文系の雑学・豆知識

歴史、美術、文学、言葉、文化についての雑学・うんちく・豆知識・トリビアを集めたサイトです。気になった記事や文章を個人のメモとして投稿しています

文学

平家物語「大地震」(巻第十二より)

平家物語「大地震(だいぢしん)」 巻第十二より 平家みなほろびはてて、西國(さいこく)もしづまりぬ。國は國司にしたがひ、庄は領家(りやうけ)のまゝなり。上下安堵しておぼえし程に、同(おなじき)七月九日(ここのかのひ)の午刻(むまのこく)ばか…

“Pippa's Song”と「春の朝(あした)」

ロバート・ブラウニングの“Pippa's Song”と上田敏の訳詩「春の朝(あした)」(訳詩集『海潮音』より) Pippa's Song 春 の 朝 Robert Browning ブラウニング 上 田 敏 The year's at the spring 時は春、 And day's at the morn; 日は朝(あした)、 Mornin…

平田篤胤『仙境異聞』(上)一之巻 全文

文政3年(1820)、江戸に不思議な少年が現れた。彼はそのとき15歳。卜筮(ぼくぜい)に興味のあったその少年は、7歳のときから山人(やまびと)に連れられて空中を飛行して、江戸と常陸国の岩間山との間をたびたび往復し、山人に付いて修行している、とい…

 仙境異聞(上) 二之巻 全文

仙境異聞(上)二之巻 平田篤胤筆記 ○予寅吉に始めて逢ひける時、その脈を診、また腹をも察(み)たりけるに、何やらむ懐に紐の附きたる物あるを、大切にする状(さま)なり。守袋なるべく思ひて在りけるに、其の後もをりをり懐の透き間より其の紐の見ゆるが…

仙境異聞(上) 三之巻 全文

仙境異聞(上)三之巻 平田篤胤筆記 ○問ふて云はく、「かねて聞き持ちたる物語に、江戸浜町なる或人の下僕が、異人に誘はれて、二年ばかりも帰らざりしが、帰りて後の物語に、源為朝、義経などに逢ひたるよし語れると聞きたり。其の方かゝる人々、また外にも…

仙境異聞(下) 仙童寅吉物語一之巻 全文

仙境異聞(下)仙童寅吉物語 一之巻 平田篤胤筆記考按 高山嘉津間、元の名は寅吉と云ふ。始め山崎美成が方に在りけるが、後には己が家に来て、長く逗留する事と成りぬ。其は別に記せる物あれば、此に略して、今はただ、問ひに答へたる事のみを記し出でむとす…

仙境異聞(下) 仙童寅吉物語二之巻 全文

仙境異聞(下)仙童寅吉物語 二之巻 平田篤胤筆記考按 問ふて云はく、「山人天狗なども、夜になりて寝るか」寅吉云はく、「尋常の人と同じ様に寝るなり。我々は云ふも更なり、師は寝らるれば十日、二十日も覚めず、高いびきにてねらるゝなり」問ふて云はく、…

「城の崎にて」の作者・志賀直哉の電車事故について

志賀直哉の短編「城の崎にて」の冒頭に、 「山の手線の電車に跳飛ばされて怪我をした、その後養生に、一人で但馬の城崎温泉へ出掛けた。背中の傷が脊椎カリエスになれば致命傷になりかねないが、そんな事はあるまいと医者にいわれた。二、三年で出なければ後…

与謝野鉄幹「友を恋ふる歌」(雑誌『伽羅文庫』による) 全文

友を戀ふる歌 與謝野鐵幹 妻をめとらば才たけて顔うるはしくなさけある、友をもとめば書を讀んで八分の俠氣二分の熱。 戀のいのちをたづぬれば名を惜むかな、男ゆゑ。友のなさけをたづぬれば義のあるところ火をも踏む。 斟めや、うまざけ。歌ひ女にをとめの…

与謝野鉄幹「人を恋ふる歌」(雑誌『国文学』による)全文

人を戀ふる歌 與謝野鐵幹 妻(つま)をめとらば才(さい)たけて顔うるはしくなさけある友をえらばば書をよんで六分の俠氣四分の熱 戀のいのちをたづぬれば名を惜むかなをとこゆゑ友のなさけをたづぬれば義のあるところ火をも蹈む くめやうま酒うたひめにを…

与謝野鉄幹「人を恋ふる歌」(雑誌『よしあし草』による) 全文

与謝野鉄幹「人を恋ふる歌」(雑誌『よしあし草』による) 妻をめとらば才たけて顔うるはしくなさけある友をえらばゞ書をよんで六分の俠氣四分の熱 戀のいのちをたづぬれば名を惜むかなをとこゆゑ友のなさけをたづぬれば義のあるところ火をも踏む くめやうま…

与謝野鉄幹「人を恋ふる歌」(詩歌集『鉄幹子』による) 全文

〇明治34年3月15日発行の『鉄幹子』による本文 人を戀ふる歌(三十年八月京城に於て作る) 妻(つま)をめどらば才たけて 顔うるはしくなさけある 友をえらばば書を讀んで 六分の俠氣四分の熱 戀のいのちをたづぬれば 名を惜むかなをとこゆゑ 友のなさ…

橘曙覧「独楽吟」全文

獨樂吟 橘曙覧 たのしみは草のいほりの筵(むしろ)敷(しき)ひとりこゝろを靜めをるとき たのしみはすびつのもとにうち倒れゆすり起(おこ)すも知らで寝し時 たのしみは珍しき書(ふみ)人にかり始め一ひらひろげたる時 たのしみは紙をひろげてとる筆の思…

信貴山縁起 全文と解説

信貴山縁起 (第一巻) (詞書) 〔絵〕 (第二巻 第一段) この鉢に、米を一俵(ひとたはら)のせて飛ばするに、雁(かり)などの続きたるやうに、残りの米ども、続き立ちたり。また、むら雀などのやうに続きて、たしかに主(ぬし)の家にみな落ちゐにけり…

北原白秋「落葉松」全文

落葉松 北原白秋 一からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。からまつはさびしかりけり。たびゆくはさびしかりけり。 二からまつの林を出でて、からまつの林に入りぬ。からまつの林に入りて、また細く道はつづけり。 三からまつの林の奥もわが通る…

源氏物語「桐壺」冒頭

いづれの御時にか 源氏物語「桐壺」 いづれの御時(おほんとき)にか。女御(にようご)、更衣(かうい)あまたさぶらひ給ひけるなかに、いとやんごとなき際(きは)にはあらぬがすぐれて時めき給ふありけり。はじめより、我はと思ひあがり給へる御かたがた…

野分だちて俄に膚寒き夕暮のほど(源氏物語「桐壺」より)

野分だちて俄に膚寒き夕暮のほど源氏物語「桐壺」より 野分(のわき)だちて俄(にはか)に膚寒き夕暮のほど、常よりもおぼしいづること多くて、靱負(ゆげひ)の命婦(みやうぶ)といふを遣はす。夕月夜(ゆふづくよ)のをかしき程にいだし立てさせ給うて、…

わらは病にわづらひ給ひて(源氏物語「若紫」より)

わらは病にわづらひ給ひて 源氏物語「若紫」より わらは病(やみ)にわづらひ給ひて、よろづに、まじなひ・加持(かぢ)など、まゐらせ給へど、しるしなくて、あまたゝび起り給へば、ある人、「北山になむ、なにがし寺といふところに、かしこき行ひ人侍る。…

道元禅師「普勧坐禅儀」(原文と訓読文)

普勸坐禪儀 觀音導利興聖寶林寺沙門道元 撰 原夫道本圓通、爭假修證。宗乘自在、何費功夫。況乎全體逈出塵埃兮、孰信拂拭之手段。大都不離當處兮、豈用修行之脚頭者乎。然而毫釐有差天地懸隔、違順纔起紛然失心。直饒誇會豐悟兮、獲瞥地之智通、得道明心兮、…

道元禅師「普勧坐禅儀」(訓読と現代語訳)

道元禅師 普 勧 坐 禅 儀(訓読と現代語訳) 序分(序論) (訓読)原(たず)ぬるに夫(そ)れ、道本円通(どうもとえんづう)、いかでか修証(しゅしょう)を仮(か)らん。宗乗自在(しゅうじょうじざい)、なんぞ功夫(くふう)を費(ついや)さん。いわ…

薄田泣菫の詩「ああ大和にしあらましかば」全文と補足

本文 ああ大和にしあらましかば 薄 田 泣 菫 ああ、大和にしあらましかば、いま神無月(かみなづき)、うは葉散り透く神無備(かみなび)の森の小路を、あかつき露(づゆ)に髪ぬれて、往きこそかよへ、斑鳩(いかるが)へ。平群(へぐり)のおほ野、高草の…

薄田泣菫の詩「時のつぐのひ」全文と解説

本文 時のつぐのひ 薄 田 泣 菫 時はふたりをさきしかば、その償(つぐの)ひにかへりきて、かなしき創(きづ)に、おもひでのうまし涙を湧かしめぬ。 補足 (注)1.「時のつぐのひ」は、詩集『白羊宮』に収められている詩です。2.上記の詩は、東京・金…

宮沢賢治「雨ニモマケズ」 全文

本文 雨ニモマケズ 宮 澤 賢 治 雨ニモマケズ雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ慾ハナク決シテ瞋ラズイツモシヅカニワラツテヰル一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベアラユルコトヲジブンヲカンジヨウニ入レズニヨク…

Grandfather's Clock (「大きな古時計」の原歌詞)

Grandfather's Clock Henry Clay WorkMy grandfather's clock Was too large for the shelf,So it stood ninety years on the floor;It was taller by half Than the old man himself,Though it weighed not a pennyweight more.It was bought on the morn O…

島崎藤村「千曲川旅情の歌」全文

千曲川旅情の歌 島 崎 藤 村 一小諸なる古城のほとり 雲白く遊子(いうし)悲しむ緑なす繁蔞(はこべ)は萌えず若草も藉くによしなししろがねの衾(ふすま)の岡邊日に溶けて淡雪流る あたゝかき光はあれど野に滿つる香(かをり)も知らず淺くのみ春は霞みて…

『徒然草』第137段「花は盛りに、月は隈なきをのみ……」

徒然草 第百三十七段 花は盛りに、月は隈(くま)なきをのみ、見るものかは。雨に対(むか)ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行衛(ゆくへ)知らぬも、なほ、あはれに情(なさけ)深し。咲きぬべきほどの梢、散り萎(しを)れたる庭などこそ、見所多けれ。歌の…

『徒然草』第155段「世に従はん人は……」

徒然草 第155段 世に従はん人は、先づ、機嫌を知るべし。序(ついで)悪(あ)しき事は、人の耳にも逆(さか)ひ、心にも違(たが)ひて、その事成らず。さやうの折節を心得べきなり。但し、病を受け、子生み、死ぬる事のみ、機嫌をはからず、序悪(あ)…

文部省唱歌「児島高徳」(歌詞)

児島高徳 文部省唱歌 一船坂山(ふなさかやま)や杉坂(すぎさか)と御(み)あと慕ひて院の庄(いんのしょう)、微衷(びちゅう)をいかで聞えんと、桜の幹に十字の詩。『天勾践(こうせん)を空しうする莫(なか)れ。時范蠡(はんれい)無きにしも非(あ…

島崎藤村「椰子の実」

椰子の實 島 崎 藤 村 名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の實一つ 故郷(ふるさと)の岸を離れて汝(なれ)はそも波に幾月 舊(もと)の樹は生ひや茂れる枝はなほ影をやなせる われもまた渚を枕孤身(ひとりみ)の浮寢の旅ぞ 實をとりて胸にあつれば新(あら…

山上憶良「貧窮問答歌」(万葉集巻五)全文

貧 窮 問 答 歌 一 首 并短歌 山 上 憶 良 本文 風雑 雨布流欲乃 雨雑 雪布流欲波 為部母奈久 寒之安礼婆 堅塩 乎 取都豆之呂比 糟湯酒 宇知須々呂比弖 之叵夫可比 鼻毘之毘之 尓 志可登阿良農 比宜可伎撫而 安礼乎於伎弖 人者安良自等 富己 呂倍騰 寒之安礼…