「獅子」とは、いったいどういうものなのでしょうか?
「獅子」すなわちライオンが「特別な獣」となった歴史は古い。
現存する世界最古の建造物と言われるエジプトのスフィンクスが、ライオンの体である事を考えれば、エジプト文明の頃には「ライオンは特別な獣」であったことが分かるでしょう。
古代アッシリアでもライオンの彫刻が多く見られるように、ルーツはそのへんのようです。
ライオンの持つ属性というのは、権力や王の象徴であり、守護的なイメージです。
スフィンクスでは、まさに王の象徴にして、知識の守護者です。
そういうわけで、西洋では強さや勇敢さの象徴として紋章などに取り入れられ、東洋(インド方面)では世界の王「転輪聖王」すなわち「仏陀」の象徴ともなりました。
仏教で「獅子座」とは、仏陀が説法する場所のことだそうです。(王の座という意味合い) 獅子座思想とか言うらしい。
スフィンクス
スフィンクスは頭が人(カフラー王がモデルと言われる)、
身体が権力を象徴するライオンの形を している。
スフィンクスとは古代エジプト語で「永遠に生きる姿」という意味で、
神殿の参道の守護神、あるいは王そのものの姿として作られた。
西洋からインド方面では、「百獣の王」としてその地位を確立したライオンですが、
中国に伝わった頃には、そういうわけにはいかなかったようです。
中国では「麒麟」が、すでに百獣の王の地位を獲得しており、ライオンの入り込む余地は無かったのではないでしょうか?
正確にいうと、麒麟は毛蟲(毛を持つ動物の総称。いわゆる獣類)の王です。
ちなみに、鱗蟲(鱗を持つ動物の総称)の王は龍、羽蟲の王は鳳凰、
甲蟲の王は亀、裸蟲の王が人間となっているようです。
(中国では、動物を羽蟲・毛蟲・甲蟲・鱗蟲・裸蟲の五つに分類している。)
話を戻しますと、中国では、そういう理由で、獅子とは百獣の王ではなく、招福駆邪の幻獣となり、神々の宮殿にいる天龍が怒って町や村を破壊しないように、宮殿の前で守る役割を持つ、というような意味合いになったようです。
(いわゆる聖獣ですね。風水なんかに出てくる、青龍・白虎・朱雀・玄武なんかも同じ位置付けのようですね。)
これが狛犬のルーツとされています。
日本では伝わってくる過程で狛犬と獅子は別物と考えられたようですが、もともとは同じものだったようです。
というより、まず日本に獅子が先に伝わり、後に中国で新たな変化を遂げた獅子が狛犬として日本に伝わったようです。
過程ってゆうより、時代の差ですね。
狛犬の話
神社の前にいるのは、阿吽(あうん)の狛犬とよく言われますが、実は(古くは?)狛犬と獅子なんです。
(口を開けているほうが「阿」で獅子。メスで耳を伏せていて身体の色は緑。向かって右。口を閉じているほうが「吽」で狛犬。オスで角を持ち、耳が立っていて身体の色は青。向かって左。)
しかし、伝わった時代が遅く(新しく)なればなるほど、両方が狛犬になっていたり、両方がオスだったり、阿吽が逆だったりしてしまうらしいです。
(上の獅子の説明で、なんとなくこの意味が分かってもらえるとうれしいです。)
松原八幡宮の狛犬:写真上「吽」写真下「阿」
身体は同じ作りですね。
神社によっては「吽」に、立派な男性のシンボルが付いていたりもするそうですが、これには何も付いてませんでした。
ところで、狛犬の色って知ってますか?
石の像しか馴染みがないし、なんとなく地味ーってイメージがありますよね。
ところが絵で見ると、すごいカラフルなんですね。
現在の中国獅子舞なんかで見る獅子に近いかも。
獅子は赤い顔に緑の身体で、比べて見ると地味ですね。
大陸横断して、さっさと日本に来た獅子は原型に近いままで、
大陸に残って変化した獅子が後に狛犬として日本に来たんですね。
狛犬は朝鮮半島から伝わったようです。
狛犬の「こま」とは、高句麗の別称で、狛犬をかつては「高麗犬」と書かれていたそうです。(高句麗と高麗は別の国家ですが、コウクリのことを高麗と書くこともあったようです。)
しかし、朝鮮半島にも中国にも「狛犬」というものは存在しません。日本に伝来した時に、高麗(こま)の犬、すなわち狛犬と呼ばれるようになったようです。
モデルは、「ライオン」 「サイ」 「かいち(中国の幻獣)」 「牛」 「羊」 などの説があるようで、狛犬の研究家でも説が分かれているそうです。
ここでは 「ライオン説」 を前提にしています。
ちなみに、日本に伝来したのは、江戸時代の初めくらいと言われているそうです。