目なり。觀見二ツの事、觀の目つよく、見の目よはく、遠き所を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずといふ事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大きなる兵法にも、同じ事なり。目の玉動かずして、両脇を見る事、肝要なり。ケ様の事、いそがわしき時、俄ニハわきまへがたし。此書付を覚、常住此目付に成て、何事にも目付のかわらざる處、【脱字】吟味有べきものなり。

 【常武堂本】

一 兵法の目付といふ事。目の付様ハ、大きにひろく付る目也。觀見二ツの事、觀の目つよく、見の目よはく、遠き所を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀をしり、聊敵の太刀を見ずといふ事、兵法の大事也。工夫あるべし。此目付、ちいさき兵法にも、大きなる兵法にも、同じ事也。目の玉うごかずして、両わきをみる事、肝要也。彼様の事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書付をおぼえ、常住此目付になりて、何事にも目付の替らざる所、能々吟味あるべきもの也。

 【田村家本】

 兵法【脱字】目付ト云事 目ノ付ヨウハ、大キニ廣ク付ル目ナリ。觀見二ツノ事、觀ノ目強ク、見ノ目ヨワク、遠所ヲ近ク見、近處ヲ遠クミル事、兵法ノ専也。敵ノ太刀ヲ知リ、イサ丶カ敵ノ太刀ヲ見ズト云事、兵法ノ大事也。工夫有ベシ。此目付、チイサキ兵法ニモ、大ナル兵法ニモ、同事也。目ノ玉動ズシテ、兩脇ヲ見ル事肝要也。カヨウノ事、急時、俄ニハ辨ジガタシ。此書付ヲミ覚、常住此目付ニナリテ、何事ニモ目付ノカワラザル処、能々吟味有ベキモノナリ。

 【狩野文庫本】

一 兵法の目付と云事。目の付樣ハ、大にひろく付る目なり。觀見二ツの事、觀の目強ク、見の目よハく、遠所を近く見、近所を遠見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を不見といふ事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、少キ兵法にも大キ成兵法にも、同事なり。目の玉うごかずして、兩脇を見る事肝要なり。ケ樣の事、閙敷〔いそがしき〕時、俄ニ【脱字】弁がたし。此書付を覚、常住此目付に成て、何事ニも目付のかハらざる所、能々吟味すべし。

 【多田家本】

一 兵法の目付と云事。目の付やう【脱字】、大きに廣く附る目也。観見二つの事、観の目強く、見の目弱く、遠き處を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専にする所也。敵の太刀をしり、聊敵の太刀を不見といふ事、兵法の大事也。工夫有べし。此目付、ちいさき兵法にも、大き成兵法にも、同じ事也。目の玉動かずして、両脇をミる事、肝要なり。ケ様の事、いそがしきとき、俄にハ弁へがたし。此目附を覚、常住此目付に成て、何事にも目附の替らぬ所、能々吟味有べきもの也。

 【山岡鉄舟本】

一 兵法ノ目附ト云事。目ノ附様ハ、大ニ廣ク付ル目也。観見二ツノ事、観ノ目強ク、見ノ目弱ク、遠キ所ヲ近ク見、近キ所ヲ遠ク見ル事、兵法ノ専也。敵ノ太刀ヲ知リ、聊敵ノ太刀ヲ見ズト云事、兵法ノ大事也。工夫有ベシ。此目付、チヒサキ兵法ニモ、大キ成ル兵法ニモ、同事也。目ノ玉動カズシテ、兩脇ヲ見ル事肝要也。ケ様ノ事、閙キ寸、俄ニハ辨へ難シ。此書付ヲ覚ヘ、始終此目附ニナリテ、何事ニモ目附ノ替ザル事、能々吟味有ベキ者也。(★改行なしで次条へ連続)

 【稼堂文庫本】

一 兵法の目付と云事。目の付様は、大きに廣く附る目也。観見二ツの事、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。此目附、少き兵法にも、大成る兵法にも、同じ事也。目の玉を動かさずして、両脇を見る事、肝要也。ケ様の事、いそがしき時、俄にハ弁へがたし。此書附を覚へ、常住此目附に成て、何事にも目付のかわらざる所、好々吟味有るべき者也。  

 【大瀧家本】

一 兵法の目付といふ事。目の付様ハ、大に廣く付る【脱字】なり。觀見二ツの事、觀の目に強く、見の目に弱く、遠き所を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずといふ事、兵法の大事なり。工夫有べし。此目付、小き兵法にも、大きなる兵法にも、同じ事なり。目の玉動かさずして、両脇を見る事、肝要なり。ケ様の事、閙敷時、俄にハ辨ひがたし。此書付を覚ひ、常住此目付に成て、何事にも目付の替らざる所、能々吟味あるべき事なり。    PageTop    Back   Next 

  5 太刀の持様の事

 【吉田家本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)を、うくるこゝろにもち、たけ高指、しめずゆるまず、くすしゆび、小指を、しむる心にして持なり。手の内にハ、くつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たる斗にてハ悪し。敵を切ものなりとおもひて、太刀を取べし。敵をきるときも、手のうちにかわりなく、手のすくまざる様にもつべし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも、切とおもひて、太刀を取べし。ためし物などきる時の手のうちも、兵法にしてきるときの手のうちも、人をきると云手のうちにかわる事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくと云事を嫌。いつくは、しぬる手也。いつかざるハ、いきる手なり。能々心得べきもの也。

 【近藤家甲本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たるバかりにてハ悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためし物など切ときの手のうちも、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。捴而、太刀にても手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いくる手也。能々心得べきもの也。

 【近藤家乙本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たるバかりにてハ悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかわりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためし物などきる時の手のうちも、兵法にしてきるときの手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。捴而、太刀にても手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いくる手也。能々心得べきもの也。

 【中山文庫本】

一 太刀の持様の事。太刀の取様ハ、大指、人指(◇)をうくる心にもち、たけ高指しめずゆるまず、くすし指、小指をしむる心にして持也。手の内にハくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たる斗にてハ悪し。敵を切ものなりと思ひて、太刀を取べし。敵を切る時も、手の内にかわりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さし指斗を、少かゆる心にして、兎にも角にも切と思ひて、太刀を取べし。ためしものなど切る時の手の内も、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきると云手のうちにかはる事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくと云事を嫌。いつくとは、しぬる手也。いつかざるハ、いきる手なり。能々心得べきもの也。

 【赤見家丙本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすし指、小ゆびをしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たるバかりにてハ悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、をさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためし物などきる時の手のうちも、兵法にしてきるときの手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。捴じて太刀にても手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いくる手也。能々心得べきもの也。

 【石井家本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(指)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たるバかりにては悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためし物など切ときの手のうちも、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。捴て、太刀にても手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるは、いくる手也。能々心得べきもの也。

 【伊丹家甲本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、人さし(◇)をうくる心にもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手の内にハくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たる斗にてハ悪し。敵を切ものなりと思ひて、太刀を取べし。敵をきる時も、手の内にかはりなく、手のすくまざる様にもつべし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事有とも、大指、人さし指【脱字】を、少かゆる心にして、兎にも角にも切と思ひて、太刀を取べし。ためしものなどきる時の手の内も、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきると云手の内にかはる事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくと云事を嫌。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いきる手也。よく/\心得べき物なり。

 【澤渡家本】

一 太刀【脱字】持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすり指、小ゆびをしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀を持といひて、持たるバかりにて【脱字】悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、【脱字**】、をさゆる事ありとも、大指、人さし指ばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にもきるとおもひて、太刀を取べし。ためし物などきる時の手のうちも、兵法にして切時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。惣而太刀にて【脱字】手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いくる手也。能々心得べき者也。

 【伊藤家本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たるバかりにてハ悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためし物などきるときの手のうちも、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。捴而、太刀にても手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるは、いくる手也。能々心得べきもの也。

 【伊丹家乙本】

一 太刀の持様の事。太刀のとり様ハ、大指、人さし(◇)をうくる心ニもち、たけ高指をしめずゆるまず、くすし指、小指をしむる心にして持なり。手の内ニハくつろぎのあることあしゝ。太刀を持といゝて、持たるばかりにてハ悪し。敵をきるものなりと思ひて、太刀を取べし。敵をきる時も、手の内に替なく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、當事、押ゆること有とも、大指、人さし指ばかりを、すこしかゆる心ニして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためしものなど【脱字】の手の内も、兵法にしてきるときの手の内も、人をきるといふ手の内にかわることなし。惣じて、太刀ニても手ニても、いつくといふ事を嫌。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いきる手也。能々心得べし。

 【神田家本】

一 太刀の持様の事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たるバかりにてハ悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためし物など切ときの手のうちも、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。捴而、太刀にても手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるは、いくる手也。能々心得べきもの也。

 【猿子家本】

一 太刀の持様の事。太刀の取様ハ、大指、ひとさし指をうくる心に持、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつといひて、持たる斗りにてハ悪し。敵を切もの也と思ひて、太刀を取べし。敵を切時も、手の内にかはりなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事有共、大指、人さし指斗を、少しかゆる心にして、兎にも角にも切と思ひて、太刀を取べし。ためし物抔切時の手の内も、兵法にして切時の手の内も、人を切といふ手のうちにかハる事なし。捴て太刀にても手にても、いつくとゆふ事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いくる手也。能々心得べきもの也。

 【楠家本】

一 太刀の持やうの事。太刀のとりやうハ、大指、ひとさし(◇)を、浮る心にもち、たけ高指、しめずゆるまず、くすしゆび、小指を、しむる心にして持也。手のうちにハ、くつろぎのある事あしゝ。太刀を持といひて、もちたる心ばかりにてハあしゝ。敵をきるものなりとおもひて、太刀をとるべし。敵をきる時も、手のうちにかはりなく、手のすくまざるやうに持べし。若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、ひとさしゆびばかりを、少替る心にして、とにもかくにも、きるとおもひて、太刀をとるべし。ためし物などきる時の手のうちも、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかはる事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくといふ事をきらふ。いつくハ、しぬる手なり。いつかざるハ、いきる手也。よく/\心得べきものなり。

 【細川家本】

一 太刀の持やうの事。太刀のとりやうは、大指、ひとさし(◇)を、浮る心にもち、たけ高指、しめずゆるまず、くすしゆび、小指を、しむる心にして持也。手の内には、くつろぎのある事悪シ。【脱字***************】敵をきるものなりとおもひて、太刀をとるべし。敵をきる時も、手のうちにかわりなく、手のすくまざるやうに持べし。もし敵の太刀を、ハる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大ゆび、ひとさしゆびばかりを、少替る心にして、とにも角にも、きるとおもひて、太刀をとるべし。ためしものなどきる時の手の内も、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきると云手の内に替る事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくとゆふ事をきらふ。いつくは、しぬる手也。いつかざるハ、いきる手也。能々心得べきもの也。

 【丸岡家本】

一 太刀の持樣の事。太刀の取やうは、大指、人差(◇)を、浮ぶる心に持、長高指、しめずゆるまず、くすし指、小指を、しむる心にして持也。手の内【脱字】は、くつろぎの有事あしゝ。太刀を持と云て、持たる心ばかりにてはあしゝ。敵を切ものなりと思て、太刀を執べし。敵を斬時も、手の内に替りなく、手のすくまざるやうに持べし。若、敵の太刀を、はること、請る事、あたる事、押る事ありとも、大指、人差指ばかりを、少替る心にして、とにもかくにも、切と思て、太刀を把べし。試者など斬時の手の内も、兵法ニしてきる時の手の内も、人を斬といふ手の内に替ることなし。摠而、太刀にても手にても、ゐつくといふ事を嫌ふ。居付は、死る手也。ゐつかざるは、生る手也。能々心得べきものなり。

 【富永家本】

一 太刀の持様の事。太刀の取様ハ、大指、人さし(◇)を、浮る心に持、たけ高指、しめずゆるまず、くすし指、小指を、しむる心にして持なり。手の内【脱字】ハ、くつろぎの有る事あしゝ。太刀を持と云て、持たる心斗ニ而ハ悪しゝ。敵を切者なりと思ひて、太刀を取べし。敵を切時も、手の内に替りなく、手のすくまぬやうに持べし。若敵の太刀をはる事、うくる事、あたる事、をさゆる事有とも、大指、人差指斗を少しかゆる心にして、とにもかくにも、切ると思ひて、太刀を取べし。銚者など切時の手の内も、兵法にして切時の手の内も、人を切といふ手の内に易る事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくといふことを嫌ふ。いつくハ死る手也。いつかざるハ生る手なり。能/\心得べきものなり。

 【常武堂本】

一 太刀の持様の事。太刀のとり様ハ、大指、ひとさし(◇)を、へだつる心に持、たけ高指、しめずゆるまず、くすし指、小指を、しむる心にして持也。手の内にハ、くつろぎのある事悪し。【脱字***************】敵をきるものなりとおもひて、太刀をとるべし。敵をきる時も、手のうちにかはりなく、手のすくまざる様に持べし。もし敵の太刀をはる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大ゆび、ひとさしゆびばかりを、少替る心にして、とにも角にも、きるとおもひて、太刀を取るべし。ためしものなどきる時の手の内も、兵法にしてきる時の手の内も、人をきると云手の内に替る事なし。惣じて、太刀にても手にても、いつくといふ事をきらふ。いつくハしぬる手也。いつかざるハいきる手也。能々心得べきもの也。

 【田村家本】

 太刀ノ持様ノ事 タチノトリヨウハ、大指、人サシ(◇)ヲ浮ブル心ニモチ、タケ高指ヲシメズユルマズ、クスシ指、小指ヲシムル心ニシテ持也。手ノ内ニハクツロギノ有事アシ丶。太刀ヲ持ト云テ持タル【◇】バカリニテ【脱字】アシヽ。敵ヲ切モノナリト思テ、太刀ヲトルベシ。敵ヲ切時モ、手ノ内ニカワリナク、手ノスクマザルヨウニ持ベシ。若敵ノ太刀ヲ張ル事、受ル事、當ル事、押ユル事有共、大指、人サシ指バカリヲ、少カユル心ニシテ、トニモ角ニモ、切ト思テ、太刀ヲ取ベシ。タメシモノナド切時ノ手ノ内モ、兵法ニシテ切時ノ手ノ内モ、人ヲ切ト云手ノ内ニカワル事ナシ。惣而、太刀ニテモ手ニテモ、居ツクト云事ヲ嫌。イツクハシヌルテナリ。居ツカザルハ生ル手也。能々心得ベキモノナリ。

 【狩野文庫本】

一 太刀の持樣の事。太刀の取樣ハ、大ゆび、ひとさしゆびを浮心に持、たけ高ゆびしめずゆるまず、くすし指、小ゆびをしむる心にして持也。手の内に【脱字】くつろぎの有事惡シ。太刀を持と云て持たる心斗ニ而ハ悪し。敵を切者【脱字】と思ひて、太刀を取べし。敵を切る時も、手の内ニ替事なく、手のすくまざるやうに持べし。若、敵の太刀を、はる事、請る事、當ル事、おさゆる事有とも、大ゆび、人指ゆび斗を、少かゆる心にして、兎ニも角ニも、切るものとおもひて、太刀を取べし。ためしもの抔切時の手の内にも、兵法にしても切時の手の内ニも、人を切といふ手の内に替事なし。惣而、太刀ニても手ニ而も、居付といふ事を嫌ふ。居付ハ死ぬる手也。いツかざるハ生る手也。能々可心得ものなり。

 【多田家本】

一 太刀の持やうの事。太刀の取様ハ、大ゆび、人さしゆびを浮べる心にもち、たけ高ゆびしめずゆるまず、くすしゆび、小ゆびをしむる心にして持也。手のうちに【脱字】くつろぎの有事悪し。太刀を持と云て、持たる心斗にてハ悪し。敵を切ものなりと思ひ【脱字】、太刀を取べし。敵を切時も、手の内に替なく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀を、張る事、【脱字*****】おさゆる事有共、大ゆび、人さしゆび斗を、少かゆる心にして、とにもかくにも切と思て、太刀を取べし。ためし者抔切時も手の内にも、兵法にして切時の手の内にも、人を切と云事手のうちに替事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくと云事を嫌ふ。いつくは、死する手也。いつかざるハ、生る手也。能々心得べき者也。

 【山岡鉄舟本】

(★改行なしで前条から連続)一 太刀ノ持様之ノ事。太刀ノ取様ハ、大指、人指(◇)ヲ浮ル心ニ持、タケ高指シメヅユルマズ、薬差、小指ヲシムル心ニシテ持也。手ノ内ニハクツロギノ有事悪ク。太刀ヲ持トイヒテ、持タル心斗リニテハ悪シ。敵ヲ切ル者也ト思テ、太刀ヲ取ベシ。敵ヲ切ル寸モ、手ノ内ニ替リナク、手ノスクマザル様ニ持ベシ。若シ敵ノ太刀ヲ張ル事、受ル事、當ル事、ヲサユル事有ル共、大指、人差指斗ヲ、少シ替ル心ニシテ、兎ニモ角ニモ、切ルト思テ、太刀ヲ取ベシ。タメシ物抔切時ノ手ノ内モ、兵法ニシテ切ル寸ノ手ノ内モ、人ヲ切ト云事之手ノ内ニ替ル事無シ。惣ジテ、太刀ニテモ手ニテモ、イツクト云事ヲ嫌フ。イツクハ、死ル手也。イツカザルハ、生ル手也。能々可心得者也。

 【稼堂文庫本】

一 太刀の持様の事。太刀の取様は、大指、人差指を、浮る心に持、たけ高指、しめずゆるめず、くすしゆび、小指を、しむる心にして持なり。手の内【脱字】、くつろぎの有る事悪し。太刀を持と云て、持たる心斗にては悪し。敵を切る心持と思ひて、太刀を取るべし。敵を斬時も、手の内に替りなく、手のすくまざる様に持べし。若、敵の太刀をはる事、請る事、當る事、押ること有共、大指、人差指斗りを、少し替る心にして、兎にも角にも、切るとおもひて、太刀を取べし。ためし物抔切時の手の内も、兵法にしてきる時の手の内も、人を切ると云手の内に替事なし。惣而、太刀にても手にても、いつくと云事を嫌ふ。いつくハ死【脱字】手也。いつかざるハ活タル手也。能々吟味して心得べき事也。  

 【大瀧家本】

一 太刀の持様の事。太刀の取様ハ、大指、人差指【脱字】、浮る心に持、長ケ高指、しめずゆるさず、薬指、小指【脱字】、しむる心にして持也。手の内に【脱字】、くつろぎの有事悪しゝ。太刀を持といふて、持たる心斗にて【脱字】悪しゝ。敵を切るものなりと思ひて、太刀を取るべし。敵をきる時も、手の中に替りなく、手のすくまざる様にもつべし。若、敵の太刀をはる事、【脱字**】、當る事、おさゆる事ありとも、大指、人差指ばかりを、少しかゆる心にして、兎にも角にも、切るとおもひて、太刀を取べし。ためし物など切時の手の内にも、兵法にして切時の手の内にも、人を切るといふ手の中に替事なし。すべて、太刀にても手にても、いつくといふ事を嫌ふ。いつくハ死る手也。いつかざるハ生る手也。能々心得べきもの也。    PageTop    Back   Next 

  6 足つかひの事

 【吉田家本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすを剛く踏べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆぶがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ、嫌足也。此道の大事にいはく、陰陽の足と云、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時迄も、陰陽とて、右左/\と踏足也。かへす/\片足踏事有べからず。よく/\吟味すべきもの也。

 【近藤家甲本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく踏べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ、嫌ふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝要也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくるとき迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足也。かへす/\片足蹈事有べからず。能々吟味すべきもの也。

 【近藤家乙本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく踏べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ、嫌ふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足なり。かへす/\片足蹈事有べからず。能々吟味すべきもの也。

 【中山文庫本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つま先をすこしうけて、くびすを剛く蹈べし。足つかひハ、事によりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆぶがごとし。足に、飛足、浮足、ふみすゆる足とて、是三ツ、嫌足也。此道の大事にいはく、陰陽の足と云、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切時、引時、うくる時までも、陰陽とて、右左/\と蹈足なり。かへす/\片足蹈事有べからず。よく/\吟味すべきもの也。

 【赤見家丙本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく蹈べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ嫌ふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足也。かへす/\、片足蹈事有べからず。能々吟味すべき物也。

 【石井家本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく蹈べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速は有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ、嫌ふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足也。かへす/\片足蹈事有べからず。よく/\吟味すべきもの也。

 【伊丹家甲本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つま先をすこしうけて、くびすを剛く踏べし。足つかひハ、事によりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆぶがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ、嫌足なり。此道の大事にいはく、陰陽のさ足と云、是肝心也。陰陽の足ハ、片足バかりうごかさぬもの也。切時、引とき、うくる時までも、陰陽とて、右左/\と踏足也。かへす/\片足踏事有べからず。よく/\吟味すべきもの也。

 【澤渡家本】

一 足つかひ【脱字】事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく蹈べし。足つかひハ、時によりて、大小遅速ハ有りとも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三ツ、嫌ふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足也。かへす/\、片足蹈事有べしからず。能々吟味すべきもの也。

 【伊藤家本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく蹈べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ、嫌ふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足也。かへす/\片足蹈事有べからず。能々吟味すべきもの也。

 【伊丹家乙本】

一 足つかひの事。足のはこび様は、つま先をすこしうけて、くびすを剛く踏べし。足つかひは、事によりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆむが如し。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三ツ、嫌足也。此道の大事にいわく、陰陽の足と云、是肝心なり。陰陽の足ハ、片足ばかり動かさぬものなり。きるとき、ひくとき、うくるとき迄も、陰陽とて、右左/\と踏足なり。かゑす/\片足ふむこと有べからず。よく/\吟味すべきもの也。

 【神田家本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく蹈べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速ハ有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ、嫌ふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足也。かへす/\片足蹈事有べからず。能々吟味すべきもの也。

 【猿子家本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすを強く蹈べし。足つかいハ、事に依て、大小遅速ハ有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛あし、浮足、ふミすゆる足とて、是三ツ、嫌ふ足なり。此道の大事に曰、陰陽の足と云、是肝心也。陰陽の足ハ、片足斗を動か【脱字】ぬもの也。切時、引とき、うくる時迄も、陰陽迚、左右/\と蹈足也。返す/\片足蹈事有べからず。よく/\吟味すべきもの也。

 【楠家本】

一 足つかひの事。足のはこびやうの事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよくふむべし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速ハありとも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、これ三ツ、きらふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足といふ、是肝心也。陰陽の足とハ、片足ばかりうごかさぬもの也。きる時、引時、うくるときまでも、陰陽とて、右左/\とふむあしなり。かへす/\片足ふむ事有べからず。よく/\吟味すべきものなり。

 【細川家本】

一 足つかひの事。足のはこびやうの事、つまさきを少うけて、きびすをつよく踏べし。足つかいは、ことによりて、大小遅速はありとも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三ツ、きらふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足と云、是肝心也。陰陽の足とは、片足ばかりうごかさぬもの也。きる時、引時、うくる時迄も、陰陽とて、右ひだり/\と踏足也。返々片足ふむ事有べからず。能々吟味すべきもの也。

 【丸岡家本】

一 足つかひの事。足のはこびやうの事、爪先をすこし受て、踵を強く踏べし。足つかひハ、事によりて、大小遅速はありとも、常に歩むガごとし。足に、飛足、浮足、蹈居ゆる足とて、これ三ツ、嫌ふ足なり。此道の大事に云ク、陰陽の足と云、是肝心也。陰陽の足とは、片足ばかり動さぬもの也。切時、引時、受る時迄も、陰陽とて、右左/\と踏足也。返す/\片足踏事あるべからず。能々吟味すべき者なり。

 【富永家本】

一 足遣ひの事。足のはこび様の事、つまさきを少請て、くびすをつよくふむべし。足はこびハ、所ニよりて、大小遅速ハ有共、常にあゆむが如し。足に、飛足、うく足、ふミすゆる足とて、是三ツ、嫌ふ足なり。此道の大事に曰、陰陽の足と云、是肝心なり。陰陽の足とハ、片足斗動か【脱字】ぬもの也。切時、引時、うくる時【脱字】も、陰陽とて、右左に/\とふむ足なり。返/\片足ふむ事不可有。能/\吟味すべき者也。

 【常武堂本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきを少うけて、きびすをつよく踏べし。足つかいハ、ことによりて、大小遅速はありとも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふみすゆる足とて、是三ツ、きらふ足也。此道の大事にいはく、陰陽の足と云、是肝心也。陰陽の足とハ、片足ばかりうごかさぬもの也。きる時、引時、うくる時までも、陰陽の足とて、右ひだり/\と踏足也。返々片足ふむ事有べからず。能々吟味すべき【脱字】也。

 【田村家本】

 足遣ノ事 アシノハコビヨウノ事、ツマ先ヲ少ウケテ、クビスヲツヨクフムベシ。足ツカイハ、コトニヨリ【脱字】、大小遅速ハ有共、常ニ歩ムガ如シ。足ニ、飛アシ、浮足、蹈スユルアシトテ、是三ツ、嫌フ足也。此道ノ大事ニ云ク、陰陽ノ足ト云、是肝心也。陰陽ノ足トハ、片足計ウゴカサヌモノ也。切トキ、引時、受ルトキ迄モ、陰陽トテ、右左ミギヒダリト蹈足也。返ス々々片足フムコト有ベカラズ。能々吟味スベキ者ナリ。

 【狩野文庫本】

一 足つかひの事。足のはこびやうの事、つまさきを少うけて、きびすをつよくふむべし。足つかいハ、事によりて、大小遅速ハ有ども、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三ツ、嫌ふ足也。此道の大事ニ曰、陰陽の足と云、是肝要也。陰陽の足とは、片足斗うごか【脱字】ぬものなり。切時、引時、請る時迄も、陰陽とて、右左/\と踏足也。返/\片足ふむ事有べからず。能々吟味すべきものなり。

 【多田家本】

一 足遣ひの事。足の歩び様の事、つま先を少うけて、くびすを強く踏べし。足遣ひハ、事によつて、大小遅速はあり共、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三つ嫌ふ足也。此道の大事に曰、陰陽の足と云、是肝要也。陰陽の足とハ、片足斗動かさぬもの也。切時、引時、請る時迄も、陰陽とて、左右/\とふむ足也。返々片足踏事有べからず。能々吟味すべき者也。

 【山岡鉄舟本】

一 足ツカヒノ事。足ノハコビ様ノ事、ツマ先ヲ少シ受ケ【脱字】、キビスヲ強ク踏ベシ。足ヅカヒハ、毎ニ依テ、大小遅速ハアルモノ、常ニアユムガ如シ。足ニ、飛足、浮足、踏スユル足トテ、是三ツ、嫌フ足ナリ。此道ノ大事ニ云、陰陽ノ足ト云、是感心也。陰陽ノ足トハ、片足斗動【脱字】ヌ者也。切ル時、引時、受ル寸迄モ、陰陽トテ、左右々々ト踏足也。返々、片足踏事、有ベカラズ。能々吟味スベキ者也。

 【稼堂文庫本】

一 足つかひの事。足のはこび様の事、つまさきを少請て、きびすをつよくふむべし。足はこびハ、所に寄て、大小遅速ハ有れ共、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふミすゆる足とて、是三ツの、嫌ふ脚也。此道の大事に曰、陰陽の足と云、是肝心の事也。陰陽の足と云は、片足斗うごかさぬ物也。切時、引時、請る時迄も、陰陽とて、右左/\と蹈足也。返々片足ふむこと有べからず。好々吟味すべき物也。  

 【大瀧家本】

一 足遣ひの事。足の運び様の事、爪先を少しうけて、跟を強くふむべし。足遣ひハ、事によりて、大小遅速ハあれども、常にあゆむが如し。足に、飛足、浮足、踏居る足とて、是三ツ、嫌ふ足なり。此道の大事ニ曰、陰陽の足といふ足肝要也。陰陽の足とハ、片足ばかり動か【脱字】ぬ【脱字】なり。切時、引時、請時迄も、陰陽とて、左右/\とふむ足なり。返す/\片足踏事あるべからず。能々吟味すべきものなり。    PageTop    Back   Next 

  7 五方の搆の事

 【吉田家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左のわきに搆事、是五方也。搆、五つにわかつといへども、ミな人をきらむためなり。搆、五より外ハなし。何れの搆なりとも、搆と思わず、切事なりとおもふべし。かまへの大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ躰の搆也。両脇ハゆふのかまへなり。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆也。右左は、所によりて分別有り。此道の大事にいはく、搆の極は中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にしてミよ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆なり。能々吟味すべし。

 【近藤家甲本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左の脇に搆事、是五方也。搆五つにわかつといへども、ミな人をきらんため也。搆五つより外ハなし。何れの搆なりとも、搆と思ハず、切事なりとおもふべし。かまへの大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、體の搆也。両脇は、ゆふの搆也。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆也。右左ハ、所によりて分別有。此道の大事にいはく、搆の極ハ中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にして見よ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆也。能々吟味すべし。

 【近藤家乙本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左のわきに搆事、是五方也。搆五ツにわかつといへども、ミな人をきらんため也。搆五ツより外ハなし。いづれの搆なりとも、搆と思ハず、切事なりとおもふべし。かまへの大小は、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、體の搆也。両脇は、ゆふの搆也。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆也。右左ハ、所によりて分別有。此道の大事にいはく、搆の極は中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にして見よ、中段ハ大将の座也。大将につきしたがふ四段の搆也。能々吟味すべし。

 【中山文庫本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆る事、左の脇に搆事、是五方也。搆五ツにわかつといへども、皆人を切らむため也。搆五ツより外ハなし。何れの搆なりとも、搆と思はず、切事なりと思ふべし。搆の大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、躰の搆也。両脇ハ、ゆふの搆也。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆也。右左ハ、所によりて分別有。此道の大事にいはく、搆の極ハ中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にして見よ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆なり。能々吟味すべし。

 【赤見家丙本】

一 五方の構の事。五方の構ハ、上段、中段、下段、右の脇に構事、左のわきに構事、是五方也。構五つにわかつといへども、ミな人をきらんため也。構五つより外ハなし。いづれの構なりとも、構と思ハず、切事なりとおもふべし。かまへの大小は、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、體の構也。両脇は、ゆふの構也。右左の構、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての構也。右左は、所によりて分別有。此道の大事にいはく、構の極ハ中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にして【脱字】、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の構也。能々吟味すべし。

 【石井家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左のわきに搆事、是五方也。搆五つにわかつといへども、ミな人をきらんため也。搆五つより外ハなし。何れの搆なりとも、搆と思ハず、切事なりとおもふべし。かまへの大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、體の搆也。両脇ハ、ゆふの搆なり。右左のかまへ(ハ)、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆也。右左ハ、所によりて分別有。此道の大事にいはく、搆の極ハ中段と心得べし。中段、搆の本意也。兵法大にして見よ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆也。能々吟味すべし。

 【伊丹家甲本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左の脇に搆事、是五方也。搆五つにわかつといへども、みな人をきらむため也。搆五より外ハなし。何れの搆なりとも、搆と思はず、切事なりとおもふべし。かまへの大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、躰の搆也。両脇ハ、ゆふのかまへなり。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆なり。右左ハ、所によりて分別有。此道の大事にいはく、搆の極ハ中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にしてみよ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆なり。能々吟味すべし。

 【澤渡家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左の脇に搆事、是五方也。搆五ツにわかつといへども、ミな人を切らんため也。かまへ五ツより外はなし。いづれの搆なりとも、搆と思ハず、切事なりと思ふべし。かまへ【脱字】大小は、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、體の搆也。両脇は、ゆふの搆也。右左の搆、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆なり。右左は、所によりて分別あり。此道の大事にいはく、搆の極は中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にしてミよ。中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆也。能々吟味すべし。

 【伊藤家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左のわきに搆事、是五方也。搆五つにわかつといへども、ミな人をきらんため也。搆五つより外ハなし。いづれの搆なりとも、搆と思ハず、切事なりとおもふべし。かまへの大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、體の搆也。両脇は、ゆふの搆なり。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆也。右左ハ、所によりて分別有。此道の大事にいはく、搆の極ハ中段と心得べし。中段、かまへの本意也。兵法大にして見よ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆也。能々吟味すべし。

 【伊丹家乙本】

一 五方の搆の事。五方の搆は、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左の脇に搆事、是五方なり。搆五ツにわかつといへども、皆人をきらぬためなり。搆、五より外はなし。いづれの搆なりとも、搆とおもわず、きることなりとおもふべし。搆の大小は、ことにより、利に従ふべし。上中下は、躰の搆なり。両脇は、ゆふの搆なり。右左の搆、上【脱字】つまりて、脇一方つまりたる所など【脱字】の搆なり。右左は、所によりて分別有。此道の大事にいわく、搆の極は中段と心得べし。中段、搆の本意なり。兵法大にしてミよ、中段は大将の座なり。大将につぎ、跡四段の搆なり。よく/\吟味すべし。

 【神田家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆事、左のわきに搆事、是五方也。搆五つにわかつといへども、ミな人をきらんため也。搆五つより外ハなし。いづれの搆なりとも、搆と思ハず、切事なりとおもふべし。かまへの大小(ハ)、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、體の搆也。両脇は、ゆふの搆なり。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての搆也。右左ハ、所によりて分別有。此道の大事にいはく、搆の極ハ中段と心得べし。中段、搆の本意也。兵法大にして見よ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆也。能々吟味すべし。

 【猿子家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆ゆる事、左の脇に搆事、是五方也。搆五つに分つといへども、皆人を切らんため也。搆五つより外ハ無し。何れの搆なり共、搆と思ハず、切事なりと思ふべし。搆の大小ハ、事により、利に従ふべし。上中下ハ、體の搆也。両脇ハ、ゆふの搆なり。左右の搆、上のつまりて、脇一方つまりたる所抔にての搆也。左右ハ、所によりて分別有。此道の大事に曰く、搆の極ハ中段と心得べし。中段、搆の本意也。兵法大にして見よ、中段ハ大将の座也。大将に付、跡四段の搆也。能々吟味すべし。

 【楠家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右のわきに搆ゆる事、左のわきにかまゆる事、是五方也。搆、五ツにわかつといへども、ミな人をきらんため也。搆、五ツより外ハなし。いづれの搆なりとも、かまゆるとおもはず、きることなりとおもふべし。搆の大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ躰の搆也。兩わきハゆふの搆也。右ひだりの搆、うへのつまりて、わき一方つまりたる所などにての搆也。右ひだりハ、處によりて分別有。此道の大事にいはく、搆のきはまりハ中段と心得べし。中段、搆の本意也。兵法大きにしてミよ。中段ハ大將の座也。大將につぎ、あと四段の搆也。よく/\吟味すべし。

 【細川家本】

一 五方の搆の事。五方のかまへは、上段、中段、下段、右のわきにかまゆる事、左のわきにかまゆる事、是五方也。搆、五ツにわかつといへども、皆人をきらん為也。搆、五ツより外はなし。いづれのかまへなりとも、かまゆるとおもハず、きる事なりとおもふべし。搆の大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下は躰の搆也。兩わきはゆふの搆也。右ひだりの搆、うへのつまりて、わき一方つまりたる所などにての搆也。右ひだりは、所によりて分別あり。此道の大事にいはく、搆のきわまりは中段と心得べし。中段、搆の本意也。兵法大きにして見よ。中段ハ大將の座也。大將につぎ、あと四段の搆也。能々吟味すべし。

 【丸岡家本】

一 五方の搆の事。五方の搆は、上段、中段、下段、右の脇に搆る事、左の脇に搆る事、是五方也。搆五ツに分ツといへども、皆人を打んためなり。かまへ、五ツより外はなし。何れも搆なりとも、かまゆると思ハず、切事也と思べし。かまへの大小は、事によりて理に隨べし。上中下は躰の搆也。両脇は用の搆なり。左右の搆、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにても搆也。右左は、處ニよりて分別有。此道の大事に云ク、搆の極りは中段と心得べし。中段は、搆の本意也。兵法大ニして見よ。中段は大将の座也。大将に付、跡四段の搆なり。能々吟味すべし。

 【富永家本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇ニ搆事、左の脇に搆事、是五方なり。搆、五ツにわかつといへども、皆人を切らん為なり。搆、五ツより外ハなし。何も搆成とも、搆とをもわず、切事なりと思ふべし。搆の大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ躰の搆なり。両脇ハゆふの搆なり。右左の搆は、上のつまりて、脇一方つまりたる処などにての搆也。右左ハ、所によりて分別あり。此道の事大事に曰、搆のきわまりハ中段と心得べし。中段、搆の本意なり。兵法

大きにして見よ。中段ハ大将の座なり。大将につぎ、跡四段の搆也。能/\吟味すべし。  【常武堂本】

一 五方の搆の事。五方のかまへハ、上段、中段、下段、右のわきにかまゆる事、左のわきにかまゆる事、是五方也。搆、五ツにわかつといへども、皆人をきらん為也。搆、五ツより外はなし。いづれの搆なりとも、かまゆるとおもはず、きる事なりとおもふべし。搆の大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ躰の搆也。両わきハゆふの搆也。右ひだりの搆、うへのつまりて、わき一方つまりたる所などにての搆也。右ひだりハ、所によりて分別あり。此道の大事にいはく、搆のきわまりハ中段と心得べし。中段、搆の本意也。兵法大きにして見よ。中段は大將の座也。大將につぎ、あと四段の搆也。能々吟味すべし。

 【田村家本】

 五方之搆ノ事 五方ノ搆ハ、上段、中段、下段、右ノ脇ニ搆ル事、左ノ脇ニ搆ル事、是五方ナリ。カマヱ五ツニワカツト云共、皆人ヲ切ンタメ也。搆、五ツヨリ外ハナシ。何モ搆ナリ共、カマユルト思ズ、切事也ト思ベシ。搆ノ大小ハ、コトニヨリテ利ニ隨フ可シ。上中下ハ躰ノ搆也。兩脇ハ用ノ搆也。右左ノ搆、上ノツマリテ、ワキ一方ツマリタル処ナドニテノ搆也。右左ハ所ニヨリテ分別有。此道ノ大事ニ云ク、搆ノ極リハ中段ト心得ベシ。中段ハ搆ノ本意也。兵法大ニシテ見ヨ。中段ハ大将ノ座也、大将ニ付、アト四段ノ搆也。能々吟味スベシ。

 【狩野文庫本】

一 五方の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆【脱字】、左の脇に搆ゆる事、是五方也。搆五ツにわかつといへども、皆人を切ん為也。搆、五ツの外はなし。何れの搆成とも、搆ゆると思ハず、切事成と思ふべし。搆の大小ハ、事ニより利ニ隨ひ、上中下、躰の搆なり。兩脇ハ用の搆也。右左の搆、上の詰て、脇一方詰りたる所抔ニ而の搆なり。右左ハ所によりて分別有。此道の大事ニ云、搆の究ハ中段と心得べし。中段の搆本意也。兵法大にして見るに、中段ハ大将の座也、大将につぎ、跡四段の搆なり。能々吟味すべし。

 【多田家本】

一 五方の搆の事。五方【脱字】ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆ゆる事、左の脇に搆ゆる事、是五方也。搆五つに分つといへども、皆人を切【脱字】為也。搆五つより外ハなし。何れの搆なりとも、搆ゆると不思、切事成と思ふべし。搆の大小は、事によりて利に隨ふべし。上中下は、躰の搆也。両脇ハ、ゆうの搆也。左右の搆、上のつまりて、脇一方のつまりたる所抔にての搆也。左右は、所によりて分別有。此道の大事に曰、搆【脱字】は中段と心得べし。中段の搆本意也。兵法大き【脱字】して見よ、中段ハ大将の座也。大将につぎ、跡四段の搆なり。能々吟味すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 五方ノ搆ノ事。五方ノ搆ハ、上段、中段、下段、右ノ脇ニ搆ユル事、左ノ脇ニ搆ル事、是五方也。搆五ツニ分ツト雖モ、皆人ヲ切ン為也。搆、五ツヨリ外ハ無シ。何レモ搆ナリトモ、搆ルト思ハズ、切ル事也ト思ベシ。搆ノ大小【脱字】、事ニ依テ利ニ從ベシ。上中下ハ躰ノ搆也。兩脇ハ用ノ搆也。右左ノ搆ヘ、上ノツマリテ、脇一方ツマリタル所ナドニテノ搆也。右左ハ、所ニヨリテ分別アリ。此道ノ大事ニ云、搆ノ極リハ中段ト心得ベシ。中段、搆ノ本意也。兵法大小シテ見ヨ。中段ハ大将ノ座也、大将ニ付、跡四段ノ搆也。能【脱字】吟味スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 五法の搆の事。五方の搆ハ、上段、中段、下段、右の脇に搆る事、左の脇に搆る事、是五法也。搆、五ツに分つと云共、皆人を切らん為也。搆、五ツより外はなし。何れも搆成れ共、搆ると思はず、切事也と思ふべし。搆の大小ハ、ことにより、利にしたがふべし。上中下は躰の搆也。両脇はゆふの搆也。右左の搆、うへのつまりて、脇一方つまり出たる所抔にての搆也。右左ハ、所によりて分別有べし。此道の大事に曰、搆の究りハ中段と心得べし。中段、搆の本意也。兵法大きにして見よ。中段ハ大将の座也。大将に付、跡四段の搆也。能々吟味すべし。  

 【大瀧家本】

一 五方の搆の事。五方の搆の、上段、中段、下段、右の脇に搆る事、左の脇に搆る事、是五方の搆五ツに分るといへども、皆人を切らん為也。搆、五ツより外ハなし。何れの搆なりとも、搆ゆると思はず、切る事なりと思ふべし。搆の大小ハ、殊に寄、利に隨ふべし。上中下ハ躰の搆なり。両脇ハ用の搆なり。【脱字*********************】。左右ハ、所によりて分別有。此道の大事に曰く、搆の極は中段と心得べし。中段ハ、搆の本意なり。兵法大にして見よ。中段ハ大將の座也。大將に付、あと四段の搆也。能々吟味すべし。    PageTop    Back   Next 

  8 太刀の道と云事

 【吉田家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知と云ハ、常にわがさす刀を、指二つにて振ときも、道すぢ能しりてハ、自由に振もの也。太刀をはやくふらむとするに依て、太刀の道さかひて、振難し。太刀ハ振よきほどに、静に振心也。或ハ扇、或ハ小刀などつかふ様ニ、はやくふらむとおもふによつて、太刀の道違ひて、振がたし。夫ハ、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀をうちさげてハ、あげよき道へ上、横に振てハ、横にもどり能道へもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五のおもてをつかひ覚れバ、太刀のミち定て、振よき所也。よく/\鍛錬すべし。

 【近藤家甲本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知といふハ、常に我さす刀を、指二つにて振時も、道すぢ能しりてハ、自由に振もの也。太刀をはやくふらんとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或ハ扇、あるひハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫ハ、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道へもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我が【脱字】法の五つの表をつかひ覚れバ、太刀の道定て振能所也。能々鍛錬すべし。

 【近藤家乙本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知といふは、常に我さす刀を、指二ツにて振時も、道すぢ能しりてハ、自由に振もの也。太刀をはやくふらんとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀は、振よきほどに、静に振心也。或は扇、あるひハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依而、太刀の道違ひて振がたし。夫は、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道へもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五の表をつかひ覚れバ、太刀の道定て振よき所也。能々鍛錬すべし。

 【中山文庫本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知と【脱字】ハ、常に我さす刀を、指二ツにて振時も、道すぢ能しりてハ、自由に振もの也。太刀を早く振んとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或ハ扇、或、小刀などつかふ様に、早く振んと思ふに依て、太刀の道違て振がたし。夫ハ、小刀きざみといひて、太刀にては人のきれざるもの也。太刀をうちさげてハ、あげよき道へ上、横に振てハ、横にもどり能道へもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五ツの表をつかひ覚ゆれバ、太刀の道定て振よき所也。能々鍛錬すべし。

 【赤見家丙本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知といふハ、常にわがさす刀を、指二つにて振時も、道すぢ能しりてハ、自由に振もの也。太刀をはやくふらんとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或ハ扇、あるひハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫ハ、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道にもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五の表をつかひ覚れバ、太刀の道定て振よき所也。能々鍛錬すべし。

 【石井家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知るといふハ、常に我さす刀を、指二つにて振る時も、道筋能しりては、自由に振もの也。太刀をはやくふらんとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或ハ扇、あるひハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫ハ、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道へもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我が兵法の五つの表をつかひ覚ゆれば、太刀の道定て振能所也。能々鍛錬すべし。

 【伊丹家甲本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知と云ハ、常にわがさす刀を、指二ツにて振時も、道すぢよくしりてハ、自由に振もの也。太刀を早くふらむとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或扇、或小刀などつかふ様に、はやくふらむとおもふによつて、太刀の道違て振がたし。夫ハ、小刀きざみといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀をうちさげてハ、あげよき道へ上、横に振てハ、横にもどり能道へもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五のおもてをつかひ覚れバ、太刀の道定て振よき所也。よく/\鍛錬すべし。

 【澤渡家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知といふハ、常に我がさす刀を、指二ツにて振時も、道すぢよくしりて【脱字】、自由に振もの也。太刀をはやく振んとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静にふる心也。あるひハ扇、あるひハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫は、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道にもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我が兵法の五の表をつかひ覚れバ、太刀の道定て、振よき所也。能々鍛錬すべし。

 【伊藤家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知るといふハ、常に我さす刀を、指二つにて振時も、道すぢ能知りてハ、自由に振もの也。太刀をはやくふらんとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或ハ扇、あるひハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫ハ、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道にもどし、いかにも大にひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五つの表をつかひ覚ゆれバ、太刀の道定て振能所也。能々鍛錬すべし。

 【伊丹家乙本】

一 太刀の道といふ事。太刀の道を知といふことハ、常にわがさす刀を、指二ツにて振ときも、道筋よく知りては、自由に振もの也。太刀を早く振らぬとするによつて、太刀の道違て振難し。太刀は、ふりよき程に、静にふる心也。或扇、或小刀など遣ふ様に、はやく振らぬとおもふに依て、太刀の道違ひてふりがたし。夫は、小刀きざミといゝて、太刀にては人のきれざるものなり。太刀をうちさげては、あげよき道え上、横に振てハ、横にもどりよく道えもどし、いかにも大きにひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五ツの表を遣ひ覚ゆれば、太刀の道定て振よき所也。よく/\鍛錬すべし。

 【神田家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知るといふハ、常に我さす刀を、指二つにて振時も、道筋能しりてハ、自由に振もの也。太刀をはやくふらんとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よきほどに、静に振心也。或ハ扇、あるひハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫は、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道に(へ)もどし、いかにも大にひぢ(を)のべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五つの表をつかひ覚れバ、太刀の道定而振能所也。能々鍛錬すべし。

 【猿子家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知るといふハ、常に我が指刀を、指二つにて振時も、道筋能しりてハ、自由に振者也。太刀を早く振らんとするに依て、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振よき程に、静に振心也。或ハ扇、或ハ小刀抔遣ふ様に、早く振んと思ふに依て、太刀の道違ひて振がたし。夫ハ、小刀刻ミといふて、太刀にてハ人の切れざるもの也。太刀を打さげてハ、揚よき道へ上、横にふりてハ、横にもどり能道にもどし、いかにも大に臂【脱字】のべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五つの表をつかひ覚ゆれバ、太刀の道定て振能所也。能々鍛錬すべし。

 【楠家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道をしるといふハ、常にわがさす刀を、ゆび二ツにてふる時も、道すじよくしりてハ、自由にふるもの也。太刀をはやくふらんとするによつて、太刀の道さかいて、ふりがたし。太刀ハふりよきほどに、静にふる心なり。或ハ扇、或は小刀などつかふやうに、はやくふらんと思ふによつて、太刀の道ちがいて、ふりがたし。それハ、小刀きざミといひて、太刀にてハ人のきれざる物也。太刀を打さげてハ、あげよき道へあげ、横にふりてハ、よこにもどりよき道へもどし、いかにも大きにひぢをのべて、つよくふる事、是太刀の道也。わが兵法の五ツのおもてをつかひ覚ゆれバ、太刀のミち定りて、ふりよき所也。能々鍛練すべし。

 【細川家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知と云は、常に我さす刀を、ゆび二ツにてふる時も、道すじ能しりては、自由にふるもの也。太刀をはやく振んとするによつて、太刀の道さかいて、ふりがたし。太刀はふりよき程に、静にふる心也。或扇、或小刀などつかふやうに、はやくふらんとおもふによつて、太刀の道ちがいて、ふりがたし。それハ、小刀きざみといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげては、あげよき道へあげ、横にふりては、よこにもどりよき道へもどし、いかにも大きにひぢをのべて、つよくふる事、是太刀の道也。我兵法の五ツのおもてをつかひ覚れば、太刀の道定りて、ふりよき所也。能々鍛練すべし。

 【丸岡家本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知といふは、常に我さす刀を、指二ツにて振時も、道筋よくしりては、自由に振るもの也。太刀をはやくふらんとするによりて、太刀の道さかひて、振難し。太刀はふりよきほどに、静にふる心也。或は扇、或は小刀などつかふやうに、はやく振らんと思ふによりて、太刀の道ちがふて、ふりがたし。それは、小刀刻と云て、太刀にては人のきれざるもの也。太刀を打下ては、揚よき道にあげ、横にふりては、横にもどりよき道へもどし、いかにも大きにひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五ツの表をつかひ覚れば、太刀の道定りて、振能處也。能々鍛錬すべし。

 【富永家本】

一 太刀の道といふ事。太刀の道を知るといふハ、常に我さす刀をさし指弐ツにてふる時も、道筋能しりてハ、自由にふる者なり。太刀【脱字】はやくふらんとするによつて、太刀の道さかつて、ふりがたし。太刀ハふり能程にしづかにふる心なり。或ハ【脱字**】小刀などつかふやうに、はや【脱字】ふらんと思ふによつて、太刀の道違ふて、ふりがたし。夫【脱字】小刀きざミといふて、太刀にてハ人の切ざるものなり。太刀を打さげてハ、あげよき道へあげ、横にふりてハ、横にもどりよき道へもどし、いかにも大きにひぢをのべて、強くふる事、是太刀の道なり。我兵法の五ツのおもてハ仕ゐ覚ゆれバ、太刀の道さだまりて、ふり能所なり。能々鍛練すべし。

 【常武堂本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知といふハ、常に我さす刀を、ゆび二ツにてふる時も、道すじ能しりてハ、自由にふるもの也。太刀をはやく振らんとするによつて、太刀の道ちかひて、ふりがたし。太刀ハふりよき程に静にふる心也。或ハ扇、或ハ小刀などつかふ様に、はやくふらんとおもふによつて、太刀の道ちがいて、ふりがたし。それハ、小刀きざみといひて、太刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へあげ、横にふりてハ、よこにもどりよき道へもどし、いかにも大きにひぢをのべて、つよくふる事、是太刀の道也。我兵法の五ツのおもてをつかひおぼゆれバ、太刀の道定りて、ふりよき所也。能々鍛練すべし。

 【田村家本】

 太刀之道ト云事 タチノ道ヲ知ト云ハ、常ニ吾サス刀ヲ、指二ツニテ振時モ、道筋ヨク知テハ自由ニ振モノ也。太刀ヲ速ク振ントスルニ因テ、太刀ノ道サカイテ振難シ。太刀ハ振ヨキホドニ靜ニフル心也。或扇、或小刀ナドツカウヤウニ、早ク振ント思ニ依テ、太刀ノ道チガヒテ振ガタシ。ソレハ、小刀キザミト云テ、太刀ニテ【脱字】人ノ切ザルモノ也。太刀ヲ打サゲテハ、アゲヨキ道ヱ揚、横ニ振テハ、横ニモドリヨキ道ニ戻シ、イカニモ大キニヒヂヲノベテ、強フルコト、【脱字】太刀ノ道也。吾兵法ノ五ツノ表ヲツカイ覚レバ、太刀ノミチ定リテ、振ヨキ處也。能々鍛練スベシ。

 【狩野文庫本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知と云は、常に我指ス刀を指シ二ツにて振時【脱字】、道筋よく知てハ、自由に振者也。太刀を早く振んとするに仍而、太刀の道たがいて振がたし。太刀は常ニふり能程ニ静に振心也。或ハ扇、或ハ小刀など遣ふ樣に、はやく振んと思ふニよつて、太刀の道たがいて振難し。夫ハ、小刀刻といふて、太刀にてハ人は切ざるもの也。太刀を打下てハ、上ゲ能道へ戻シ、横へはりてハ、横へもどしよき道へ戻し、如何にも大キにひぢを延て、強く振事、是太刀の道也。我兵法の五ツの表をつかひ覚ゆれバ、太刀の道定まりて、振能所也。能々鍛錬すべし。

 【多田家本】

一 太刀の道といふ事。太刀の道を知といふハ、常に我指刀を、ゆび二つにて振時も、道筋能し【脱字】てハ、自由に振物也。太刀を早く振んとするによつて、太刀の道さかひて振がたし。太刀ハ、振能程に、静に振【脱字】也。或は扇、或は小刀抔遣ふ様ニ、早く振んと思ふによつて、太刀の道違ひて振がたし。夫ハ、小刀きざみと云て、太刀にては人は切れざるもの也。太刀を打さげてハ、あげ能道へあげ、【脱字***】、横にも取能道へ戻し、如何にも大きにひぢをのべて、強く振事、是太刀の道也。我が兵法の五つの表を仕覚れば、太刀の道定りて、振能所也。【脱字】鍛錬すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 太刀ノ道ト云事。太刀ノ道ヲ知ト云ハ、常ニ我差刀ヲ、指二ツニテ振寸モ、道筋能知リテハ、自由ニ振者也。太刀ヲ早【脱字】振ントスルニ依テ、太刀ノ道逆フテ振ガタシ。太刀ハ、振ヨキ程ニ静ニ振心也。【脱字】、或ハ小刀抔ツカフ様ニ、早ク振ント思フニ依テ、太刀ノ道違ヒテ振難シ。夫ハ、小刀キザミト云テ、太刀ニテハ人ノ切レザル者也。太刀ヲ打下ゲテハ、上ゲヨキ道ヘアゲ、横ニアリテハ、横ニ戻リ能道へ戻シ、イカニモ大キニ臂ヲノベテ、強クフル事、是太刀ノ道也。我兵法ノ五ツノ表ヲツカヒ覚レバ、太刀ノ道足リテ、振ヨキ所也。能々鍛錬スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 太刀の道と云事。太刀の道を知ると云ハ、常に我指す刀をさし二ツにて振時も、道筋能知りては、自由に振る者也。太刀【脱字】早く振んとするに依て、太刀の道さかひて、振難し。太刀ハ振りよき程にしづかに振る心也。或ハ扇、或ハ小刀などつかふ様に、早く振らんと思ふによつて、太刀の道ちがひて、ふりがたし。夫は、小刀きざみと云て、太刀にてハ人の切れざる者也。太刀を打さげてハ、上げ好道々へ上ゲ、横に振ては、横に戻り能き道へ戻し、如何にも大きにひじをのべて、つよく振る事、是太刀の道也。我兵法の表五ツを仕覚ゆれバ、太刀の道定りて、ふりよき物なり。能々鍛練すべし。  

 【大瀧家本】

一 太刀の道といふ事。太刀の道を知るといふハ、常に我さす刀を、ゆび二ツにて振時も、道筋能知りてハ、自由に振ものなり。太刀をはやく振らんとするに依て、太刀の道違ひて、振がたし。太刀ハ振よき程に静に振る心也。或ハ扇、或ハ小刀など遣ふ様に、はやく振らんと思ふに依而、太刀の道違ひて、ふりがたし。夫ハ、小刀きざみといふて、小刀にてハ人のきれざるもの也。太刀を打さげてハ、あげよき道へ上ゲ、横にふりては、横にもどりよき道にもどし、いかにも大にひぢ【脱字】のべて、強く振事、是太刀の道なり。我兵法の五ツの表をつかひ覚ゆれば、太刀の道定りて、振能所也。能々鍛練すべし。    PageTop    Back   Next 

  9 五つの表、第一の搆 中段

 【吉田家本】

一 五つのおもての次第の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵のかほへ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはずしてのり、又敵うち懸るとき、切先かへしにて打、うち落したる太刀、其儘置、又敵の打かくるとき、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五つのおもて、書付る斗にてハ、合点なりがたし。五ツのおもてのぶんハ、手にとつて、太刀の道稽古するところなり。此五つの太刀筋にて、我太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五つより外に非ず、としらするところ也。鍛錬すべき也。

 【近藤家甲本】

一 五つの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵のかほへ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をうちかくる時、右へ太刀を[重複]はづしてのり、又敵打懸る時、切先かへしにて打、うち落したる太刀、其まゝ置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。捴別、此五つの表、書付る斗にてハ合点成がたし。五つの表の分ハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五つの太刀筋にて、わが太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五つより外にあらず、としらするところ也。鍛錬すべき也。

 【近藤家乙本】

一 五つの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵の顔へ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打懸る時、切先かへしにて打、うち落したる太刀、其まゝ置、又敵の打かくるとき、下より敵の手をはる、是第一也。捴別、此五つの表、書付る斗にてハ合点成がたし。五つの表の分ハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五ツの太刀筋ニて、わが太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五ツより外にあらず、としらする所なり。鍛錬すべき也。

 【中山文庫本】

一 五のおもての次第の事。第一の搆、中段。太刀先を敵の顔へ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵うち懸るとき、切先かへしにてうち、【脱字】落したる太刀、其儘置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五ツのおもて、書付る斗にてハ合点なりがたし。五ツのおもてのぶんハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五ツより外に非ず、と知する所也。鍛錬すべき也。

 【赤見家丙本】

一 五つの表の次第の事。第一の構、中段。太刀さきを敵のかほへ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打懸るとき、切先かへしにて打、うち落したる太刀、其まゝ置、又敵の打かくるとき、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五つの表、書付る斗にてハ合点成がたし。五つの表の分ハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五つの太刀筋にて、わが太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の構、五つより外にあらず、としらするところ也。鍛錬すべき也。

 【石井家本】

一 五つの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀先を敵のかほへ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵うち懸る時、切先かへしにて打、うち落したる太刀、其まゝ置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。捴別、此五つの表、書付る斗にてハ合点成がたし。五つの表の分ハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五つの太刀筋にて、わが(兵法の)太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五つより外にあらず、としらするところ也。鍛錬すべき也。

 【伊丹家甲本】

一 五つのおもての次第の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵のかほへ付て、敵に行相時、敵太刀打かくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵うち懸る時、切先かへしにてうち、【脱字】落したる太刀、其侭置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五つのおもて、書付る斗にてハ合点なりがたし。五つのおもてのぶんハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五つの太刀筋にて、我太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五つより外に非ず、としらする所也。鍛錬すべき也。

 【澤渡家本】

一 五つの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵のかほへ付て、敵に行相とき、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはづしてのり、又、敵打懸る時、切先かへしにてうち、【脱字】落したる太刀、其まゝ置、又敵のうちくるとき、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五ツの表、書付る斗にてハ、合点成がたし。五ツの表の分ハ、手に取て、太刀の道稽古する所也。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道をも知り、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五ツより外【脱字】あらず、としらする所也。鍛錬すべき也。

 【伊藤家本】

一 五つの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵のかほへ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打懸る時、切先かへしにて打、うち落したる太刀、其まゝ置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。捴別、此五つの表、書付る斗にてハ合点成がたし。五つの表の分ハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五つの太刀筋にて、わが太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五つより外にあらず、としらするところ也。鍛錬すべき也。

 【伊丹家乙本】

一 五ツの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀先を敵の面えつけて、敵に行相とき、敵太刀うちかくるとき、右え(江)太刀をはづしてのり、また敵うち懸るとき、切先かゑしにて打、【脱字】落したる太刀、其侭置、また敵の打かくるとき、下より敵の手をはる、是第一なり。惣別、此五ツの表、書付るばかりにては合点なりがたし。五ツの表の分ハ、手に取て、太刀の道稽古するところなり。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道をもしり、いか様ニも敵のうつ太刀知るものなり。是二刀の太刀の搆、五ツより外ニあらず、とし【脱字】るところ也。鍛錬すべきところなり。

 【神田家本】

一 五つの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀先を敵のかほへ付て、敵に行相時、敵太刀うちかくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打懸る時、切先かへしにて打、【脱字】落したる太刀、其まゝ置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。捴別、此五つの表、書付る斗にてハ合点成がたし。五つの表の分ハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五つの太刀筋にて、わが太刀の道をもしり、いかやうにも敵のうつ太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五つより外にあらず、としらするところ也。鍛錬すべき也。

 【猿子家本】

一 五つの表の次第の事。第一の搆、中段。太刀先を敵の顔へ付て、敵に行相時、敵太刀打かくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打懸る時、切先かへしにて打、【脱字】落したる太刀、其まゝ置、又敵の打懸る時、下より敵の手をはる也、是第一也。捴別、此五つの表、書付る斗りにてハ合点成がたし。五つの表の分ハ、手に取て、太刀の道稽古する所也。此五つの太刀筋にて、我が太刀の道をも知り、如何様にも敵の打太刀しるゝ所也。是二刀の太刀の搆、五つより外にあらず、としらする所也。鍛錬すべし。

 【楠家本】

一 五ツのおもての次第第一の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵の顔へ付て、敵に行相時、敵太刀打かくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打かくる時、切先がへしにて打、うちおとしたる太刀、其まゝ置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五ツのおもて、書付斗にてハ、合点なりがたし。五ツのおもてのぶんハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五ツの太刀すじにて、わが太刀の道をもしり、いかやうにも敵の打太刀しる【脱字】所也。是二刀の太刀の搆、五ツより外にあらず、としらする所也。鍛練すべき也。

 【細川家本】

一 五ツのおもての次第第一の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵の顔へ付て、敵に行相時、敵太刀打かくる時、右へ太刀をはづして乗り、又敵打かくる時、きつさきがへしにて打、うちおとしたる太刀、其儘置、又敵の打かくる時、下より敵の手【脱字】はる、是第一也。惣別、此五ツのおもて、書付るばかりにては、合点成がたし。五ツのおもてのぶんハ、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道をもしり、いかやうにも敵の打太刀しるる所也。是二刀の太刀の搆、五ツより外にあらず、としらする所也。鍛練すべきなり。

 【丸岡家本】

一 五ツの表の次第第一の事。第一の搆、中段。太刀先を敵の顔へつけて、敵に行逢時、敵太刀打かくる時、右え太刀をはづして乗り、又敵打かくる時、切先返しにて打、々落したる太刀、其まゝ置、又敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一也。摠而、此五ツの表、書付ばかりにては、合点なりがたし。五ツの表のぶんハ、手に取て、太刀の道けいこする處也。此五ツの太刀すぢにて、我太刀の道をもしり、いかやうにも敵の打太刀知る處也。是二刀の太刀の搆、五ツより外にあらず、と知する所なり。たんれんすべきなり。

 【富永家本】

一 五ツのおもての次第第一の事。第一の搆、中段。太刀先を敵の顔に付て、敵に行逢時、敵太刀打かくる時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打かくる時、切先がゑしにて打、うちおとしたる太刀、其まゝおき、また敵の打かくる時、下より敵の手をはる、是第一なり。惣別、此五ツのおもて、書付斗にてハ、合点なりがたし。五ツのおもての分ハ、手に取て、太刀の道稽古する処なり。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道をも知り、いか様にも敵の打太刀知る處也。是二刀の太刀の搆、五ツより外に非ず、と知らする處也。鍛練すべきなり。

 【常武堂本】

一 五ツのおもての次第第一の事。第一の搆、中段。太刀さきを敵の顔へ付て、敵に行相時、敵太刀打かくる時、右へ太刀をはづして乗り、又敵打かくる時、きつさきがへしにて打、うちおとしたる太刀、其侭置、又敵の打かくる時、下より敵の手【脱字】はる、是第一也。惣別、此五ツのおもて、書付るばかりにてハ、合点成がたし。五ツのおもてのぶんは、手にとつて、太刀の道稽古する所也。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道をもしり、いか様にも敵の打太刀しるる所也。是二刀の太刀の搆、五ツより外にあらず、としらする處也。鍛練すべきなり。

 【田村家本】

 喝咄切先搆  五ツノ表ノ次第々一之事 第一ノ搆、中段。太刀先ヲ敵ノ顔エ付テ、敵ニ行相トキ、敵太刀打カクルトキ、右エ太刀ヲハヅシテ乗リ、又敵打カクルトキ、切先反シニテ打、ウチヲトシタル太刀、其マ丶置、又敵ノ打カクルトキ、下ヨリテキノ手ヲハル、是第一也。惣ジテ、此五ツノ表ヲ書付計ニテハ、合点成ガタシ。五ツノ表ノ分ンハ、手ニ取テ、太刀ノ道稽古スル処也。此五ツノ太刀筋ニテ、吾太刀ノ道ヲモ知リ、如何ヤウニモ敵ノ打太刀知【脱字】處也。是二刀ノ太刀ノ搆、五ツヨリ外ニアラズ、ト知ラスル処也。鍛練スベキナリ。

 【狩野文庫本】

一 五ツの表の次第第一の事。第一の搆、中段の太刀先を敵の顔へ付て、敵に行逢とき、敵太刀を打懸ル時、右へ太刀をはづして乗、又敵打かゝる時、切先がへしにて打、うち落したる太刀、其侭置、又敵の打掛時、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五ツの【脱字**********】表の分ハ、手にとらでハ、合点成がたし。五法の道筋稽古する處なり。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道をも知、如何樣ニも敵の打太刀知【脱字】處也。是二刀の太刀の搆、五ツより外にあらず、としらする處也。鍛錬すべし。

 【多田家本】

一 五つの表の次第【脱字】。第一の搆、中段。太刀先を敵の顔へ附て、敵に行合時、敵太刀の打かくる時、右の太刀をはづして乗、又、太刀を打かくる時、切先返しにて打、打落したる太刀、其儘置、亦、敵の打かくる時、下より敵の手を張、是第一也。【脱字*****************************************】 此五つの太刀筋にて、我太刀の道をもしり、如何様にも敵の打太刀しるゝ【脱字】也。是二刀の太刀の搆、五つより外にあらず、と知る處也。【脱字***】(★改行なしで次条へ連続)

 【山岡鉄舟本】

一 五ツノ表ノ次第第一ノ事。第一ノ搆ヘ、中段。太刀先ヲ敵ノ顔ヘ付テ、敵ニ行合時、敵太刀打掛ル寸、右ヘ太刀ヲハヅシテ乗、又敵打掛ル寸、切先返シニテ打、ウケ落シタル太刀、其侭ヲキ、又敵ノ打掛ル寸、下ヨリ敵ノ手ヲ張ル、是第一也。惣テ、【脱字】五ツノ表、書付斗ニテハ、合点成難シ。五ノ表ノ分ケハ、手ニ取テ、太刀ノ道、稽古スル所也。此五ツノ太刀筋ニテ、我太刀ノ道ヲモ知リ、イカ様ニモ敵ノ打太刀シル丶處也。是二刀ノ太刀ノ搆、五ヨリ外ニ非ズ、トシラスル所也。鍛錬スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 五ツの表の次第第一の事。第一の搆へ、中段。太刀先を敵の顔に付て、敵に行逢ふ時、敵太刀を打懸る時、右へ太刀をはづしてのり、また【脱字】打懸る時、切先返しにて【脱字】、打をとしたる太刀、其まゝ置、又敵の打懸る時、下より敵の手を張る、是第一也。惣別、此五ツの表、書附斗にてハ、合点行がたし。五ツの表の分ハ、手に取て、太刀の道稽古する所也。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道を【脱字】知り、如何様にも敵の打太刀知る所也。是二刀の太刀の搆、五ツより外に非ず、と知する所也。鍛練すべき也。  

 【大瀧家本】

一 五ツの面の次第の事。第一の搆ひ、中段。太刀先を敵の顔へ付て、敵に行あふ時、敵太刀を打懸る時、右へ太刀をはづしてのり、又敵打懸る時、切先返しにて【脱字】、打落したる太刀、其侭置、又敵の打懸る時、下より敵の手をはる、是第一也。惣別、此五ツの面、書付斗りにてハ、合点成がたし。五ツの面の分ハ、手に取て、太刀の道稽古する所なり。此五ツの太刀筋にて、我太刀の道筋をも知り、如何様にも敵の打太刀知るゝ所なり。是二刀の太刀の搆の五ツより外にあらず、と知らする処也。鍛錬すべきなり。    PageTop    Back   Next 

  10 五つの表、第二の搆 上段

 【吉田家本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵うち懸る所、一度に敵を打也。敵を打はずしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつところを、下よりすくい上てうつ。今一つうつも、おなじ事也。此おもてのうちにおゐてハ、様々の心もち、色々の拍子、此表の内をもつて、一流の鍛錬をすれバ、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべき也。

 【近藤家甲本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵うち懸る所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一つうつも、同事也。此表の内におゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべき也。

 【近藤家乙本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵うち懸る所、壱度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一ツうつも、同じ事也。此表のうちにおゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれば、五ツの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべき也。

 【中山文庫本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打懸る所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其侭置て、又敵のうつところ【脱字】、下よりすくひ上てうつ。今一ツうつも、同じ事也。此表のうちに於てハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五ツの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所あり。稽古すべきなり。

 【赤見家丙本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に構、敵打懸る所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一つうつも、同じ事也。此表のうちにおゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべき也。

 【石井家本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打懸る所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一つうつも、同事也。此表の内におゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべき也。

 【伊丹家甲本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵うちかくる所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其侭置て、又敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一ツうつも、同じ事也。此おもてのうちにおゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此表のうちをもつて、一流の鍛錬をすれば、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべきなり。

 【澤渡家本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打懸る所、一度に敵を打也。【脱字】打はづしたる太刀、其まゝ置て、また敵のうつところ【脱字】、下よりすくひ上てうつ。今一ツうつも、同じ事也。此表のうちにおいてハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五ツの太刀の道、こまやかにしつて、いか樣にも勝所有。稽古すべき也。

 【伊藤家本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵うち懸る所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一つうつも、同事也。此表の内におゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべき也。

 【伊丹家乙本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵うちかくるところ、一度に敵を打也。敵をうちはづしたる太刀、其侭置て、また敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一ツうつも、同じことなり。この表のうちに於は、様/\の心持、いろ/\の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬【脱字】すれバ、五ツの太刀の道、こまやかにしつて、いか様ニも勝所あり。稽古すべきなり。

 【神田家本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打懸る所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつところを、下よりすくひ上てうつ。今一つうつも、同事也。此表の内におゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべき也。

 【猿子家本】

一 表第一の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打かくる所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其侭置て、又敵の打所を、下よりすくひ上てうつ。今一つうつも、同事也。此表の内に於て【脱字】様々の心持、色々の拍子、此表の内を以、一流の鍛錬をすれば、五つの太刀の道、こまやかに知つて、如何様にも勝所有。稽古すべき也。

 【楠家本】

一 おもて第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打かくる所、一度に敵を打也。敵をうちはづしたる太刀、其まゝ置て、又敵のうつ所を、下よりすくひあげてうつ。今一ツ打も、同じ事也。此おもての内におゐてハ、さま/\の心持、色々の拍子、此おもてのうちをもつて、一流の鍛練をすれバ、五ツの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所有。稽古すべきなり。

 【細川家本】

一 おもての第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打かくる所、一度に敵を打也。敵をうちはづしたる太刀、其儘おきて、又敵のうつ所を、下よりすくひ上てうつ。今一ツ打も、同じ事也。此おもての内におゐてハ、様々の心持、色々の拍子、此おもてのうちをもつて、一流の鍛練をすれば、五ツの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所あり。稽古すべき也。

 【丸岡家本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段にかまへ、敵打かくる所、一度に敵を打也。敵を撃はづしたる太刀、其まゝ置て、又敵の打所を、下よりすくひ上て打。今一ツ打も、同事なり。此おもての内におゐては、さま/\の心持、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれば、五ツの太刀の道、細かに知て、いかやうニも勝所あり。稽古すべきなり。

 【富永家本】

一 おもて第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打懸る処、一度に敵を打なり。敵を打はづしたる太刀、其まゝおゐて、また敵の打處を、下よりすくゐ上て打。今一ツ打も同事なり。此面の内におゐてハ、さま/\の心持、色々の拍子、此おもての内を以て、一流の鍛練をすれバ、五つの太刀の道、こまやかにしつて、いかやうにも勝所あり。稽古すべきなり。

 【常武堂本】

一 おもての第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆、敵打かくる所、一度に敵を打也。敵をうちはづしたる太刀、其侭おきて、又敵のうつ所を、下よりすくひ上てうつ。今一ツ打も同じ事也。此おもての内においてハ、様々の心持、色々の拍子、此おもてのうちを以て、一流の鍛練をすれバ、五ツの太刀の道、こまやかにしつて、いか様にも勝所あり。稽古すべき也。

 【田村家本】

 義段搆  表第二之次第之事 第二ノ太刀、上段ニ搆、敵打カクル処、一度ニ敵ヲ打也。敵ヲ打ハヅシタル太刀、其侭ヲヒテ、又敵ノ打処ヲ、下ヨリスクヒ上ゲテ打。今一ツ打モ同事也。此表ノ内ニ於ハ、サマ々【脱字】心持、イロ々【脱字】拍子、此表ノ内ヲ以テ、一流ノ鍛練ヲスレバ、五ツノ太刀ノ道、コマヤカニ知テ、イカヤウニモ勝処也。稽古有ベキ也。

 【狩野文庫本】

一 表第二の次第の事。第二の太刀、上段ニ搆、敵打かくる處、一度ニ敵を打なり。敵を打はヅしたる太刀、其侭置て、又敵打所を、下よりすくひ上て打。今一ツ打も同事なり。此表の内におゐて、様々の心持、色々の拍子、此表の内を以、一流の鍛錬をすれバ、五ツの太刀の道を細やかに知、如何樣ニも勝ところ【脱字】、稽古すべし。

 【多田家本】

(★改行なしで前条から連続)【脱字】第二の次第【脱字***】太刀、上段に搆、敵打かくる所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其侭置て、又敵の打所を、下よりすくひあげて打。今一つ打も、同事也。此表の内にをひて【脱字】、様々の心持有、色々の拍子、此表の内を以て、一流の鍛錬をすれバ、五つの太刀の道をこまやかに知て、如何様にも勝所有。稽古すべき也。(★改行なしで次条へ連続)

 【山岡鉄舟本】

一 表第二ノ次第ノ事。【脱字】二ノ太刀、上段ニ搆、敵打掛ル処、一度ニ敵ヲ打也。敵ヲ打ハヅシタル太刀、其侭置テ、又敵ノ打処ヲ、下ヨリスクヒ上ゲ【脱字】打。今一ツ打モ、同事也。此ヲ以テノ内ニ於テハ、様々ノ心持、色々ノ拍子、此表ノ内ヲ以テ、一流ノ鍛錬ヲスレバ、五ノ太刀ノ道、細カニ知テ、イカ様ニモ勝所有。稽古スベキナリ。

 【稼堂文庫本】

一 表に第二の次第の事。第二の太刀を、上段に搆、敵打懸所、一度に敵を打也。敵を打はづしたる太刀、其侭置て、又敵の打処を、下よりすくひ上て打。今二ツの打も同じ事也。此表の打に於ては、さま/\の心持、色々の拍子、此表の内を以、一流の鍛練をすれバ、五ツの太刀の道、細やかに知れて、如何様にも勝所【脱字】。稽古すべき也。  

 【大瀧家本】

一 面の第二の次第の事。第二の太刀、上段に搆へ、敵打懸る處、一度に敵を打なり。敵を打はなしたる太刀、其儘置て、又敵の打處を、下よりすくひあげて打。今一ツ打も同じ事なり。此面の内におゐて【脱字】、様々の心持、色々の拍子、面の内を以て、一流の鍛錬【脱字】すれば、五ツの太刀の道、こまやかに知て、如何様にも勝処有。稽古すべき也。    PageTop    Back   Next 

  11 五つの表、第三の搆 下段

 【吉田家本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうち懸る所を、下より手をはる也。手をはるところを、又敵はる太刀を打落さむとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横に切こゝろ也。下段にて、敵のうつ所を一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、たんれんすべきもの也。

 【近藤家甲本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうちかくる所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横に切こゝろ也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛錬すべきもの也。

 【近藤家乙本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうちかくる所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横に切こゝろ也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛錬すべきもの也。

 【中山文庫本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵の打懸る所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さむとする所を、こす拍子にて、敵打たる跡、二のうでを横に切る心也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛練すべきもの也。

 【赤見家丙本】

一 表第三の次第の事。第三の構、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうちかくる所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横に切こゝろ也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の構、道をはこぶに、はやき時もをそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛錬すべきもの也。

 【石井家本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうちかくる所を、下より手をはるなり。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横に切こゝろ也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛錬すべきもの也。

 【伊丹家甲本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵の打懸る所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さむとする所を、こす拍子にて、敵打たる跡、二のうでを横に切心也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、たんれむすべきもの也。

 【澤渡家本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうちかくる所を、下より手をはる也。手【脱字】はる所を、又、敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横にきるこゝろ也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛錬すべき者也。

 【伊藤家本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうちかくる所を、下より手をはるなり。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横に切こゝろ也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛錬すべきもの也。

 【伊丹家乙本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひ【脱字】さげたる心にして、敵の打かくるところを、下より手をはるなり。手をはる所を、また敵はる太刀を打落さんとする處を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二の腕を横に切心也。下段にて、敵の打ところを、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時も遅きときも、出合物也。太刀を取て、鍛練すべきものなり。

 【神田家本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段にもち、ひつさげたる心にして、敵のうちかくる所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵うちたる跡、二のうでを横に切こゝろ也。下段にて、敵のうつ所を、一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛錬すべきもの也。

 【猿子家本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵のうち懸る所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする所を、こす拍子にて、敵打たる跡、二のうでを横に切心也。下段にて、敵の打所を、一度に打ちとむる事也。下段の搆、道をはこぶに、早き時も遅き時も、出合こと也。太刀を取て、鍛錬すべき物也。

 【楠家本】

一 おもて第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵の打かくる所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀をうちおとさんとする所を、こす拍子にて、敵打たるあと、二のうでを横にきる心なり。下段にて、敵の打所を一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそき時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛練可有者也。

 【細川家本】

一 おもて第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵の打かくる所を、下より手をはる也。手をはる所を、亦敵はる太刀を打おとさんとする所を、こす拍子にて、敵打たるあと、二のうでを横にきる心也。下段にて、敵の打所を一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時も遅き時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛練あるべき【脱字】也。

 【丸岡家本】

一 おもて第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵の打かくる所を、下より手をはる也。手を張所を、又敵ハる太刀を打落さんとする處を、こす拍子にて、敵打たるあと、二の腕を横に切心なり。下段にて、敵の打處を一度に打止る事也。下段の搆、道をはこぶに、速き時も遅き時も、出合ものなり。太刀を取て、鍛錬あるべき【脱字】也。

 【富永家本】

一 面第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵の打かくる処を、下より手をはるなり。手をはる處を、又敵はる太刀を打おとさんとする處を、こす拍子にて、敵打たる跡を二のうでを横に切處なり。下段にて、敵の打処を一度に打留る事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時もおそきときも、出相者なり。太刀を取て、鍛練あるべき【脱字】なり。

 【常武堂本】

一 おもて第三の次第の事。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵の打かくる所を、下より手をはる也。手をはる所を、亦敵はる太刀を打おとさんとする所を、こす拍子にて、敵打たるあと、二のうでを横にきる心也。下段にて、敵の打所を一度に打とむる事也。下段の搆、道をはこぶに、はやき時も遅き時も、出合もの也。太刀をとつて、鍛練あるべき【脱字】也。

 【田村家本】

 右直搆  表第三之次第之事 第三ノ搆、下段ニ持、提タル心ニシテ、敵ノ打カクル処ヲ、下ヨリ手ヲ張也。手ヲ張ル処ヲ、又敵張太刀ヲ打落サントスル処ヲ、コス拍子ニテ、敵打タルアト、二ノウデヲ横ニ切ル心也。下段ニテ、敵ノ打処ヲ一度ニ打トムル【脱字】也。下段ノ搆、道ヲハコブニ、早時モ遲時モ、出相者也。太刀ヲ取テ、鍛練スベキ【脱字】也。

 【狩野文庫本】

一 表第三の次第【脱字】。第三の搆、下段に持、ひつさげたる心にして、敵の打懸る所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵はる太刀を打おとさんとする所を、【脱字**********************】一度に打留る事也。下段の搆、道をはこぶに、早き時も遅き時も、出合者也。太刀を取て、鍛錬すべし。

 【多田家本】

(★改行なしで前条から連続)【脱字】第三の次第【脱字***】搆、下段に持、提たる心にして、敵の打かくる所を、下より手を張也。手を張所を、又、敵張太刀を打落さんとする所を、こす拍子ニ而、敵打たる跡の二の腕を横に切心なり。下段にて、敵の打所を、一度に打留る事也。下段の搆、道を歩に、早き時も遅き時も、出合もの也。太刀を取て、鍛練有べき【脱字】也。(★改行なしで次条へ連続)

 【山岡鉄舟本】

一 表第三ノ次第ノ事。第三ノ搆、下段ニ持、引下タル心ニシテ、敵ノ打カクル所【脱字】、下ヨリ手ヲハル也。手ヲ張ル所ヲ、又敵張太刀ヲ打落サントスル所ヲ、コス拍子ニテ、敵打タル跡、ニテ腕ヲ横ニ切ル心也。下段ニテ、敵ノ打処ヲ一度ニ打留ル事也。下段ノ搆、道ヲハコブニ、早キ時モ遅キ時モ、出合モノ也。太刀ヲ取テ、鍛錬スベキ物ナリ。

 【稼堂文庫本】

一 表第三の次第の事。第三の搆、下段に持、提たる心にして、敵の打懸る所を、下より手をはる也。手をはる所を、又敵のつよく太刀を打落さんとする所を、【脱字】拍子にて、敵打たる跡を二のうでを横に切る心也。下段にて、敵の打所を一度に打止る事也。下段の搆、道をはこぶに、早き時も遅き時も、出合者也。太刀を取て、鍛練有べき【脱字】也。  

 【大瀧家本】

一 面の第三の次第の事。第三の搆、下段に持、提げたる心にして、敵の打懸る處を、下より手をはるなり。手をはる所を、又敵はる太刀を打落さんとする處を、こす拍子にて、敵打たる後の二の腕を横に切心なり。下段にて、敵の打處を二度に打留る事也。下段の搆ひ、道を運ぶに、早き時も遅き時も、出あふものなり。太刀を取【脱字】、鍛錬あるべき【脱字】なり。    PageTop    Back   Next 

  12 五つの表、第四の搆 左脇

 【吉田家本】

一 表第四の次第【脱字】。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち懸る手を下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さむとするを、手をはる心にて、其儘太刀の道をうけ、わが肩の上へ、すぢかひにきるべし。是太刀の道也。また、敵のうちかくるときも、太刀の道をうけて勝道也。よく/\吟味有べし。

 【近藤家甲本】

一 表第四の次第の事。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけて、わが肩の上へ、すぢかひにきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくるときも、太刀の道をうけて勝道也。能々吟味有べし。

 【近藤家乙本】

一 表第四の次第の事。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけ、わが肩の上へ、すぢかへにきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくるときも、太刀の道をうけて勝道也。能々吟味有べし。

 【中山文庫本】

一 表四段の次第【脱字】。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵の打懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵打落さむとするを、手をはる心にて、其侭太刀の道をうけ、我肩の上へ、すぢかひに切べし。是太刀の道也。また、敵の打かくる時も、太刀の道をうけて勝道なり。能々吟味有べし。

 【赤見家丙本】

一 表第四の次第の事。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけ、わが肩の上へ、すぢかひにきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくるときも、太刀の道をうけて勝道也。能々吟味有べし。

 【石井家本】

一 表第四の次第の事。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけて、わが肩の上へ、すぢかひにきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくるときも、太刀の道をうけて勝道也。能々吟味有べし。

 【伊丹家甲本】

一 表第四の次第【脱字】。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵打落さむとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけ、わが肩のうへへ、すぢかひにきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくる時も、太刀の道をうけて勝道なり。よく/\吟味有べし。

 【澤渡家本】

一 表第四の次第の事。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち掛る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵打落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけて、わが肩の上へ、すぢかひにきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくる時も、太刀【脱字】道をうけて勝道也。能々吟味あるべし。

 【伊藤家本】

一 表第四の次第の事。第四のかまへ、左の脇に横にかまへ【脱字】、敵のうち懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけて、わが肩の上へ、すぢかひてきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくるとき【脱字】、太刀の道をうけて勝道也。能々吟味有べし。

 【伊丹家乙本】

一 表第四の次第の事。第四の搆、左の脇に横に搆へて、敵の打かくる手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さんとするを、手をはる心にて、其侭太刀の道を受て、我肩の上へ、すぢかひにきるべし。是太刀の道なり。又、敵の打かくる時も、太刀の道を受て勝道なり。よく/\吟味すべし。

 【神田家本】

一 表第四の次第の事。第四のかまへ、左の脇に横にかまへて、敵のうち懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけて、わが肩の上へ、すぢかひにきるべし。是太刀の道也。また、敵の打かくるときも、太刀の道をうけて勝道也。能々吟味有べし。

 【猿子家本】

一 表第四の次第の事。第四の搆、左の脇に横に搆て、敵の打懸る手を、下よりはるべし。下よりはるを、敵打落さんとする【脱字】、手を張る心にて、其侭太刀の道を受て、我が肩の上へ、筋違ひに切べし。是太刀の道也。又、敵の打懸る時も、太刀の道を受て勝道也。能々吟味有べし。

 【楠家本】

一 おもて第四の次第の事。第四の搆。左の脇に横にかまへて、敵の打かくる手を下よりはるべし。下よりはるを、敵打おとさんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道をうけ、わが肩のうへゝすじかいにきるべし。是太刀の道也。又、敵のうちかくる時も、太刀の道をうけて勝道なり。よく/\吟味有べし。

 【細川家本】

一 おもて第四の次第の事。第四の搆、左の脇に横にかまへて、敵の打かくる手を下よりはるべし。下よりはるを、敵打おとさんとするを、手をはる心にて、其儘太刀の道をうけ、我肩のうへゝすぢかいにきるべし。是太刀の道也。又、敵のうちかくる時も、太刀の道を受て勝道也。能々吟味あるべし。

 【丸岡家本】

一 表第四の次第の事。第四の搆、右の脇に横にかまへて、敵の打かくる手を下よりはるべし。下よりはるを、敵打落さんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道を受、我肩の上へ直違に切べし。是太刀の道也。又、敵の打かくる時も、太刀の道をうけて勝道なり。能々吟味有べし。

 【富永家本】

一 面第四の次第の事。第四の搆。左の脇に横にかまへて、敵の打かくる手を下よりはるべし。下よりはるを、敵打おとさんとするを、手をはる心にて、其まゝ太刀の道を請、我肩の上へすじかひに切べし。是太刀の道なり。又、敵の打懸る時も、太刀の道を請て勝道也。能々吟味有べし。

 【常武堂本】

一 おもて第四の次第の事。第四の搆、左の脇に横にかまへて、敵の打かくる手を下よりはるべし。下よりはるを、敵打おとさんとするを、手をはる心にて、其侭太刀の道をうけ、我肩のうへゝすぢかいにきるべし。是太刀の道也。又、敵のうちかくる時も、太刀の道を受て勝道也。能々吟味あるべし。

 【田村家本】

 重気搆  表第四之次第【脱字】事 第四ノ搆、左ノ脇ニ横ニカマヱテ、敵ノ打カクル手ヲ下ヨリ張ベシ。【脱字】ハルヲ、敵打ヲトサントスルヲ、【脱字】ハル心ニテ、其侭太刀ノ道ヲ受、吾肩ノ上ヘスヂカイニ切ベシ。是太刀ノ道也。又、敵ノ打カクル時モ、太刀ノ道ヲウケテ勝道ナリ。ヨク々ギンミスベシ。

 【狩野文庫本】

一 表第四の次第【脱字】。第四の搆、左の脇より横ニ搆て、敵【脱字】打懸る手を下よりはるべし。下よりはるを、敵うち落んとするを、【脱字】はる心ニて、其侭太刀の道【脱字】うけ、我肩の上【脱字】、すぢかひニ切べし。是太刀の道也。又、敵の打懸る時も、太刀の道を請て勝事なり。能々吟味すべし。

 【多田家本】

(★改行なしで前条から連続)【脱字******】第四の搆、左の脇に横に搆て、敵の打かくる手を下より張べし。下より張手を、敵打落さんとする【脱字】、手を張る心にて、其侭太刀の道をうけ、我肩の上へ筋かひに切べし。是太刀の道也。又、敵の打かくる時も、太刀の道を請て勝道也。能々吟味すべし。(★改行なしで次条へ連続)

 【山岡鉄舟本】

一 表第四ノ次第ノ事。第四ノ搆、左ノ脇ニ横ニ搆テ、敵ヲ打掛ル手ヲ下ヨリ張ルベシ。下ヨリ張ルヲ、敵打落サントスルヲ、手ヲ張ル心ニテ、其侭太刀ノ道ヲ受ケ、我肩ノ上ヘ筋カヒニ切ベシ。是太刀ノ道也。又、敵ノ打掛ル時モ、太刀ノ道ヲ受テ勝道也。能々吟味アルベシ。

 【稼堂文庫本】

一 表第四の次第の事。第四の搆、左の脇に横に搆へて、敵の打懸る手を下よりはるべし。下よりはるを、敵の打落さんとする【脱字】、手をはる心にて、其侭太刀の道を受、我肩の上に筋違に切るべし。是太刀の道也。又、敵の打懸る時も、太刀の道を受て勝つ道也。能々吟味有べし。  

 【大瀧家本】

一 面の第四の次第の事。第四の搆、左の脇に横に搆へて、敵の打懸る手を下よりはるべし。下より張るを、敵打落さんとするを、手をはる心にて、其侭太刀の道を受、我肩の上へ筋違に切べし。是太刀の道なり。又、敵の打懸る時も、太刀の道を受て勝事なり。此道、能々吟味すべし。    PageTop    Back   Next 

  13 五つの表、第五の搆 右脇

 【吉田家本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、我右のわきに横に搆て、敵うち懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、筋違て上段に振あげ、上より直にきるべし。これも太刀のミち能しらむため也。此おもてにてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五つの表におゐて、こまかに書付る事に非ず。我家の一通、太刀のミちをしり、又、大かた拍子をもおぼへ、敵の太刀を見分事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、いろ/\の拍子にて、如何やうにも勝所也。能々分別すべし。

 【近藤家甲本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、わが右の脇に横に搆て、敵打懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、すぢかひて上段に振あげ、上より直に切べし。これも太刀の道能しらんため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五つの表におゐて、こまやかに書付る事にあらず。我家の一通り太刀の道をしり、又、大方拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、いろ/\の拍子にて、いかやふにも勝所也。能々分別すべし。

 【近藤家乙本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、わが右の脇に横に搆て、敵打懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、すぢかひて上段に振あげ、上より直にきるべし。これも太刀の道能しらんため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五ツの表におゐて、こまやかに書付る事にあらず。我家の一通り太刀の道をしり、又、大方拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、いろ/\の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【中山文庫本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、我右の脇に横に搆て、敵打懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、筋違て上段に振あげ、上より直に切べし。是も太刀のミち能しらむため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ【脱字】也。此五ツの表に於て、こまかに書付る事に非ず。我家の一通太刀の道をしり、又、大かた拍子をもおぼへ、敵の太刀を見分事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、色々の拍子にて、如何様にも勝所也。能々分別すべし。

 【赤見家丙本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、わが右の脇に横に構へて、敵うち懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、すぢかひて上段に振あげ、上より直にきるべし。これも太刀の道能しらんため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五つの表におゐて、こまやかに書附る事にあらず。我家の一通り太刀の道をしり、又、大方拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、いろ/\の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【石井家本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、わが右の脇に横に搆て、敵打懸る所の位をうけ(て)、我太刀の下の横より、すぢかひて上段に振あげ、上より直にきるべし。これも太刀の道よくしらんため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五つの表におゐて、こまやかに書付る事にあらず。我家の一通り太刀の道をしり、又、大方拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、いろ/\の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【伊丹家甲本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、我右のわきに横に搆て、敵打かくる所の位をうけ、我太刀の下の横より、筋違て上段に振あげ、上より直に切べし。是も太刀の道よくしらむため也。此おもてにてふりつけぬれば、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五つの表におゐて、こまかに書付る事に非ず。わが家の一通太刀の道をしり、又、大かた拍子をもおぼへ、敵の太刀を見分事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、色々の拍子にて、如何やうにも勝所也。能々分別すべし。

 【澤渡家本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、わが右の脇に横に搆へて、敵うけ掛る所の位をうけ、我太刀の下の横より、すぢかひて上段に振あげ、上より直にきるべし。これも太刀の道能しらんため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五ツ【脱字】表におゐて、こまやかに書附る事にあらず。我家の一通り太刀の道をしり、又、大かた拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵と戦の内にも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、色々の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【伊藤家本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、わが右の脇に横に搆て、敵打懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、すぢかひて上段に振あげ、上より直にきるべし。これも太刀の道よくしらんため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五ツの表におゐて、こまやかに書付る事にあらず。我家の一通り太刀の道をしり、又、大方拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵と戦のうち【脱字】も、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、いろ/\の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【伊丹家乙本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、我右の脇に横に搆て、敵打かくる處の位を受、我太刀の下の横より、筋違て上段に振あげ、上より直に切べし。是も太刀の道よくしらん為也。此表にて振付ぬれバ、重き太刀自由に振るゝ處也。此五ツの表におひて、こまかに書付る事に非ず。我家の一通太刀の道を知り、また大かた拍子をも覚へ、敵の太刀を見分事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心を受、色々の拍子にて、いか様ニも勝處也。能々分別すべし。

 【神田家本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀のかまへ、わが右の脇に横に搆て、敵打懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、すぢかひて上段に振あげ、上より直にきるべし。これも太刀の道よくしらんため也。此表にてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五つの表におゐて、こまやかに書付る事にあらず。我家の一通り太刀の道をしり、又、大方拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵と戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心をうけ、いろ/\の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【猿子家本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、【脱字】、我が右の脇【脱字】横に搆て、敵打懸る所の位をうけ、我太刀の下の横より、筋違ひて上段に振りあげ、上より直に切べし。是も太刀の道能しらんため也。此表にて振付ぬれば、重き太刀自由にふらるゝ所也。此五つの表におゐて、こまやかに書付る事にあらず。我家の一通り太刀の道を知り、又、大方拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵と戦の内にも、此太刀筋をからして、敵の心を受け、色々の拍子にて、如何様にも勝所也。能々分別すべし。

 【楠家本】

一 おもて第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、わが右のわきに横にかまへて、敵打かくる所のくらゐをうけ、わが太刀【脱字】下のよこより、すじかへて、上段にふりあげ、うへより直にきるべし。是も太刀の道、よくしらんため也。此おもてにてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五ツのおもてにおゐて、こまかに書付る事にあらず。わが家の一通、太刀の道をしり、又、大かた拍子をもおぼえ、敵の太刀を見わくる事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵とたゝかひのうちにも、此太刀すじをからして、敵の心をうけ、色々の拍子にて、いかやうニも勝所也。よく/\分別すべし。

 【細川家本】

一 おもて第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、我右の脇に横にかまへて、敵打かくる所のくらいをうけ、我太刀【脱字】下のよこより、すぢかへて、上段にふりあげ、うへより直にきるべし。是も太刀の道、能しらんため也。此おもてにてふりつけぬれば、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五ツのおもてにおゐて、こまかに書付る事にあらず。我家の一通、太刀の道をしり、亦、大形拍子をも覚へ、敵の太刀を見わくる事、先、此五ツにて、不斷手をからす所也。敵とたゝかいのうちにも、此太刀筋をからして、敵の心を受、色々の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【丸岡家本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、我左の脇ニ横にかまへて、敵打かくる處の位を受、我太刀(之)下の横より、すぢかへて、上段にふりあげて、上より直に切べし。是も太刀の道、よく知んため也。此表にてふりつけぬれば、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五ツの表におゐて、細に書付ることに非ず。我家の一通、太刀の道をしり、又、大かた拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵と戦の内にも、此太刀筋をからして、敵の心を受、色々の拍子にて、いかやうにも勝所也。能々分別すべし。

 【富永家本】

一 面第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、我右の脇に横に搆て、敵打懸る處の位を請、我太刀(の)下の横より、筋かひに上段にふり上、うへより直に切べし。是を太刀の道能知らん為也。此おもて【脱字**********************】におゐて、こまかに書付る事にあらず。我家の一ト通、太刀の道を知り、又、大形拍子をも覚へ、敵の太刀を見分る事、先、【脱字】五ツにて、不断手をからす處なり。敵の戦のうちにも、此太刀筋をからして、敵の心を請、色/\の拍子にて、如何様にも勝所なり。【脱字】分別すべし。

 【常武堂本】

一 おもて第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、我右の脇に横にかまへて、敵打かくる所のくらゐをうけて、我太刀【脱字】下のよこより、すぢかへて上段にふりあげ、うへより直にきるべし。是も太刀の道能しらむ為也。此おもてにてふりつけぬれバ、おもき太刀自由にふらるゝ所也。此五ツのおもてに於て、こまかに書付る事にあらず。我家の一通、太刀の道をしり、亦、大形拍子をも覚え、敵の太刀を見わくる事、先、此五ツにて、不断手をからす所也。敵とたゝかひのうちにも、此太刀筋をからして、敵の心を受、色々の拍子にて、いか様にも勝所也。能々分別すべし。

 【田村家本】

 衰形搆  表第五之次第ノ事 【脱字】太刀ノ搆、我右ノ脇ニ横ニカマエテ、敵打カクル処ノ位ヲウケ、我太刀【脱字】下ノヨコヨリ、直違テ上段ニ振上テ、上ヨリ直ニ切ベシ。是モ太刀ノ道ヲヨクシラン爲也。此表ニテ振付ヌレバ、重キ太刀自由ニ振ルヽ処也。此五ツノ表ニ於、コマヤカニ書付ルコトニ非。我家ノ一通太刀ノ道ヲシリ、又大方拍子ヲモ覚、敵ノ太刀ヲ見分ルコト、先此五ツニテ、不断手ヲカラス処也。敵ト戦ノ内ニモ、コノ太刀筋ヲカラシテ、敵ノ心ヲウケ、イロ々ノ拍子ニテ、イカヤウニモ勝コト也。能々分別スベシ。

 【狩野文庫本】

一 表第五の次第【脱字】。第五の【脱字】太刀の搆、我右の脇に横に搆て、敵打懸所の位を請、我太刀【脱字】下の横より、すぢかへて上段ニ振上て、上より直に切べし。是も太刀の道よく知んため也。【脱字】表にて振つけぬれバ、重キ太刀自由にふらるゝ所也。此五ツの表におゐて、細に書付事にあらず。我家の一通太刀の道を知、又大形拍子をも覚、敵の太刀を見分事、先此五ツニて、不断手をからす所也。敵の戦の内にも、此太刀筋をからして、敵の心を請、色々の拍子ニて、如何樣ニも勝所也。能々分別すべし。

 【多田家本】

(★改行なしで前条から連続)【脱字*****】第五の次第、太刀の搆、我右の脇に横に搆て、敵打かくる所の位を請て、我太刀【脱字】の横より、筋かひて上段に振上、上より直に切べし。是も太刀の道能しらん為也。此表にて振つけぬれバ、重き【脱字】刀自由にふらるゝ所なり。此五つの表にをひて、細かに書附る事にあらず。我家の一通り太刀の道を知り、又、大形拍子をも覚、敵の道を見分る事、先、此五つにて、不断手をからす所也。敵の戦の内にも、此太刀筋をからして、敵の心を請、色々の拍子にて、如何様にも勝所也。能々分別すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 表第五ノ次第ノ事。第五ノ次第。太刀ノ搆、我右ノ脇ニ横ニ搆テ、敵打掛ル処ノ位ヲ受ケ、我太刀【脱字】下ノ横ヨリ、筋カヘニ上段ニ振リ上ゲテ、上ヨリ直ニ切ベシ。是モ太刀ノ道、能シラン為也。此表ニテ振付ケヌレバ、重キ太刀、自由ニ振ラルヽ処也。此五ツノ表ニ於テ、細カニ書付ル事ニ非ズ。我家之一通太刀ノ道ヲ知リ、又大方拍子ヲモ覚、敵ノ太刀ヲ見分ル事、先此五ツニテ、不断手ヲカラス処也。敵ト戦【脱字】内ニモ、此太刀筋ヲカラシテ、敵ノ心ヲ受、色々ノ拍子ニテ、イカ様ニモ勝所也。能々分別スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 表第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、我右の脇に横に搆て、敵打懸る所の位を請、我太刀【脱字】下の横より、筋違に上段に振上ゲて、上より直に切るべし。是も太刀の道好く知らん為也。此表にて振付ぬれバ、重き太刀自由に振らるゝ所也。此五ツの表に於て、細やかに書付る事に非ず。我家の一通、太刀の道を知り、また、大形拍子をも覚、敵の太刀を見分る事、先、此五ツの表にて、不断手をからす処也。敵と戦の内にも、此太刀筋をからして、敵の心を受、色々の拍子にて、如何様にも勝所也。能々分別すべし。  

 【大瀧家本】

一 面の第五の次第の事。第五の次第、太刀の搆、我右の脇に横に搆て、敵打懸る処の位を受、我太刀の下の横より、筋違ひて上段にふり上げ、上より直に切べし。是も太刀の道を能知らしめん為なり。此面にて振付ぬれば、重き太刀自由に振らるゝ所なり。此五ツの面におゐて、細に書付る事にあらず。我家の一通り、太刀の道を知り、又、太刀の拍子をも覚へて、敵の太刀を見分る事、先、此五ツにて、不断手をからす所なり。敵と戦の内にも、此太刀筋をからして、敵の心を受、色々の拍子にて、如何様にも勝所なり。能々分別すべし。    PageTop    Back   Next 

  14 有搆無搆のおしへの事

 【吉田家本】

一 有搆無搆のをしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆と云事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けひきにしたがひ、いづれのかたにおきたりとも、其敵きり能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となり、中段を、利により少上れバ、上段となる。下段も、をりにふれ少上れバ、中段となる。両脇のかまへも、位により、すこし中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利也。先、太刀をとりてハ、何れにしてなりとも敵をきると云心也。若、敵のきる太刀をうくる、はる、あたる、ねばる、さわる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也と心得べし。うくるとおもひ、はると思ひ、あたるとおもひ、ねばると思ひ、さわるとおもふによつて、切事不足なるべし。何事もきる縁とおもふ事肝要也。能々吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁なり。いつくと云事悪し。能々工夫すべし。

 【近藤家甲本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆といふ事、有べき事にあら【脱字】されども、五方に置事あれバ、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきにしたがひ、いづれのかたに置たりとも、其敵切能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となる。中段も、利により少上れば、上段となる。下段も、折にふれ少上れバ、中段となる。両脇の搆も、位により、少し中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利也。先、太刀をとりてハ、何れにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さハる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたるとおもひ、ねばるとおもひ、さハると思ふに依て、切事不足なるべし。何事もきる縁とおもふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁也。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【近藤家乙本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆といふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれば、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきにしたがひ、いづれのかたに置たりとも、其敵きり能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となる。中段も、利により少上れバ、上段となる。下段も、折にふれ少上れば、中段となる。両脇のかまへも、位により、少し中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利也。先、太刀をとりてハ、何れにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さはる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたるとおもひ、ねばると思ひ、さわるとおもふに依而、切事不足なるべし。何事もきる縁とおもふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁也。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【中山文庫本】

一 有搆無搆の教の事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆と云事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けひきにしたがひ、いづれの方に置たりとも、其敵切能様に持心也。上段も、時に随ひ、少下る心なれバ、中段となり、中段を、利により少上れバ、上段となる。下段を、おりにふれ少上れば、中段となる。両脇の搆も、位により、少中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利なり。先、太刀を取ては、何れにしてなりとも敵を切ると云心也。若、敵の切る太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さはる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたると思、ねばると思ひ、さはるとおもふに依て、切事不足なるべし。何事もきる縁とおもふ事、肝要なり。能々吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。皆合戦に勝縁也。いつくと云事悪し。能々工夫すべし。

 【赤見家丙本】

一 有構無構のをしへの事。有構無構と云ハ、太刀を構といふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、構ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきにしたがひ、いづれのかたに置たりとも、其敵きり能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれば、中段となる。中段も、利により少上れば、上段となる。下段も、折にふれ少上れバ、中段となる。両脇のかまへも、位により、少中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然るによつて、構ハ有て構ハなきと云利也。先、太刀をとりてハ、何れにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、【脱字】、など云事あれども、ミな敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はると思ひ、あたるとおもひ、ねばると思ひ、さハるとおもふに依て、切事不足なるべし。何事もきる縁と思ふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も構也。ミな合戦に勝縁なり。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【石井家本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆といふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきにしたがひ、いづれのかたに置たりとも、其敵きり能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となる。中段も、利により少上れバ、上段となる。下段も、折にふれ少上れバ、中段となる。両脇の搆も、位により、少し中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利也。先、太刀をとりてハ、何れにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さハる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたるとおもひ、ねばるとおもひ、さハると思ふに依て、切事不足なるべし。何事もきる縁と思ふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁也。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【伊丹家甲本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆と云事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれば、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けひきにしたがひ、いづれのかたにおきたりとも、其敵きり能様に持心也。上段も、時に従ひ、少下る心なれバ、中段となり、中段を、利により少上れば、上段となる。下段も、おりにふれ少上れば、中段となる。両脇のかまへも、位により、少中へ出せば、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利也。先、太刀を取てハ、何れにしてなりとも敵を切と云心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さはる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたると思ひ、ねばると思ひ、さはるとおもふによつて、切事不足なるべし。何事もきる縁とおもふ事、肝要也。能々吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁也。いつくと云事悪し。能々工夫すべし。

 【澤渡家本】

一 有搆無搆のをしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆とゐふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきにしたがひ、いづれのかたに置たり共、其敵きり能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となる。中段も、利により少上れバ、上段と成。下段も、折にふれすこし上れバ、中段となる。両脇のかまへも、位によりて、少中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然るによつて、搆ハ有て搆はなき、と云利也。先、太刀をとりてハ、いづれにしてなり共、敵をきるとゐふ心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さわる、などゐふ事あれども、みな敵をきる縁也、と心得べし。うくると思ひ、はるとおもひ、あたると思ひ、ねばるとおもひ、さハると思によりて、切る事不足なるべし。何事もきる縁と思ふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁也。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【伊藤家本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆といふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、搆ともなるべし。太刀ハ、敵【脱字】縁により、所により、けいきにしたがひ、いづれのかたに置たりとも、其敵きり能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となる。中段も、利により少上れバ、上段となる。下段も、折にふれ少上れバ、中段となる。両脇の搆も、位により、少し中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然るによつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利也。先、太刀をとりてハ、何れにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さはる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたるとおもひ、ねばるとおもひ、さハると思ふに依て、切事不足なるべし。何事もきる縁と思ふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁也。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【伊丹家乙本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆と云事、有べき事にあらず。され共、五方に置事有れバ、搆ともなるべし。太刀は、敵の縁により、處により、けひきに従ひ、いづれのかたにおきたりとも、其敵きりよき様にもつ【脱字】なり。上段も、時に従ひ、少し下る心なれバ、中段となり、中段を、利により少し上れバ、上段となる。下段も、おりにふれ少し上れバ、中段となる。両脇の搆も、位により、少し中へ出せバ、中段、下段ともなる心なり。然によつて、搆は有て搆はなき、と云利也。先、太刀を取ては、いづれにしてなりとも敵を切るといふ心なり。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さわる、など云事有とも、皆敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、當るとおもひ、ねばるとおもひ、さわると思ふによつて、切事不足なるべし。何事もきる縁なりとおもふ事、肝要也。能々吟味すべし。兵法大にして、人数だてといふも搆なり。皆合戦に勝縁也。いつくといふことあしゝ。能々工夫すべし。

 【神田家本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云は、太刀を搆といふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきにしたがひ、いづれのかたに置たりとも、其敵きり能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となる。中段も、利により少上れば、上段となる。下段も、折にふれ少上れバ、中段となる。両脇の搆も、位により、少し中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆ハなき、と云利也。先、太刀をとりてハ、何れにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀を、うくる、はる、あたる、ねばる、さハる、など云事あれども、ミな敵をきる縁也、と心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたるとおもひ、ねばるとおもひ、さハると思ふに依て、切る事不足なるべし。何事もきる縁と思ふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁也。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【猿子家本】

一 有搆無搆の教への事。有搆無搆といふハ、太刀を搆といふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれば、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、景氣【脱字】したがい、何れの方に置たりとも、其敵切能様に持心也。上段も、時に随ひ、少しさぐる心なれバ、中段となる。中段も、利により少上れば、上段となる。下段も、折にふれ少上れバ、中段となる。両脇の搆も、位により、少し中へ出せば、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハ有て搆【脱字】なき、と云利也。先、太刀を取りてハ、何れにしてなりとも敵を切と云心なり。若、敵の切太刀を、うくる、張、あたる、ねばる、さハる抔云ふ事有ども、皆敵を切縁也、と心得べし。うくると思ひ、張ると思ひ、あたると思ひ、ねばると思ひ、さはると思ふに依て、切事不足なるべし。何事も切縁と思ふ事、肝要也。【脱字】吟味すべし。兵法大にして、人数だてと云も搆也。みな合戦に勝縁也。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【楠家本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云ハ、太刀をかまゆるといふ事、あるべき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、かまへともなるべし。太刀は、敵の縁ニより、處により、けいきにしたがひ、いづれの方に置たりとも、其敵きりよきやうに持心也。上段も、時にしたがひ、少さがる心なれバ、中段となり、中段を、利により少あがれバ、上段となる。下段も、おりにふれ少あぐれバ、中段となる。兩脇の搆も、くらゐにより、少中へ出せバ、中段、下段共なる心也。然によつて、搆ハありて搆ハなき、といふ利也。先、太刀をとつてハ、いづれにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀をうくる、はる、あたる、ねばる、さはる、などいふ事あれども、ミな敵をきる縁なりと心得べし。うくるとおもひ、はるとおもひ、あたると思ひ、ねばると思ひ、さはるとおもふによつて、きる事不足なるべし。何事もきる縁とおもふ事肝要也。能々吟味すべし。兵法大きにして、人数だてといふも搆也。ミな合戦に勝縁なり。いつくといふ事あしゝ。能々工夫すべし。

 【細川家本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆と云は、太刀をかまゆると云事、あるべき事にあらず。され共、五方に置事あれば、かまへともなるべし。太刀は、敵の縁により、所により、けいきにしたがい、何れの方に置たりとも、其敵きりよきやうに持心也。上段も、時に随ひ、少さがる心なれば、中段となり、中段を、利により少あぐれば、上段となる。下段も、おりにふれ少あぐれば、中段となる。兩脇の搆も、くらいにより、少中へ出せば、中段、下段共なる心也。然によつて、搆はありて搆はなき、と云利也。先、太刀をとつては、いづれにしてなりとも敵をきると云心也。若シ敵のきる太刀を受る、はる、あたる、ねばる、さわる、など云事あれども、ミな敵をきる縁なりと心得べし。うくると思ひ、はると思ひ、あたるとおもひ、ねばるとおもひ、さわるとおもふによつて、きる事不足なるべし。何事もきる縁と思ふ事肝要也。能々吟味すべし。兵法大きにして、人数だてと云も搆也。ミな合戦に勝縁なり。いつくと云事悪し。能々工夫すべし。

 【丸岡家本】

一 有搆無搆の教の事。有搆無搆と云は、太刀を搆ると云事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれば、搆ともなるべし。太刀は、敵の縁により、處により、景気に隨ひ、何れの方に置たり共、其敵切よきやうに持心也。上段も、時に随ひ、少下ル心なれば、中段となり、中段を、利により少あぐれば、上段となる。下段も、折にふれ少あぐれば、中段となる。両脇の搆も、位により、少中へ出せば、中段、下段ともなる心也。然によりて、搆は有て搆ハ無、と云理也。先、太刀を取てハ、何れニ【脱字】成とも、敵を切と云心なり。若、敵のきる太刀をうくる、はる、あたる、ねばる、さハる、などいふ事あれども、皆敵を切儀なりと心得べし。受ると思ひ、はると思ひ、あたると思ひ、ねばると思ひ、さハると思ふによつて、切事不足なるべし。何事もきる義とおもふ事肝要なり。能々吟味すべし。兵法大キにして、人数だてといふも搆なり。ミな合戦に勝縁なり。いつくと云事あしゝ。能々工夫すべし。

 【富永家本】

一 有搆無搆の教の事。有搆無搆といふハ、太刀を搆【脱字】事、可有事に不有。去れども、五方に置事あれバ、搆共成べし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けゐきにしたがひ、いづれの方に置たりとも、其敵切能様に持心なり。上段も、時にしたがひ、少あぐれバ、中段となり、中段も、利により少上れバ、上段となる。下段も、時にしたがゐ少あがる心なれバ、中段となり。両脇の搆も、位により、少中へ搆バ、中段【脱字】ともなる心也。然に依て、搆ハ有て搆ハなき、といふ利也。先、太刀を取てハ、何れにしてなりとも敵を切といふ心なり。若、敵の切太刀を請る、【脱字】、あたる、ねばる、さわる、などいふ事あれども、皆敵を切縁なりと心得べし。請と思ひ、はると思ひ、あたると思ひ、ねばると思ひ、さわると思ふによつて、切事不足なるべし。何事も切縁とおもふ事肝要なり。能々吟味すべし。兵法大きにして、人数立といふも【脱字】。皆合戦

に勝縁なり。いつくといふ事悪しゝ。能々工夫すべし。  【常武堂本】

一 有搆無搆のおしへの事。有搆無搆といふハ、太刀をかまゆると云事、あるべき事にあらず。されども、五方に置事あれバ、かまへともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきにしたがひ、何〔イヅレ〕の方に置たりとも、其敵きりよき様に持心也。上段も、時に随ひ、少さがる心あれば、中段となり、中段を、利により少あぐれバ、上段となる。下段も、をりにふれ少あぐれバ、中段となる。両脇の搆も、くらゐにより、少中へ出せバ、中段、下段ともなる心也。然によつて、搆ハありて搆ハなき、といふ利也。先、太刀を取てハ、いづれにしてなりとも敵をきるといふ心也。若、敵のきる太刀を受る、はる、あたる、ねばる、さわる、などいふ事あれども、みな敵をきる縁なり【脱字】心得べし。うくるとおもひ、はると思ひ、あたると思ひ、ねばるとおもひ、さわると思ふによつて、きる事不足なるべし。何事もきる縁と思ふ事肝要なり。能々吟味すべし。兵法大きにして、人数だてといふも搆也。みな合戦に勝縁なり。いつくといふ事悪し。能々工夫すべし。

 【田村家本】

 有搆無搆教之事 ウカマヱムカマヱト云ハ、太刀ヲ搆ルト云事、有ベキ事ニ非ズ。サレ共、五方ニ置コトアレバ、搆トモナルベシ。太刀ハ、テキリ縁ニヨリ、処ニヨリ、景氣ニ隨ヒ、何レノ方ニ置タリ共、其敵切ヨキヨウニ持心也。上段モ、時ニ随ヒ、少下ル心ナレバ、中段トナリ、中段ヲ、利ニヨリ少シ上レバ、上段トナル。下段モ、折ニフレ少上レバ、中段トナル。兩脇ノ搆モ、位ニヨリ、少シ中エ出セバ、中段、下段共ナル心ナリ。然ニ因テ、搆ハ有テ搆ハ無、ト云利也。先、太刀ヲ取テハ、何ニ【脱字】テ成トモ、敵ヲ切ト云心也。若敵ノ切太刀ヲ受、張、當ル、ネバル、サワル、ナド云事有レ共、皆敵ヲ切ル儀也ト心得ベシ。受ト思、張ト思ヒ、アタルト思、ネバルト思、サワルト思ニヨツテ、切事不足ナルベシ。何事モ切【脱字】ト思フ事肝要也。能々吟味スベシ。兵法大キニシテ、人数立ト云モ搆也。皆合戦ニ勝縁アリ。居付クト云事アシ丶。ヨク々工夫スベシ。

 【狩野文庫本】

一 有搆無搆の教の事。有搆無搆と云は、太刀を搆ゆると云事、有べき事にあらず。され共、五方に立事あれバ、搆ニも成べし。太刀ハ、敵の縁により、所により、けいきに隨ひ、何れの方に置たるとも、其敵切能樣ニ持心也。上段も、時に随ひ、少下る心あれば、中段と成、中段も、利に随ひ少上れば、上段と成。下段も、折にふれ少し上れバ、中段と成。兩脇の搆も、位ニより、少中へいだせバ、中段、下段共成心也。然るによつて、搆は有て搆【脱字】なき、と云ふ利なり。【脱字】太刀を取てハ、何れニして成とも、敵を切といふ心なり。若敵の切太刀を請る、張、當る、ねばる、さわる、抔云事あれども、皆敵を切ル縁也と心得べし。請と思、張と思、【脱字*******】碍〔さわる〕と思ふに依て、切事不足成べし。何れも切縁と思ふ事肝要也。能々吟味すべし。兵法大にして、人数を立るといふも搆也。皆合戦に勝縁なり。居つくと云事惡し。能々工夫有べし。

 【多田家本】

一 有搆無搆の教の事。有搆無搆と云ハ、太刀をかまゆると云事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれば、搆とも成べし。太刀ハ、敵の縁により、所によりて、けひ氣に隨ひ、何れの方に置たりとも、其敵の切能様に持心也。上段も、時に随ひ、少さぐる心なれバ、中段となり、【脱字**********】下段も、折にふれ少あぐれバ、中段と成。両脇の搆も、位により、少中へ出せバ、中段、下段共成心なり。然るによつて、搆は有て搆ハなき、と云利也。【脱字】太刀を取てハ、何れの方にても、敵を切と云心也。若、敵の切太刀を、請る、張る、當る、ねばる、さわる、抔と云事あれ共、皆敵を切縁也、と心得べし。請ると思ひ、張ると思ひ、當ると思ひ、ねばると思ひ、さわるとおもふに依て、切事不足なるべし。何事も切縁と思ふ事、肝要也。能々吟味すべし。兵法大きにして、人数立と云とも搆也。皆合戦に勝縁也。いつくと云事悪し。能々工夫すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 有搆無搆ノ教ノ事。有搆無搆ト云ハ、太刀ヲ搆ト云事、有ベキ事ニ非ズ。去共、五方ニ置事アレバ、搆共成ベシ。太刀ハ、敵ノ縁ニヨリ、所ニヨリ、景気ニ随ヒ、何レノ方ニ置タレ共、其敵切能様ニ持心也。上段モ、時ニ随ヒ、少シ下ル心ナレバ、中段トナリ、中段モ、利ニヨリ少シ上レバ、上段トナル。下段モ、折ニフレ少シ上レバ、中段トナル。兩脇ノ搆モ、位ニヨリ、少シ中ヘ出セバ、中段、下段共成心也。然ルニ依テ、搆ハ有テ【脱字】無ト云理也。先、太刀ヲ取テハ、何レニシテ成共、敵ヲ切ルト云心也。若、敵ノ切ル太刀ヲ受ル、張ル、當ル、刎ル、障ル、抔云事有共、皆敵ヲ切ル縁也ト心得ベシ。受ト思ヒ、張ト思ヒ、當ルト思ヒ、刎ト思、障ト思事ニ依テ、切ル事不足成ベシ。何事モ切縁ト思事、肝要也。能々吟味スベシ。(★改行) 兵法大キ【脱字】シテ、人数立ト云モ搆也。皆合戦ニ勝縁有。居付クト云事悪ク。能々工夫スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 有搆無搆の教の事。有搆無搆と云ハ、太刀を搆ると云事、有べき事に非ず。去共、五法に置事有れバ、搆共云べし。太刀ハ、敵の縁により、所により、景氣にしたがひ、いづれの方に置たり共、其敵切能様に持心也。上段も、時に随ひ、少しさがる心なれバ、中段と成、中段も、利により少し上れバ、上段と成り。下段も、折にふれ少し上る心なれバ、中段と成。両脇の搆も、位は有て、少し中へ出れバ、中段、下段とも成心也。然るによつて、搆は有て【脱字】無き、と云理是也。先、太刀を取ては、何れにして成共、敵を切ると云心也。若、敵の切る太刀【脱字】請る、張る、當る、ねばる、さわる、などゝ云事有れ共、皆敵を切る縁成と心得べし。請ると思ひ、張ると思ひ、當ると思ひ、刎ると思ひ、障ると思ふによりて、切こと不足成るべし。何事も切縁と思ふ事肝要也。能々吟味すべし。兵法大きにして見よ、人数立と云も搆也。皆合戦に勝縁也。居付と云事悪し。能々工夫すべし。  

 【大瀧家本】

一 有搆無搆の教の事。有搆無搆といふハ、太刀を搆るといふ事、有べき事にあらず。されども、五方に置事あれば、搆ともなるべし。太刀ハ、敵の縁により、所により、景氣に隨ひ、何れの方に置たり共、其敵切能様に持心なり。上段も、時に随ひ、少下る心なれば、中段と成、中段も、利により少し上れば、上段と成。下段も、折にふれ少し上れバ、中段と成。両脇の搆も、位により、少中へ出せば、中段と成、下段ともなる心也。然るに依而、搆は有て【脱字】無、と云利也。先、太刀を取てハ、何れにして成共、敵を切るといふ心なり。若、敵の切太刀を受る、張る、當る、ねばる、さはるになどいふ事あれ共、皆敵を切る縁なりと心得べし。受と思ひ、張ると思ひ、當ると思ひ、ねばると思ひ、さはると思ふに依て、切る事不足なるべし。何事も切る縁と思ふ事肝要なり。能々吟味すべし。兵法大にして、人数立といふも搆也。皆合戦に勝縁なり。いつくといふ事悪しゝ。能々工夫すべし。    PageTop    Back   Next 

  15 一拍子の打の事

 【吉田家本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子と云て、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心も付ず、いかにもはやく直にうつひやうし也。敵の太刀ひかむ、はずさむ、うたん、とおもふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子なり。此拍子、よくならひ得て、間の拍子をはやくうつ事、鍛錬すべし。

 【近藤家甲本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにもはやく、直にうつひやうし也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたん、とおもふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子なり。此拍子、よくならひ得てハ、間の拍子をはやく打事、鍛錬すべし。

 【近藤家乙本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにもはやく、直にうつひやうし也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたん、とおもふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子なり。此拍子、よくならひ得てハ、間の拍子をはやく打事、鍛錬すべし。

 【中山文庫本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子と云て、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心も付ず、いかにも早く、直にうつひやうしなり。敵の太刀ひかむ、はづさむ、うたん、と思心のなきうちを打拍子、是一拍子也。此拍子、能ならひ得て、間の拍子をはやく打事、鍛錬すべし。

 【赤見家丙本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにもはやく、直に打ひやうし也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたん、とおもふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子なり。此拍子、よくならひ得てハ、間のひやうしをはやく打事、鍛錬すべし。

 【石井家本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにもはやく、直にうつひやうし也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたん、と思ふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子也。此拍子、よくならひ得てハ、間のひやうしをはやく打事、鍛錬すべし。

 【伊丹家甲本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子と云て、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心も付ず、いかにもはやく、直にうつ拍子なり。敵の太刀ひかむ、はづさむ、うたん、とおもふ心のなきうちを打拍子、是一拍子也。此拍子、よくならひ得て、間の拍子をはやくうつ事、鍛錬すべし。

 【澤渡家本】

一 敵ヲ打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といつて、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにもはやく、直に打拍子也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたん、とおもふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子也。此拍子、能く習ひ得てハ、間の拍子を早く打事、鍛錬すべし。

 【伊藤家本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにもはやく、直にうつひやうし也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたん、と思ふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子也。此拍子、よくならひ得てハ、間のひやうしをはやく打事、鍛錬すべし。

 【伊丹家乙本】

一 敵をうつに、一拍子の打といふ事。敵【脱字】打拍子に、一拍子と云て、敵わが當る程の位を得て、敵のわきまゑぬうちをこゝろに得て、我身もうごか【脱字】ず、心も付ず、いかにも早く、直に打拍子なり。敵の太刀ひかむ、はづさぬ、うたん、とおもふ心のなきうちを打拍子、是一拍子也。此拍子、能習得て、間の拍子を早く打事、鍛錬すべし。

 【神田家本】

一 敵をうつに、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどの位を得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにもはやく、直にうつひやうし也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたん、と思ふ心のなきうちを打拍子、これ一拍子也。此拍子、よくならひ得てハ、間のひやうしをはやく打事、鍛錬すべし。

 【猿子家本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といふて、敵我あたる程の位を得て、敵の弁まへぬ内を心に得て、我身もうごかさず、心もつけず、いかにも早く、直に打拍子也。敵の太刀引ん、はづさん、打ん、と思ふ心のなき内を打拍子、これ一拍子也。此拍子、能習得てハ、間の拍子を早く打事、鍛錬すべし。

 【楠家本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどのくらゐを得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、わが身もうごかさず、心も付ず、いかにもはやく直に打拍子也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたんと思ふ心のなきうちを打拍子、是一拍子也。此拍子、能ならひ得て、間の拍子をはやく打事、鍛練すべし。

 【細川家本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどのくらいを得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心も付ず、いかにもはやく直に打拍子也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたんと思ふ心のなきうちを打拍子、是一拍子也。此拍子、能ならひ得て、間の拍子をはやく打事、鍛練すべし。

 【丸岡家本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子と云て、敵我あたるほどの位を得て、敵の辨へぬ内を心に得て、我身も不動、心も付ず、いかにもはやく直に打拍子也。敵の太刀引む、はづさん、打むと思ふ心のなきうちをうつ拍子、是一拍子なり。此拍子、能習得て、間の拍子をはやく打事、鍛錬すべし。

 【富永家本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子と云て、敵をあたる程の位を得て、敵のわきまゑぬ内を心に得て、我身も動かさず、心も付ず、如何にも早く直に打拍子なり。敵の太刀ひかん、はづさん、うたんと思ふ心のなき内を打拍子、是一拍子なり。此拍子、能習得て、間の拍子をはやく打事、鍛練すべし。

 【常武堂本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といひて、敵我あたるほどのくらゐを得て、敵のわきまへぬうちを心に得て、我身もうごかさず、心も付ず、いかにもはやく直に打拍子也。敵の太刀ひかん、はづさん、うたんと思ふ心のなきうちを打拍子、是一拍子也。此拍子、能ならひ得て、間の拍子をはやく打事、鍛練すべし。

 【田村家本】

 敵ヲ打ニ、一拍子ノ打【脱字】事 テキヲ打拍子ニ、一拍子ト云テ、敵我アタル程ノ位ヲ得テ、敵ノワキマエヌ内ヲ心ニ得テ、我身モウゴカサズ、心モツカズ、イカニモ早ク直ニ打拍子ナリ。敵ノ太刀引ン、ハヅサン、打ント思フ心ノナキウチヲ打拍子、是一拍子ナリ。【脱字】ヨクナラヒ得テ、間ノ拍子ヲ速クウツ事、タンレンスベシ。

 【狩野文庫本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵【脱字】打拍子に、一拍子と云て、敵我當程の位を得て、敵の弁ぬうちを心ニ得て、我身もうごかさず、こゝろも付ず、いかにも早直に打拍子なり。敵の太刀引ん、うたん、はづさん(語順)と思ふ心のなき内を打拍子なり。是一拍子也。此拍子を能習得て、間の拍子を能はやく打事、鍛練すべし。

 【多田家本】

一 敵を打に、一拍子の打と云事。【脱字***】一拍子といひて、敵に當る程の位を得て、敵の弁ぬ内を心に得て、我身も動かさず、心もつけず、如何にも早く、直に打拍子也。敵の太刀ひかん、はづさん、打ん、と思ふ心のなき内を打拍子、是一拍子なり。此拍子、よくならひ得て、向の拍子を早く打事、鍛練すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 敵ヲ打ニ、一拍子ノ打ノ事。敵ヲ打拍子ニ、一拍子ト云テ、敵我當ル程ノ位ヲ得テ、敵ノ辨ヌ内ヲ心ニ得テ、我身モ動サズ、心モ付ケズ、イカニモ早ク、直ニ打拍子也。敵ノ太刀引ツ、ハヅサン、打ン、ト思心ノ無キ内ヲ打拍子、是一拍子也。此拍子、能習ヒ得テ、間ノ拍子ヲ早ク打事、鍛錬スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 敵を打に、一拍子の打と云事。敵を打拍子に、一拍子と云て、敵を我當る程の位を得て、敵のわきまえぬ内を心に得て、我身を動さず、心も付ず、如何にも早直に打拍子也。敵の太刀引【脱字】、はづさん、打たんと思ふ心の無き内を打拍子、是一拍子也。此拍子、能々習得て、間の拍子をも早く打事、深く鍛練すべし。  

 【大瀧家本】

一 敵を打に、一拍子の打の事。敵を打拍子に、一拍子といふて、敵我當る程の位を得て、敵の辨まひぬ内を心に得て、我身も動か【脱字】ず、心も付ず、いかにもはやく直に打拍子なり。敵の太刀引ん、はづさん、打んと思ふ心のなき内を打拍子、是一拍子也。此拍子能習得てハ、間の拍子をはやく打事、鍛錬すべし。    PageTop    Back   Next 

  16 二のこしの拍子の事

 【吉田家本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我うちださむとするとき、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時ハ、我うつとミせて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむところをうつ、これ二のこしの拍子也。此書付ばかりにてハ、中/\打得がたかるべし。おしへをうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【近藤家甲本】

一 二の越の拍子の事。二のこしの拍子、わが打出さんとするとき、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時は、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむところをうつ、これ二の越の拍子也。此書付ばかりにてハ、中々打得がたかるべし。おしへをうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【近藤家乙本】

一 二の越の拍子の事。二の越の拍子、わが打出さんとするとき、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時は、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむところをうつ、これ二の越の拍子也。此書付ばかりにてハ、中々打得がたかるべし。おしへをうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【中山文庫本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我打出むとする時、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時は、我うつとみせて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ所をうつ、これ二のこしの拍子也。此書付ばかりにてハ、中々打得がたかるべし。教を受てハ、忽合点のゆく所也。

 【赤見家丙本】

一 二の越】の拍子の事。二の越の拍子、わが打出さんとするとき、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時ハ、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむところをうつ、これ二の越の拍子也。此書附斗りにてハ、中々打得がたかるべし。おしへヲうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【石井家本】

一 二の越の拍子の事。二のこしの拍子、わが打出さんとするとき、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時ハ、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむところをうつ、これ二の越の拍子也。此書付ばかりにては、中々打得がたかるべし。おしへをうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【伊丹家甲本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我打ださむとする時、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時ハ、我うつとみせて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ所をうつ、これ二のこしの拍子也。此書付ばかりにてハ、中/\打得がたかるべし。おしえをうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【澤渡家本】

一 二の越の拍子の事。二【脱字】腰の拍子、我が打出さんとするとき、敵早く引、早くはりのくる様なる時は、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所をうち、引てたるむところを打、これ二の越の拍子也。此書附斗りにてハ、中々打得がたかるべし。おしへをうけてハ、たちまち合点のゆく所なり。

 【伊藤家本】

一 二の越の拍子の事。二のこしの拍子、わが打出さんとするとき、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時は、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむところをうつ、これ二の越の拍子也。此書付ばかりにてハ、中々打得がたかるべし。おしへをうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【伊丹家乙本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我うたんとするとき、敵早く引、はやくはりのくる様なるときハ、我打と見せて、敵のはりてたるむ處を打、引てたるむ處を打、是二のこしの拍子なり。此書付ばかりにてハ、中/\打得がた【脱字】し。おしへをうけてハ、忽合点のゆく處也。

 【神田家本】

一 二の越の拍子の事。二のこしの拍子、わが打出さんとするとき、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時は、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむところをうつ、これ二の越の拍子也。此書付ばかりにては、中々打得がたかるべし。おしへをうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【猿子家本】

一 二の越の拍子の事。二の越の拍子、我が打出さんとするとき、敵早く引、早く張のくる様なる時ハ、我うつと見せて、敵のはりてたるむ所をうち、引てたるむところを打、是二の越の拍子也。此書付斗にてハ、中々打得がたかるべし。教をうけてハ、忽合点のゆく所也。

 【楠家本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我打ださんとする時、敵はやく引、はやくはりのくるやうなる時ハ、我打と見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ所を打。是二のこしの打也。此書付斗にてハ、中/\打得がたかるべし。おしへ【脱字】うけてハ、忽合点のゆく所也。

 【細川家本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我打ださんとする時、敵はやく引、はやくハりのくるやうなる時ハ、我打とミせて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ所を打。是二のこしの打也。此書付斗にてハ、中/\打得がたかるべし。おしへ【脱字】うけては、忽合点のゆく所也。

 【丸岡家本】

一 二の越の拍子の事。二の越の拍子、我打出さんとする時、敵はやく引、早く張のくるやうなる時は、我打と見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ處を打。是二のの越の打なり。此書付ばかりにては、中/\打得がたかるべし。教を受ては、忽がてんの行所也。

 【富永家本】

一 二の越の拍子の事。二のこしの拍子。我打出さんとする時、敵早引、早はりのくる様成時ハ、我打と見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ所【脱字】打。是二のこしの打なり。此書付斗にてハ、中/\打得がたかるべし。教へを請てハ、【脱字】合点のゆく處なり。

 【常武堂本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我打ださんとする時、敵はやく引、はやくはりのくる様なる時ハ、我打とみせて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ所を打。是二のこしの打也。此書付斗にてハ、中/\打得がたかるべし。おしへ【脱字】うけてハ、忽合点のゆく所也。

 【田村家本】

 二ノ越ノ拍子之事 二ノコシノ拍子、吾ウタントスルトキ、敵早ク引、早クハリノクルヤウナル時ハ、吾打トミセテ、敵ノハリテタルム処ヲウチ、引テタルム処ヲ打、是二ノ越ノウチ也。此書付バカリニテハ、中々打得ガタ【脱字】シ。教ヲウケテハ、忽ガツテン【脱字】行処也。

 【狩野文庫本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我打出んとする時、敵早引、早はりのくる【脱字】成時は、我打と見せて、敵のはり出んたるむ所を打、引てたるむ所を打、是二のこしの打成。此書付斗ニ而ハ、中/\打得がた【脱字】し。習【脱字】請てハ、忽合点【脱字】ゆく處也。

 【多田家本】

一 二のこしの拍子の事。二のこしの拍子、我打出さんとする時、敵の早くひき、早く張のくる様成時は、我打と見せて、敵のはりて弱む所を打、曳てたるむ所を打、是二つの越打也。此書附斗にてハ、中/\打得がたかるべし。教【脱字】請てハ、忽合点【脱字】行所也。

 【山岡鉄舟本】

一 二ノ越シノ拍子ノ事。二ノ越ノ拍子、我打出サントスル時、敵早ク引、早ク張ノクル様成ル時ハ、我打ト見セテ、敵ノ張テタルム所ヲ打、引テタルム所ヲ打、是二ノ越ノ打也。此書付斗ニテハ、中々打得ガタカルベシ。教ヲ受テハ、忽合点ノ行所也。

 【稼堂文庫本】

一 二の越の拍子の事。二の越の拍子は、我打出さんとする時、敵早く引、早くはり除る様成時ハ、我打と見せて、敵のはりてたるむ所を打、引てたるむ所を打、是二のの越の打也。此書付【脱字】にてハ、中/\心得がたかるべし。教を請ては、忽合点のゆく事也。  

 【大瀧家本】

一 二の越の拍子の事。二のこしの拍子、我打出さんとする時、敵はやく引、はやくはりのくる様成時ハ、我打と見せて、敵のはりてたるむ処を打、引てたるむ処を打、是二の越の拍子也。此書付斗にてハ、【脱字】打得難かるべし。教を受てハ、忽ち合点の行處なり。    PageTop    Back   Next 

  17 無念無相の打と云事

 【吉田家本】

一 無念無相の打と云事。敵もうち出さむとし、我も打ださむとおもふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手ハ、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是、無念無相とて、一大事のうち也。此うち、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛錬有べき儀也。

 【近藤家甲本】

一 無念無相の打と云事。敵もうち出さんとし、我も打ださんとおもふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手は、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛錬有べき儀也。

 【近藤家乙本】

一 無念無相の打と云事。敵もうち出さんとし、我も打ださんとおもふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手は、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此うち、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛錬有べき儀也。

 【中山文庫本】

一 無念無相の打と云事。敵も打出さむとし、我も打ださむと思時、身も打身になり、心も打心になつて、手ハ、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此うち、たび/\出合打也。能々習ひ得て、鍛錬有べき義也。

 【赤見家丙本】

一 無念無相の打と云事。敵もうち出さんとし、我も打出さんとおもふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手ハ、いつとなく、空より後はやに強く打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此うち、たび/\出合打也。能々ならひ【脱字】て、鍛錬有べき儀也。

 【石井家本】

一 無念無相の打と云事。敵もうち出さんとし、我も打ださんとおもふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手は、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是無念無相とて、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛錬有べき儀也。

 【伊丹家甲本】

一 無念無相の打と云事。敵も打出さむとし、我も打ださむとおもふ時、身もうつ身になり、心も打心になつて、手ハ、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是、無念無相とて、一大事のうち也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛錬有べき儀也。

 【澤渡家本】

一 無念無相の打とゐふ事。敵も打出さんとし、我も打ださんと思ふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手ハ、いつとなく、空より後はやに強く打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此うち、度々出合打也。能々習ひ【脱字】て、鍛錬有べき儀也。

 【伊藤家本】

一 無念無相の打と云事。敵もうち出さんとし、我も打ださんとおもふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手は、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是無念無相とて、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛錬有べき儀也。

 【伊丹家乙本】

一 無念無相のうちと云事。敵も打出さんとし、我も打ださむとおもふとき、身も打身に成、心も打心に成て、手は、いつとなく、空より後ばやにつよく打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此打、度々出合打也。よく/\習得て、鍛錬すべき義なり。

 【神田家本】

一 無念無相の打と云事。敵もうち出さんとし、我もうちださんとおもふとき、身もうつ身になり、心も打心になつて、手は、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是無念無相とて、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛錬有べき儀也。

 【猿子家本】

一 無念無相の打と云事。敵も打出さんとし、我も打出さんと思ふ時、身も打身になり、心も打心になつて、手は、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是、無念無相迚、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々習得て、鍛錬有べき【脱字】也。

 【楠家本】

一 無念無相の打と云事。敵も打ださんとし、われも打ださんと思ふ時、身も打身になり、心もうつ心になつて、手ハ、いつとなく、空より後ばやにつよく打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛練あるべき儀也。

 【細川家本】

一 無念無相の打と云事。敵も打ださんとし、我も打ださんと思ふ時、身も打身になり、心もうつ心になつて、手は、いつとなく、空より後ばやにつよく打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛練あるべき儀也。

 【丸岡家本】

一 無念無相の打と云事。敵も打出さんとし、我も打出さんと思ふ時、身も打身になり、心も打心になりて、手は、いつとなく、空より後早ニ強く打事、是、無念無想とて、一大事の打也。此打、度々出合打也。能々習得て、鍛錬有べき儀なり。

 【富永家本】

一 無念無相の打といふ事。敵も打ださんとし、我も打ださんとおもふ時、身も打身になり、心も打心に成て、手ハ、いつとなく、空より後早につよく打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此打、度/\出合打也。能々習得て、鍛練あるべき儀なり。

 【常武堂本】

一 無念無相の打といふ事。敵も打ださんとし、我も打ださんと思ふ時、身も打身になり、こゝろもうつ心になりて、手ハ、いつとなく、空より後ばやにつよく打事、是、無念無相の打とて、一大事の打也。此打、たび/\出合打也。能々ならひ得て、鍛練あるべき儀也。

 【田村家本】

 無念無相ノ打ト云事 テキモ打出サントシ、我モ打出サント思フトキ、身モ打身ニナリ、心モ打心ニナツテ、手ハ、イツトナク、空ヨリ後早ク強ク打事、【脱字】無念無相トテ、一大事ノ打也。此打、度々出合打也。能々習得テ、鍛練有ベキ儀ナリ。

 【狩野文庫本】

一 無念無相の打と云事。敵も打出さんとし、我も打出さんと思ふ時、身も打身に成、心も打心に成て、手は、いつくとなく、空より後早ニ強く打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此打、度々出合打也。克々習得て、鍛錬可有事。

 【多田家本】

一 無念無想の打と云事。敵も打ださんとし、我も打ださんと思ふ時、身も打身になり、心も打心に成て、手は、いつとなく、空より後ばやに強く打事、是無念無想の打とて、一大事の打也。此打、度々出合打也。能々習得て、鍛練有べき儀也。

 【山岡鉄舟本】

一 無念無想之打ト云事。敵モ打出サントシ、我モ打出サント思フ時、身モ打身ニナリ、心モ打心ニナリテ、手ハ、イツトナク、空ヨリ後早ニ強ク打事、是無念無想トテ、一大事ノ打也。此打、度々出合打也。能々習得テ、鍛錬有ベキ儀也。

 【稼堂文庫本】

一 無念無相の打と云事。敵も打出さんとし、我も打出さんと思ふ時、身も打身に成、心も打心に成て、手は、いつとなく、空より浮ミ早くつよく打事、是、無念無相とて、一大事の打也。此打、度々出合打也。能々習得て、鍛練有べき儀也。  

 【大瀧家本】

一 無念無想の打といふ事。敵も打出さんとし、我も打出さんと思ふ時、身も打身になり、心も打心になりて、手ハ、いつとなく、空よりおくればやに強く打事、是、無念無想とて、一大事の打也。此打、度々出合打なり。【脱字】習得て、鍛錬有べき儀なり。    PageTop    Back   Next 

  18 流水の打と云事

 【吉田家本】

一 流水の打と云事。流水の打と云て、敵あひに成てせりあふとき、敵、はやくひかむ、はやくはずさむ、早く太刀をはりのけむとする時、我、身もこゝろも大になつて、太刀を我身の跡より、いかほども緩々と、よどミの有様に、大に剛くうつ事也。此うち、ならひ得てハ、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分事、肝要也。

 【近藤家甲本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどミの有様に、大に強くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分事、肝要也。

 【近藤家乙本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどミの有様に、大に強くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分事、肝要也。

 【中山文庫本】

一 流水の打と云事。流水の打と云て、敵合に成て、せりあふ時、敵、早くひかむ、はやくはづさむ、早く太刀をはりのけむとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほども緩々と、よどみの有様に、大に剛くうつ事也。此打、習ひ得てハ、たしかに打よきもの也。敵の位の見分る事、肝要也。

 【赤見家丙本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身もこゝろも大になつて、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどミの有様に、大に強くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分る事、肝要なり。

 【石井家本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどミの有様に、大に強くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分る事、肝要也。

 【伊丹家甲本】

一 流水の打と云事。流水の打と云て、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかむ、はやくはづさむ、早く太刀をはりのけむとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほども緩々と、よどみの有様に、大に剛くうつ事也。此打、ならひ得ては、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分事、肝要也。

 【澤渡家本】

一 流水の打といふ事。流水の打といひて、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身もこゝろも大になつて、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどミの有様に、大に強くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかに打よきものなり。敵の位を見分る事、肝要也。

 【伊藤家本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどミの有様に、大に強くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分事、肝要也。

 【伊丹家乙本】

一 流水の打と云事。流水の打と云て、敵間になつて、せりあふとき、敵、早く引かん、早くはづさん、早く太刀をはりのけむとするとき、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほども緩々と、よどミの有様に、大に剛くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかに打よきものなり。敵の位をミわくる事、肝要也。

 【神田家本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵あひに成て、せりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどミの有様に、大に強くうつ事也。此打、ならひ得てハ、たしかにうちよきもの也。敵の位を見分事、肝要也。

 【猿子家本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵あひになりて、せり合時、敵、早くひかん、早くはづさん、早く太刀を張のけんとする時、我、身も心も大になつて、太刀を我身の跡より、いか程もゆる/\と、よどミの有様に、大に強く打事也。此打、習得てハ、慥かに打よき者也。敵の位を見分る事、肝要也。

 【楠家本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵相になりてせりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、はやく太刀をはりのけんとする時、わが、身も心も大きになつて、太刀をわが身のあとより、いかほどもゆる/\と、よどミのあるやうに、大きにつよく打事也。此打、ならひ得てハ、慥に打よきもの也。敵のくらゐを見わくる事、肝要也。

 【細川家本】

一 流水の打と云事。流水の打といひて、敵相になりてせりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、早ク太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大きになつて、太刀を我身のあとより、いかほどもゆる/\と、よどみのあるやうに、大キにつよく打事也。此打、ならひ得てハ、慥に打よきもの也。敵のくらいを見わくる事、肝要也。

 【丸岡家本】

一 流水の打と云事。流水の打と云て、敵間になりてせり合時、敵、はやく引ん、はやくはづさん、早ク太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大きに成て、太刀を我身のあとより、いかほどもゆる/\と、よどみのあるやうに、大に強ク打事也。此打、習得ては、たしかに打よき者也。敵の位を見分ること、肝要なり。

 【富永家本】

一 流水の打といふ事。流水の打と云て、敵相に成てせりあふ時、敵、早くひかん、早くはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大きに成て、太刀【脱字】我身の跡より、如何程もゆる/\と、よどみの有様に、大きニつよく打事なり。此打、習ひ得てハ、慥に打よきものなり。敵の位を見分ル事、肝要なり。

 【常武堂本】

一 流水の打といふ事。流水の打といひて、敵相になりてせりあふ時、敵、はやくひかん、はやくはづさん、はやく太刀をはりのけむとする時、我身も心も大きになつて、太刀を我身のあとより、いかほどもゆる/\と、よどみのある様に、大きにつよく打事也。此打、ならひ得ては、慥に打よきもの也。敵のくらゐを見わくる事、肝要也。

 【田村家本】

 流水ノ打ト云事 リウスイノ打ト云テ、敵相ニナリテセリアフ時、敵、早ク引ン、早クハヅサン、早ク太刀ヲハリノケントスル時、吾、身モ心モ大キニナツテ、太刀ヲ吾身ノアトヨリ、イカ程モユル々ト、ヨドミノ有ヨウニ、大ニ強打事也。此打、習得テ【脱字】、慥ニ打ヨキ者也。敵ノ位ヲ見分ルコト、肝要ナリ。

 【狩野文庫本】

一 流水の打と云事。流水の打ハと云て、敵相近くになりてセりあふ時、敵、はやくひかん、早くはづさん、はやく太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大【脱字】成て、太刀を我身の跡より、如何程もゆる/\と、よどみの有樣ニ、大につよく打事也。此打、習得てハ、慥ニ打能物也。敵の位を見分る事、肝要也。

 【多田家本】

一 流水の打といふ事。流水の打といふて、敵相に成て、せり合時、敵、早くひかん、早くはづさん、早く太刀を張のけんとする時、我、身も心も大きに成て、太刀を我身の跡より、如何程も緩々と、よどみのなき様に、大きに強く打事なり。此打、習得てハ、慥に打よき物也。敵の位を見分る事、肝要也。

 【山岡鉄舟本】

一 流水之打ト云事。流水ノ打ト【脱字】テ、敵合ニナリテセリ合時、敵、早ク引ン、早クハヅサン、早ク太刀ヲ張リノケントスル時、我身モ心モ大ニ成テ、太刀ヲ我身ノ跡ヨリ、イカ程モ寛々ト、ヨドミノ有様ニ、大キニ強ク打事也。此打、習得テハ、慥ニ打ヨキ者也。敵ノ位ヲ見分ル事、肝要也。

 【稼堂文庫本】

一 流水の打と云事。流水の打と云て、敵合に成てせり合ふ時、敵、早く引ン、早くはづさん、早く太刀をはりのけんとする時、我、身も心も大きに成て、太刀を我身の跡より、いかほどもゆる/\と、よどみの有様に、大きに強く打事也。此打、習得てハ、たしかに打能き物也。敵の位を見分る事、肝要也。  

 【大瀧家本】

一 流水の打と云事。流水の打と云て、敵のあひに成てせり合時、敵、はやく引ん、早くはづさん、早く太刀を張のけんとする時、我、身も心も大きに成て、太刀を我身の跡より、如何程もゆる/\と、よどみの有様に、大に強く打事也。此打、習得てハ、慥に打能ものなり。敵の位を見分る事、肝要なり。    PageTop    Back   Next 

  19 縁のあたりと云事

 【吉田家本】

一 縁のあたりと云事。我、うち出すとき、敵、うちとめむ、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一つをもつて、いづれなりとも打所、是縁のうち也。此うち、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。さひ/\打合て、分別有べき事也。

 【近藤家甲本】

一 縁のあたりと云事。我、うち出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道ひとつをもつて、いづれなりとも打所、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べき事也。

 【近藤家乙本】

一 縁のあたりと云事。我、うち出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道ひとつをもつて、いづれなりとも打所、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べき事也。

 【中山文庫本】

一 縁のあたりと云事。我、打出す時、敵、うちとめむ、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一ツを以て、いづれなりとも打所、是縁のうち也。此うち、能々打習ひ【◇】、何時も出合打也。さひ/\打合て、分別有べき【脱字】也。

 【赤見家丙本】

一 縁のあたりといふ事。我うち出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道ひとつをもつて、いづれなりとも打所、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べき事也。

 【石井家本】

一 縁のあたりと云事。我、うち出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道ひとつを以て、何れなりとも打處、是縁の打也。此打、能々打ならひ(得てハ)、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べき事也。

 【伊丹家甲本】

一 縁のあたりと云事。我、打出す時、敵、打とめむ、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一つをもつて、いづれなりとも打所、是縁の打也。此うち、能々打習ひ【◇】、何時も出合打也。さひ/\打合て、分別有べき事也。

 【澤渡家本】

一 縁のあたりといふ事。我うち出すとき、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をもうち、足をも打。太刀の道ひとつをもつて、いづれなりとも打所、是縁のうち也。此打、能々打習【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有るべき事也。

 【伊藤家本】

一 縁のあたりと云事。我、うち出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道ひとつをもつて、いづれなりとも打所、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べき事也。

 【伊丹家乙本】

一 縁の當と云事。我、打出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一ツを以て、いづれなりとも打處、是縁の打なり。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打なり。さい/\打合せて、分別あるべき事なり。

 【神田家本】

一 縁のあたりと云事。我、うち出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道ひとつを以て、何れなりとも打處、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べき事也。

 【猿子家本】

一 縁のあたりと云事。我、打出す時、敵、打留ん、はりのけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一つを以て、何れなりとも打處、是縁の打也。此打、能々うち習ひ【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べし。

 【楠家本】

一 縁のあたりと云事。我、打出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我うち一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をもうつ。太刀の道一ツをもつて、いづれなりとも打所、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。さい/\うちあいて、分別あるべき事也。

 【細川家本】

一 縁のあたりと云事。我、打出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をもうつ。太刀の道一ツをもつて、いづれなりとも打所、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。細々打あひて、分別あるべき事也。

 【丸岡家本】

一 縁のあたりと云事。我、打出す時、敵、打止ん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一ツを以て、何れなりとも打處、是縁の打なり。此打、能々打習バ、何時も出合打なり。さい/\打合て、分別あるべき事なり。

 【富永家本】

一 縁の當りと云事。我、打出す時、敵、打留ん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、【脱字***】、足をも打。太刀の道一ツを以て、いづれなりとも打所、是縁の打なり。此打、能々打習【◇】、何時も出合打なり。細/\打合て、分別有べし。

 【常武堂本】

一 縁のあたりと云事。我、打出す時、敵、打とめん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をもうつ。太刀の道一ツを以て、いづれなりとも打所、是縁の打也。此打、能々打ならひ【◇】、何時も出合打也。細々打あひて、分別あるべき事也。

 【田村家本】

 縁ノ當リト云事 我、打出ストキ、敵、【脱字】トメン、ハリノケントスルトキ、我打一ツニ【脱字】テ、アタマヲ【脱字】打、手ヲモウチ、足ヲモ打。太刀ノ道一ツヲ以テ、イヅレ【脱字】共打処、是縁ノ打也。此打、能々打習テハ、何【脱字】モ出合打也。サヒ々打合テ、分別アルベキ事也。

 【狩野文庫本】

一 縁の當りと云事。我、打出す時、敵、打留ん、はりのけんとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一ツを以、いづれ成とも打所、【脱字】縁の打也。此打、克々【脱字】習【◇】、何時も出合打なり。さい/\打合而、分別有べき【脱字】なり。

 【多田家本】

一 縁の當りと云事。我、打出す時、敵、打留ん、張のけんとする時、我打一つにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一つを以て、いづれ成共打所、是縁の打也。此打、【脱字】習得て、何時も出合打也。細々打合て、分別有べき【脱字】也。

 【山岡鉄舟本】

一 縁ノ當リト云事。我打出ス時、敵、打留ン、張ノケントスル時、我打一ツニシテ、當ルマデモ打、手ヲモ打、足ヲモ打。太刀ノ道一ツヲ以テ、何レナリ共打処、是縁ノ打也。此打、能々打習テハ、何時モ出合打也。細々打合テ、分別アルベキ事也。

 【稼堂文庫本】

一 縁の當りと云事。我太刀打出ス時、敵、打留む、張除んとする時、我打一ツにして、頭をも打、手をもうち、足をも打ツ。太刀の道一ツを以て、何れ成共打所、是縁の打也。此打、能々打習ひ【◇】、何れも出合打也。細々打合て、分別有べし。  

 【大瀧家本】

一 縁のあたりといふ事。我、打出す時、敵、打留ん、張抜んとする時、我打一ツにして、あたまをも打、手をも打、足をも打。太刀の道一ツを以て、何れ成共打處、是縁の打なり。此打、能々打習【◇】、何時も出合打也。さい/\打合て、分別有べき事也。    PageTop    Back   Next 

  20 石火のあたりと云事

 【吉田家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足も剛く、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならわずしてハ、うちがたし。能鍛錬をすれバ、つよくあたるもの也。

 【近藤家甲本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀と我が太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足もつよく、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならハずしてハ、打がたし。能鍛錬をすれバ、強くあたるもの也。

 【近藤家乙本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足もつよく、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならハずしてハ、うちがたし。能鍛錬をすれバ、つよくあたるもの也。

 【中山文庫本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀と我太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足も剛く、身も強く、手も強く、三所をもつて、早く打べき也。此打、度々打習わずしてハ、打難し。能鍛錬をすれバ、つよくあたるもの也。

 【赤見家丙本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足もつよく、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならハずしてハ、うちがたし。能鍛錬をすれバ、つよくあたるもの也。

 【石井家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足もつよく、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならハずしてハ、打がたし。能々鍛錬(を)すれバ、つよくあたるもの也。

 【伊丹家甲本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足も剛く、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならハずしてハ、うちがたし。よく鍛錬をすれバ、つよくあたるもの也。

 【澤渡家本】

一 石火のあたりといふ事。石火のあたりは、敵の太刀と我が太刀と付合ほどにて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足も強く、身もつよく、手もつよく、三所をもつて、早く打べき也。此打、度々打習ハずし【脱字】ハ、打がたし。能々鍛錬をすれバ、強くあたるもの也。

 【伊藤家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足もつよく、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならハずしてハ、打がたし。能鍛錬をすれバ、つよくあたるもの也。

 【伊丹家乙本】

一 石火の當といふ事。石火のあたりハ、敵の太刀と我が太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是は、足も剛く、身も剛く、手も剛く、三處を以て、早く打べき也。此打、たび/\打習ハずしてハ、打難し。能鍛錬をすれバ、つよく當るものなり。

 【神田家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足もつよく、身も強く、手も強く、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならハずしてハ、打がたし。能々鍛錬をすれば、つよくあたるもの也。

 【猿子家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀と我が太刀と付合程にて、我太刀少も上ずして、いかにも強く打也。是ハ、足も強く、身も強く、手もつよく、三所をもつて、早く打べきなり。此打、度々打習ハずしてハ、打がたし。能々鍛錬をすれバ、強く當るもの也。

 【楠家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀とわが太刀と付合ほどにて、わが太刀少もあげずして、いかにもつよく打也。是は、足もつよく、身もつよく、手もつよく、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならはずしては、打がたし。よく鍛練【脱字】すれバ、つよくあたる物也。

 【細川家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりは、敵の太刀と我太刀と付合ほどにて、我太刀少もあげずして、いかにもつよく打也。是は、足もつよく、身もつよく、手もつよく、三所をもつて、はやく打べき也。此打、たび/\打ならわずしてハ、打がたし。よく鍛練【脱字】すれば、つよくあたるもの也。

 【丸岡家本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりは、敵の太刀と我太刀と付合ほどにて、我太刀少もあげずして、いかにもつよく打也。是は、足も強ク、身も強く、手もつよく、三所を以、早ク打べき也。此打、たび/\打習ずしては、打がたし。能鍛練【脱字】すれば、つよくあたるもの也。

 【富永家本】

一 石火の當りと云事。石火の當りハ、敵の太刀と我太刀と付合程にて、我太刀少もあげずして、いかにも強く打也。是ハ、足も強く、身も強く、【脱字***】、三所を以て、早く打べき也。【脱字】、毎々打ならわずしてハ、難打。能/\鍛練【脱字】すれバ、強く當るものなり。

 【常武堂本】

一 石火のあたりと云事。石火のあたりハ、敵の太刀と我太刀と付合ほどにて、我太刀少もあげずして、いかにもつよく打也。是ハ、足もつよく、身もつよく、手もつよく、三所を以て、はやく打べき也。此【脱字】、たび/\打ならはずしてハ、打がたし。よく鍛練【脱字】すれば、つよくあたるもの也。

 【田村家本】

 石火ノ當ト云事 石火ノアタリハ、敵ノタチト吾太刀ト付合程ニテ、我太刀少モ上ズシテ、イカニモ強打事也。是ハ、足モツヨク、身モツヨク、手モツヨク、三処ヲ以テ、速打ベキ也。此打、度々打ナラハズシテハ、打ガタシ。能々鍛練【脱字】シテハ、ツヨク當ル者也。

 【狩野文庫本】

一 石火の當と云事。石火の當ハ、敵の太刀と我太刀と打合程にて、我太刀少も上ずして、いかにもつよく打也。是ハ、足も強、身も強、手も強、三所を以、早打【脱字】也。【脱字】度々打習ハずしてハ、うちがたし。能々鍛練【脱字】すれバ、能當者也。

 【多田家本】

一 石火の當りと云事。石火の當りハ、敵の太刀と我太刀と付合程にて、われ太刀少もあげずして、如何にも強く打也。是ハ、足も強く、身も強く、手も強く、三所を以て、早く可打也。此打、度々【脱字】習はずしてハ、打がたし。よく鍛練【脱字】すれバ、強く當るもの也。

 【山岡鉄舟本】

一 石火ノ當リト云事。石火ノ當リハ、敵ノ太刀ト我太刀ト付合程ニテ、我太刀少モ上ズシテ、イカニモ強ク打也。是ハ、足モ強ク、身モ強ク、手モ強ク、三所迄以テ、早ク打ベキ也。此打、度々打習ハズシテハ、打難シ。能鍛錬【脱字】スレバ、強ク當ル者也。

 【稼堂文庫本】

一 石火の當と云事。石火の當ハ、敵の太刀と我太刀【脱字】付合ほどにて、我太刀少も上ゲずして、如何にも強く打也。是は、足も強く、身も強く、手も強く、三所を以、早く打べき也。此打、度々打習わずしては、打がたし。能く鍛練【脱字】すれバ、強く當る者也。  

 【大瀧家本】

一 石火の當りといふ事。石火のあたりハ、敵の太刀と我太刀と付合程にて、我太刀少も上ずして、いかにも強く打也。是ハ、足も強く、身も強く、手も強く、三処を以て、早く打【脱字】也。此打、度々打習ずしてハ、打難し。能々鍛錬【脱字】すれば、強くあたるもの也。    PageTop    Back   Next 

  21 紅葉の打と云事

 【吉田家本】

一 紅葉のうちと云事。紅葉のうち、敵の太刀を打落し、太刀とりはなす心也。敵、前に太刀を搆、うたむ、はらむ、うけむと思とき、我打心ハ、無念無相のうち、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其儘跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。此うち鍛練すれバ、打落す事安し。能々稽古有べし。

 【近藤家甲本】

一 紅葉の打と云事。紅葉のうち、敵の太刀を打落し、太刀とりはなつ心也。敵前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我【脱字】心は無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。この打、鍛練すれバ、打落事安し。能々稽古有べし。

 【近藤家乙本】

一 紅葉の打と云事。紅葉のうち、敵の太刀を打落し、太刀とりはなつ心也。敵前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我【脱字】心は無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。この打、鍛練すれバ、打落事安し。能々稽古有べし。

 【中山文庫本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀とりはなす心也。敵前に太刀を搆、打む、はらむ、うけむと思とき、我打心ハ無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其侭跡をはねる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、必ず落もの也。此打、鍛練すれバ、打落す事安し。能々稽古有べし。

 【赤見家丙本】

一 紅葉のうちと云事。紅葉のうち、敵の太刀を打落し、太刀とりはなつ心也。敵前に太刀を構へ、打ん、はらん、うけんと思時、我【脱字】心は無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。此打、鍛練すれバ、打落事安し。能々稽古有べし。

 【石井家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉のうち、敵の太刀を打落し、太刀とりはなつ心也。敵前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我【脱字】心は無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。この打、鍛練すれば、打落事安し。能々稽古有べし。

 【伊丹家甲本】

一 紅葉のうちと云事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀とりはなす心也。敵前に太刀を搆、打む、はらむ、うけむと思とき、我打心ハ無念無相のうち、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其侭跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。此うち、鍛練すれバ、打落す事安し。能々稽古有べし。

 【澤渡家本】

一 紅葉の打といふ事。紅葉の打、敵の太刀を打落、太刀とりはなつ心成り。敵前に太刀を搆へ、打ん、はらん、うけんと思ふとき、我【脱字】心ハ無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝあとをねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。此打、鍛練すれ【脱字】、打落事安し。能々稽古あるべし。

 【伊藤家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉のうち、敵の太刀を打落し、太刀とりはなつ心也。敵前に太刀を搆へ、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我【脱字】心は無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。この打、鍛練すれバ、打落事安し。能々稽古有べし。

 【伊丹家乙本】

一 紅葉の打といふ事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀とりはなす心なり。敵前に太刀を搆、打む、はらん、うけんとおもふとき、我打こゝろハ無念無相の打、また、石火の打にても、敵の太刀をつよく打、其侭跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、必落ものなり。この打、鍛練すれバ、打落す事安し。能々稽古すべし。

 【神田家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉のうち、敵の太刀を打落し、太刀とりはなつ心也。敵前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我【脱字】心は無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならず落もの也。この打、鍛練すれば、打落事安し。能々稽古有べし。

 【猿子家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀とりはなつ心也。敵前に太刀を搆ひ、打たん、張らん、うけんと思ふ時、我【脱字】心は無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其侭跡をねはる心にて、切先さがりに打てバ、敵の太刀、かならず落もの也。此打、鍛練すれバ、打落事安し。能々稽古有べし。

 【楠家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打おとし、太刀とりはなす心也。敵、前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんとおもふ時、わが打心は、無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀をつよく打、其まゝあとをねはる心にて、切先さがりにうてバ、敵の太刀、かならずおつるもの也。此打鍛練すれバ、打おとす事やすし。よく/\稽古有べし。

 【細川家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打おとし、太刀取なをす心也。敵、前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我打心は、無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、その儘あとをねはる心にて、きつさきさがりにうてば、敵の太刀、必おつるもの也。此打鍛練すれば、打おとす事やすし。能々稽古あるべし。

 【丸岡家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀取放す心也。敵、前に太刀をかまへ、打ん、はらん、受んと思ふ時、我打心は、無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀をつよく打、其まゝあとをねはる心にて、切先下りに打ば、敵の太刀、必落るもの也。此打鍛練すれば、打落す事易し。能々けいこ有べし。

 【富永家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、【脱字】取はなさす心なり。敵、前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我打心ハ、無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりに打バ、敵の太刀、必おつるもの也。 此打鍛練すれバ、打おとす事安し。好々稽古あるべし。

 【常武堂本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打おとし、太刀取なほす心也。敵、前に太刀を搆、うたん、はらん、うけむと思ふ時、我打心ハ、無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、その侭あとをねはる心にて、きつさきさがりにうてバ、敵の太刀、必おつるもの也。此打鍛練すれバ、打おとす事やすし。能々稽古あるべし。

 【田村家本】

 紅葉ノ打ト云事 コウヤウノ打、敵ノ太刀ヲ打落、太刀取ハナス心也。敵、前ニ太刀ヲ搆、打ン、ハラハン、ウケント思トキ、我打心ハ、無念無相ノ打、又、石火ノ打ニテモ、敵ノタチヲ強ク打、其侭アトヲネハル心ニテ、切先下リニ打バ、敵ノ太刀、必落ルモノ也。此打鍛練スレバ、打落ス事安シ。ヨク能稽古アルベシ。

 【狩野文庫本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀取はなす心也。敵、前に太刀を搆、うたん、はらん、うけんと思ふ時、我打心は、無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強【脱字】、其儘跡をねはる心ニ而、切先下りに打バ、敵の太刀、必落者なり。此打鍛練すれバ、打落事やすし。【脱字】稽古有べし。

 【多田家本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀取はなす心也。敵、前に太刀を搆、打ん、張ん、【脱字】と思ふ時、我【脱字】心は無念無想の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其まゝ跡をねはる心にて、切先さがりにうてば、敵の太刀、かならず落者也。此打鍛練すれバ、敵の太刀、打落す事安し。【脱字】稽古有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 紅葉ノ打ト云事。紅葉ノ打、敵ノ太刀ヲ打ヲロシ、太刀取放ス心也。敵、前ニ太刀ヲ搆、打ン、張ラン、受ント思フ時、我【脱字】心ハ、無念無想ノ打、又、石火ノ打ニテモ、敵ノ太刀ヲ強ク打、其侭跡ヲネハル心ニテ、切先下リニ打テバ、敵ノ太刀、必落ル者也。此打鍛練スレバ、打落ス事安シ。能々稽古有ベシ。

 【稼堂文庫本】

一 紅葉の打と云事。紅葉の打ハ、敵の太刀を打落し、太刀取放す心也。敵、前に太刀を搆へ、打出し、張ん、請んと思ふ時、我打心は、無念無相の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強くうち、其侭跡をねはる心にて、切先下りに打ば、敵の太刀、必落る者也。此打鍛練すれバ、打落こと安し。能々稽古有べし。  

 【大瀧家本】

一 紅葉の打といふ事。紅葉の打、敵の太刀を打落し、太刀取放つ心なり。敵、前に太刀を搆ひ、打ん、拂はん、受んと思ふ時、我打心ハ、無念無想の打、又、石火の打にても、敵の太刀を強く打、其侭跡をねはる心にて、切先下りに打てバ、敵の太刀、必ず落るもの也。此打鍛錬すれば、打落事安し。能々稽古あるべし。    PageTop    Back   Next 

  22 太刀に替る身と云事

 【吉田家本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかはる太刀とも云べし。惣而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵の打縁により、身をばさきに打身になり、太刀ハ、身にかまはず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事は有れども、大かたハ、身をさきへ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【近藤家甲本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかハる太刀ともいふべし。捴而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵のうつ縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事ハあれとも、大かたハ、身を先へ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【近藤家乙本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかハる太刀ともいふべし。捴而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵のうつ縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事ハあれども、大かたハ、身をさきへ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【中山文庫本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかはる太刀とも云べし。惣而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵の打縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまはず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事はあれども、大かたハ、身を先へ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習ふべき也。

 【赤見家丙本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかはる太刀ともいふべし。惣而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵のうつ縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事【脱字】あれども、大かたハ、身をさきへ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【石井家本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかハる太刀ともいふべし。捴而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵のうつ縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事ハありとも、大かたハ、身を先へ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【伊丹家甲本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかはる太刀とも云べし。惣而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵の打縁により、身をばさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事ハあれども、大かたハ、身を先へ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習ふべき也。

 【澤渡家本】

一 太刀にかわる【脱字】といふ事。身にかはる太刀共いふべし。惣而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハ打ざるもの也。敵の打縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身はゆかず、太刀にて打事【脱字】あれとも、大かたハ、身をさきへ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、うちならふべき也。

 【伊藤家本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかハる太刀ともいふべし。捴而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵のうつ縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事ハあれども、大かたハ、身を先へ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【伊丹家乙本】

一 太刀に替る身といふ事。身に替る太刀とも云べし。惣て、敵を打身に、太刀も身も一度にハ打ざるものなり。敵の打縁により、身をバ先に打身になり、太刀は、身にかまはず打所也。若は、身は行ず、太刀にてうつ事ハ有とも、大かたハ、身を先え打、太刀を跡より打物なり。よく/\吟味して、打習べきなり。

 【神田家本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかハる太刀ともいふべし。捴而、敵をうつ身に、太刀も身も一度にハうたざるもの也。敵のうつ縁により、身をバさきに打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にてうつ事ハあれども、大かたハ、身を先へ打、太刀を跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【猿子家本】

一 太刀に替る身と云事。身にかわる太刀ともいふべし。捴て、敵を打身に、太刀も身も一度にハ打ざるもの也。敵のうつ縁により、身をバ先に打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所也。若ハ、身ハゆかず、太刀にて打事ハ有れども、大方ハ、身を先へ打、太刀ハ跡より打もの也。能々吟味して、打習べき也。

 【楠家本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかはる太刀ともいふべし。惣而、敵を打身に、太刀も身も、一度にハうたざるもの也。敵の打縁により、身をバさきへうつ身になり、太刀ハ、身にかまはず打所也。若ハ、身ハゆるかず、太刀にてうつ事ハあれども、大かたハ、身を先へ打、太刀をあとより打もの也。よく/\吟味して、打ならふべき也。

 【細川家本】

一 太刀にかはる身と云事。身にかはる太刀とも云べし。惣而、敵を打身に、太刀も身も、一度にはうたざるもの也。敵の打縁により、身をばさきへうつ身になり、太刀は、身にかまハず打所也。若は、身はゆるかず、太刀にてうつ事はあれども、大形は、身を先へ打、太刀をあとより打もの也。能々吟味して、打ならふべき也。

 【丸岡家本】

一 太刀に替る身と云事。身に代る太刀共云べし。摠じて、敵を打身に、太刀も身も、一度には打ざるもの也。敵の打縁により、身をばさきへうつ身になり、太刀は、身にかまハず打所也。若は、身はゆるかず、太刀にて打ことはあれ共、大かたは、身を先へ打、太刀をあとより打もの也。能々吟味して、打習ふべき也。

 【富永家本】

一 太刀に替身と云事。身にかわる太刀ともいふ【脱字】。惣而、敵を打身に、太刀も身も、一度にはうたざるものなり。敵の打縁により、身をバ先へ打身になり、太刀ハ、身にかまハず打所なり。若ハ、身ハゆるかず、太刀にて打事ハあれども、大かたハ、身を先へ【脱字】、太刀をあとより打者なり。能々吟味して、打ならふべきなり。

 【常武堂本】

一 太刀にかはる身と云事。身に替る太刀とも云べし。惣じて、敵を打身に、太刀も身も、一度にハうたざるもの也。敵の打縁により、身をバさきへうつ身になり、太刀ハ、身にかまはず打所也。若ハ、身ハゆるかず、太刀にて打事ハあれども、大形ハ、身を先へ打、太刀をあとより打もの也。能々吟味して、打ならふべき也。

 【田村家本】

 太刀ニ替ル身ト云事 身ニカワル太刀共云ベシ。惣ジテ、敵ヲ打ミニ、太刀モ身モ、一度ニハウタヌモノ也。テキ【脱字】打エンニヨリ、身ヲバ先エ打身ニナリ、太刀ハ、身ニカマワズ打處ナリ。若、身ハユルカズ、太刀ニテ打事ハ有レ共、大方【脱字】身ヲ先エ打、太刀ヲアトヨリ打者也。能々吟味シテ、打習ベキナリ。

 【狩野文庫本】

一 太刀に替る身と云事。身ニ替る太刀とも云べし。惣而、敵を打【脱字】に、太刀も身も、一度ニ打タざるものなり。敵の打縁により、身をバ先へ打身になり、太刀ハ、身にかまわず打所也。若ハ、身にゆるかず、太刀にて打事は有れども、大形は、身を先へ打、太刀を跡より打者也。能々吟味して、打習べき也。

 【多田家本】

一 太刀に替る身と云事。身に替る太刀共云べし。惣じて、【脱字*******************】敵の打縁により、身をバ先に打身になり、太刀ハ、身に搆はず打所也。若ハ、身ハ行ず、太刀にて打事はあれ共、大形は、身を先へ打、太刀を跡より打物也。能々吟味して、打習ふべき也。

 【山岡鉄舟本】

一 太刀ニ替ル身ト云事。身ニ替ル太刀共云ベシ。惣テ、敵ヲ打身ニ、太刀モ身モ、一度ニ【脱字】ウタザル者也。敵ノ打縁ニヨリ、身ヲバ先ヘ打身ニナリ、太刀ハ身ニ搆ハズ打処ナリ。若、身ハユルカズ、太刀ニテ打事ハ有レ共、大方ハ、身ヲ先ヘ打、太刀ヲ跡ヨリ打モノ也。能々吟味シテ、打習フベシ。

 【稼堂文庫本】

一 太刀に替る身と云事。身に替る太刀共云べし。惣て、敵を打身に、太刀も身も、一度には打ざる者也。敵の打縁に依て、身をば先へ打身に成り、太刀ハ、身に搆はず打所也。若ハ、身ハゆるかず、たちにて打ことハ有れ共、大形は、身を先えうち、太刀を跡よりうつ者也。能々吟味して、打ならふべき者也。  

 【大瀧家本】

一 太刀に替る身といふ事。身に替る太刀共云べし。惣而、敵を打【脱字】に、太刀も身も、一度にハうたざるものなり。敵の打縁により、身をば先【脱字】打身になりて、太刀ハ、身に搆はず打處也。若ハ、身はゆかず、太刀にて打事ハあれ共、大形ハ、身を先へ打、太刀ハ跡より打もの也。能々吟味して、打習ふべきなり。    PageTop    Back   Next 

  23 打とあたると云事

 【吉田家本】

一 打とあたると云事。うつと云事、あたると云事、二ツ也。うつと云こゝろハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と剛くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打所也。吟味すべし。敵の手にても足にても、あたると云ハ、先、あたる也。あたりて後を、強くうたむため也。あたるハさわるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【近藤家甲本】

一 打とあたると云事。うつと云事、あたるといふ事、二つ也。うつと云こゝろハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打所なり。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたるといふは、先、あたる也。あたりて後を、強くうたんため也。あたるハ、さハるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【近藤家乙本】

一 打とあたると云事。うつといふ事、あたるといふ事、二ツ也。うつと云こゝろハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打所なり。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたるといふは、先、あたる也。あたりて後を、強くうたんため也。あたるハ、さわるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【中山文庫本】

一 打とあたると云事。うつと云事、あたると云事、二ツ也。うつと云心ハ、何れの打にても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と剛くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、是ハ、あたる也。打と云ハ、心得て打所也。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたると云ハ、先、あたる也。あたりて後を、強くうたむため也。あたるハ、さはるほどの心、能く習得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【赤見家丙本】

一 打とあたると云事。うつといふ事、あたるといふ事、二つ也。うつと云心ハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打所也。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたるといふハ、先、あたる也。あたりて後を、強くうたんため也。あたるは、さハるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【石井家本】

一 打とあたると云事。うつと云事、あたるといふ事、二つ也。うつと云こゝろハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打處なり。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたるといふは、先、あたる也。あたりて後を、強くうたんため也。あたるハ、さハるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【伊丹家甲本】

一 打とあたると云事。うつと云事、あたると云事、二ツ也。うつと云心ハ、何れの打にても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と剛くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、是ハ、あたる也。打と云ハ、心得て打所也。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたると云ハ、先あたるなり。あたりて後を、強くうたむため也。あたるハ、さはるほどの心、よくならひ得てハ、各別の事なり。工夫すべし。

 【澤渡家本】

一 うつとあたるといふ事。打と云事、あたる【脱字】云事、二ツ也。打と云心ハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵【脱字】死ぬる程にても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打処也。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたるといふハ、先、あたる也。あたりて後を、強くうたんため也。あたるハ、さわる程のこゝろ、能習ひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【伊藤家本】

一 打とあたると云事。うつと云事、あたるといふ事、二つ也。うつと云こゝろハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打所なり。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたるといふは、先、あたる也。あたりて後を、強くうたんため也。あたるハ、さハるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【伊丹家乙本】

一 打と當るといふこと。うつと云事、あたるといふ事、二なり。うつと云心は、いづれの打にても、おもひうけて、たしかに打也。當るハ、行當る程のこゝろにて、何と剛當り、忽敵の死ぬる程にても、是は、當るなり。打といふハ、心得て打處なり。吟味すべし。敵の手ニても、足ニても、當と云ハ、先あたる也。あたりて後を、強く打むためなり。當るハ、さハる程の心、よく習得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【神田家本】

一 打とあたると云事。うつと云事、あたるといふ事、二つ也。うつと云こゝろハ、何れのうちにても、おもひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵の死ぬるほどにても、これハ、あたる也。打と云ハ、心得て打處なり。吟味すべし。敵の手にても、足にても、あたるといふは、先、あたる也。あたりて後を、強くうたんため也。あたるハ、さハるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【猿子家本】

一 打と當ると云事。打と云事、あたるといふ事、二つ也。打と云心ハ、何れの打にても、思うけて、たしかに打也。あたるハ、行あたる程の心にて、何と強くあたり、忽敵の死ぬる程にても、是ハ、當る也。打と云ハ、心得て打處也。吟味すべし。敵の手にても、足にても、當るといふは、先、あたる也。あたりて後を、強く打んため也。あたるハ、さハる程のこゝろ、能習得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【楠家本】

一 打とあたると云事。打と云事、あたると云事、二ツなり。打といふ心ハ、いづれの打にても、思ひうけて、慥に打也。あたるハ、ゆきあたるほどの心にて、何とつよくあたり、忽敵の死ぬる程にても、是は、あたる也。打といふハ、心得て打所也。吟味すべし。敵の手にても足にても、あたるといふハ、先、あたる也。あたりて後を、つよくうたんためなり。あたるハさはるほどの心、能習ひ【脱字】てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【細川家本】

一 打とあたると云事。打と云事、あたると云事、二ツ也。打と云心は、いづれの打にても、思ひうけて、慥に打也。あたるは、ゆきあたるほどの心にて、何と強クあたり、忽敵の死るほどにても、是は、あたる也。打と云は、心得て打所也。吟味すべし。敵の手にても足にても、あたると云は、先、あたる也。あたりて後を、つよくうたんためなり。あたるはさわるほどの心、能ならひ得ては、各別の事也。工夫すべし。

 【丸岡家本】

一 打とあたると云事。打と云事、あたると云事、二ツなり。打と云心は、いづれの打にても、思ひうけて、たしかに打也。あたるハ、行あたるほどの心にて、何とつよくあたり、忽敵の死ぬるほどにても、是は、あたるなり。打と云は、心得て打處也。吟味すべし。敵の手にても足にても、あたると云は、先、あたる也。あたりて後を、強く打んため也。あたるはさハるほどの心、能習得ては、各別の事也。工夫すべし。

 【富永家本】

一 打とあたると云事。打と云事、あたるといふ事、二ツなり。打と云心は、いづれの打にても、思ひうけて、慥に打なり。あたるハ、ゆきあたるほどの心にて、何とつよくあたり、忽敵の死ぬる程にても、是ハ、あたるなり。打といふハ、心得て打所なり。吟味すべし。敵の手にても足にても、あたると云ハ、先、あたる也。あたりて後を、つよくうたんためなり。あたるハさわるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【常武堂本】

一 打とあたると云事。打と云事、あたると云事、二ツ也。打と云心ハ、いづれの打にても、思ひうけて、慥に打也。あたるハ、ゆきあたるほどの心にて、何と強くあたり、忽敵の死るほどにても、是ハ、あたる也。打と云は、心得て打所也。吟味すべし。敵の手にても足にても、あたると云ハ、先、あたる也。あたりて後を、つよくうたん為也。あたるハさわるほどの心、能ならひ得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【田村家本】

 打ト當ルト云事 ウチト云コト、アタルト云事、二ツ也。打ト云心ハ、何レノ打ニ【脱字】モ、思受テ、慥ニ打也。アタルハ、行當ル程ノ心ニテ、何ト強クアタリ、忽テキ【脱字】死程ニテモ、是ハ、アタル也。打ト云ハ、心得テ打処也。吟味スベシ。敵ノ手ニテモ足ニテモ、アタルト云ハ、先、アタル也。アタリテ後【脱字】ツヨクウタン爲ナリ。アタルハサワル程ノ心、ヨク習得テハ、格別ノコトナリ。工夫スベシ。

 【狩野文庫本】

一 當と打[語順]と云事。打と云と、當と云と、二ツ也。打と云ふ事ハ、何れの打ニ而も、思ひ請て、慥ニ打也。當るハ、行當程の心ニ而、何と強當、忽敵【脱字】死程ニ而も、是ハ、當る也。打と云ハ、心得て打所也。吟味すべし。敵の手ニ而も足にても、當ると云ハ、先、當也。當りて後を、強うたん為メ也。當るハさわる程の心、能習得て【脱字】、各別の事也。工夫すべし。

 【多田家本】

一 當ると打[語順]と云事。打と【脱字】當ると云事、二つなり。打といふ心は、何れの打にても、思ひうけて、慥に打也。當るハ、行當る程の心にて、何と強く當り、忽敵の死する程にても、是は、當る也。打といふハ、心得て打處也。吟味すべし。敵の手にても、足にても、當ると云【脱字】、先、當る也。當りてハ後を、強く打ん為也。當るハ、さわる程の心、よく習得てハ、各別の事也。工夫すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 打ト當ルト云事。打ト云事、當ルト云事、二ツ也。打ト云心ハ、何レノ打ニテモ、思ヒ受テ慥ニ打也。當ルハ、ユキ當ル程ノ心ニテ、何トナク強ク當ル、忽敵ノ死ル程ニテモ、是ハ、當ル也。打ト云ハ、心得テ打処也。吟味スベシ。敵ノ手ニテモ足ニテモ、當ルト云ハ、先ンニ當也。當リテ後ヲ、強ク打ン為也。當ルハ障ル程ノ心、能習得テハ、格別ノ事也。工夫スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 打と當ると云事。打と【脱字】當ると云こと、二ツ也。打と云【脱字】ハ、何れのうちにても、おもひ受て、慥ニ打也。當ハ、行あたるほどの心にて、何と強く當り、忽敵の死する程ニても、是は、當る也。打と云は、心得てうつ所也。吟味すべし。敵の手にても足にても、當ると云ハ、先ヅ當る也。あたりて後を、強く打ン為也。當るハさわる程の心、よく習得てハ、各別のこと【脱字】。工夫すべし。  

 【大瀧家本】

一 打と當るといふ事。打と云事、當るといふ事、二ツなり。打といふ心ハ、何れのうちにても、おもひ受て、慥に打也。當るハ、行當る程の心にて、何と強く當り、忽ち敵の死ぬる程にても、是ハ、當るなり。打といふハ、心得て打處なり。吟味すべし。敵の手にても足にても、當ると云ハ、先に當る也。當て後を、強く打ん為也。當るハさはる程の心、【脱字】習得てハ、各別の事也。工夫すべし。    PageTop    Back   Next 

  24 秋猴〔しゅうこう〕の身と云事

 【吉田家本】

一 しうかうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出だす心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さむとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、惣身をはやくうつり入心也。手にてうけ合【脱字】程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【近藤家甲本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さんとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、捴身をはやくうつり入心也。手にてうけ合する程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【近藤家乙本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬこゝろ也。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前、身をはやく入こゝろ也。手を出さんとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、捴身をはやくうつり入心也。手にてうけ合する程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【中山文庫本】

一 秋〔シウ〕かうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出さす心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さむとおもヘバ、必身の遠のく物なるによつて、惣身を早くうつり入心也。手にてうけ合【脱字】程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【赤見家丙本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手をいだす心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さんとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、捴身をはやくうつり入心也。手にてうけ合する程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【石井家本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手をいだす心なく、敵打前、身をはやく入心也。手(を)出さんとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、捴身をはやくうつり入心也。手にてうけ合する程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【伊丹家甲本】

一 しうかうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出だす心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さむとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、惣身をはやくうつり入心也。手にてうけ合【脱字】程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【澤渡家本】

一 秋猴の身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手【脱字】出す心無、敵打前、身を早ク入心也。手を出さんとおもヘバ、必ず身の遠のく物なるに依而、惣身をはやくうつり入心也。手にてうけ合するほどの間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【伊藤家本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手をいだす心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さんとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、捴身をはやくうつり入心也。手にてうけ合する程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【伊丹家乙本】

一 秋猴の身といふ事。しうかうの身とハ、手を出さぬ心也。敵えいる身に、少も手を出す心なく、敵打前、身を早く入心なり。手を出さぬとおもヘバ、かならず身の【脱字】のくものなりよつて、惣身を早く移り入心也。手にてうけ合【脱字】程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味【脱字】べし。

 【神田家本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手をいだす心なく、敵打前、身をはやく入心也。手【脱字】出さんとおもヘバ、かならず身の遠のく物なるによつて、捴身をはやくうつり入心也。手の(にて)うけ合する程の間にハ、【脱字】入安きもの也。能々吟味すべし。

 【猿子家本】

一 秋猴の身と云事。しうかうの身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前、身を早く入心也。手【脱字】出さんと思ヘバ、必ず身の遠ふのく物なるに依て、捴身を早くうつり入心也。手にてうけ合する程の間にハ、身も入安きもの也。能々吟味すべし。

 【楠家本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前、身をはやく入心なり。手を出さんと思へバ、必身の遠のくものなるによつて、惣身をはやくうつり入心也。手にてうけ合する程の間にハ、身も入やすき者也。能々吟味すべし。

 【細川家本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とは、手を出さぬ心なり。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さんと思へば、必身の遠のくものなるによつて、惣身をはやくうつり入心なり。手にてうけ合するほどの間には、身も入やすきもの也。能々吟味すべし。

 【丸岡家本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とは、手を出さぬ心なり。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さんと思へバ、必身の遠のくものなるによりて、惣身を早くうつり入心也。手にてうけ合するほどの間には、身も入易きもの也。能々吟味すべし。

 【富永家本】

一 しうこうの身といふ事。しうこうの身とハ、手を出さぬ心なり。敵え入身に、少も手を出す心無、敵打を、身を早く入心なり。手を出さんとおもへバ、必身のとふのく者なるによつて、惣身を早く移り入心なり。手にて請合する程の間にハ、身も入やすきもの也。能々吟味すべし。

 【常武堂本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前、身をはやく入心也。手を出さんと思へバ、必ず身の遠のくものなるによつて、惣身をはやくうつり入心なり。手にてうけ合するほどの間にハ、身も入やすきもの也。能々吟味すべし。

 【田村家本】

 秋猴ノ身ト云事 シウコフノミトハ、手ヲ出サヌ心也。敵エ入身ニ、少モ手ヲ出ス心ナク、敵打マエ、身ヲ早ク入心也。手ヲ出サント思ヘバ、必ミ【脱字】遠クノク者ナルニ依テ、ソフ身ヲ早ウツリ入心也。手ニテ受合スル程ノ間ニハ、身モ入安キ者也。能々吟味スベシ。

 【狩野文庫本】

一 しうこうの身と云事。秋猴の身とは、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前に、身をはやく入心也。手を出さんと思へば、必身ハ遠のく物成に依而、惣身をはやくうつり入るゝ心也。手にて請合する程の間ニハ、身も入易きものなり。能々吟味すべし。

 【多田家本】

一 しうかうの身と云事。秋猴の身とハ、手を出さぬ心也。敵へ入身に、少も手を出す心なく、敵打前に、身を早く入心也。手を出さぬと思ヘバ、必身を遠のく物成に【脱字】て、惣身【脱字】早く移り入心也。手にて請合する程の間にハ、身も入安き物也。能々吟味すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 秋猴ノ身ト云事。秋猴ノ身トハ、手ヲ出サヌ心也。敵ヘ入身ニ、少シモ手ヲ出ス心ナク、敵ノ打前、身ヲ早ク入心也。手ヲ出サント思バ、必身ノ遠クノク者成ルニヨリテ、惣身ノ早クヲシ入ル心也。手ニテ受合スル程ノ間ニハ、身モ入安キ者ナリ。能々吟味スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 秋猴の身と云事。しうこうの身と云ハ、手を出さぬ心なり。敵へ入身に、少しも手を出す心なく、敵の打前、身を早く入込心也。手を出さんとおもへば、必身ハ遠く除く者也【脱字】依て、惣身を早く移り入る心也。手にてうけ合するほどの間にては、【脱字】入やすき者也。能々吟味すべし。  

 【大瀧家本】

     (この条欠落)    PageTop    Back   Next 

  25 漆膠〔しっこう〕の身と云事

 【吉田家本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをも付、身を【脱字】付け、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハ早くいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能付、少も身のあひのなき様に、つくもの也。よく/\吟味有べし。

 【近藤家甲本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをも付、身をもつけ、足をも付、強く付所也。人毎に、顔足ハはやくいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能つけ、少も身のあひのなき様に、つくもの也。能々吟味すべし。

 【近藤家乙本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをも付、身をもつけ、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハはやくいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能つけ、少も身のあひのなき様に、つくもの也。能々吟味すべし。

 【中山文庫本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離れぬ心也。敵の身に入とき、かしらをも付、身を【脱字】付け、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハ早くいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能付、少も身のあひのなき様に、つくもの也。能々吟味有べし。

 【赤見家丙本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをも付、身をもつけ、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハはやくいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能つけ、少も身のあひのなき様に、つくもの也。能々吟味すべし。

 【石井家本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをも付、身をもつけ、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハはやくいれども、身ハ(遠)のくもの也。敵の身へ我身を能つけ、少も身の間のなき様に(強く)つくもの也。能々吟味すべし。

 【伊丹家甲本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身によく付て離れぬ心也。敵の身に入とき、かしらをも付、身をも付け、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハ早くいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能付、少も身のあひのなき様に、つくもの也。よく/\吟味有べし。

 【澤渡家本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをもつけ、身をもつけ、足をも付、強く付所也。人毎ニ、顔足ハ早くいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身ヲ能つケ、少も身のあひのなき様に、つく者也。よく/\吟味すべし。

 【伊藤家本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをも付、身をもつけ、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハはやくいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能つけ、少も身のあひのなき様に、つくもの也。能々吟味すべし。

 【伊丹家乙本】

一 しつかうの身といふ事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬ心也。敵の身に入時、かしらをも付、身を【脱字】付け、足をも付、【脱字】所也。人毎、顔足ははやくいれども、身ハのくものなり。敵の身え我身を能付、少も身の間の無様に、つく物也。よく/\吟味有べし。

 【神田家本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付て離ぬこゝろ也。敵の身に入とき、かしらをも付、身をもつけ、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハはやくいれども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能つけ、少も身の間のなき様に、つくもの也。能々吟味すべし。

 【猿子家本】

一 漆膠の身と云事。しつかうとハ、入身に能々付て離ぬ心也。敵の身に入時、かしらをも付、身をも付、足をも付、強く付所也。人毎、顔足ハ早く入れども、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能つけ、少も身の間の無き様に、付くもの也。能々吟味すべし。

 【楠家本】

一 しつこうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付てはなれぬ心也。敵の身に入時、かしらをもつけ、身をもつけ、足をもつけ、つよくつく所也。人毎、顔足ハはやくいれども、身ののくもの也。敵の身へわが身をよくつけ、少も身のあひのなきやうに、つくもの也。能々吟味有べし。

 【細川家本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とは、入身に能付てはなれぬ心也。敵の身に入時、かしらをもつけ、身をもつけ、足をもつけ、つよくつく所也。人毎に、顔足ハはやくいれども、身のゝくもの也。敵の身へ我身をよくつけ、少も身のあいのなきやうに、つくもの也。能々吟味有べし。

 【丸岡家本】

一 漆膠の身と云事。しつかうとは、入身によくつきてはなれぬ心也。敵の身に入時、頭をもつけ、身をもつけ、足をも付け、つよくつく處也。人ごとに、顔足ははやく入ども、身はのくものなり。敵の身へ我身を強くつけ、少も身の間のなきやうに、つくもの也。能々吟味有べし。

 【富永家本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能つけて【脱字**************】、身をもつけ、足をも付、強つく所也。人毎、顔足ハ早く入れども、身【脱字】のくものなり。敵の身へ我身を能付ケ、少も身の合のなき様に、つくものなり。能/\吟味有べし。

 【常武堂本】

一 しつかうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付てはなれぬ心也。敵の身に入時、かしらをもつけ、身をもつけ、足をもつけ、つよくつく所也。人毎に、顔足ハはやくいれども、身のゝくもの也。敵の身へ我身をつけ、少も身のあひのなき様に、つくもの也。能々吟味有べし。

 【田村家本】

 漆膠ノ身ト云事 シツコウトハ、入身ニ能付テハナレヌ心也。テキノ身ニ入時、頭ラヲモ付、身ヲモツケ、足ヲモ付、ツヨクツク処也。人毎ニ、顔足【脱字】早クイレ共、身【脱字】ノク者也。敵ノ身ニ我身ヲヨクツケ、少モ身ノ間ノナキヨウニ、付モノナリ。能々吟味スベシ。

 【狩野文庫本】

一 しつこうの身と云事。漆膠とハ、入身に能付てはなれぬ心也。敵の身に付時、頭をも付、身をも付、足をも付、強付所なり。人毎に、顔足は早入ども、身はのく者也。敵の身へ我身を能付、すこしも身のあひのなきやうに、付もの也。能々吟味すべし。

 【多田家本】

一 しつこうの身といふ事。漆膠とハ、入身に能付てはなれぬ心なり。敵の身へ入時、かしらをもつけ、身をもつけ、足をもつけ、強くつく所也。人毎に、顔足ハ早く入れども、身ハのく物なり。敵の身へ我身を能つけ、少も身の相のなきやうに、つく物也。能々吟味すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 漆膠ノ身ト云事。漆膠トハ、入身ニ能付テ離レヌ心也。敵ノ身ニ入時、頭ヲモ付、身ヲモ付、足ヲモ付、強ク付ク処也。人毎、顔足ハ早ク入共、身【脱字】ノク者也。敵ノ身ヘ我身ヲ能付、少モ身ノ間ノ無キ様ニ、付者也。【脱字*****】。

 【稼堂文庫本】

一 漆膠の身と云事。しつかうと云ハ、入身によく付て離ぬ心也。敵の身に入時、頭をも付、身をも付、足をも付、強く付所也。人毎に顔足は早く入れ共、身ハ除く者也。敵の身え我身を能付て、少も身のあひのなき様に、付る者也。能々吟味有べし。  

 【大瀧家本】

一 漆膠の身といふ事。しつこうとハ、入身に能付てはなれぬ心也。敵の身に入時、頭をも付、身をも付、足をも付、強く付処也。人ごとに、顔足ハ早く入れ共、身ハのくもの也。敵の身へ我身を能付ケ、少も身の間のなき様に、付もの也。能々吟味すべし。    PageTop    Back   Next 

  26 たけくらべと云事

 【吉田家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云ハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延、腰をものべ、首をも延て、強入り、敵のかほと顔とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ほど、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【近藤家甲本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延べ、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵のかほと【脱字】ならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ほどに、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【近藤家乙本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延べ、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵のかほと【脱字】ならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ほどに、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【中山文庫本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云は、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延、腰をものべ、首をも延て、強入り、敵の顔と顔とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ほど、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【赤見家丙本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延べ、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵の顔とかほとならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ふほどに、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【石井家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延べ、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵のかほと我顔とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ふほどに、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【伊丹家甲本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云ハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵のかほと顔とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ほど、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【澤渡家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにテも敵へ入込時、我身のちゞまざるやうにして、足をも延べ、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵の顔とかほとならべて、身のたけをくらぶるに、くらべし勝と思ほどに、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。よく/\工夫あるべし。

 【伊藤家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延べ、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵のかほと【脱字】ならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ほどに、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【伊丹家乙本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云ハ、いづれにても敵へいりこむとき、我身のちゞまざる様ニして、足をも延、腰をものべ、首をものべて、強くいり、敵の顔とかをと並べ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝とおもふ程、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫すべし。

 【神田家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵のかほと(我顔と)ならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ふほどに、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【猿子家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、何れにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざる様にして、足をも延べ、腰をものべ、首をも延て、強く入り、敵のかほと我顔とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ふ程に、たけ高くなつて、強く入所、肝要也。能々工夫有べし。

 【楠家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべといふハ、いづれにても敵へ入込時、わが身のちゞまざるやうにして、足をものべ、こしをものべ、くびをものべて、つよく入、敵のかほと/\とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべかつと思ふほど、たけ高くなつて、つよく入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【細川家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云は、いづれにても敵へ入込時、我身のちゞまざるやうにして、足をものべ、こしをものべ、くびをものべて、つよく入、敵のかほと/\とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべかつと思ふほど、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【丸岡家本】

一 長くらべと云事。たけくらべと云は、いづれにても敵へ入こむ時、我身のちゞまざるやうにして、足をものべ、腰をものべ、くびをも伸べて、強く入、敵の顔と顔と並べ、身の長をくらぶるに、くらべ勝と思ふほど、長高く成て、強ク入處、肝心也。能々工夫あるべし。

 【富永家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云ハ、いづれにても敵へ入込時、我身のちゞまざる様にして、足をも延、腰をものべ、首をも【脱字】、つよく入、敵のかほと/\とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべかつと思ふほど、たけ高くなつて、つよく入所、肝心なり。能々工夫有べし。

 【常武堂本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云ハ、いづれにても敵へ入込時、我身のちゞまざる様にして、足をものべ、こしをものべ、くびをものべて、つよく入、敵のかほと/\とならべ、身のたけをくらぶるに、くらべかつと思ふほど、たけ高くなつて、強く入所、肝心也。能々工夫有べし。

 【田村家本】

 長クラベト云事 タケクラベト云ハ、何レニテモ敵エ入込時、吾身ノチヾマザルヤウニシテ、足ヲモノベ、腰ヲモ伸ベ、首ヲモノベテ、強入、敵ノ顔トカホトナラベ、身ノタケヲクラブルニ、クラベ勝ト思フ程、長高ク成テ、ツヨク入處、肝心也。能々工夫有ベシ。

 【狩野文庫本】

一 たけくらべと【脱字****】云ハ、何れにても敵へ入くむ時、我身のちゞまざるやうにして、足をものべ、腰をものべ、首をものべて、強入、敵の顔と/\ならべ、身の丈を比べるに、くらべ勝と思ふ程、丈高成て、強入處、肝要也。能々工夫すべし。

 【多田家本】

一 たけくらべと云事。たけくらべと云は、何【脱字】も敵へ入込時、我身のちゞまざるやうにして、足をものべ、腰をものべ、首をものべて、強く入、敵の顔と/\並べ、身のたけをくらぶるに、くらべ勝と思ふ程、たけ高く成、強く入【脱字】、肝心也。能々工夫有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 長クラベト云事。長較ト云ハ、何レニテモ敵ヘ入込時、我身ノチヾマザル様ニシテ、足ヲ【脱字】ノベ、腰ヲ【脱字】ノベ、首ヲモノベテ、強ク入、敵ノ顔ト/\並ベテ、身ノ長ヲクラブルニ、クラベ勝ト思程、【脱字】高ク成テ、強ク入処、肝要ナリ。【脱字*****】。

 【稼堂文庫本】

一 たけくらべといふこと。たけくらべと云は、何れにてもかたきへ入込む時、我身をちゞまざる様にして、足をも延、腰をも延、首をも延て、強く入る、敵の顔と/\並べ、身のたけをくらぶるに、くらべかつと思ふ程、長ケ高くなつて、強く入る所、肝心也。能々工夫有べし。  

 【大瀧家本】

一 長竸といふ事。たけくらべと云ハ、何れにても敵へ入込時、我身の縮まざる様にして、足をものべ、腰をものべ、頸をも延て、強く入、敵の顔と我顔とならべ、身の長を竸るに、くらべ勝と思ふ程に、長ケ高く成て、強く入處、肝要也。能々工夫有べし。    PageTop    Back   Next 

  27 ねばりをかくると云事

 【吉田家本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うち懸るに、敵うくるとき、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付てねばりをかけ、入ときハ、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事と、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【近藤家甲本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うちかくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事【脱字】、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【近藤家乙本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うちかくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事【脱字】、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【中山文庫本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀打懸るに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときは、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事と、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【赤見家丙本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うちかくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いか程静に入ても、くるしからず。ねばると云事【脱字】、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【石井家本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うちかくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事(と)、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【伊丹家甲本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うち懸るに、敵うくるとき、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるは、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事と、もつるゝといふ事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【澤渡家本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うちかくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたきハ心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いか程静に入ても、くるしからず。ねばると云事【脱字】、もつるゝと云事、ねばるは強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【伊藤家本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うちかくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事【脱字】、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【伊丹家乙本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀打掛るに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にしている也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強く無心にいるべし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入時ハ、いか程静に入ても、くるしからず。ねばるといふ事【脱字】、もつるゝといふ事、ねばるハつよし、もつるゝハよはし。此事分別有べし。

 【神田家本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀うちかくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりをかけ、入ときハ、いかほど静に入ても、くるしからず。ねばると云事【脱字】、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【猿子家本】

一 ねばりを懸ると云事。敵も打かけ、我も太刀打かくるに、敵受る時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀離れがたき心、あまり強くなき心に入べし。敵の太刀に付て、ねばりを懸、入時ハ、いか程静に入ても、くるしからず。ねばると云事【脱字】、もつるゝと云事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【楠家本】

一 ねばりをかくると云事。敵もうちかけ、我も太刀打かくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまりつよくなき心に入べし。敵の太刀につけてねバりをかけ、入時ハ、いかほども静に入ても、くるしからず。ねばるといふ事と、もつるゝといふ事、ねばるハつよし、もつるゝハよハし。此事分別有べし。

 【細川家本】

一 ねばりをかくると云事。敵もうちかけ、我も太刀打かくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるは、太刀はなれがたき心、あまりつよくなき心に入べし。敵の太刀につけてねばりをかけ、入時は、いか程も静に入ても、くるしからず。ねばると云事と、もつるゝと云事、ねばるはつよし、もつるゝハよハし。此事分別有べし。

 【丸岡家本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打かけ、我も太刀打かくるに、敵受る時、我太刀、敵の太刀ニつけて、ねばる心にして入なり。ねばるは、太刀はなれがたき心、あまりつよくなき心に入べし。敵の太刀につけてねばりをかけ、入時は、いかほども静に入ても、苦しからず。ねバるといふ事と、もつるゝと云事、ねばるは強し、もつるゝはよハし。此事分別有べし。

 【富永家本】

一 ねばりをかくると云事。敵も打懸、我も太刀打懸るに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入なり。ねばるハ、太刀はなれがたき心、餘りつよくなき心に入べし。敵の太刀に付てねばりを懸、入時ハ、如何程もしづかに入ても、くるしからず。ねばるといふ事と、もつるゝと云事、ねばるハつよし、もつるゝハよわし。此事分別あるべし。

 【常武堂本】

一 ねばりをかくるといふ事。敵も打かけ、我も太刀打かくるに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまりつよくなき心に入べし。敵の太刀につけてねばりをかけ、入時ハ、いか程も静に入ても、くるしからず。ねばると云事と、もつるゝと云事、ねばるハつよし、もつるゝハよハし。此事分別有べし。

 【田村家本】

 ネバリヲカクルト云事 敵モ打カケ、我モ太刀打カクルニ、敵受ルトキ、吾太刀ヲ敵ノ太刀ニツケテ、ネバル心ニシテ入也。ネバルハ、太刀ハナレガタキコ丶ロ、アマリツヨクナキ心ニ入ベシ。敵ノ太刀ニ付テネバリヲカケテ、入時ハ、イカ程モ静ニ入テモ、クルシカラズ。ネバルト云事ト、モツルルト云事、ネバルハツヨシ、モツルヽハヨハシ。コノコト分別アルベシ。

 【狩野文庫本】

一 ねばりを懸ると云事、工夫すべし。敵も打懸、我も太刀打懸るに、敵うくる時、我太刀、敵の太刀ニ付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、あまりつよくなき心ニ入べし。敵の太刀に付てねばりを懸て、入時は、如何程も静に入ても、不苦。ねばると云事【脱字******】、ねばるハつよく、もつるゝハよわく、此事分別有べし。

 【多田家本】

一 粘をかくると云事。敵も打懸、我も太刀打かくるに、敵の請る時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀はなれがたき心、餘り強くなき心に入べし。敵の太刀に付てねばりをかけ、入時ハ、如何程も静に入ても、苦しからず。ねばると云事と、もつるゝと云事有、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 ネバリヲカクルト云事。敵モ打掛、我モ太刀打掛ル時、敵受ル時、我太刀敵ノ太刀ニ付テ、ネバル心ニシテ入也。ネバルト云ハ、太刀離レ難キ心、アマリ強ク無キ心ニ入ベシ。敵ノ太刀ニ付テネバリヲ掛ケ、入時ハ、イカ程モ静ニ入テモ、苦シカラズ。ネバルト云事ト、モツル丶ト云事、ネバルハ強シ、モツルヽハ弱シ。此事分別有ベシ。

 【稼堂文庫本】

一 粘を懸ると云事。ねばりをかくると云事[重複]。敵も打懸、我も太刀を打懸るに、敵受る時、我たち、敵の太刀に付て、ねばる心にして入也。ねばるハ、太刀離れがたき心有強くなき心に入べし。敵の太刀に付て粘を懸ケ、入時は、如何程静に入ても、苦しからず。ねばると云事【脱字***********】、能々分別有べし。  

 【大瀧家本】

一 ねばりをかくるといふ事。敵も打懸け、我も【脱字】打懸るに、敵受る時、我太刀、敵の太刀に付て、ねばる心にして入なり。ねばるハ、太刀離れ難き心、餘りつよくなき心に入べし。敵の太刀に付てねばりをかけ、入時ハ、如何程静に入ても、苦しからず。ねばりといふ事と、もつるゝといふ事、ねばるハ強し、もつるゝハ弱し。此事分別有べし。    PageTop    Back   Next 

  28 身のあたりと云事

 【吉田家本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきわへ入込て、身にて敵にあたるこゝろ也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、如何程も強くなり、あたる事、いきあひ拍子にて、はずむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、剛きもの也。敵死入ほどもあたるなり。能々鍛錬有べし。

 【近藤家甲本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきハへ入込て、身にて【脱字】あたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、いかほども強くなり、あたる事、ゆきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入程も、あたる也。能々鍛錬有べし。

 【近藤家乙本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきハへ入込て、身にて【脱字】あたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、いか程も強くなり、あたる事、ゆきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入ほども、あたる也。能々鍛錬有べし。

 【中山文庫本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきわへ入込て、身にて敵にあたる心也。すこし我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、如何程も強くなり、あたる事、いきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、剛きもの也。敵死入ほども、あたるなり。能々鍛錬有べし。

 【赤見家丙本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきハへ入込て、身にて【脱字】あたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身【◇】、いか程も強くなり、あたる事、ゆきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、【脱字】ならひ得てハ、敵二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入程も、あたる也。能々鍛錬有べし。

 【石井家本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきハへ入込て、身にて【脱字】あたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、いかほども強くなり、あたる事、ゆきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入ほども、あたるなり。能々鍛錬有べし。

 【伊丹家甲本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきわへ入込て、身にて敵にあたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。わが身を、いかほども強くなり、あたる事、いきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのくほど、剛きもの也。敵死入程も、あたるなり。能々鍛錬有べし。

 【澤渡家本】

一 身のあたり【脱字】いふ事。身のあたりハ、敵のきわへ入込て、身にて【脱字】あたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身ハ、いか程も強くなり、あたる事、行あい拍子にて、はづむ心に入べし。此【脱字】事、【脱字】習ひ得てハ、敵二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入程も、あたる也。能々鍛錬すべし。

 【伊藤家本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきハへ入込て、身にて【脱字】あたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、いかほども強くなり、あたる事、ゆきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此【脱字】事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入ほども、あたるなり。能々鍛錬有べし。

 【伊丹家乙本】

一 身の當りといふ事。身のあたりハ、敵のきはへ入込て、身にて敵に當るこゝろなり。すこし我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸に當るなり。我身を、いか程もつよくなり、當る事、いきあひ拍子にて、【脱字***************】、敵、二間も三間もはりのくる程、剛き物也。敵死入程も、當るなり。能々鍛錬すべし。

 【神田家本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきハへ入込て、身にて【脱字】あたる心也。すこし我顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、いかほども強くなり、あたる事、ゆきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此(入)事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入ほども、あたるなり。能々鍛錬有べし。

 【猿子家本】

一 身の當りと云事。身の當りハ、敵のきはへ入込て、身にて【脱字】あたる【脱字】也。少し我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸にあたる也。我身を、いか程も強くなり、あたる事、行あい拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入習得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死入程も、あたる也。能々鍛錬有べし。

 【楠家本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵のきハへ入込て、身にて敵にあたる心也。少わが顔をそばめ、わが左の肩を出し、敵のむねにあたる也。あたる事、わが身を、いかほどもつよくなり、あたる事、いきあい拍子にて、はずむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのくほど、つよきもの也。敵死に入ほどもあたるなり。よく/\鍛練有べし。

 【細川家本】

一 身のあたりと云事。身のあたりは、敵のきわへ入こミて、身にて敵にあたる心也。少我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵のむねにあたる也。あたる事、我身を、いかほどもつよくなり、あたる事、いきあい拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのくほど、つよきもの也。敵死入ほどもあたる也。能々鍛練あるべし。

 【丸岡家本】

一 身のあたりと云事。身のあたりハ、敵の身ぎハへ入こミて、身にて敵にあたる心也。すこし我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸にあたる也。あたること、我身を、いかほども強くなり、あたること、息相拍子にて、はづむ心に入べし。此入こと、入習得ては、敵、二間も三間もはけのくほど、つよきもの也。敵死入ほどもあたるなり。能々たんれん有べし。

 【富永家本】

一 身の當ると云事。身の當りハ、敵のきわへ入込て、身にて敵に當る心也。少我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸に當る也。當る事、我身を、如何程もつよくなり、當る事、息合拍子にて、はずむ心に入べし。此【脱字】事、入習ひ得てハ、敵、二間も三間もはけのくほど、つよきものなり。敵死に入ほども當るなり。能々鍛練有べし。

 【常武堂本】

一 身のあたりといふ事。身のあたりハ、敵のきはへ入込て、身にて敵にあたる心也。少我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵のむねにあたる也。あたる事、我身を、いかほどもつよくなり、あたる事、いきあひ拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、入ならひ得てハ、敵、二間も三間もはけのくほど、つよきもの也。敵死入ほどもあたる也。能々鍛練あるべし。

 【田村家本】

 身ノアタリト云事 ミノ當リハ、敵ノキワヘ入込テ、身ニテ敵ニアタル心也。少吾顔ヲソバメ、我左ノ肩ヲ出、敵ノ胸ニ【脱字**】。アタルコト、我身ヲ、イカ程モツヨクナリ、アタル事、イキアイ拍子ニテ、ハヅム心ニ入ベシ。此入事、入習ヒ得テハ、敵、二間モ三間モハケノクホド、ツヨキモノナリ。テキ死入ホドモアタル也。能々鍛練スベシ。

 【狩野文庫本】

一 身の當りと云事。身の當りハ、敵の際へ入込ミ【脱字】、身ニて敵に當る心也。少我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵のむねに當る也。當る事、我身を、如何程も強成り、當ル事、息相拍子ニて、はづむ心に入べし。此入事ヲ、【脱字】習ひ得てハ、敵、弐間も三間もはねのく程ド、強きもの也。敵死入程も當也。能々鍛練有べし。

 【多田家本】

一 身の當りと云事。身の當りとハ、敵の際へ入込て、身にて敵に當る心也。少し我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸に當る事。我身を、如何程も強く【脱字】、當る事、いきあひ拍子にて、はずむ心に入べし。此入事、【脱字】習得てハ、敵、二間も三間もはけのく程、強き物也。敵死入程【脱字】當る也。能々鍛練有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 身ノ當リト云事。身ノ當リハ、敵ノキハヘ入込テ、身ニテ敵ニ當ル心也。少我顔ヲソバメ、我左ノ肩ヲ出シ、敵ノ胸ニアタルナリ。當ル事、我身ヲイカ程モ強ク成、當ル事、イキ合拍子ニテ、ハヅム心ニ入ベシ。此入事、【脱字】習ヒ得テハ、敵、二間モ三間モ張リノク程、強キ者也。敵死入程モアタル也。能々鍛錬有ベシ。

 【稼堂文庫本】

一 身の當りと云事。身の當りハ、敵のきわへ入込て、身にて敵に當る心也。少我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸に當る也。當る事、我身を、如何程も強く成り、當ること、息合拍子にて、はづむ心にて入べし。此入ること、【脱字】習得てハ、敵、弐間も三間もけけのく程、強き者也。敵死入ほども當る也。能々鍛練有べし。  

 【大瀧家本】

一 身のあたりといふ事。身の當りハ、敵の際へ入込て、身にて敵に當る【脱字】也。少し我顔をそばめ、我左の肩を出し、敵の胸に當るなり。我身を、如何程も強くなり、あたる事、行合拍子にて、はづむ心に入べし。此入事、【脱字】習得てハ、敵、弐間も三間もはけのく程、強きもの也。敵死に入程も當るなり。能々鍛錬有べし。    PageTop    Back   Next 

  29 三つのうけの事

 【吉田家本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入こむ時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事、又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所、又、敵の打とき、ミじかき太刀にて入に、うくる太刀ハさのミかまハず、我左の手にて敵のつらをつく様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思べし。能々鍛錬有べきもの也。

 【近藤家甲本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事。又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつく様にして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。又、敵の打とき、みじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。

 【近藤家乙本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事。又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。又、敵の打とき、みじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三ツのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。

 【中山文庫本】

一 三ツのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、我右のかたへ引ながしてうくる事、又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所、又、敵の打時、ミじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまわず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三ツのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思べし。能々鍛錬有べきもの也。

 【赤見家丙本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事。又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。又、敵の打とき、みじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛錬有べき物也。

 【石井家本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事、又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつく様にして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所、又、敵の打とき(所)、みじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。

 【伊丹家甲本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入こむとき、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事。又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。又、敵の打時、ミじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまはず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思べし。能々鍛錬有べきもの也。

 【澤渡家本】

一 三ツのうけの事。三ツのうけと云ハ、敵へ入込とき、敵うち出す太刀【脱字】うくるに、我太刀にて、敵の目ヲつく様ニして、敵の太刀を、わが右の肩へ引ながし【脱字】うくる事。又、つきうけと云て、敵のうつ太刀を、敵の右の目をつく様ニして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。また、敵のうつとき、ミじかき太刀ニて入に、うくる太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。これ三ツのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様ニ思ふべ【脱字】。能々鍛錬有べき者也。

 【伊藤家本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事。又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつく様にして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。又、敵の打とき、みじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三つ【脱字】うけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。

 【伊丹家乙本】

一 三ツのうけの事。三のうけといふハ、敵へ入込時、敵打出す太刀を受るに、我太刀にて、敵の目を付様にして、敵の太刀を、我右のかたえ引ながしてうくる事。また、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつく様ニして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる處。また、敵の打時、ミじかき太刀にて入に、うくる太刀は、さのミかまはず、我左の手にて、敵の面を突様にして入込。是三ツのうけなり。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様におもふべし。能々鍛錬あるべき【脱字】なり。

 【神田家本】

一 三つのうけの事。三のうけと云ハ、敵へ入込時、敵うち出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事。又、つきうけと云て、敵の打太刀を、敵の右の目をつく様にして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所。又、敵の打とき、みじかき太刀にて入に、うくる太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつく様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。

 【猿子家本】

一 三の請の事。三つのうけと云ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、我右の方へ引ながして受る事。又、つき受と云て、敵の打太刀を、敵の右の目を突く様にして、首をはさむ心に、つきかけて受る所。又、敵の打時、短き太刀にて入に、受る太刀ハ、さのミかまハず、我左の手にて、敵のつらを突く様にして入込。是三つのうけ也。左の手をにぎり【脱字】、拳しにてつらを突様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。

 【楠家本】

一 三ツのうけの事。三ツのうけといふハ、敵へ入こむ時、敵打出す太刀をうくるに、わが太刀にて、敵の目をつくやうにして、敵の太刀を、わが右のかたへ引ながしてうくる事、又、つきうけといひて、敵【◇】打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所、又、敵の打時、ミじかき太刀にて入に、うくる太刀ハさのミかまはず、わが左の手にて、敵のつらをつくやうにして入こむ、これ三ツのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつくやうにおもふべし。能々鍛練有べき者也。

 【細川家本】

一 三ツのうけの事。三ツのうけと云は、敵へ入こむ時、敵打出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつくやうにして、敵の太刀を、我右のかたへ引ながしてうくる事、亦、つきうけといひて、敵【◇】打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所、又、敵の打時、短き太刀にて入に、うくる太刀はさのミかまハず、我左の手にて、敵のつらをつくやうにして入こむ、是三ツのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつくやうに思ふべし。能々鍛練有べきもの也。

 【丸岡家本】

一 三ツのうけの事。三ツの請と云は、敵へ入こむ時、敵打出す太刀を受るに、我太刀にて、敵の目を突くやうにして、敵の太刀を、我右の方へ引流して受る事、又、つきうけと云て、敵【◇】打太刀を、敵の右の目をつくやうにして、頸をはさむ心に、突かけて受る所、又、敵の打時、短き太刀にて入に、受る太刀はさのミかまハず、我左の手にて、敵のつらを突やうにして入こむ、是三ツの受なり。左の手をにぎりて、こぶしにてつらを突やうに思ふべし。能々鍛練あるべき者也。

 【富永家本】

一 三ツの請の事。三ツの請と云ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀を請るに、我太刀にて、敵の目をつく様ニして、敵の太刀を、我右の方へ引ながして請る事、また、つきうけといひて、敵【◇】打太刀を、敵の右の目をつく様にして、首をはさむ心に、つきかけてうくる処、又、敵の打時、ミじかき太刀にて入に、うくる太刀ハさのミかまハず、我左の手にて敵の顔を突様ニして入込、是三ツの請なり。左の手を握りて、こぶしにてつらを突様に可思。能々鍛練あるべきもの也。

 【常武堂本】

一 三ツのうけの事。三ツのうけと云ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀をうくるに、我太刀にて、敵の目をつく様にして、敵の太刀を、我右のかたへ引ながしてうくる事、亦、つきうけといひて、敵【◇】打太刀を、敵の右の目をつく様にして、くびをはさむ心に、つきかけてうくる所、又、敵の打時、短き太刀にて入に、うくる太刀ハさのみかまはず、我左の手にて敵のつらをつく様にして入こむ、是三ツのうけ也。左の手をにぎりて、こぶしにてつらをつく様に思ふべし。能々鍛練有べきもの也。

 【田村家本】

 三ツノ受ト云事 三ツノ受ト云ハ、テキヘ入込時、敵打出ス太刀ヲウクルニ、吾太刀ニテ、敵ノ目ヲツクヤウニシテ、敵ノ太刀ヲ、吾右ノ方ヘ引ナガシテ受事、亦、突受ト云テ、敵【◇】打太刀ヲ、テキノ【脱字】目ヲツクヨウニシテ、クビヲハサム心ニ、ツキカケテ受ル処、又、敵ノ打トキ、短太刀ニテ入ニ、受太刀ハサノミカマワズ、吾左ノ手ニテ、【脱字*********】入コム、是三ツノ受ナリ。左ノ手ヲニギリテ、コブシニテツラヲ突ヤウニ思ベシ。能々鍛練有ベシ。

 【狩野文庫本】

一 三ツの請の事。三ツのうけと【脱字】ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀をうくるに、【脱字***********】敵の打太刀を、我が右の方へ引ながしてうくる事、又、突懸と云て、敵【◇】打太刀を、敵の右の目をつく樣ニし手首を挟ム心に、突懸てうくるところ、又、敵の打時、短キ太刀ニて入に、請る太刀ハさのミかまハず、我左の手ニ而、敵のつらを突様にして入込、是三ツの請なり。左の手を握て、こぶしにてつらをつく樣ニ思ふべし。能々鍛練有べき者也。

 【多田家本】

一 三の請と云事。三の請と云事、三の請と云ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀を請るに、我太刀にて、敵の目を突様にして、敵の太刀を、我右の方へ引【脱字】して請る事。又、突請といひて、敵【◇】打太刀を、敵の右の目を突様にして、首をはさむ心に、突かけて請る所、又、敵の打時、短き太刀にて入に、請る太刀ハ、さのみかまはず、我左の手にて、敵のつらを突様にして入込。是三つの請也。左の手を握つて、こぶしにてつらを突様に思ふべし。能々鍛錬有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 三ツノ請ノ事。三ツノ請ト云ハ、敵ヘ入込時、敵打出ス太刀ヲ受ルニ、我太刀ニテ、敵ノ目ヲ付様ニシテ、敵ノ太刀ヲ、我右ノ肩ヘ引流シテ受ル事、又、ツキ受ト云テ、敵【◇】打太刀ヲ、敵ノ右ノ目ヲ付様ニシテ、首ヲ挟ム心ニ、付カケテ請ル所、又、敵ノ打トキ、短キ太刀ニテ入ルニ、受ル太刀ハサノミカマワズ、我左ノ手ニテ、敵ノ顔ヲ付様ニシテ入込。是三ツノ請也。左ノ手ヲ握リテ、コブシニテ顔ヲ付様ニ思ベシ。能々鍛練有ベシ。

 【稼堂文庫本】

一 三ツの請と云事。三ツの受と云ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀を受るに、我太刀にて、敵の目を突様にして、敵の太刀を、我右の肩へ引流して請る事、又、突受と云て、敵【◇】打太刀を、敵の右の目を突様にして、首をはさむ心に、突かけて受る所、また、敵の打時、短太刀にて入に、請る太刀はさのミかまわず、我左の手にて敵の顔を突様に思ふべし、是三ツの受なり。左の手をにぎりて、こぶしにて面を突様に思ふべし。能々鍛練有べき者也。  

 【大瀧家本】

一 三ツの受の事。三ツの受と云ハ、敵へ入込時、敵打出す太刀を受るに、我太刀にて、敵の目を突様にして、敵の太刀を、我右の方へ引流して受る事、又、突受と云て、敵【◇】打太刀を、敵の右の目を突様にして、首を挟む心に、突懸て受る処、又、敵の打時、短き太刀にて入るに、受る太刀ハ左のミかまはず、我左の手にて敵のつらを突様にして入込む、是三ツの受也。左の手を握りて、こぶしにてつらを突様に思ふべし。能々鍛錬有べきもの也。    PageTop    Back   Next 

  30 おもてをさすと云事

 【吉田家本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれば、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝ところ也。それによつて、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうちに、此利、鍛練有べき者也。

 【近藤家甲本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵のかほをつく心あれバ、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戰のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それに依て、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうち【脱字】、此利、鍛練有べきもの也。

 【近藤家乙本】

一 面をさすと云事。面をさすといふは、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵のかほをつく心あれば、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それに依而、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうち【脱字】、此利、鍛練有べきもの也。

 【中山文庫本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれば、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それによつて、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古の内に、此利、鍛練有べきもの也。

 【赤見家丙本】

一 面をさすと云事。面をさすといふハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵のかほをつく心あれバ、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それに依て、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうち【脱字】、此利、鍛練有べきもの也。

 【石井家本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の顔をつくこゝろあれバ、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それに依て、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうち【脱字】、此利、鍛練有べきもの也。

 【伊丹家甲本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、わが太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれバ、敵のかほ、身ものる物也。敵をのらする様にしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それによつて、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうちに、此利、鍛練有べきものなり。

 【澤渡家本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先ニてつく心に常に思ひ所、肝心也。敵のかほをつく心あれバ、敵のかほ、身ものる者也。敵をのらする様にしては、色々勝処の利有。能々工夫すべし。戦の内に、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それに依て、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古の内【脱字】、此利、鍛練有べき者也。

 【伊藤家本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれバ、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それに依て、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうち【脱字】、此利、鍛練有べきもの也。

 【伊丹家乙本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀間に成て、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の面をつく心有バ、敵のかほ、身ものるものなり。敵をのらする様にしてハ、いろ々勝所の利有り。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有【脱字】ハ、はや勝所也。夫によつて、おもてをさすといふ事、忘るべからず。兵法稽古の内【脱字】、此利、鍛練有べきものなり。

 【神田家本】

一 面をさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀先にてつく心に常におもふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれバ、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦のうちに、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。それに依て、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古のうち【脱字】、此利、鍛練有べきもの也。

 【猿子家本】

一 面をさすと云事。面をさすと云は、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にて突心に常に思ふ所、肝要也。敵の顔をつく心有れバ、敵【脱字】顔、身ものるもの也。敵をのらする様にしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦の内に、敵の身のる心有てハ、はや勝所也。夫に依て、面をさすと云事、わするべからず。兵法稽古のうち【脱字】、此利、鍛練有べきもの也。

 【楠家本】

一 おもてをさすと云事。面をさすといふハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、わが太刀の間に、敵のかほを、我太刀さきにてつく心に常に思ふ所、肝心也。敵のかほをつく心あれバ、敵のかほ、身ものるもの也。敵をのらするやうにしてハ、いろ/\勝所の利あり。能々工夫すべし。たゝかひの内に、敵の身のる心ありてハ、はや勝所也。それによつて、面をさすといふ事、わするべからず。兵法稽古の内に、此利、鍛練有べき者也。

 【細川家本】

一 おもてをさすと云事。面をさすと云は、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵のかほを、我太刀さきにてつく心に常に思ふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれば、敵の顔、身ものるもの也。敵をのらするやうにしては、色々勝所の利あり。能々工夫すべし。たゝかいの内に、敵の身のる心ありては、はや勝所也。それによつて、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古の内に、此利、鍛練あるべきもの也。

 【丸岡家本】

一 面をさすといふ事。面を刺といふは、敵太刀間になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にてつく心に常に思ふ所、肝心也。敵の顔を撞心あれば、敵の顔、身ものるもの也。敵をのらするやうにしては、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦の内に、敵の身乗る心ありては、はや勝處也。それによつて、面をさすといふこと、忘るべからず。兵法稽古の内に、此利、鍛練あるべきものなり。

 【富永家本】

一 おもてをさすと云事。面を差といふハ、敵太刀相になりて、敵の【脱字】間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にて突心に常におもふ所、肝心なり。敵の顔を突心あれバ、敵のかほ、身ものる者也。敵をのらする様にして【脱字】、色々勝所の利有。能【脱字】工夫すべし。戦の内に、敵の身のる心有てハ、早勝所なり。それによつて、面をさすと云事、わするべからず。兵法稽古の内に、此利、鍛練有べきものなり。

 【常武堂本】

一 おもてをさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀さきにてつく心に常に思ふ所、肝心也。敵の顔をつく心あれば、敵の顔、身ものるもの也。敵をのらする様にしてハ、色々かつ所の利あり。能々工夫すべし。たゝかひの内に、敵の身のる心ありてハ、はや勝所也。それによつて、面をさすと云事、忘るべからず。兵法稽古の内に、此利、鍛練あるべきもの也。

 【田村家本】

 面ヲ刺ト云事 【脱字****】敵立相ニ成テ、テキノ立合ノ間、吾太刀ノ間ニ、敵ノカホヲ、吾太刀先ニテツク心ニ常ニ思フ処、肝心也。敵ノカホヲ突ク心アレバ、敵【脱字】顔、身モノル者也。敵ヲノラスルヤウニシテハ、色々勝処ノ利有リ。能々工夫スベシ。戦ノウチニ、敵ノ身ノル心アリテハ、早勝処也。ソレニ因テ、ヲモテヲ刺ト云事、忘ベカラズ。兵法ケイコノ内ニ、此利、鍛練有ベキ者也。

 【狩野文庫本】

一 おもてをさすと云事。面を指と云ハ、敵太刀相に成て、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の面を、我太刀先ニ而突心也常ニ思ふ所、肝要也。敵の顔を突心あれバ、敵の顔、身ものるもの也。敵をのらするやうニしては、色々勝所【脱字】利有。能々工夫すべし。戦の内に、敵の身のる心有而ハ、早勝所也。就夫、面をさすといふ事、忘るべからず。兵法稽古の内【脱字】、此利、鍛練可有者也。

 【多田家本】

一 おもてをさすと云事。面をさすと云ハ、敵太刀合に成て、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にて突心に常に思ふ所、肝要也。敵の顔を突心あれバ、敵のかほ、身ものる物也。敵をのらする様にしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦の内に、敵の身のる心ありてハ、はや勝所也。就夫、面をさすと云事、忘べからず。兵法稽古の内に、此利、鍛練有べきもの也。

 【山岡鉄舟本】

一 面ヲ刺ト云事。面ヲサスト云ハ、敵太刀アヒニ成テ、敵ノ太刀ノ間、我太刀ノ間ニ、【脱文*****************】。敵ノ顔ヲツク心アレバ、敵ノ顔、身モ乗ルモノ也。敵ヲ乗ラスル様ニシテハ、色々勝所ノ利アリ。能々工夫スベシ。戦ノ内ニ、敵ノ身乗心有テハ、早勝所也。夫ニ依テ、面ヲ刺ト云事、忘ベカラズ。兵法稽古ノ内ニ、此利、鍛錬有ベキ者也。

 【稼堂文庫本】

一 面をさすと云事。おもて【脱字】差と云ハ、敵太刀相に成て、敵の太刀の間を、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にて突心に常に思ふ心、肝要也。敵の顔を突心有ば、敵の顔、身ものる者也。敵をのらする様にしては、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦の内に、敵の身のる所有ては、早や勝所也。夫によりて、面を差と云事、忘ルべからず。兵法稽古の内にも、此利、鍛練有べし。  

 【大瀧家本】

一 面をさすといふ事。面をさすと云ハ、敵太刀相になりて、敵の太刀の間、我太刀の間に、敵の顔を、我太刀先にて突心に常に思ふ處、肝要也。敵の顔を突心あれば、敵の顔、身ものるもの也。敵をのらする様にしてハ、色々勝所の利有。能々工夫すべし。戦の内に、敵の身のる心有てハ、はや勝所なり。夫に依て、面をさすといふ事、忘るべからず。兵法稽古の内【脱字】、此理、鍛錬有べき【脱字】なり。    PageTop    Back   Next 

  31 心をさすと云事

 【吉田家本】

一 心をさすと云事。心をさすと云ハ、戦のうちに、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事、何れもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはずゝこゝろハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざるときなどに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【近藤家甲本】

一 心をさすと云事。心をさすといふハ、戦のうち【脱字】、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事、いづれもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【近藤家乙本】

一 心をさすと云事。心をさすといふハ、戦のうち【脱字】、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事、いづれもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはづすこゝろハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【中山文庫本】

一 心をさすと云事。心をさすと【脱字】ハ、戦のうちに、上つまり、脇つまりたる所などにて、切事、何れもなりがたき時、敵をつく事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵にミせて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事なり。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【赤見家丙本】

一 心をさすと云事。こゝろを指といふハ、戦のうち【脱字】、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事いづれもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはづすこゝろハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時が、又ハ刀のきれざるときなどに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【石井家本】

一 心をさすと云事。心をさすといふハ、戦のうち(に)、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事、いづれもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【伊丹家甲本】

一 心をさすと云事。心をさすと云ハ、戦のうちに、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事、何もなりがたき時、敵をつく事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵にみせて、太刀さきゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【澤渡家本】

一 心をさすと云事。こゝろをさすと云ハ、戦の内【脱字】、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事いづれもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざるときなどに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【伊藤家本】

一 心をさすと云事。心をさすといふハ、戦のうち【脱字】、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事、いづれもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはづすこゝろハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【伊丹家乙本】

一 心をさすといふ事。心をさすといふハ、戦のうちに、上つまり、脇つまりたる所などにて、切事、いづれも成がたき時、敵をつく事。敵の打太刀をはづす心は、我太刀のむねを直に敵にミせて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、またハ刀のきれざるときなどに、この儀専用ゆるこゝろ也。よく/\分別すべし。

 【神田家本】

一 心をさすと云事。心をさすといふハ、戦のうち(に)、上つまり、わきつまりたる所などにて、切事、いづれもなりがたきとき、敵をつく事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引とりて、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時などに、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【猿子家本】

一 心をさすと云事。心をさすと云ハ、戦の内【脱字】、上つまり、脇つまりたる所抔にて、切事、いづれもなりがたき時、敵を突事。敵の打太刀をはづす心は、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引取て、敵の胸をつく事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀のきれざる時抔に、此儀専用る心也。能々分別すべし。

 【楠家本】

一 心をさすと云事。心をさすといふハ、戦のうちに、うへつまり、わきつまりたる所などにて、きる事、いづれもなりがたき時、敵をつく事。敵のうつ太刀をはづす心ハ、わが太刀のむねを直に敵にミせて、太刀さきゆがまざるやうに引とりて、敵の胸をつく事也。若、われくたびれたる時か、又は刀のきれざる時などに、此儀専もちゆる心也。能々分別すべし。

 【細川家本】

一 心をさすと云事。心をさすと云は、戦のうちに、うへつまり、わきつまりたる所などにて、きる事、いづれもなりがたき時、敵をつく事。敵のうつ太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀さきゆがまざるやうに引とりて、敵のむねをつく事也。若、我くたびれたる時か、亦ハ刀のきれざる時などに、此儀専もちゆる心なり。能々分別すべし。

 【丸岡家本】

一 心をさすといふ事。心をさすと云は、戦の内に、上つまり、脇つまりたる所などにて、切こと、いづれも成がたき時、敵をつくこと。敵の打太刀をはづす心は、我太刀のむねを直ニ敵に見せて、太刀先ゆがまざるやうに引取て、敵の胸を突事也。若は、我くたびれたる時か、又は刀の切ざる時などに、此義専用る心也。能々工夫すべし。

 【富永家本】

一 心を差すといふ事。心をさすといふハ、戦の内に、うゑつまり、脇つまりたる處などにて、切こと、何も難成時、敵を突事。敵の打太刀をはづす心は、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざるやうに引取て、敵の胸を突ことなり。【脱字】、我草臥たる時か、又ハ刀の切ざる時などに、此儀専らに用る心なり。能【脱字】分別すべし。

 【常武堂本】

一 心をさすと云事。心をさすと云ハ、戦のうちに、うへつまり、わきつまりたる所などにて、きる事、いづれもなりがたき時、敵をつく事、敵のうつ太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵にみせて、太刀さきゆがまざる様に引とりて、敵のむねをつく事也。若、我くたびれたる時か、亦ハ刀のきれざる時などに、此儀専もちゆる心なり。能々分別すべし。

 【田村家本】

 心ヲ刺ト云事 【脱字*****】戦ノ内ニ、トツマリ、脇ツマリタル所ナドニテ、切事、何レモ成ガタキトキ、敵ヲツク事。テキノ打太刀ヲハヅス心ハ、吾太刀ノムネヲ直ニ敵ニミセテ、太刀ノ先ユガマザルヤウニ引トリテ、敵ノ胸ヲ突クコト也。若、我草臥タル時カ、又ハ刀ノキレザルトキナドニ、此儀専モチユル心ナリ。能々分別スベシ。

 【狩野文庫本】

一 心を指と云事。心を差と云ハ、戦の内ニ、上詰、脇つまりたる所抔ニて、切事、何レも成がたし時、敵ヲ突事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に【脱字】見せて、太刀先ゆがまざる樣ニ引取て、敵のむねを突事なり。若、我草臥ル時か、又ハ刀【脱字】切れざる時抔に、此義専用る心なり。能々分別すべし。

 【多田家本】

一 心をさすと云事。心をさすと云は、戦の内に、上つまり、脇つまりたる所抔にて、切事、何れも成がたき時、敵を突事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀の胸を直に敵に見せて、太刀先ゆがまざるやうに引取て、敵の胸を突事也。若、我草臥たる時か、又ハ刀【脱字】きれざる時抔に、此儀専用ゆる心也。能々分別有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 心ヲ刺ト云事。心ヲ刺ト云ハ、戦ノ内ニ、上ツマリ、脇ツマリタル所ナド【脱字】、切事、有レ共成ガタキ時、敵ヲ付事。敵ノ打太刀ヲハヅス心ハ、我太刀ノムネヲ直ニ敵ニ見セテ、太刀先ユガマザル様ニ引取テ、敵ノ胸ヲ付事也。若、我草臥タル時カ、亦ハ刀ノ切レザル時抔ニ、此義専用ル心也。能々分別スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 心を差と云事。心を差と云ハ、戦の内に、上ニつまり、脇詰りたる所抔にて、切事、何も【脱字】難き時、敵を突こと。敵の打たちをはずす心は、我太刀の棟を直に敵に見せて、太刀先きゆがまざる様に引取て、敵の胸を突こと也。【脱字】、我草臥たるときか、又は刀の切ざるとき抔に、此儀専らに用る心なり。能々分別すべし。  

 【大瀧家本】

一 心をさすといふ事。心をさすと云ハ、戦の内に、上つまり、脇詰りたる處抔にて、切事、何れもなり難き時、敵を突事。敵の打太刀をはづす心ハ、我太刀のむねを直に敵に見せて、太刀先ゆがまざる様に引取て、敵の胸を突事なり。若、我草臥れたる時か、又ハ刀の切れざる時抔に、此儀専ら用る心也。能々分別すべし。    PageTop    Back   Next 

  32 喝咄〔かつとつ〕と云事

 【吉田家本】

一 かつとつと云事。喝咄と云ハ、何れも、我うちかけ、敵をおつこむ時、敵又打かへすやうなる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。何れもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時もうちあひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【近藤家甲本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我うちかけ、敵をおつこむ時、敵又打かへす様なる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。いづれもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時も打あひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子。能稽古して、吟味有べき事也。

 【近藤家乙本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我うちかけ、敵をおつこむ時、敵又打かへすやうなる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。いづれもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時も打あひの内には、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【中山文庫本】

一 かつとつと云事。喝咄と云ハ、何れも、我打かけ、敵をおつこむ時、敵又打かへすやうなる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。何れもはやき拍子を以て、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時もうちあひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくとおもひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【赤見家丙本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我うちかけ、敵ををつこむ時、敵又打かへすやうなる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。いづれもはやき拍子をもつて、喝咄と打、喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時も打あひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子。能稽古して、吟味有べき事也。

 【石井家本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我うちかけ、敵をおつこむ時、敵又打かへす様なる所、下より敵をつく様にあげて、かへしに(て)打事。いづれもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄と打心也。此拍子、何時も打あいの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【伊丹家甲本】

一 かつとつと云事。喝咄と云ハ、何れも、我うちかけ、敵をおつこむとき、敵又打かへすやうなる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。何れもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時もうちあひの内にハ、専出合事なり。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくとおもひ、あぐると一度に打拍子、よく稽古して、吟味有べき事也。

 【澤渡家本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我打掛、敵ををつこむ時、敵又打かへす様成る所、下より敵をつく様ニあげて、かへしにて打事。何れも早き拍子を以、喝咄とうつ。喝とつきあげ、咄【脱字】うつ心也。此拍子、何時も打あひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐる【脱字】一度に打拍子。能稽古して、吟味有べき事也。

 【伊藤家本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我うちかけ、敵をおつこむ時、敵又打かへすやうなる所、下より敵をつく様にあげて、かへしに【脱字】打事。いづれもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時も打あひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【伊丹家乙本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我打かけ、敵をおつこむ時、敵また打かへす様なるとき、下より敵を突様にあげて、かへしにて打事。いづれも早き拍子を以て、喝咄と打。喝と打あげ、咄とうつ心也。此拍子、何時もうちあひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくとおもひ、あぐると一どに打拍子、能々稽古して、吟味あるべき事也。

 【神田家本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、何れも、我うちかけ、敵をおつこむ時、敵又打かへす様なる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。いづれもはやき拍子をもつて、喝咄と打。喝とつきあげ、咄と打心也。此拍子、何時も打あいの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【猿子家本】

一 喝咄と云事。かつとつといふハ、何れも、我打懸、敵をおつこむ時、敵又打かへす様なる所、下より敵をつく様にあげて、かへしにて打事。いづれも早き拍子をもつて、喝咄と打。喝と突あげ、咄と打心也。此拍子、何時も打相の内にハ、専出合事【脱字】。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【楠家本】

一 かつとつと云事。喝咄といふハ、いづれも、我打かけ、敵ををつこむ時、敵また打かへすやうなる所、したより敵をつくやうにあげて、かへしにて打事。いづれもはやき拍子を以て、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時も打あひの内にハ、専出合事なり。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、よく稽古して、吟味有べき事也。

 【細川家本】

一 かつとつと云事。喝咄と云ハ、いづれも、我打かけ、敵をおつこむ時、敵また打かへすやうなる所、したより敵をつくやうにあげて、かへしにて打事。いづれもはやき拍子を以て、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時も打あいの内には、専出合事也。喝咄のしやう、きつさきあぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度にうつ拍子、能稽古して、吟味あるべき事也。

 【丸岡家本】

一 喝咄と云事。喝咄と云は、何れも、我打懸、敵を追こむ時、敵又打返すやうなる所、下より敵をつくやうにあげて、反シにて打事。何れもはやき拍子を以て、喝咄と打。喝とつきあげ、咄と打心也。此拍子、何時も打相の内には、専出合事也。喝咄のしやう、切先あぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度に打拍子、能けいこして、吟味有べき事也。

 【富永家本】

一 かつとつといふ事。喝とつといふハ、何も、我打懸、敵を追込時、敵又打返す様なる所、下より敵を突様にあげて、返しにて打事。いづれも早き拍子を以て、喝咄と打。喝と突上、咄と打心なり。此拍子、何時も打合の内にハ、専ら出合事也。喝咄の仕様、切先の上る心にして、敵を突と思ひ、上ると一度に打拍子、能々稽古して、吟味有べき事也。

 【常武堂本】

一 かつとつと云事。喝咄と云ハ、いづれも我打かけ、敵をおつこむ時、敵また打かへす様なる所、したより敵をつく様にあげて、かへしにて打事、いづれもはやき拍子を以て、喝咄と打。喝とつきあげ、咄とうつ心也。此拍子、何時も打あひの内にハ、専出合事也。喝咄のしやう、きつさきあぐる心にして、敵をつくと思ひ、あぐると一度にうつ拍子、能稽古して、吟味あるべき事也。

 【田村家本】

 喝咄ト云事 【脱字****】何レモ、吾打カケ、敵ヲ追入トキ、敵又打返スヤウナル所、下ヨリ敵ヲ突クヤウニアゲテ、反シニテ打事。何レモ早拍子ヲ以テ、喝咄ト打。喝トツキアゲ、咄ト打【脱字】也。此拍子、何時モ打合ノ内ニハ、専ラ出合事也。喝咄ノシヤウ、切先上ル心ニシテ、敵ヲツクトヲモヒ、上ルト一度ニ打拍子、コク稽古シテ、吟味有ベキコトナリ。

 【狩野文庫本】

一 喝咄と云事。喝咄と【脱字】ハ、何れ【脱字】、我打懸、敵を追廻時、敵又打かへす樣成所、下より敵を突樣ニ上て、かへしにて打事。何れも早き拍子を以、かつと打。喝と突あげ、咄と打心なり。此拍子、何時も打合の内ニ【脱字】、専出合事也。喝咄の仕樣、切先上る心ニして、敵を突と思ひ、上ると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。

 【多田家本】

一 かつとつと云事。喝咄と云は、何も、我打かけ、敵をおつ込時、敵又打返す様成所、下より敵を突様にあげて、【脱字****************】喝と突きあげ、咄と打心也。此拍子、何時も打相の心に、専出合事也。喝咄のしやう、切先上る心にして、敵を突とおもひ、あぐると一度に打拍子、能々稽古して、吟味有べきもの也。

 【山岡鉄舟本】

一 カツトツト云事。喝咄ト云ハ、何レモ、我打懸、敵ヲ追込時、敵亦打返ス様成ル処、下ヨリ敵ヲ付様ニアゲテ、返シニテ打事、何レ【脱字】早キ拍子ヲ以テ、喝咄ト打、喝ト付アゲ、咄ト打心也。此拍子、何時モ打合ノ内ニハ、専出合事也。喝咄ノ仕様、切先キ上ル心ニ【脱字】テ、敵ヲ付ト思ヒ、上ルト一度ニ打拍子、能稽古シテ、吟味有ベキ【脱字】也。

 【稼堂文庫本】

一 喝咄と云こと。かつとつと云ハ、何も、我打懸、敵を追込時、敵また打返す様成所、下より敵を突様にあげ【脱字】、返しにて打こと。何も早き拍子を以、喝咄と云。喝と突上ゲ、とつと打心也。此拍子、何どきも打合の内には、専出合事也。喝咄の仕様、切先上ル心にして、敵を突と思ひ、上ると一度に打拍子、能々稽古して、吟味あるべきこと也。  

 【大瀧家本】

一 かつとつといふ事。喝咄といふハ、何れも、我打懸、敵をおつこむ時、敵又打返す様成處、下より敵を突様に上げて、返しにて打事。いづれも早き拍子を以て、喝咄と打。喝と突上ゲ、咄と打心也。此拍子、何時も打合の内に【脱字】、専ら出合事也。喝咄の仕様、切先上る心にして、敵を突と思ひ、上ると一度に打拍子、能稽古して、吟味有べき事也。    PageTop    Back   Next 

  33 はりうけと云事

 【吉田家本】

一 はりうけと云事。はりうけと云ハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつ也。はり合する心ハ、さのミきつくはるに非ず、又、うくるに非ず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへば、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀さきの落る事にあらず。能習ゑて、吟味有べし。

 【近藤家甲本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、打也。はり合する心ハ、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【近藤家乙本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつ也。はり合する心は、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀さきの落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【中山文庫本】

一 はりうけと云事。はりうけと云ハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつなり。はり合する心ハ、さのミきつくはるに非ず。又、うくるに非ず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるより早く、敵を打事也。はるにて先を取、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何と強く打ても、少はる心あれバ、太刀先の落る事に非ず。能習得て、吟味有べし。

 【赤見家丙本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵とうち合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつ也。はり合する心【脱字】、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【石井家本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつ也。はり合する心ハ、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【伊丹家甲本】

一 はりうけと云事。ハりうけと云ハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、わが太刀にてはり合、うつ也。はり合する心ハ、さのミきつくはるにあらず。又、うくるに非ず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへば、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀さきの落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【澤渡家本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつ也。はり合する心【脱字】、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、打にて先を取所、肝要也。はる拍子能あへば、敵何と強く打ても、少はる心あれバ、太刀先の落る事にあらず。能ならひ得て、吟味有べし。

 【伊藤家本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつ也。はり合する心ハ、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何と強くうちても、少はる心あれば、太【脱字】先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【伊丹家乙本】

一 はりうけといふ事。はりうけといふハ、敵と打合する時、とたん/\といふ拍子に成に、敵の打所を、我太刀にてはり合、打なり。はり合するこゝろハ、さのミきつくはるニあらず。また、うくるに非ず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先を取ところ、肝要也。はる拍子よくあへバ、敵なにとつよく打ても、少はるこゝろ有バ、太刀先の落る事に非ず。よく習得て、吟味有べし。

 【神田家本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵と打合とき、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、うつ也。はり合する心ハ、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先をとり、うつにて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何と強くうちても、少はる心あれバ、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【猿子家本】

一 はり受と云事。はりうけといふハ、敵と打合の時に、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合、打也。はり合す【脱字】心ハ、さのミきつくはるにあらず。又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく、敵を打事也。はるにて先を取、打にて先を【脱字】所、肝要也。はる拍子能合へバ、敵何と強く打ても、少はる心あれバ、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【楠家本】

一 はりうけと云事。はりうけといふハ、敵と打合時、とたん/\といふ拍子になるに、敵の打所を、わが太刀にてはりあはせ、打也。はり合する心ハ、さのミきつくはるにあらず、又、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく敵を打事也。はるにて先をとり、打にて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何とつよく打ても、少はる心あれバ、太刀さきのおつる事にあらず。よく習ひ得てハ、吟味有べし。

 【細川家本】

一 はりうけと云事。はりうけと云は、敵と打合時、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはりあはせ、打也。はり合する心は、さのミきつくはるにあらず、亦、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく敵を打事なり。はるにて先をとり、打にて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへば、敵何とつよく打ても、少はる心あれば、太刀さきのおつる事にあらず。能習ひ得て、吟味有べし。

 【丸岡家本】

一 はりうけと云事。張請と云は、敵と打合時、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはり合せ、打也。張合する心は、さのミきつくはるにあらず、又、受るにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく敵を打事也。はるにて先をとり、打にて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへば、敵何とつよく打ても、少はる心あれば、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【富永家本】

一 張請と云事。はり請といふハ、敵と打合時、とたん/\と云拍子になるに、敵の打處を、我太刀にてはり合、打なり。はり合【脱字】心ハ、左のミきつくはるに非ず、又、うくるに非ず。敵の【脱字】太刀に應じて、打太刀をはりて、【脱字**】早敵を打事なり。はるにて先をとり、打にて先をとる所、肝要なり。はる拍子【脱字】あゑば、敵と何とつよく打とても、少はる心有バ、太刀先の落る事に非ず。能習ひ得て、吟味有べし。

 【常武堂本】

一 はりうけと云事。はりうけと云事ハ、敵と打合時、とたん/\と云拍子になるに、敵の打所を、我太刀にてはりあはせ、打也。はり合する心ハ、さのみきつくはるにあらず、また、うくるにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、はるよりはやく敵を打事なり。はるにて先をとり、打にて先をとる所、肝要也。はる拍子能あへバ、敵何とつよく打ても、少はる心あれバ、太刀さきのおつる事にあらず。能習ひ得て、吟味有べし。

 【田村家本】

 張受ト云事 【脱字***】敵ト打合トキ、トタン々々ト云拍シニナルニ、敵ノ打處ヲ、吾太刀ニテ張合セ、打也。ハリ合ル心ハ、サノミツヨクハルニ非ズ、【脱字*****】。敵ノ打太刀ニ應ジテ、打太刀ヲ張テ、ハルヨリハヤク敵ヲ打コト也。張ニテ先ヲ取、打ニテ先ヲトル処、肝要也。張拍子ヨクアヘバ、テキ何トツヨク打テモ、少ハルコゝロアレバ、太刀先ノヲツル【脱字】ニ非ズ。ヨク習得テ、吟味有ベシ。

 【狩野文庫本】

一 はり請と云事。はりうくると云ハ、敵と打合時、とたん【脱字】と云拍子ニ成に、敵の打所を、我太刀ニ而張合、【脱字】也。張合する心は、さのみきつくはるにあらず、又、請にあらず。敵の打太刀ニ應じて、打太刀を張て、はるよりはやく敵を打事也。はるニ而先を取て、打に而先を取所、肝要也。張拍子能あへバ、敵何とつよく打ても、少はる心あれば、太刀先【脱字】落る事ニあらず。より/\習得て、可有吟味。

 【多田家本】

一 張請と云事。張請と云は、敵と打あふ時、とたん/\といふ拍子に成に、敵の打所を、我太刀にて張合、打也。張合する心ハ、さのミきつく張にあらず、又、請るにあらず。敵の打太刀に應じて、打太刀を張て、張より早く、敵を打事也。張にて先を取、打にて先を取所、肝要なり。張拍子能あへば、敵何と強く打ても、少張心あれば、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 張請ト云事。張請ト云ハ、敵ト打合時、トタン/\ト云拍子ニ成ニ、敵ノ打処ヲ、我太刀ニテ張合セ、打込。張合スル心ハ、サノミ気強張ルニ非ズ、亦受ルニ非ズ。敵ノ打太刀ニ應ジテ、打太刀ヲ張リテ、ハルヨリ早【脱字】敵ヲ打事也。張ニテ先ヲ取リ、打ニテ先ヲ取所、肝要也。張拍子能合ヘバ、敵何ト強ク打テモ、少張心アレバ、太刀先ノ落ル事ニ非ズ。能習ヒ得テ、吟味有ベシ。

 【稼堂文庫本】

一 張受ると云事。張受ると云ハ、敵と打合時、とたん々と云拍子に成るに、敵の打所を、我太刀にて張合、打也。張合【脱字】心は、さのミきつく張に非ず、又、受る心に非ず。敵の打太刀に應じて、打太刀を【脱字】、張より早く敵を打こと也。張にて先を取り、打にて先を取所、肝要也。張拍子能合バ、敵何と強く打とても、少し張心有ば、太刀先の落ことに非ず。能習得て、吟味すべし。  

 【大瀧家本】

一 はりうけといふ事。張受と云ハ、敵と打合時、とたん/\と云拍子に成に、敵の打處を、我太刀にてはり合せ、打なり。はり合す【脱字】心ハ、左のみ強くはるにあらず、又、請るにあらず。又敵の打太刀に應じて、打太刀をはりて、張るより早く敵を打事也。はるにて先を取、打にて先を取る處、肝要なり。張る拍子能あへば、敵何程強く打ても、少はる心あれば、太刀先の落る事にあらず。能習得て、吟味有べし。    PageTop    Back   Next 

  34 多敵の位の事

 【吉田家本】

一 多敵の位の事。多敵のくらゐと云ハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇ざしをぬきて、左右へ廣く、太刀を横ニ捨て搆也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまわす心也。敵かゝる位、前後を見わけて、先へすゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も一度に振りちがへて、行太刀にて其敵をきり、もどる太刀にてわきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振りちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくずして、其まゝ、又敵の出たるかたへかゝり、振くずす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其儘間をすかさず、剛くはらひこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまわしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘバ、待心有て、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くずるゝ所をしり、勝事也。おり/\あひ手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十廿の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【近藤家甲本】

一 多敵の位の事。多敵のくらゐといふハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくずして、其まゝ、又敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘバ、待心有て、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\相手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【近藤家乙本】

一 多敵の位の事。多敵のくらゐといふハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見わけて、先江すゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくずして、其まゝ、亦敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘバ、待心有て、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\相手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【中山文庫本】

一 多敵の位の事。多敵の位と云ハ、一身にして大勢と戦時の事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまわす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものに早く行あひ、大に目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵を切り、もどる太刀にて、脇にすゝむ敵を切る心也。太刀を振ちがへて待事悪し。早く両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこみ、おつくづして、其侭、又敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなると見ヘバ、其侭間をすかさず、剛くはらひこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまはしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘば、待心有て、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\あひ手をあまたよせ、おひこみ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十廿の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べきなり。

 【赤見家丙本】

一 多敵の位の事。多敵のくらゐといふハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く太刀を横に捨て、構る也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見わけて、先へすゝむものにはやく行あひ、大きに目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に構、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくづして、其まゝ、又敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらへこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。又敵の出るかた/\と思ヘバ、待心有て、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\あひ手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【石井家本】

一 多敵の位の事。多敵のくらゐといふハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがひて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくずして、其まゝ、又敵の出たるかたへかゝり、振くず(ゝ)心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむ所、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘバ、待心ありて、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\相手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して吟味有べき也。

 【伊丹家甲本】

一 多敵の位の事。多敵の位と云ハ、一身にして大勢と戦時の事也。我刀脇ざしをぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵を切、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくづして、其まゝ、又敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘば、其まゝ間をすかさず、剛くはらひこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘば、待心有て、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\あひ手をあまたよせ、おひこみ付て、其心を得れば、一人の敵も、十廿の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【澤渡家本】

一 多敵の位の事。多敵の位と云ハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く太刀を横ニ捨て、搆る也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見わけて、先へすゝむものに【脱字】行あひ、大きに目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがひて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへてまつ事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくずして、其まゝ、また敵の出たる方へかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとみヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらへこむべし。敵あひこむ所、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。また敵の出るかた/\と思ヘバ、待心有て、はか行がたし。てきの拍子をうけて、くづるゝ所を知り、勝事也。おり/\あひてをあまたよせて、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【伊藤家本】

一 多敵の位の事。多敵のくらゐといふハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくづして、其ま【脱字】、又敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘバ、待心ありて、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\相手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して吟味有べき也。

 【伊丹家乙本】

一 多敵の位の事。多敵の位といふハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方におひまハす心なり。敵かゝる位、前後を見わけて、先え進むものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度にふりちがへて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、脇え進む敵をきるこゝろ也。太刀を振ちがへてまつ事あしゝ。はやく両脇の位に搆、敵【脱字】出たる所を、強くきりこみ、おつくづして、其まゝ、また敵の出たるかたへかゝり、振くづすこゝろなり。いかにもして、敵を【脱字】、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなると見ヘバ、其侭間をすかさず、剛くはらひ込べし。敵あひこむところ、ひたと追廻しぬれバ、はか行がたし。また、敵の出かた/\とおもヘバ、まつ心有て、はか行難し。敵の拍子を受て、崩所を知り、勝事也。おり/\相手をあまたよせ、おひこみ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十廿の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき事也。

 【神田家本】

一 多敵の位の事。多敵のくらゐといふハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものにはやく行あひ、大に目を付て、敵うち出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがへて、行太刀にて、其敵をきり、もどる太刀にて、わきにすゝむ敵をきる心也。太刀を振ちがへて待事悪し。はやく両脇の位に搆、敵の出たる所を、強くきりこミ、おつくずして、其まゝ、又敵の出たるかたへかゝり、振くづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなるとミヘバ、其まゝ間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむところ、ひたとおひまハしぬれバ、はか行がたし。又、敵の出るかた/\と思ヘバ、待心ありて、はか行がたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\相手をあまたよせ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して吟味有べき也。

 【猿子家本】

一 多敵の位の事。多敵の位といふハ、一身にして大勢と戦時の事也。我刀脇指をぬきて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵ハ四方よりかゝる共、一方へおひまハす心也。敵かゝる位、前後を見分て、先へすゝむものに早く行あひ、大に目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振ちがひて、行太刀にて、其敵を【脱字***********】きる心也。太刀を振違て待事悪し。早く両脇の位に搆、敵の出たる所を、強く切込、おつくずして、其侭、又敵の出たる方へかゝり、【脱字】くずす心なり。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなると見ヘバ、其侭間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむ所、ひたとおひまハしぬれバ、はかゆきがたし。又、敵の出るかた/\と思ひバ、待心ありて、はかゆきがたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。折/\相手をあまた寄せ、おひこミ付て、其心を得れバ、一人の敵も、十弐十の敵も、心安き事也。能稽古して吟味有べき也。

 【楠家本】

一 多敵のくらゐの事。多敵のくらゐといふハ、一身にして大ぜいとたゝかふ時の事也。我刀わきざしをぬきて、左右へひろく、太刀を横にすてゝかまゆる也。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へおいまはす心也。敵かゝるくらゐ、前後を見わけて、先へすゝむものにはやくゆきあひ、大きに目をつけて、敵打出すくらゐを得て、右の太刀も左の太刀も、一度にふりちがへて、ゆく太刀にて其敵をきり、もどる太刀にてわきにすゝむ敵をきる心なり。太刀をふりちがへて待事あしゝ。はやく兩わきのくらゐにかまへ、敵の出たる所を、つよくきりこミ、おつくづして、其まゝ、又敵の出たる方へかゝり、ふりくづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおいなす心にしかけて、敵のかさなるとみえバ、其まゝ間をすかさず、つよくはらひこむべし。敵あいこむ所、ひたとおいまはしぬれバ、はかのゆきがたし。又、敵の出るかた/\と思へバ、待心有て、はかゆきがたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。おり/\あい手をあまたよせ、おいこみつけて、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心やすき事也。よく稽古して、吟味有べき也。

 【細川家本】

一 多敵のくらいの事。多敵のくらいと云は、一身にして大勢とたゝかふ時の事也。我刀わきざしをぬきて、左右へひろく、太刀を横にすてゝかまゆる也。敵は四方よりかゝるとも、一方へおいまハす心也。敵かゝるくらい、前後を見わけて、先へすゝむものにはやくゆきあい、大きに目をつけて、敵打出すくらいを得て、右の太刀も左の太刀も、一度にふりちがへて、【脱文*******************************】待事悪シ。はやく兩脇のくらいにかまへ、敵の出たる所を、つよくきりこミ、おつくづして、其儘、又敵の出たる方へかゝり、ふりくづす心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎにおいなす心にしかけて、敵のかさなると見へば、其儘間をすかさず、強クはらいこむべし。敵あいこむ所、ひたとおいまハしぬれば、はかのゆきがたし。又、敵の出るかた/\と思へば、待心ありて、はかゆきがたし。敵の敵の[重複]拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。折々あい手を餘多よせ、おいこみつけて、其心を得れば、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【丸岡家本】

一 多敵の位の事。多敵の位と云は、一身ニして大勢と戦時の事也。我刀脇差を抜て、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵は四方よりかゝるとも、一方へ追廻す心なり。敵懸る位、前後を見分て、先へ進む者ニ早く行合、大に目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振違へて、行太刀にて其敵を切、もどる太刀にて脇に進む敵を切心なり。太刀を振違て待事あしゝ。はやく兩脇の位にかまへ、敵の出たる所を、強く切こみ、追崩して、其まゝ、又敵の出たる方へ懸り、振くづす心也。いかにもして、敵を一重に、魚つなぎに追成心にしかけて、敵の重ると見へば、其まゝ間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あいこむ所、ひたと追廻しぬれば、果敢の行がたし。又、敵の出るかた/\と思へば、待心ありて、はか行がたし。敵の拍子を受て、崩るゝ所をしり、勝事なり。折々相手を餘多よせ、追こみつけて、其心を得れば、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べき也。

 【富永家本】

一 多敵の位の事。多敵の位と云ハ、一身にして大勢と戦ときの事也。我刀脇差【脱字】ぬきて、左右へ廣く、太刀を横にすてゝ搆るなり。敵ハ四方よりかゝるとも、一方へ追込心なり。敵かゝる位、前後を見分て、先へ進者に早く行合、大きに目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も一度にふりちがつて、行太刀にて其敵を切、もどる太刀にてハ脇にすゝむ敵を切心也。太刀をふりちがへて待事あしゝ。早く両脇の位に搆、敵の出たる【脱字】を、強く切込、おつくづして、其まゝ又敵の出たる方へかゝり、ふり崩心なり。如何にもして、敵をひとゑに、魚つなぎにおいなす心に仕懸て、敵のかさなると見得て、其まゝ間をすかさず、強くはらゐ込べし。敵間込所、ひたと追廻しぬれバ、はかの行がたし。又、敵の出ル方/\と思ひ得バ、待心有て、はか行がたし。敵の拍子を請て、崩【脱字】所を知り、勝事なり。折/\相手をあまたよせ、追込付て、其心を得れバ、一人の敵も、拾二十の敵も、心安き事なり。能々稽古して、吟味有べし。

 【常武堂本】

一 多敵のくらゐの事。多敵のくらゐと云ハ、一身にして大勢とたゝかふ時の事也。我刀わきざしをぬきて、左右へひろく、太刀を横にすてゝかまゆる也。敵は四方よりかゝるとも、一方へおひまハす心也。敵かゝるくらゐ、前後を見わけて、先へすゝむものにはやくゆきあひ、大きに目をつけて、敵打出すくらゐを得て、右の太刀も左の太刀も、一度にふりちがへて、【脱文*******************************】待事悪シ。はやく兩脇のくらゐにかまへ、敵の出たる所を、つよくきりこみ、おつくづして、其儘、又敵の出たる方へかゝり、ふりくづす心也。いかにもして、敵を【脱字*】、うをつなぎにおひなす心にしかけて、敵のかさなると見へバ、其侭間をすかさず、強くはらひこむべし。敵あひこむ所、ひたとおひまはしぬれバ、はかのゆきがたし。又、敵の出るかた/\と思へば、待心ありて、はかゆきがたし。敵の拍子をうけて、くづるゝ所をしり、勝事也。をり/\あひ手を餘多よせ、おひこみつけて、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味あるべきなり。

 【田村家本】

 多敵ノ位ノ事 【脱字****】一身ニシテ大勢ト闘フ時ノ事也。吾太刀脇指ヲ抜テ、左右エ廣ク、太刀ヲヨコニ捨テ搆ル也。敵ハ四方ヨリカヽル共、一方エ追廻ス心也。テキカヽル位、前後ヲ見合テ、先エス丶ム者ニ速ク行合、大キニ目ヲ付テ、敵打出ス位ヲ得テ、右【脱字】太刀モ左ノ太刀モ一度ニ振チガエテ、ユク太刀ニテ其敵ヲ切、戻ル太刀ニテ脇ニス丶ム敵ヲ切心也。太刀ヲフリチガヘテ待事アト。速ク兩脇ノ位ニ搆、敵ノ出タル処ヲ、【脱字】ヨク切込、追崩シテ、其マ丶又敵ノ出タル方エカヽリ、振クヅス心ナリ。イカニモシテ、敵ヲヒトヱニ、魚ツナギニ追ナス心ニテシカケテ、敵ノ重ルト見エバ、其マ丶間ヲスカサズ、ツヨク拂込ベシ。敵ヲイコム所、ヒタトヲヒマワシヌレバ、ハカノ行ガタシ。又、敵ノ出ル方イヅルカタト思ヘバ、待心アツテ、ハカ行ガタシ。敵ノ拍子ヲ受テ、クヅルヽ所ヲシリ、勝コト也。折々アイテヲ数多ヨセ、追込ツケテ、其心ヲ得レバ、一人ノ敵モ、十二十ノ敵モ、心ヤスキ事也。ヨク稽古シテ、吟味有ベキナリ。

 【狩野文庫本】

一 多敵の位【脱字】事。多敵の位と云ハ、一身ニして多勢と戦時の事【脱字】。我刀脇指を抜て、左右へ廣く、太刀を横に直ニ搆る也。敵は四方より懸るとも、一方に追廻す心也。敵掛る位、前後を見分て、先え進ム者ニ早行逢、大に目を付て、敵打出ス位を得て、右の太刀も左の太刀も一度に振違へて、行太刀ニて其敵を切、戻る太刀ニ而脇に進ム敵を切心也。太刀を振違て待事悪し。はやく兩脇の位に搆、敵の出たる所を、強切込、追崩して、其侭又敵の出たる方へ懸り、振崩心也。いかにもして、敵をひとへに、うをつなぎニ追廻す心に仕懸ケ【脱字】、敵のかさなると見へバ、其儘間をすかさず、強はらひ込べし。敵あひ込所、ひたと追廻シぬれバ、はか行がたし。又、敵の出る方/\と思へば、待心有て、はかゆきがたし。敵の拍子を受て、崩るゝ所を知、勝事也。折々相手を数多寄て、追込つけて、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心易き事也。能々稽古し【脱字】、可有吟味也。

 【多田家本】

一 【脱字****】多敵の位と云は、一身にして大勢と戦ふ時の位の事【脱字】。我刀脇指を抜て、左右へ廣く、太刀を横にすてゝ搆ゆるなり。敵は四方より懸る共、一方【脱字】追廻す心也。敵懸る位、前後を見分て、先へ進む者に早く行合、大きに目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も、一度に振違へて、行太刀にて其敵を切、戻る太刀にて脇に進む敵を切る心也。太刀を振違へて待事悪し。早く両脇の位にかまへ、敵の出たる所を、強く切込、おつくづして、其侭、又敵の出たる方に懸り、振くづす心なり。如何にもして、敵をひとへに、うをつなぎに追なす心に仕懸て、敵の重ると見ヘバ、其侭間をすかさず、強く拂込べし。敵合こむ所、ひたと追廻しぬれバ、はか行がたし。又、敵の出る方/\と思バ、待心ありて、はかゆきがたし。又敵の出る拍子を請て、崩るゝ所をしり、勝事也。折々相手を餘多よせ、追込付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安き事也。能稽古して、吟味有べし。

 【山岡鉄舟本】

一 多敵ノ位ノ事。多敵ノ位ト云ハ、一身ニシテ大勢ト戦フ時ノ事也。我、刀脇指ヲ抜【脱字】、左右ヘ廣ク、太刀ヲ横ニ捨搆也。敵ハ四方ヨリ掛ル共、一方エ追廻ス心也。敵掛ル位、前後ヲ見分テ、先ニ進ム者ニハ早ク行キ合、大キ【脱字】目ヲ付テ、敵ヲ打出ス位ヲ得テ、右ノ太刀モ左ノ太刀モ一度ニ振違テ、行太刀ニテ其敵ヲ切、戻ル太刀ニテ脇ニ進ム敵ヲ切心也。太刀ヲ振違ヘテ待事アト。早ク兩脇ノ位ニ搆、敵ノ出タル処ヲ、強ク切込、追崩シテ、其侭、亦敵ノ出タル方へ懸リ、振崩ス心也。イカニモシテ、敵ヲヒトヘニ、具ヘ早キニ追ナス心ニ仕掛テ、敵ノカサナルト見ヘバ、其侭間ヲスカサズ、強拂込ベシ。敵アヒコム処、ヒタト追廻ヌレバ、ハカノ行難シ。又、敵ノ出ル方【脱字】ト思ヘバ、待心有テ、ハカ行難シ。敵ノ拍子ヲ受テ、崩ルヽ処ヲ知リ、勝事也。折々相手ヲ数多寄セ、追込ツケテ其心ヲ得レバ、一人ノ敵モ、十二十ノ敵モ、心易事也。能稽古シテ、吟味アルベシ。

 【稼堂文庫本】

一 多敵の位の事。多敵の位と云は、一身にして大勢と戦ふ時の事也。我刀脇差を抜て、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵は四方より懸る共、一方へ追込む心也。敵のかゝる位、前後を見分て、先へ進む者へ早く行合、大きに目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も一同に振違へて、行太刀にて、其敵を切り、戻る太刀にては、脇に進む敵を切る心也。太刀を振違て待ことあしゝ。早く両脇の【脱字*******************************】出たる方へかゝり、ふり崩す心也。いかにもして、敵をひとへに、魚つなぎに追なす心に仕かけて、敵の重なると見へば、其侭間をすかさず、強く拂込べし。敵間込所、ひたと追込ミぬれバ、はかの行がたし。又、敵の出る方/\と思へば、待心有て、はか行がたし。又敵の出る拍子を請て、崩るゝ所を知り、勝事也。折々相手を数多寄せ、追込付て、其心を得れバ、一人の敵も、十二十の敵も、心安きこと也。能々稽古して、吟味有べし。  

 【大瀧家本】

一 多敵の位の事。多敵の位と云ハ、一身にして大勢と戦時の事也。我刀脇指を抜いて、左右へ廣く、太刀を横に捨て搆る也。敵ハ四方より懸る共、一方へ追廻す心なり。敵懸る位、前後を見分ケ【脱字】、先へ進むもの也はやく行あひ、大きに目を付て、敵打出す位を得て、右の太刀も左の太刀も一度に振違ひて、行太刀にて其敵を切、戻す太刀にて脇に進む敵を切心なり。太刀を振違ひて待事悪し。はやく両脇の位に搆ひ、敵の出たる処を、強く打込、を尽して、其侭又敵の出たる方へかゝり、振崩す心なり。如何にもして、敵をひとへに、魚つなぎに追なす心に仕懸て、敵のかさなると見へバ、其侭間をすかさず、強く拂込むべし。敵の相込處を、ひたと追廻しぬれバ、はか行難し。又、敵の出る方/\とおもへバ、待心あつて、はか行難し。敵の拍子を受て、崩るゝ處を知り、勝事なり。折々相手をあまた寄、追込つけて、其心を得れば、壱人の敵も、拾弐拾の敵も、心安き事なり。能々稽古して、吟味有べきものなり。    PageTop    Back   Next 

  35 打あいの利の事

 【吉田家本】

一 打あひの利の事 此打あひの利と云事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すに非ず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の実の道を顕す太刀也。 口傳

 【近藤家甲本】

一 打あひの利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すにあらず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【近藤家乙本】

一 打あひの利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すにあらず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【中山文庫本】

一 打あひの利の事 此打あひの利と云事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すに非ず。【◇】稽古有て、勝所を知べきものなり。大かた、兵法の実の道を顕す太刀也。 口傳

 【赤見家丙本】

一 打合の利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すにあらず。【◇】稽古有て、勝所を知るべきもの也。大かた、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【石井家本】

一 打あひの利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すにあらず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の実の道を顕す太刀也。 口傳

 【伊丹家甲本】

一 打あひの利の事 此打あひの利と云事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記に非ず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の実の道を顕す太刀也。 口傳

 【澤渡家本】

一 打合の利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記にあらず。【◇】稽古有て、勝所を知るべきもの也。大方、兵法【脱字】實の道を顕す太刀也。口傳

 【伊藤家本】

一 打あひの利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すにあらず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【伊丹家乙本】

一 打あひの利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記に非ず。【◇】稽古有て、かつ處を知べきもの也。大かた、兵法の實【脱字】道を顕す太刀也。 口傳

 【神田家本】

一 打あひの利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書記すにあらず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大かた、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【猿子家本】

一 打あひの利の事 此打あひの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利を弁ゆる所也。こまやかに書記すにあらず。【◇】稽古有て、勝所を知べきもの也。大方、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【楠家本】

一 打あいの利の事 此打あいの利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書しるすにあらず。能けいこありて、勝所をしるべきもの也。大かた、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【細川家本】

一 打あいの利の事。【★改行なし】此うちあいの利と云事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書しるすにあらず。能稽古ありて、勝所をしるべきもの也。大形、兵法の實の道を顕ハす太刀也。 口傳

 【丸岡家本】

一 打あひの利の事。【★改行なし】此打相の利と云事にて、兵法、太刀にての勝利を辨る處也。細に書記にあらず。能稽古ありて、勝所を可知者也。大かた、兵法の実の道を顕す太刀也。 口傳

 【富永家本】

一 打合の利の事 此打合の利といふ事にて、兵法、太刀にての勝利【脱字】わきまゆる処也。こま【脱字】かに【脱字】しるすに非ず。能稽古有【脱字】、勝處を可知者なり。大かた、兵法の実の道を顕す太刀なり。 口傳

 【常武堂本】

一 打あひの利の事。【★改行なし】此うちあひの利と云事にて、兵法、太刀にての勝利をわきまゆる所也。こまやかに書しるすにあらず。能稽古ありて、勝所をしるべきもの也。大形、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳

 【田村家本】

 打合ノ利ノ事 【脱字**】利ト云事ニテ、兵法、太刀ニテノ勝利ヲワキマユル処也。コマヤカニカキシルスニ非ズ。能稽古有テ、勝處ヲシルベキモノ也。大方、兵法ノ實ノ道ヲアラハス太刀也。 口傳

 【狩野文庫本】

一 打あいの利の事。【★改行なし】此打合の利と云ハ、兵法、太刀にての勝利を弁る處也。細に書記ニあらず。能々稽古して、勝所を可知者也。大かた、兵法の実の道を顯す太刀なり。 口傳

 【多田家本】

一 打合の利の事。【★改行なし】此打あひの利と云事【脱字】、兵法、【脱字】にての勝利を弁ゆる所也。こまやかに書記すにあらず。よく稽古有て、勝所を知べき者也。大形、兵法の実の道を顕す太刀【脱字】。 口傳

 【山岡鉄舟本】

一 打逢ノ利ノ事。【★改行なし】此打逢ノ利ト云事ニテ、兵法太刀ニテノ勝利ヲ辨ル處也。細カニ書記スニ非ズ。能稽古有テ、勝処ヲ知ベキ者也。大形、兵法ノ實ノ道ヲ顕ス太刀也。 口傳。

 【稼堂文庫本】

一 打合の利の事。【★改行なし】此打合の利と云事にて、兵法、太刀にての勝利を弁る所也。細に書記に非ず。能々稽古有て、勝所を可知者也。大形、兵法の實の道を顕す太刀也。 口傳  

 【大瀧家本】

一 相打[傍注「イ 打合」]の利の事。【★改行なし】此相打[傍注「イ 同」]の利といふ事にて、兵法太刀にての勝利を弁ゆる所なり。こまやかに書記すにあらず。能稽古有て、勝所を可知ものなり。大形ハ、兵法の実の道を顕す太刀なり。 口傳    PageTop    Back   Next 

  36 一つの打と云事

 【吉田家本】

一 一つの打と云事 此一つの打と云心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法、能学ざれバ心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法、心のまゝになつて、思まゝに勝道也。能々稽古すべし。

 【近藤家甲本】

一 一ツの打と云事 此一つの打といふ心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、おもふまゝに勝道也。能々稽古すべし。 口傳

 【近藤家乙本】

一 一つの打と云事 此一ツの打といふ心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれば、兵法心のまゝになつて、おもふまゝに勝道也。能々稽古すべし。

 【中山文庫本】

一 一ツの打と云事 此一ツの打と云心をもつて、たしかに勝所を得る事也。兵法よく学ざれバ、心得がたし。此義、能鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、思まゝに勝道也。能々稽古すべし。

 【赤見家丙本】

一 一つの打と云事 此一つの打といふ心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、おもふまゝに勝道也。能々稽古すべし。 口傳

 【石井家本】

一 一つの打と云事 此一つの打といふ心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、おもうまゝに勝道也。能々稽古すべし。 口傳

 【伊丹家甲本】

一 一つの打と云事 此一つの打と云心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれば、心得がたし。此儀、能鍛錬すれば、兵法心のまゝになつて、思まゝに勝道也。能々稽古すべし。

 【澤渡家本】

一 一ツの打と云事 此一ツの打と云心を以て、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、おもふまゝに勝道也。能々稽古すべし。 口傳

 【伊藤家本】

一 一つの打と云事 此一つの打といふ心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、おもうまゝに勝道也。能々稽古すべし。 口傳

 【伊丹家乙本】

一 一ツの打といふ事 此一ツの打と云ハ心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能學ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法心の侭になつて、おもふまゝに勝道也。能【脱字】稽古すべし。

 【神田家本】

一 一つの打と云事 此一つの打といふ心をもつて、たしかに勝所を得事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此儀、能鍛錬すれバ、兵法心のまゝになつて、おもふまゝに勝道也。能々稽古すべし。 口傳

 【猿子家本】

一 一つの打といふ事 此一つの打といふ心をもつて、慥に勝所を得る事也。兵法能学ざれば、心得がたし。此儀、よく鍛錬すれバ、兵法心の侭になつて、おもふ侭に勝道也。能々稽古すべし。 口傳

 【楠家本】

一 一ツの打といふ事 此一ツの打といふ心を以て、慥に勝所を得る事也。兵法、能まなばざれバ心得がたし。此儀、能鍛練すれバ、兵法、心のまゝになつて、思ふまゝに勝道也。能々稽古すべし。

 【細川家本】

一 一ツの打と云事。【★改行なし】此一ツの打と云心をもつて、慥に勝所を得る事也。兵法、能まなばざれば心得がたし。此義、能鍛練すれば、兵法、心の儘になつて、思ふ儘に勝道也。能々稽古すべし。

 【丸岡家本】

一 一ツの打と云事。【★改行なし】此一ツの打と云心を以テ、たしかに勝所を得る事也。兵法、能学バざれば心得がたし。此義、能鍛練すれば、兵法、心のまゝに成て、思ふまゝに勝道也。【脱字】稽古すべし。

 【富永家本】

一 壱ツの打といふ事 此壱ツの打と云心を以て、慥に勝所を得る事也。兵法、能学バざれバ心得がたし。此儀、能々鍛練すれバ、兵法、心の侭に成て、おもふまゝに勝道なり。よく【脱字】稽古すべし。

 【常武堂本】

一 一ツの打といふ事。【★改行なし】此一ツの打と云心を以て、慥に勝所を得る事也。兵法、能まなばざれバ心得がたし。此義、【脱字】鍛練すれバ、兵法、心の儘になつて、思ふ儘に勝道也。能々稽古すべし。

 【田村家本】

 一ツノ打ト云事 此一ツノ打ト云ハ心ヲ以テ、慥ニ勝処ヲ得ル事也。兵法、能學バザレバ心得ガタシ。コノギ、ヨクタンレンスレバ、兵法、コ丶ロノマ丶ニナツテ、ヲモイノマ丶ニ勝ミチナリ。ヨク【脱字】ケイコスベシ。

 【狩野文庫本】

一 一ツの打と云事。【★改行なし】此一ツの打と云心を以、慥に勝所【脱字】得る事【脱字】。兵法、能学バざれバ心得がたし。此儀、能鍛練すれバ、兵法、心ノ儘に成て、思ふ儘ニ勝道也。能【脱字】稽古有べし。

 【多田家本】

一 一つの打と云事。【★改行なし】此一つの打【脱字】心を以て、慥に勝所【脱字】也。兵法【脱字】学ざれバ、心得がたし。此儀、よく鍛錬すれバ、兵法、心の侭に成て、思ふ侭に勝道也。能々稽古すべし。

 【山岡鉄舟本】

一 一ツノ打ト云事。【★改行なし】此一ツノ打ト云心ヲ以テ、慥ニ勝処ヲ得ル事也。兵法、能学バザレバ、心得難シ。此儀、能鍛錬スレバ、兵法、心ノ侭ニ成テ、思フ侭【脱字】勝道也。能【脱字】稽古スベシ。

 【稼堂文庫本】

一 一つの打と云こと。【★改行なし】此一つの打と云心を以、慥ニ勝所を得ル事也。兵法能学ざれバ、心得がたし。此を、能々鍛練すれバ、兵法、心の侭に成て、思ふ様に勝所の道なり。【脱字】稽古すべし。  

 【大瀧家本】

一 一ツ【脱字】打といふ事。【★改行なし】此一ツの打と云心を以て、慥ニ勝處を得事也。兵法、能学ざれバ心得難し。此儀、能々鍛練すれバ、兵法、心の侭に成て、思ふ侭に勝道也。能々稽古有べし。    PageTop    Back   Next 

  37 直通〔じきづう〕の位と云事

 【吉田家本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【近藤家甲本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【近藤家乙本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【中山文庫本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の実の道をうけて、傳所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。  口傳

 【赤見家丙本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【石井家本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【伊丹家甲本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【澤渡家本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【伊藤家本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【伊丹家乙本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道を受て、傳所也。能々鍛練して、此兵法に身を成事、肝要也。 口傳

 【神田家本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【猿子家本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の実の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。 口傳

 【楠家本】

一 直通のくらゐといふ事 直通の心、二刀一流の実の道をうけて、傳ゆる處なり。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。口傳

 【細川家本】

一 直通のくらいと云事。【★改行なし】直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。口傳

 【丸岡家本】

一 直通の位と云事。【★改行なし】直通の心、二刀一流の實の道を受て、傳る所也。能々鍛練して、此兵法に身を成事、肝要也。口傳

 【富永家本】

一 直通の位と云事 直通の心、二刀一流の実の道を請て、傳ゆる處なり。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。口傳

 【常武堂本】

一 直通のくらゐといふ事 直通の心、二刀一流の實の道をうけて、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。口傳

 【田村家本】

 直通ノ位ト云事 ジキヅウノコ丶ロ、二刀一流ノ實ノ道ヲ受テ、傳ル處也。能々鍛練シテ、此兵法ニ身ヲナス事、肝要也。口傳

 【狩野文庫本】

一 直道の位と云事。【★改行なし】直道の心、二刀一流の実の道を請て、傳ゆる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。口傳

 【多田家本】

一 直通の位と云事。【★改行なし】直通の心、二刀一流の【脱字】道を請て、傳ゆる所也。よく/\鍛練して、此兵法に身をなす事、肝要也。【脱字】(★改行なしで後書へ連続)

 【山岡鉄舟本】

一 直通ノ位ト云事。【★改行なし】直通ノ心、二刀一流ノ實ノ道ヲ受テ、傳ル処也。能々鍛錬シテ、此兵法ニ身ヲ成ス事、肝要也。 口傳。

 【稼堂文庫本】

一 直通の位と云事。【★改行なし】直通の心は、二刀一流の実の道を請て、傳ふる所也。能々鍛練して、此兵法に身をなす【脱字】、肝要也。【脱字】  

 【大瀧家本】

一 直通の位といふ事。【★改行なし】直通の心、二刀一流の実の道を受て、傳る所なり。能々鍛錬して、此兵法に身をなす事、肝要也。口傳    PageTop    Back   Next 

  38 水之巻 後書

 【吉田家本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に記し置事也。兵法、太刀をとつて、人に勝所を覚るハ、先、五つの表をもつて、五方の搆をしり、太刀の道をおぼへて、惣躰やわらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人にかち二人に勝、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ケ条/\と稽古して、敵と戦、次第/\に道の利を得て、たゑず心にかけ、急心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也。緩々とおもひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思べし。たとへ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事におゐてハ、実の道に有べからず。此利心にうかミてハ、一身をもつて数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。           新免武藏守玄信 正保二年五月十二日           寺尾孫之允信正           柴任三左衛門尉 明暦弐年閏四月十日     秀正[花押朱印]      吉田忠左衛門殿

 【近藤家甲本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に記置事也。兵法、太刀をとつて人に勝所を覚るは、先、五つの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、捴身やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人にかち、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也。ゆる/\と思ひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思ふべし。たとへ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事に於てハ、實の道にあるべからず。此利心にうかミてハ、一身をもつて、数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日         寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日         柴任三左衛門秀正 在判 明暦二年閏四月十日         吉田太郎右衛門利重 在判 元禄四年七月廿六日         立花專太夫峯均             法名 廓巖翁 在判 享保七年正月十七日         立花彌兵衛増壽             法名 隨翁 在判 寶暦十一年九月十九日         丹羽五兵衛信英 在判 天明五年九月十九日         渡部六右衛門 文化七庚午九月十九日   信行[花押朱印]       渡部粂之丞殿

 【近藤家乙本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に記置事也。兵法、太刀をとつて人に勝所を覚るは、先、五ツの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、捴躰やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人にかち、二人にかち、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也。ゆる/\とおもひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道江心のゆかざる様に思ふべし。たとへ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事に於てハ、實の道にあるべからず。此利、心にうかミてハ、一身をもつて、数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日         寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日         柴任三左衛門秀正 在判 明暦二年閏四月十日         吉田太郎右衛門利重 在判 元禄四年七月廿六日         立花專太夫峯均 在判             法名 廓巖翁 享保七年正月十七日         立花彌兵衛増壽 在判             法名 隨翁 寶暦十一年九月十九日         丹羽五兵衛信英 在判 天明五年九月十九日         渡部六右衛門信行 在判 文政三年五月十九日         大沼忠司 弘化三丙午年五月十九日  美正[花押朱印]         須貝惣四郎殿

 【中山文庫本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に【脱字】置事也。兵法、太刀をとつて人に勝所を覚るは、先、五ツの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、惣躰やはらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人に勝、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道も一足宛はこぶ也。緩々と思ひ、此法をおこなふこと、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少も脇の道へ心のゆかざる様に思べし。たとへ何ほどの敵に打勝ても、習ひにそむく事に於てハ、実の道に有べからず。此利心にうかみてハ、一身を以て数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守 玄信  正保二年五月十二日         寺尾孫之允 信正           柴任三左衛門尉 美矩           吉田太郎右衛門 実連  延宝六年四月廿二日         早川瀬兵衛殿 実寛           月成八郎左衛門尉 実久           大塚作太夫 重寧           月成彦之進 実誠           大塚初平 藤実        七十翁書         大塚可生 重庸  文化十五年五月十九日       大塚助左衛門殿

 【赤見家丙本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に記置事也。兵法、太刀をとつて人に勝所を覚るは、先、五つの表を以て、五方の構をしり、太刀の道を覚へて、惣躰やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀の手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人にかち、二人に勝、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也と。ゆる/\とおもひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思ふべし。たとひ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事に於ては、實の道に有べからず。此利、心にうかミてハ、一身をもつて、数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日           寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日           柴任三左衛門秀正 在判 明暦二年閏四月十日           吉田太郎右衛門利重 在判 元禄四年七月廿六日           立花專太夫峯均 在判            法名 廓巖翁 享保七年正月十七日           立花彌兵衛増壽 在判            法名 隨翁 寶暦十一年九月十九日               丹羽五兵衛    (以下、張り継ぎ異筆記入) 寛政元年八月廿五日          赤見俊平有久 在判 寛政三年亥三月廿八日          木村又六時親 在判 寛政五年丑五月三日          平井伴右衛門隹勝 在判 享和二年十二月廿四日          高橋新左衛門次敬 在判 同 四年二月十九日          石井勤太郎 寛【文】政八年八月十四日   廣泰 [花押]            佐藤田子七 年号前ニ同        有定 在判         再勤          石井勤太郎 同断           廣泰 在判         再勤          佐藤文左衛門 文政十二年三月十八日     有定 在判            石黒又右衛門 安政六未年三月十日      贇廣 在判            五條儀左衛門 萬延二酉年        良馬 [花押]   二月七日        赤見錦助殿    (以下、張り継ぎ異筆記入) 年号前ニ同          石黒又右衛門 慶應三丁卯年        贇廣 [花押]   十二月七日        赤見鉉次郎殿 (註)第一の加筆は五條良馬、第二の加筆は石黒贇廣

 【石井家本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に記し置事也。兵法、太刀をとつて人に勝處を覚るは、先、五つの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、捴躰やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀(の)手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人にかち、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也。ゆる/\と思ひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思ふべし。たとへ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事に於てハ、實の道に有べからず。此利心にうかミてハ、一身をもつて数十人にも勝心のわきまへ有べし。然る上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日         寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日         柴任三左衛門秀正 在判 明暦二年閏四月十日         吉田太郎右衛門利重 在判 元禄四年七月廿六日         立花專太夫峯均 在判             法名 廓巖翁 享保七年正月十七日         立花彌兵衛増壽 在判             法名 隨翁 寶暦十一年九月十九日         丹羽五兵衛信英 在判 天明五年九月十九日         渡部六右衛門信行 在判             法名 賢翁         五十嵐平左衛門 弘化四丁未年六月廿八日  正一[花押朱印]         田中六次郎殿 (追記)   明治廿丙亥年四月三日          増子源匡行[花押朱印]       石井與想治殿

 【伊丹家甲本】

右書付所、一流の劔術、大かた此巻に記し置事也。兵法、太刀をとつて人に勝所を覚るは、先、五つの表をもつて、五方の搆をしり、太刀の道をおぼへて、惣躰やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、をのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に従ひ、一人に勝、二人に勝、兵法の善悪を知ほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也。緩々とおもひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思べし。たとへ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事におゐてハ、実の道に有べからず。此利、心にうかみてハ、一身をもつて、数十人にも勝心のわきまへ有べし。然る上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきものなり。     (以下欠落)

 【澤渡家本】

右、書付之所、一流の劔術、大方此巻に記し置事也。兵法、太刀をとつて人に勝所を覚るハ、先、五ツの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、そう躰やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀の手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人にかち、二人に勝、兵法の善悪を知るほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、いそぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人へともうちあひ、其心をしつて、千里の道も一足宛はこぶなりと。ゆる/\におもひ、此法を行事、武士の役也と心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすは下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわき【脱字】道へ心のゆかざる様に思ふべし。たとひ何程のてきに打勝ても、習にそむく事に【脱字】ゐてハ、實の道に有べからず。此利、心にうかミてハ、一身をもつて、数十人へにも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古【脱字】錬とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日           寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日           柴任三左衛門秀正 在判 明暦二年閏四月十日           吉田太郎右衛門利重 在判 元禄四年七月廿六日           立花專太夫峯均 在判            法名 享保七年正月十七日    廓巖翁           立花彌兵衛増壽 在判            法名 寶暦十一年九月十九日   隨翁           丹羽五兵衛信英 在判 寛政元酉年八月廿五日           赤見俊平有久 在判  (年月日記載なし)         木村又六 文化三年五月十四日           (宛名なし)

 【伊藤家本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に記し置事也。兵法、太刀をとつて人に勝所を覚るは、先、五つの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、捴躰やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人にかち、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也。ゆる/\と思ひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思ふべし。たとひ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事に於てハ、實の道に有べからず。此利、心にうかミてハ、一身をもつて、数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日         寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日         柴任三左衛門秀正 在判 明暦二年閏四月十日         吉田太郎右衛門利重 在判 元禄四年七月廿六日         立花專太夫峯均 在判             法名 廓巖翁 享保七年正月十七日         立花彌兵衛増壽 在判             法名 隨翁 寶暦十一年九月十九日         丹羽五兵衛信英 在判 天明五年九月十九日         渡部六右衛門信行 在判 文政七年申五月九日         渡部六右衛門 弘化三年五月九日     安信[花押朱印]         伊藤馬之助殿

 【伊丹家乙本】

右書付所、一流の劔術、大かた此巻に記し置事なり。兵法、太刀を取て人に勝所を覚ゆるハ、先、五ツの表を以、五方の搆を知り、太刀の道を覚て、惣躰やわらかニなり、心もきゝ【脱字】て、道の拍子を知、己と太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時ニ随ひ、一人に勝、二人に勝、兵法の善悪を知る程に成、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦、次第/\に道の利を得て、たゑず心にかけ、急心なくして、折々手ニふれ、徳を覚へ、いづれの人と【脱字】打あひ、其心をしつて、千里の道も一足宛運ぶ也。緩々とおもひ、此法を行ふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝とおもひ、此書物のごとくにして、少しもわきの道へ心の行ざる様におもふべし。譬、何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事におひてハ、實の道に有べからず。此利、心にうかみては、一身を以て、数十人にも勝心【脱字】わきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力を以て、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす。能々吟味有べきものなり。    (日付なし)         新免武藏守玄信          寺尾孫之允信正          柴任三左衛門美矩          吉田太郎右衛門實連          早川瀬兵衛實寛          月成八郎左衛門實久          大塚作太夫重寧          月成彦之進實誠          大塚初平藤郷          大塚可生重庸          大塚作太夫重任          大塚作之丞重徳          大塚作太夫            [朱印花押]  天保八酉歳    十一月十日        伊丹勘之進殿 (追記)          大塚久作            重正[朱印花押]  嘉永三庚戌年    五月十九日        伊丹傳十郎殿 (再追記)          大塚作太夫            重威[朱印花押]  明治二已巳年五月十九日        伊丹九郎左衛門殿

 【神田家本】

右、書付所、一流の劔術、大かた此巻に記し置事也。兵法、太刀をとつて人に勝處を覚るは、先、五つの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、捴躰やハらかになり、心もきゝ出、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心のまゝほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人にかち、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人とも打あひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶ也。ゆる/\と思ひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思ふべし。たとひ何ほどの敵に打勝ても、習にそむく事に於てハ、實の道に有べからず。此利、心にうかミてハ、一身をもつて、数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有べきもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日         寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日         柴任三左衛門秀正 在判 明暦二年閏四月十日         吉田太郎右衛門利重 在判 元禄四年七月廿六日         立花專太夫峯均 在判             法名 廓巖翁 享保七年正月十七日         立花彌兵衛増壽 在判             法名 隨翁 寶暦十一年九月十九日         丹羽五兵衛信英 在判 天明五年九月十九日         渡部六右衛門信行 在判             法名 賢翁 文政三年四月十九日         五十嵐平左衛門 天保十五年甲辰十月十九日  正一[花押朱印]         神田仁太郎殿

 【猿子家本】

右、書付所、一流の劔術、大方此巻に記し置事也。兵法、太刀を取て人に勝處を覚るは、先、五つの表を以て、五方の搆を知り、太刀の道を覚て、捴躰やハらかになり、心もきゝ【脱字】、道の拍子をしり、おのれと太刀手さへて、身も足も、心の侭ほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人にかち、兵法の善悪をしる程になり、此一書の内を、一ヶ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、たへず心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれ、徳を覚へ、何れの人共打あい、其心をしつて、千里の道も壱足宛はこぶ也。ゆる/\と思ひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、あすハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少も脇の道へ心のゆかざる様におもふべし。たとへ何程の敵に打勝ても、習にそむく事に於てハ、實の道に有べからず。此【脱字】、心にうかみてハ、一身を以て、数十人にも勝心の辨ひ有べし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。能々吟味有之べくもの也。         新免武藏守玄信 在判 正保二年五月十二日         寺尾孫之丞信正 在判 承應二年十月二日         柴任三左衛門重高 在判 万治三年五月朔日         吉田太郎右衛門實連 在判 元禄八年十月十二日         立花專太夫峯均 在判             法名 廓巖翁 享保七年正月十七日         立花彌兵衛増壽 在判             法名 隨翁 寶暦十一年九月十九日         丹羽五兵衛信英 在判 天明五年九月十九日         渡部六右衛門信行 在判             法名 賢翁 文政三年庚辰四月十九日         五十嵐平左衛門 弘化三丙午年五月十九日  正一[朱印花押]         (宛名なし)

 【楠家本】

右、書付る所、一流の劔術、大かた此巻にしるし置事也。兵法、太刀を取て、人に勝処を覚ゆるハ、先、五ツのおもてを以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚えて、惣躰やはらかになり、心のきゝ出て、道の拍子をしり、をのれと太刀も手さへて、身も足も、心のまゝにほどけたる時にしたがひ、一人にかち二人にかち、兵法の善悪をしるほどになり、此一書の内を、一ケ条/\と稽古して、敵とたゝかひ、次第/\に道の利を得て、たえず心にかけ、いそぐ心なくして、おり/\手にふれてハ、徳をおぼえ、いづれの人とも打合、其心をしつて、千里の道もひと足づゝはこぶなり。ゆる/\と思ひ、此法をおこなふ事、武士の役なりと心得て、けふハきのふのわれにかち、あすハ下手にかち、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざるやうにおもふべし。縦、何ほどの敵に打かちても、ならひにそむくことにおゐてハ、實の道にあるべからず。此利心にうかミてハ、一身をもつて数十人にも勝心のわきまへあるべし。然上ハ、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日のけいこを練とす。能々吟味有べき者也。  (年月日記載なし)   新免武蔵守玄信  寛文八年五月日     寺尾夢世[花押印]        槇嶋甚介殿

 【細川家本】

右、書付る所、一流の劔術、大形此巻に記し置事也。兵法、太刀を取て、人に勝所を覚ゆるハ、先、五ツのおもてを以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚へて、惣躰自由〔ヤハラカ〕になり、心のきゝ出て、道の拍子をしり、おのれと太刀も手さへて、身も足も、心の儘にほどけたる時に随ひ、一人にかち二人にかち、兵法の善悪をしる程になり、此一書の内を、一ケ條/\と稽古して、敵とたゝかい、次第/\に道の利を得て、不斷心に懸、いそぐ心なくして、折々手にふれては、徳を覺へ、いづれの人とも打合、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶなり。緩々と思ひ、此法をおこなふ事、武士のやくなりと心得て、けふはきのふの我にかち、あすは下手にかち、後は上手に勝とおもひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざるやうに思ふべし。縦、何程の敵に打かちても、ならいに背く事におゐては、實の道にあるべからず。此利心にうかびては、一身を以て数十人にも勝心のわきまへあるべし。然上は、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす。能々吟味有べきもの也。  正保二年五月十二日      新免武蔵             寺尾孫丞殿  寛文七年    二月五日      寺尾夢世勝延[花押]             山本源介殿

 【丸岡家本】

右、書付る所、一流の劔術、大かた此巻に記置事也。兵法、太刀を取て、人に勝所を覚ゆるハ、先、五ツの表を以て、五方の搆を知、太刀の道を覚へて、摠躰自由ニなり、心のきゝ出て、道の拍子を知、おのれと太刀も手さえて、身も足も、心のまゝにほどけたる時に隨ひ、一人に勝二人に勝、兵法の善悪を知ほどになり、此一書の内を、一ケ條/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、不斷心にかけ、急ぐ心なくして、折々手にふれては、徳を覚、いづれの人とも打合、其心を知て、千里の道も一足づゝはこぶ也。緩々と思ひ、此法を行ふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、明日は下手に勝、後は上手に勝と思ひ、此書物のごとくニして、少もわきの道へ心の行ざるやうに思ふべし。假令何ほどの敵に打勝ても、ならひに背くことにおゐては、実の道に有べからず。此利心にうかミては、一身を以数十人にも勝心の辨へ有べし。然上は、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、萬日の稽古を練とす。能々吟味有べき者也。   正保二年五月       新免武蔵              玄信識       (宛名なし)

 【富永家本】

右、書付る処、一流の劔術、大形此巻に印置事也。兵法の太刀を取て、人に勝處を覚ゆるは、先、五ツの面を以て、五方の搆を知り、太刀の道を覚て、惣躰やはらかになり、心の利出て、道の拍子を知り、おのれと太刀も手さへ【脱字】、身も足も、心のまゝにほどけたる時に隨、壱人に勝、二人に勝、兵法の善悪を知る程になり、此壱書の内を、一ケ条/\と稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、不絶心に懸、急心無くして、折々手に觸てハ、徳を覚へ、何れの人とも打合、其心を知て、千里の道も一足づゝはこぶなり。緩々と思ひて、此法を行事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、明日ハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひて、此書物の如くにして、少も脇の道へ心のゆかざる様に思ふべし。縦、何程の敵に打勝ても、ならひにそむく事におゐてハ、実の道に不可有。此利心にうかミて【脱字】、一身を以て数十人にも勝心のわきまへ有べし。然上ハ、劔術の知力にて、大分小分の兵法をも徳道すべし。千日の稽古を鍛とし、萬日の稽古を練とす。能々可有吟味者なり。  正保二年五月十二日 新免武藏守玄信在判       (宛名なし)

 【常武堂本】

右、書付る所、一流の劔術、大形此巻に記し置事也。兵法、太刀を取て、人に勝所をおぼゆるハ、先、五ツのおもてを以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚えて、惣躰自由〔ヤハラカ〕になり、心のきゝ出て、道の拍子をしり、おのれと太刀も手さへて、身も足も、心の侭にほどけたる時に随ひ、一人にかち二人にかち、兵法の善悪をしる程になり、此一書の内を、一ケ條/\と稽古して、敵とたゝかひ、次第/\に道の利を得て、不斷心に懸、いそぐ心なくして、折々手にふれてハ、徳をおぼえ、いづれの人とも打合、其心をしつて、千里の道もひと足宛はこぶなり。緩々と思ひ、この徳をおこなふ事、武士のやくなりと心得て、けふハきのふの我にかち、あすハ下手にかち、後ハ上手にかつと思ひ、此書物のごとくにして、少もわきの道へ心のゆかざる様に思ふべし。縦、何程の敵に打かちても、ならひに背く事においてハ、實の道にあるべからず。此利心にうかびてハ、一身を以て数十人にも勝心のわきまへあるべし。然上は、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす。能々吟味あるべきもの也。  正保二年五月十二日     新免武藏       寺尾孫丞殿  寛文七年二月五日      寺尾夢世勝延       山本源介殿

 【田村家本】

右、書付ル處、一流ノ劔術、大方此巻ニ記シ置事也。兵法、太刀ヲ採テ、人ニ勝處ヲ覺ルハ、先五ツノ表ヲ以テ、五方ノ搆ヲシリ、太刀ノ道ヲ丶ボヱテ、惣躰自由ニナリ、心ノキ【脱字】出テ、道ノ拍子ヲシリ、自太刀モ手モサヱテ、身モ足モ、心ノ儘ニ解ケタル時ニ隨ヒ、一人ニ勝二人ニ勝、兵法ノ善惡ヲシル程ニナリ、此【脱字】書ノ内ヲ、一箇條々ト稽古シテ、敵ト戦ヒ、次第々ニ道ノ利ヲ得テ、不断心ニカケ、急グ心ナクシテ、折々手ニフレテハ、徳ヲ覺、何レノ人共打合、其コ丶ロヲ知テ、千里ノ道モ一足ヅヽ運ブナリ。ユル々ト思、此法ヲ行フ事、武士ノ役也ト心得テ、今日ハ昨日ノ吾ニ勝、明日ハ下手ニカチ、後ハ上手ニカツト思、此書【脱字】ノ如クニシテ、少モ脇ノ道エ心ノ行ザルヤウニ思ベシ。縦ヒ何程ノ敵ニ打勝テモ、習ニ背ク事ニヲヒテハ、實ノ道ニ有ベカラズ。此利心ニ浮ビテハ、一身ヲ以テ數十人ニモ勝チ心ノ辨ヱ有ベシ。然ル上ハ、劍術ノ智力ニテ、大分一分ノ兵法ヲモ徳道ス可シ。千日ノ稽古ヲ鍛トシ、万日ノ稽古ヲ練トス。能々吟味有ルベキ者ナリ。  正保二年五月          新免武藏守            藤原玄信            [朱印二顆模写]       (宛名なし)

 【狩野文庫本】

右、書付所、一流の劔術、大形此巻に記し置事なり。兵法、太刀を取て、人に勝所を覚ゆるハ、先五ツの表を以、五方の搆を知、太刀の道を覚て、惣躰和ラかに自由ニ成、心のきゝ出て、道の拍子を知、おのれと太刀も手さへて、身も足も、心の儘にほどけたる時に隨ひ、一人ニ勝二人ニ勝、兵法の善悪を知程に成、此一ツ書の内ヲ、一ケ条/\と稽古して、敵に戦、次第/\に道の理を得而、不断心に懸、急心なくして、折々手にふれては、徳を覚、何れの人とも打合、其心を知て、千里の道も一足づゝはこぶなり。ゆる/\と思ひ、此法を行事、武士の役成と心得て、今日ハ昨日の我に勝、明日ハ下手に勝、後は上手ニ勝と思ひ、此書物のごとくにして、少も脇の道へ心の行ざる樣ニ思ふべし。縦何程の敵に打勝ても、習に背【脱字】ニおゐてハ、実の道に有べからず。此利心にうかびては、一身を以数十人ニも勝心の弁へ有べし。然上ハ、劔術の知力ニ而、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を【脱字******】練とす。能々可有吟味者也。           新免武藏守玄信  正保二年五月十二日      在判       寺尾孫亟殿       古橋惣左衛門殿

 【多田家本】

(★改行なしで前条から連続) 右に書附る【脱字】、一流の劔術、大形此巻に記し置事也。兵法、太刀を取て人に勝所を覚ゆるハ、先、五つの表を以て、五方の搆をしり、太刀の道を覚て、惣躰やわらかに自由に成、心のきゝ出て、道の拍子をしり、己と太刀も手さゑて、身も足も、心の侭にほどけたる時に随ひ、一人にかち、二人に勝、兵法の善悪を知程に成、此一つの内を、一ヶ条/\と稽古して、敵に戦ひ、次第/\に道の利を得て、不断心に懸て、急ぐ心なくして、折々手にふれて【脱字*************】千りの道も一足宛歩ぶ也。緩々と思ひ、此法を行ふ事、武士の役也と心得て、今日ハ昨日の我に勝、明日ハ下手に勝、後ハ上手に勝と思ひ、此書物のごとくにして、少も脇の道へ心の行ざるやうに思ふべし。たとひ何程の敵に打勝ても、習に背【脱字】におひてハ、実の道に有べからず。此利に心うかみてハ、一身を以てハ、数十人にも勝心を弁有べし。然上は、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日【脱字】稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす。能々吟味有べき者也。      (記名・年月日・宛名なし)

 【山岡鉄舟本】

右、書附ル處ハ、一流ノ釼術、大形此巻ニ記ス【脱字】。兵法、太刀ヲ取テ、人ニ勝処ヲ覚ハ、先五ツノ表ヲ以テ、五方ノ搆ヲ知ル、太刀ノ道ヲ覚テ、惣躰自由ニナリ、心ノ聞出テ、道ノ拍子ヲ知リ、己レト太刀モ手サヘテ、身モ足モ、心ノ侭ニホドケタル時ニ隨ヒ、一人ニ勝二人ニ勝、兵法ノ善悪ヲ知程ニ成、此一書ノ内ヲ、一ヶ条/\ト稽古シテ、敵ト戦ヒ、次第/\ニ道ノ利ヲ得テ、不断心ニ懸ケ、急グ心ナクシテ、折々手ニフレテハ、徳ヲ覚ヘ、何ノ人トモ打合、其心ヲ知テ、千里【脱字】道モ一足ヅヽ運也。緩々ト思ヒ、此法ヲ行事、武士ノ役也ト心得テ、今日ハ昨日ノ我ニ勝、明日ハ下手ニ勝、後ハ上手ニ勝ト思ヒ、此書物ノ如クニシテ、少シモ脇ノ道ヘ心ノ行ザル様ニ思ベシ。縦ヒ何程ノ敵ニ打勝テモ、習ヒ【脱字】背ク事ニ於テハ、實ノ道ニ有ベカラズ。此利心ニ浮ミテ【脱字】、一身ヲ以数十人ニモ勝心ノ辨ヘ有ベシ。然ル上ハ、釼術ノ智力ニシテ、大分一分ノ兵法ヲモ得道スベシ。千日ノ稽古ヲ鍛トシ、万日ノ稽古ヲ錬トス。能々吟味有ベキ者也。 正保二年五月十二日     新免武蔵        (宛名なし) 水ノ巻終

 【稼堂文庫本】

右、書附る所、一流之劔術、太刀此巻に記置所也。凡、太刀を取て人に勝所を覚るは、先、五つの表を以、五法の搆を知り、太刀の道を覚て、惣躰やはらかに成り、心の利出て、道の拍子を知、己と太刀も手さへて、身も足も、心の侭にほどけたる時に随ひ、一人に勝、二人に勝、兵法の善悪を知ほどに成、此一書の内【脱字】、一ヶ条/\に稽古して、敵と戦、次第/\に道の理を得て、絶えず心に懸け、いそぐ心有ずして、折々手に觸ては、自然と其徳を覚へ、何れの人とも打合、其心を知て、千里の道も一足づゝはこぶ心也。緩々と【脱字】、此法を行こと、武士の役也と心得て、今日は昨日の我に勝、明日は下手に勝、後は上手に勝と思ひて、此書物の如くにして、少も脇の道へ心の行かざる様におもふべし。假令何程【脱字】敵に打勝ても、習ふに背く事におひてハ、実の道に有べからず。此利、心に滿てハ、一身をもつて、数十人にも勝心の弁へ有べし。然上は、劔術の知力にて、大分少分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日のけひ古を練とす。能々吟味有べき者也。   正保二年五月十二日  新免武藏守               玄信在判       (宛名なし)  

 【大瀧家本】

右、書付る所、一流の劔術、大形此水の巻に記し置事也。兵法、太刀を取て、人に勝處を覚ゆるハ、先、五ツの面を以て、五方の搆を知り、太刀の道を覚へて、惣躰やわらかに成、心もきゝ【脱字】、道の拍子を知り、自由に成、己と太刀も手もさへて、身も足も、心の侭にほどけたる時に随ひ、壱人に勝弐人に勝、兵法の善悪を知る程になり、此一書の内を、一ケ條/\に稽古して、敵と戦ひ、次第/\に道の利を得て、不断心【脱字】懸け、急心なくして、折々手にふれて、其徳を覚へ、何れの人共打合、其心を知て、千里の道も一足とはこぶ也。緩々と思ひ、此道を行ふ事、武士の役なりと心得て、今日ハ昨日の我に勝、明日ハ下手に勝、後に上手に勝と思ひ、此書物の如くにして、少も脇【脱字】道へ心の行ざる様に思ふべし。縦、何程の敵に打勝ても、習に背く事に於てハ、実の道に有べからず。此利心に泛ミてハ、一身を以て数十人にも勝心の弁ひ有べし。然る上は、劔術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とし、能々吟味あるべきものなり。  正保二年五月十二日 新免武藏守玄信 在判       (宛名なし)